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おまけ あの時のジュード視点(※本編微ネタバレ有)
17〜19話のこと※微R18
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舌で口の中を愛撫してやれば、甘い声を漏らす。互いの性器を合わせて扱けば、喘ぎながらキスを要求してくる。
もう、存外、リヒトのことは心まで落とせているのではないかと思わずにはいられなかった。でなければ、口づけて舌を滑り込ませたのがきっかけで果てたりしないだろう。
――はっ、こいつ……。
気が急いて、そのまま挿れようとしたら拒否されたものの。リヒトの唇を指で叩いて「なら、ここは?」と尋ねると、しばらくの逡巡の後に床へ這いつくばる姿を見ることができた。
やり方なんて全くわかっていないという様子で、戸惑いながら俺のものを口に含んでいるのを見下ろすのは妙に気分が高揚した。目が合うと、一体なにをムキになっているのか、喉奥まで咥え込んで必死に頭を動かして――
かなりの無茶をした後、リヒトは喉奥の精液を飲み込むと、にじんだ涙や口の端の唾液なのだか既にわからない液体で顔をぐちゃぐちゃにして、なぜかこちらを見上げ満足そうに笑っていた。
――本当に、なんなんだ、こいつは。
息を整えながら、その頬に触れる。
それから、もう一度ベッドに入った時なんて、わざわざこちらを向いて俺の胸に顔をうずめていた。
――これは、なんだろうな、想い合ってる……で、いいのか?
我ながら意味がわからなくて、もう眠ってしまおうとその体を抱きしめた。
◇◇◇
なのに。それなのに、リヒトは朝食を終えた途端「ちょっと、オレ、エマに大事な話があるから! ついて来るなよ!」と言って俺を置き去りに一階の薬屋へ駆けて行った。
追いかけると、リヒトの弾んだ声が聞こえてくる。
「彼氏は? いる?」
「えっ、彼氏!? いや、いないです」
「そっかあ~いないかあ~!」
――は……? あれだけやっておいて、エマに手出そうとしてんのか?
もう、優秀で気立てのいい妹に適切な相手をとかいう理由じゃなくて、リヒトが自分だけのものにならない苛立ちで話を中断させて二階へ連れ戻した。
リヒトは、にやけるのをこらえきれていない顔で尋ねてくる。
「なあ、ジュード。その~朝、まあ、色々あったけどさ。オレたちって、いま、どういう関係かな」
――まさか、こっちは体だけの関係にしようってか?
つい、ムキになって、
「は……? 知人だろ」
と、答えた。
「ち……!? あ、うん、いや、そう……だっけ」
さすがにそこまで格下げされるとは思っていなかったか。いい気味だ、お前なんか知人だ、知人。
もう、さっさと呪い竜を見つけて倒して、こいつと関わらなくていいようにしよう。危なかった、愛だの恋だの似合いもしないものに侵されるところだった。
とにかく、まずはリヒトを鍛えるために、特訓と薬の材料採取を兼ねて巨大な怪鳥の住処へと訪れた。
「巣にある羽根を取るぞ。上手く避けろよ」
「お、おう……!」
二人同時に駆け出す。
リヒトが馬鹿だったのか、俺が過大評価していたのか、それとも馬鹿みたいな意地でこいつに無理をさせたのか――
なにもわからない内に、怪鳥にさらわれたリヒトが空高く連れて行かれるのを見上げる羽目になった。
「な……、あ……?」
――まずくないか? まずいよな、アレは。死ぬんじゃないか?
ともかく走って追いかけた。一人じゃ平衡感覚すらないっていうのに、足場の悪い斜面を駆けるのは無理があった。いや、平常時なら大丈夫だったかもしれない。でも今は、足元に気を配れなくて、途中で転倒した。
リヒトが、高所から地面へ目がけて落とされる。全く間に合わなかった。仰向けに倒れ伏したリヒトは、少しも動かず目を閉じていた。
――あ、れ、死んで……ないか……?
血の気が引いた。こんなに動揺するなんて、自分でも思っていなかった。
すぐそばに膝をつく。
「リヒト、意識はあるか? 目を開けろ……!」
少しの間のあと、リヒトはすんなり目を開けた。
「え、あ、うん……全然大丈夫、だけど」
――っ……心配させんなよ、くそが……。
深い深いため息をつく。
こんなんじゃ、呪いが解けても、俺が離れられないんじゃないか?
馬鹿らしい。馬鹿馬鹿しい。リヒトは茶化してくるし。
「なに、さっきの顔。そんなにオレが心配だった?」
――こいつ……人の気も知らないで……。本当に、いなくなったら、どうしようかと……。
でも、それを言ってなんになる? どうせ困らせるだけだ。俺が、こいつを必要としているのは、呪いを受けているから。それだけでいい。
リヒトの上半身を、抱え起こす。
「お前がいないと魔法が使えない。食べ物の味もわからない。まっすぐ歩くのだって一苦労だ」
そして、余計な一言が、口から漏れる。
「お前が必要なんだ」
リヒトは一瞬、目を丸くする。
「オレじゃなくて、解呪の力が必要なだけだろ」
「……そう、だな」
そう思ってろ、一生。
リヒトが俺を押しのける。
「なら、早く呪い竜を倒して、お互い自由にならなくちゃな」
「……まったくだ。ほら、さっさと起きろ。こんなところで苦戦してたんじゃ話にならない」
「ふん。ちょっと油断しただけだっての」
――やっぱり、お前のミスじゃねえか。ふざけんな。あの手この手で掻き乱してくるな。
その日の夜は、寝る前にわざわざ睨まれた。あんまりべたべた触るなということだろうか。……少しだけにしといてやる。全く触らないのは無理だ。落ち着かない。
それから、死なない程度を厳守してリヒトを猛特訓した。回復薬を消費しすぎてエマにキレられた。本気で怒られるのは、はじめてだった。
仕方なかったんだ。いつ、その時が来るかわからないから。
そして、そんな日々の終わりを告げたのは――なぜか、女装して薬屋を訪れたセージだった。
セージ……お前……お前なあ……。
もう、存外、リヒトのことは心まで落とせているのではないかと思わずにはいられなかった。でなければ、口づけて舌を滑り込ませたのがきっかけで果てたりしないだろう。
――はっ、こいつ……。
気が急いて、そのまま挿れようとしたら拒否されたものの。リヒトの唇を指で叩いて「なら、ここは?」と尋ねると、しばらくの逡巡の後に床へ這いつくばる姿を見ることができた。
やり方なんて全くわかっていないという様子で、戸惑いながら俺のものを口に含んでいるのを見下ろすのは妙に気分が高揚した。目が合うと、一体なにをムキになっているのか、喉奥まで咥え込んで必死に頭を動かして――
かなりの無茶をした後、リヒトは喉奥の精液を飲み込むと、にじんだ涙や口の端の唾液なのだか既にわからない液体で顔をぐちゃぐちゃにして、なぜかこちらを見上げ満足そうに笑っていた。
――本当に、なんなんだ、こいつは。
息を整えながら、その頬に触れる。
それから、もう一度ベッドに入った時なんて、わざわざこちらを向いて俺の胸に顔をうずめていた。
――これは、なんだろうな、想い合ってる……で、いいのか?
我ながら意味がわからなくて、もう眠ってしまおうとその体を抱きしめた。
◇◇◇
なのに。それなのに、リヒトは朝食を終えた途端「ちょっと、オレ、エマに大事な話があるから! ついて来るなよ!」と言って俺を置き去りに一階の薬屋へ駆けて行った。
追いかけると、リヒトの弾んだ声が聞こえてくる。
「彼氏は? いる?」
「えっ、彼氏!? いや、いないです」
「そっかあ~いないかあ~!」
――は……? あれだけやっておいて、エマに手出そうとしてんのか?
もう、優秀で気立てのいい妹に適切な相手をとかいう理由じゃなくて、リヒトが自分だけのものにならない苛立ちで話を中断させて二階へ連れ戻した。
リヒトは、にやけるのをこらえきれていない顔で尋ねてくる。
「なあ、ジュード。その~朝、まあ、色々あったけどさ。オレたちって、いま、どういう関係かな」
――まさか、こっちは体だけの関係にしようってか?
つい、ムキになって、
「は……? 知人だろ」
と、答えた。
「ち……!? あ、うん、いや、そう……だっけ」
さすがにそこまで格下げされるとは思っていなかったか。いい気味だ、お前なんか知人だ、知人。
もう、さっさと呪い竜を見つけて倒して、こいつと関わらなくていいようにしよう。危なかった、愛だの恋だの似合いもしないものに侵されるところだった。
とにかく、まずはリヒトを鍛えるために、特訓と薬の材料採取を兼ねて巨大な怪鳥の住処へと訪れた。
「巣にある羽根を取るぞ。上手く避けろよ」
「お、おう……!」
二人同時に駆け出す。
リヒトが馬鹿だったのか、俺が過大評価していたのか、それとも馬鹿みたいな意地でこいつに無理をさせたのか――
なにもわからない内に、怪鳥にさらわれたリヒトが空高く連れて行かれるのを見上げる羽目になった。
「な……、あ……?」
――まずくないか? まずいよな、アレは。死ぬんじゃないか?
ともかく走って追いかけた。一人じゃ平衡感覚すらないっていうのに、足場の悪い斜面を駆けるのは無理があった。いや、平常時なら大丈夫だったかもしれない。でも今は、足元に気を配れなくて、途中で転倒した。
リヒトが、高所から地面へ目がけて落とされる。全く間に合わなかった。仰向けに倒れ伏したリヒトは、少しも動かず目を閉じていた。
――あ、れ、死んで……ないか……?
血の気が引いた。こんなに動揺するなんて、自分でも思っていなかった。
すぐそばに膝をつく。
「リヒト、意識はあるか? 目を開けろ……!」
少しの間のあと、リヒトはすんなり目を開けた。
「え、あ、うん……全然大丈夫、だけど」
――っ……心配させんなよ、くそが……。
深い深いため息をつく。
こんなんじゃ、呪いが解けても、俺が離れられないんじゃないか?
馬鹿らしい。馬鹿馬鹿しい。リヒトは茶化してくるし。
「なに、さっきの顔。そんなにオレが心配だった?」
――こいつ……人の気も知らないで……。本当に、いなくなったら、どうしようかと……。
でも、それを言ってなんになる? どうせ困らせるだけだ。俺が、こいつを必要としているのは、呪いを受けているから。それだけでいい。
リヒトの上半身を、抱え起こす。
「お前がいないと魔法が使えない。食べ物の味もわからない。まっすぐ歩くのだって一苦労だ」
そして、余計な一言が、口から漏れる。
「お前が必要なんだ」
リヒトは一瞬、目を丸くする。
「オレじゃなくて、解呪の力が必要なだけだろ」
「……そう、だな」
そう思ってろ、一生。
リヒトが俺を押しのける。
「なら、早く呪い竜を倒して、お互い自由にならなくちゃな」
「……まったくだ。ほら、さっさと起きろ。こんなところで苦戦してたんじゃ話にならない」
「ふん。ちょっと油断しただけだっての」
――やっぱり、お前のミスじゃねえか。ふざけんな。あの手この手で掻き乱してくるな。
その日の夜は、寝る前にわざわざ睨まれた。あんまりべたべた触るなということだろうか。……少しだけにしといてやる。全く触らないのは無理だ。落ち着かない。
それから、死なない程度を厳守してリヒトを猛特訓した。回復薬を消費しすぎてエマにキレられた。本気で怒られるのは、はじめてだった。
仕方なかったんだ。いつ、その時が来るかわからないから。
そして、そんな日々の終わりを告げたのは――なぜか、女装して薬屋を訪れたセージだった。
セージ……お前……お前なあ……。
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