15 / 54
二章
14話 独占欲
しおりを挟む
レオンとリセナが組み立てたテントは、中に入ってみると二人で寝るのがやっとの小さな空間だった。
「昔、レオの家でテント張って泊まったの思い出しますね。秘密基地みたい」
「そうだね!」と、レオンがうなずく前の一瞬、リセナは彼がなにやら難しい顔をしていたことに気づく。
「どうしたんですか?」
「えっ、あ、いや~。今日は色々あったけど、もうちょっと上手くやれたんじゃないかな~って考えてただけ」
レオンが、毛布をかけた膝を抱える。
彼はリセナに対するあれこれも含めて考えていたけれど、彼女はワイバーン強襲の件だけに触れた。
「まあ、最善じゃなかったかもしれないけど、なんとかなったじゃないですか。……いや、本当、女の子を巻き込みそうになったのはヒヤリとしましたけど」
「あれはリセナにも無理させました……。というか、馬から飛び降りてたけど、足は大丈夫なの?」
彼女自身はむしろ誇らしげに、Vサインをして見せる。
「うちのローブは、全身に衝撃吸収魔法がかかるようになってますから。あと、メィシーさんのレッスンのおかげで、私も身体強化に回せるくらい魔力量が増えたんですよ」
後半はものすごく複雑な気持ちにならざるを得なかったけれど、レオンは世間話くらいの気軽さを装う。
「そういえば、リセナ、メィシーの里について行くの? 美味しいもの食べさせてもらえるって言ってたじゃん」
「そうなんですよね……! すごく興味はある、んですが……」
リセナが、あごに手を当てる。
「グレイさんの方も、魔王討伐でしょ……? 今は向こうからの侵攻も止んでるけど、またいつ再開されるかわからないし……。順番、に悩んでるのかなぁ……」
「それなら、メィシーを先にしたら?」
はじめてこの件で背中を押されて、リセナは目をまたたく。
「なんでですか?」
「だって、メィシーは、里の試練とかいうのをクリアしたいんだろ。もしかしたら、それで、ものすごい武器とかもらえるかもしれないじゃん。魔王と戦うなら、あいつも戦力にしようよ」
本当は、
――メィシーを味方にすれば、グレイの隙をついて逃げるくらいは出来るかもしれない。
と考えていたが、レオンは無邪気な顔のままだった。
「たしかに、戦力は多い方が――」くしゅん、とリセナが鼻を鳴らす。
「大丈夫? さすがに外は冷えるね」
レオンの膝にかかっているのは、二人分の大きな毛布の半分だ。彼が横になって肩まで引き上げる動作をすると、自然とリセナも隣で同じ体勢になる。
一枚の毛布に一緒になってくるまっているけれど、まだ、昔よりは二人の間に距離があった。
「……レオ、もうちょっと、そっちに行っていいですか?」
「うん! それじゃあ、難しいことは明日にして、もう寝よっか」
爽やかな対応に全力を注いだあと、レオンは目を閉じて羊を十匹単位で大量に数え、そのモコモコで邪念を埋めた。
実は、リセナが王太子の婚約者になってからというもの、彼は一度も安眠したことがなかった。昼間の疲れもあって、レオンは意外と早く眠りに落ちる。
彼が静かになってから、リセナは寝たふりをやめた。
――レオ、普通に寝ちゃったな……。いや、当然といえば当然だけど。
そっと、彼の寝顔を盗み見る。
――さりげなく、メィシーさんとのレッスンの話をしてみたけど反応ないし。……いや、別に変なことをしてるわけじゃないから、何も言われなくて当然なんだけど……。
彼の鼻先で手を振ったり、指をふよふよ動かしてみるけれど反応はない。熟睡しているようだ。
――レオは私の幼馴染で、友達で、一緒にいると安心して……。それだけなのに……。
本当に、それだけのはずなのに。
――おかしいよね。異性として意識してくれるか試してみる、なんて。よくない。そういうの、よくない……。
こんなの、ただの独占欲だ。まだ添い遂げる相手を選ぶ勇気もないのに、彼は自分だけのものでいてほしいだなんて。
――よくない、なあ……。
胸がきゅっとなって、すがるように毛布の中で彼の手を探る。温かな手にほんの少し触れるだけで、やはり心が落ち着いた。
――レオの手、いつの間にか大きくなったなぁ……。
時の流れに感じ入りながら、夜は更けていく。
外では、また、流れ星が夜空に線を描いていた。
◆
空気が澄み渡った清々しい朝は、メィシーのいれた謎のハーブティーと共に始まった。
「はい、みなさん、よく眠れましたか? もう昨日あんなことがあった後なので、全体公開の情報共有といきましょう!」
明るい調子のわりに、話の内容は全く清々しくないものだった。
「ええと、まず、先日襲ってきた甲冑ですが――ダンに調べてもらったところ、鉄の中に、この星には存在しないはずの元素が混ざっていました。これは、最近よく落ちてくる隕石の中にも含まれているそうなんですよ」
レオンが首をかしげる。
「その隕石から作られたってこと?」
「いや、甲冑自体は一般的に流通しているもので間違いないよ。武具屋の話によると、工場から出荷前の甲冑が大量になくなった事件もあったそうだし……。人知れず汚染された、というイメージかな」
「……?」
「つまり、隕石が、普通の甲冑になんらかの異常を引き起こした可能性が高い。それも、勝手に動いて人を襲うような。――なにせ宇宙からの飛来物だからね。僕たちの常識が通用しない出来事が、これからも起こるかもしれない」
そんな馬鹿な、と笑い飛ばしたかったけれど。昨日のことを思い出したレオンが、冷や汗を流す。
「……たとえば、様子のおかしいワイバーンとか?」
「ああ――それなら、勝手に検体を持ち帰ったダンが、検査結果に発狂してるんじゃないかな。彼、特殊な魔法で調べるから、人間には見えないものが見えてしまうんだよね」
メィシーの言う通り、ダンは研究所で「ハッハァ、またこの元素か! これは生物っぽいぞぉ! しかも世界樹を狙う大馬鹿野郎か、根絶やしだなァ!」と叫んでいた。
ハーブティーを飲みほしたリセナに、メィシーが優しく声をかける。
「それ、リラックス効果のあるハーブなんですよ。大変なことが多いけれど、気持ちを落ち着けていきましょうね。あと、免疫力を高める作用もあるんです」
「つまり、ワイバーンみたいに、人間が謎の存在に汚染される可能性もあるので気休めでも対策しておこうってことですね……」
「……はは、余計なことを言いました。どうか気を確かに」
メィシーが苦笑する。彼もそれなりに動揺しているようだ。
宇宙からの飛来物が、なぜ世界樹に仇をなすのか。レオンには見当もつかない。それよりも、いま言わなければならないことはハッキリとしていた。
「大丈夫! リセナのそばには、必ずオレたちがいるから! ――いや、まあ、信用ならないやつらはいるけど」
レオンがグレイとメィシーを見る。
(ちなみに、グレイはメィシーを見ている)
未だに疑われているメィシーは、しかし、潔く片手をあげた。
「その件でしたら。僕はリセナに危害を加えないと、法の神に誓います。一度誓えば、国王ですらもその拘束力からは逃れられないという、絶対法神への宣誓書――。違反時には死罪で構いませんので、ぱぱっと書きに行きましょう」
そんな気軽な感じで、次の行き先となる街が決まった。
「昔、レオの家でテント張って泊まったの思い出しますね。秘密基地みたい」
「そうだね!」と、レオンがうなずく前の一瞬、リセナは彼がなにやら難しい顔をしていたことに気づく。
「どうしたんですか?」
「えっ、あ、いや~。今日は色々あったけど、もうちょっと上手くやれたんじゃないかな~って考えてただけ」
レオンが、毛布をかけた膝を抱える。
彼はリセナに対するあれこれも含めて考えていたけれど、彼女はワイバーン強襲の件だけに触れた。
「まあ、最善じゃなかったかもしれないけど、なんとかなったじゃないですか。……いや、本当、女の子を巻き込みそうになったのはヒヤリとしましたけど」
「あれはリセナにも無理させました……。というか、馬から飛び降りてたけど、足は大丈夫なの?」
彼女自身はむしろ誇らしげに、Vサインをして見せる。
「うちのローブは、全身に衝撃吸収魔法がかかるようになってますから。あと、メィシーさんのレッスンのおかげで、私も身体強化に回せるくらい魔力量が増えたんですよ」
後半はものすごく複雑な気持ちにならざるを得なかったけれど、レオンは世間話くらいの気軽さを装う。
「そういえば、リセナ、メィシーの里について行くの? 美味しいもの食べさせてもらえるって言ってたじゃん」
「そうなんですよね……! すごく興味はある、んですが……」
リセナが、あごに手を当てる。
「グレイさんの方も、魔王討伐でしょ……? 今は向こうからの侵攻も止んでるけど、またいつ再開されるかわからないし……。順番、に悩んでるのかなぁ……」
「それなら、メィシーを先にしたら?」
はじめてこの件で背中を押されて、リセナは目をまたたく。
「なんでですか?」
「だって、メィシーは、里の試練とかいうのをクリアしたいんだろ。もしかしたら、それで、ものすごい武器とかもらえるかもしれないじゃん。魔王と戦うなら、あいつも戦力にしようよ」
本当は、
――メィシーを味方にすれば、グレイの隙をついて逃げるくらいは出来るかもしれない。
と考えていたが、レオンは無邪気な顔のままだった。
「たしかに、戦力は多い方が――」くしゅん、とリセナが鼻を鳴らす。
「大丈夫? さすがに外は冷えるね」
レオンの膝にかかっているのは、二人分の大きな毛布の半分だ。彼が横になって肩まで引き上げる動作をすると、自然とリセナも隣で同じ体勢になる。
一枚の毛布に一緒になってくるまっているけれど、まだ、昔よりは二人の間に距離があった。
「……レオ、もうちょっと、そっちに行っていいですか?」
「うん! それじゃあ、難しいことは明日にして、もう寝よっか」
爽やかな対応に全力を注いだあと、レオンは目を閉じて羊を十匹単位で大量に数え、そのモコモコで邪念を埋めた。
実は、リセナが王太子の婚約者になってからというもの、彼は一度も安眠したことがなかった。昼間の疲れもあって、レオンは意外と早く眠りに落ちる。
彼が静かになってから、リセナは寝たふりをやめた。
――レオ、普通に寝ちゃったな……。いや、当然といえば当然だけど。
そっと、彼の寝顔を盗み見る。
――さりげなく、メィシーさんとのレッスンの話をしてみたけど反応ないし。……いや、別に変なことをしてるわけじゃないから、何も言われなくて当然なんだけど……。
彼の鼻先で手を振ったり、指をふよふよ動かしてみるけれど反応はない。熟睡しているようだ。
――レオは私の幼馴染で、友達で、一緒にいると安心して……。それだけなのに……。
本当に、それだけのはずなのに。
――おかしいよね。異性として意識してくれるか試してみる、なんて。よくない。そういうの、よくない……。
こんなの、ただの独占欲だ。まだ添い遂げる相手を選ぶ勇気もないのに、彼は自分だけのものでいてほしいだなんて。
――よくない、なあ……。
胸がきゅっとなって、すがるように毛布の中で彼の手を探る。温かな手にほんの少し触れるだけで、やはり心が落ち着いた。
――レオの手、いつの間にか大きくなったなぁ……。
時の流れに感じ入りながら、夜は更けていく。
外では、また、流れ星が夜空に線を描いていた。
◆
空気が澄み渡った清々しい朝は、メィシーのいれた謎のハーブティーと共に始まった。
「はい、みなさん、よく眠れましたか? もう昨日あんなことがあった後なので、全体公開の情報共有といきましょう!」
明るい調子のわりに、話の内容は全く清々しくないものだった。
「ええと、まず、先日襲ってきた甲冑ですが――ダンに調べてもらったところ、鉄の中に、この星には存在しないはずの元素が混ざっていました。これは、最近よく落ちてくる隕石の中にも含まれているそうなんですよ」
レオンが首をかしげる。
「その隕石から作られたってこと?」
「いや、甲冑自体は一般的に流通しているもので間違いないよ。武具屋の話によると、工場から出荷前の甲冑が大量になくなった事件もあったそうだし……。人知れず汚染された、というイメージかな」
「……?」
「つまり、隕石が、普通の甲冑になんらかの異常を引き起こした可能性が高い。それも、勝手に動いて人を襲うような。――なにせ宇宙からの飛来物だからね。僕たちの常識が通用しない出来事が、これからも起こるかもしれない」
そんな馬鹿な、と笑い飛ばしたかったけれど。昨日のことを思い出したレオンが、冷や汗を流す。
「……たとえば、様子のおかしいワイバーンとか?」
「ああ――それなら、勝手に検体を持ち帰ったダンが、検査結果に発狂してるんじゃないかな。彼、特殊な魔法で調べるから、人間には見えないものが見えてしまうんだよね」
メィシーの言う通り、ダンは研究所で「ハッハァ、またこの元素か! これは生物っぽいぞぉ! しかも世界樹を狙う大馬鹿野郎か、根絶やしだなァ!」と叫んでいた。
ハーブティーを飲みほしたリセナに、メィシーが優しく声をかける。
「それ、リラックス効果のあるハーブなんですよ。大変なことが多いけれど、気持ちを落ち着けていきましょうね。あと、免疫力を高める作用もあるんです」
「つまり、ワイバーンみたいに、人間が謎の存在に汚染される可能性もあるので気休めでも対策しておこうってことですね……」
「……はは、余計なことを言いました。どうか気を確かに」
メィシーが苦笑する。彼もそれなりに動揺しているようだ。
宇宙からの飛来物が、なぜ世界樹に仇をなすのか。レオンには見当もつかない。それよりも、いま言わなければならないことはハッキリとしていた。
「大丈夫! リセナのそばには、必ずオレたちがいるから! ――いや、まあ、信用ならないやつらはいるけど」
レオンがグレイとメィシーを見る。
(ちなみに、グレイはメィシーを見ている)
未だに疑われているメィシーは、しかし、潔く片手をあげた。
「その件でしたら。僕はリセナに危害を加えないと、法の神に誓います。一度誓えば、国王ですらもその拘束力からは逃れられないという、絶対法神への宣誓書――。違反時には死罪で構いませんので、ぱぱっと書きに行きましょう」
そんな気軽な感じで、次の行き先となる街が決まった。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】誰にも相手にされない壁の華、イケメン騎士にお持ち帰りされる。
三園 七詩
恋愛
独身の貴族が集められる、今で言う婚活パーティーそこに地味で地位も下のソフィアも参加することに…しかし誰にも話しかけらない壁の華とかしたソフィア。
それなのに気がつけば裸でベッドに寝ていた…隣にはイケメン騎士でパーティーの花形の男性が隣にいる。
頭を抱えるソフィアはその前の出来事を思い出した。
短編恋愛になってます。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる