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3ー2章 落ち人たちの罪と罰
十四話 素敵な紳士に出会いました。
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アルベリックさんがサミュエルさんに問う言葉が甦ります。
──この加護についての記述は、真実か?
加護のない落ち人。
私にとって加護は、とても重い存在感をもって在るものです。大変なことも多かったけれど、あったからこそ築けた関係もありました。最初は驚きと恐怖で始まったそれは、今となっては無いなんて考えられないわけで……。
『あなたには、加護があるのね』
結衣さんの言葉は、羨むものではありません。だけどそれでいてどこか寂しげでした。
同郷の彼女のこれまでを知りたい。落ちてからの事、そして落ちる前の彼女自身を。いえ、知らなくてはならない、そう感じたのです。
「結衣さん、私は……」
その時、私の言葉を遮るようにして声をかけてきた人物がいたのです。結衣さんと同時に振り向くそこに立っていたのは、とても上品な着物をまとった男性。アルベリックさんより幾つか年上……三十代半ばくらいでしょうか、落ち着いた雰囲気です。顔立ちはとても整っていて、いわゆるイケてるおじさま。
流れるように美しい金髪をなでつけ、見下ろす瞳は青味がかかった灰色。眼差しは静かではありますが、強く自信に満ちています。そして明らかに貴族階級のようないで立ち。王都でよく見かけた薄手のローブ、その下にはきっちりとネクタイを締めた上物の白いシャツ。太めのベルトは黒く染めた皮に、薄色の刺繍。無駄なシワひとつないズボンには、これまた汚れなど見当たらない皮のブーツが合わせられていました。
どうやら私たちが通行のお邪魔だったようですね。
私は結衣さんを促してその場を譲ります。
だけどその方はその場を去る気配がありません。どうしたのかと見上げれば、じっと目が合いました。
「聞こえなかったか、お前たちが落ち人の娘かと聞いていたのだが」
尊大ではありますが、淡々と述べる男性は落ち着いた声でそう問いかけてきたのです。
見るからに貴族階級の男性に、内心ビクビクとしながらも、リュファスさんの言葉を思い出しつつ、聞き返します。彼が言うにはつまり、淑女たるもの先に名乗ってはならぬ。
「どちら様でしょうか」
「私はジャコブ・ルネル子爵が長子、オディロン・ルネル。訳あってローウィンに滞在している」
軽く右手を胸に添えてそう名乗るのは、貴族階級の挨拶なのです。私は軽く膝を折って会釈で応えます。
「カズハ・レヴィナスです、初めまして。連れの彼女はユイ・ホンダさんです、人見知りですのでご挨拶はご容赦願えますか」
「かまわない」
ルネルと名乗る男性の視線は、結衣さんに留まっていたので、彼女になにか用があるのかと思ったのですが。
「通りで見かけて声をかけた。貴女に肖像画を依頼したいと……」
どうやら声をかけた目的は私のようです。
なのに結衣さんに釘付けとは、どういう事でしょう。結衣さんは困惑しつつ、ルネルさんから視線を反らしてしまいました。
「ユイ……といったか」
「え?」
結衣さんが無言で振り返りました。
「美しい貴女にも、一緒に話を聞いてもらいたい」
それまで動くことがなかった、彼の端正な顔立ちが優しく緩むのを見ると、結衣さんは驚いたみたい。ほんの少し頬を染めまていました。
とはいえこのルネルさん、なんとストレートかつスマートな口説き方でしょうか。あ、いえ。そんな気はないのかもしれませんが、純情奥手な日本人女性ならイチコロに違いない、という見事な攻撃です。
しかし突然のことながら、私は困惑しました。目の前の紳士は、貴族らしく柔らかい物腰の中に凛とした雰囲気がありますが、だからといって絵の依頼を、はいそうですかと受けるわけにはいきません。今はまだ、私の加護がいつ発動するか分からないのですから。
私はアルベリックさんの困った顔を思い出しながら、残念ですがお断りすることに。
「あの、とてもありがたい申し出なのですが、今は休暇としてローウィンに来ています。道具や時間の都合もあるので、引き受けられません」
「ああ、貴女の言うことも尤もだ。ならば、レヴィナス家に正式に依頼を願い出よう。それなら構わないだろうか」
「……ええと、そんな事ができますか?」
「もちろん。地位こそ低い子爵ではあったが、今はそれなりの働きをもって仕える身。だがそれにはまず、話だけでも貴女にしておきたいのだが。少しでかまわない、時間をもらえるだろうか」
上品な紳士の申し出に、考えあぐねていると。
「ルネル様、いらっしゃいませ」
店の主人であるおばさんが、ルネルさんに気づいて声をかけてきたのです。愛想の良いおばさんの様子から、彼がここの上客なのだとと思われます。
「へえ、肖像画を? ルネル様はね、うちのお得意様でもあるけれど、それをさっ引いても気さくで良い方だよ。私からも頼むよ、長くこのローウィンに滞在するルネル様の、一時の慰みになってくれないかい」
「ここには、もう長く?」
不思議に思ってつい聞き返した私に、ルネルさんは紳士らしく答をくれました。
「ああ、我が父が身体を壊し臥せっている。私は跡目を継ぐ身、足りない時間を補うために、ここで父のための最後の仕事を」
『お体が悪いのですか?』
結衣さんが思わずついた言葉に、自ら驚いたように口を手で覆います。そして小さな声で「すみません」と。
「かまわない。父はもう長くはないだろう。できうる限り穏やかに人生を締めさせてやりたい」
「じゃあ、お父様の肖像画を?」
頷く紳士の笑顔は、どこか憂いを含んで見えました。
そんな話をしている間に、店主のおばさんが私たちに店の奥にある椅子が置かれた一角に案内してくれました。流されるままに話を聞くことになってしまいそうです。
私は結衣さんにそっと確認します。
「結衣さんまで巻き込んでしまいますが、大丈夫ですか? 何なら一旦、サミュエルさんの所に戻ってから出直しても……」
『私は大丈夫よ、せっかくだから話を聞いてあげて』
「……わかりました」
私たちのやり取りを黙って見ていたルネルさんは、話がついたのを見計らって、結衣さんのために椅子を引きます。それを受けて結衣さんも照れ臭そうです。
「貴女は、上流階級の出身なのだな、ユイ」
『え? いいえ、とんでもない』
「そうなのか? 所作に無駄がなく美しい。それでいて慎ましいのは、良い教育を受けた者のそれだと思えたのだが」
『私くらいは、普通です』
「そうか……ならば苦労をしたのではないか?」
結衣さんは驚いたようにルネルさんを見上げ、そして首を横に振ります。それを優しい眼差しで見つめるルネルさん。
「私ならば、とても耐えられるものではない。強い女性だ」
頬を染める結衣さん。ルネルさんもまた結衣さんに微笑み返していますよ。これはもしかして、もしかしなくとも私はお邪魔虫ですか?
「それで、肖像画なのだが」
「あ、はい。お父様でしたね、ご病状によってはあまり長い時間お邪魔できませんね。その辺りはどうですか?」
「確かに。だが貴女の腕でしたら、何度か通ってもらえればどうとでもなるのでは?」
「……それは買いかぶりです。といいますか、どこかで私の絵をご覧になったことがあるのですか?」
「ああ、王都でも噂だ。役者絵を、使いの者が手に入れて」
ああ、そういう事ですね。
数はまだ少ないものの、ディディエさんたちエトワール芸戯団の興行で売ってもらった役者絵。念のため絵に重なるように印判を押したそれらが、動き出したという報告はまだありません。そもそも役者絵を見て涙を流すことはかなり少ないだろうという判断のもと、売り出したものでした。
光栄なことに、かなりの評価をいただきました。
「まだまだ修行中です。それに、ご依頼は嬉しいのですが、やっぱりアルベリックさんに許可を貰わないと、お返事はできません。それでいいですか?」
「ああ、もちろんだ」
先日の柳さんのように無理強いをしないルネルさんに、私は好感を持ちます。絵にかいたような紳士なのです。
そのルネルさんは、結衣さんの方にも気遣いを忘れません。ああ、サミュエルさんに爪の垢を飲ませたいのです。
「依頼が成立したあかつきには、ぜひ貴女も同席していただきたい」
『え、私も?』
「ええ。実は私の屋敷には、この街を作った落ち人にまつわる物がいくつか収められているのですよ。きっと貴女を慰める。ただそこで少しでも穏やかに過ごせばいい。それに私には、貴女に求めるものは何もないのだから」
その言葉が、結衣さんの心を初めて押したのかもしれません。私は初めて耳にする結衣さんの声に、ほんの少しだけ安堵したのでした。
「はい」
たった一言だけど、日本語ではない言葉でした。まずは、彼女にとっての大切な第一歩なのです。
宝飾店で注文していた品を受け取る頃には、既にルネルさんは去った後でした。
ですから帰ろうとしたところで、店のおばさんから渡された箱に、私と結衣さんは顔を見合わせて驚きました。
「ルネル様から、そちらの娘さんにって。きっと懐かしいものだろうからとおっしゃっていたよ」
『私?!』
箱を開けるとそこに収められていたのは、先ほど二人で眺めた懐中時計でした。
「わあ、凄いです。これってもの凄く高価ですよね?」
『え、そうなの? じゃあもらえないわ!』
「お代はもうルネル様に貰っちまったよ。あんたが要らないって言うと、私が困るよ」
「そうですねぇ……あ、そうだ。次に会ったときにどうするか決めたらいいですよ。肖像画のこともありますから、きっと何かしら連絡してくると思いますし」
私とおばさんに押されるようにして、結衣さんは懐中時計を受け取ったのでした。
それから、私は結衣さんを連れてローウィンの街の中央にある広場にやって来ました。ここは訪れるお客さんたちのために、綺麗な花々が咲き乱れていて素敵な場所なのです。
結衣さんを促して、ベンチに座ります。
「素敵な紳士でしたね、ルネルさんて方」
『……そうね。初対面なのに、あんな風に労わってもらったの、初めてだったかもしれないわ』
遠くを見る結衣さんの脳裏には、これまでの苦労が思い出されているのでしょう。
「結衣さん、私に聞かせてもらえますか、落ちてから結衣さんがこの世界で経験したことを」
過ぎたことを知ってももう何もできません。ですが、それを知っているからこそ差し出せる手もあるのです。そんな私の気持ちが通じたのでしょうか、それともルネルさんとのやり取りが、彼女を溶かし始めたのかも。結衣さんは、話し始めました。
『私が落ちたのは、農家の納屋の中だったって言ったわね。……最初は混乱したわ。何の冗談か、それとも誘拐されたのか。でも混乱しつつもすぐに悟ったわ、ここは普通じゃないって』
結衣さんの話はこうでした。
最初に保護されたその農家のおかみさんは、とても優しく受け入れてくれたそうです。身の回りの世話を焼き、食事を与えてくれ、慣れるまでいていいよと言ってくれたのだそうです。ですが、それもつかの間。当然ながら結衣さんの存在は警備隊に連絡され、取り調べを受けることに。
それは私も同様です。まずはリュファスさんから、ねちねちと細かく聞かれましたからね。でもきっと農家のおばさんは、結衣さんの事を思って連絡したのでしょう。落ち人には政府の保護が約束されています。
ですが、結衣さんの言い分は少し違いました。
『それは不愉快な思いをしたわ。……一緒に落ちて来た私物を奪われたの。中にはとても大切なものがあったのに……』
「え、と。調べられただけでなく、奪われたのですか?」
『そうよ。いくつかは戻ってきたけれど、大事なものが戻らなかった。携帯電話と、手帳……手帳の中には写真があったの。携帯はいずれ電池がなくなるから諦めもつくわ。でも写真は……』
苦しげに俯く結衣さん。
まさか辺境警備隊内でそのような事が起こるとは思っていなかったので、私は驚きを隠せません。ノエリアの街の兵隊さんたちは、みんな正直で真面目、気が優しい方ばかりでしたし。
しかしですね、ふと思い出したのです。最初に結衣さんが落ちた場所を聞いたときの違和感を。
「結衣さんが落ちた街って……」
『エーデという所』
「ああ、そうだった……エーデでした!」
それがどうしたのかと私を凝視する結衣さん。
エーデという街は、ここローウィンで私を攫った茶髪オール……ええと名前はそう、マナドゥ中佐! 彼の出身地でした。しかも彼の一族が元々治めていた領地。だからソランさんを脅して下っぱに仕立て上げることが出来たのです。当然、警備隊に所属していたソランさんを意のままに移動できるのです、その警備隊が問題を抱えていてもおかしくはありません。
私は結衣さんの巡り会わせの悪さを、心の底から同情します。
『それだけじゃないわ。農家にお世話になってしばらくして、そこの息子に……』
突然いやらしい目つきで見られるようになったと思ったら、なんと身体を触られることもあったそうです。それを農家のおばさんにも見られてしまい、辛くなってその家を飛び出したのだそうです。
それが、この世界に落ちて来て、たった一週間での出来事。
「何も分からないままだったでしょう? まさか街から出てはいませんよね?」
この世界必須の知識もあったとは思えません。街から独りで出てしまったら、それこそ魔獣の餌食でジ・エンドです。
『すぐに警備隊に捕まったわ。すごく態度の悪い警備兵だったの、泣いて嫌がる私を無理やり宿舎に連れ帰って、事もあろうに牢屋に入れたのよ、信じられる? それから農家へは帰れないから、どうしようかと思ったの。そうしたら何日かして王都から迎えがきて……有無を言わさず連れて行かれたわ。それが王立技術研究所という施設よ』
「ああ、セヴランさんの……」
『セヴラン?』
「あ、ええと。あのですね、アルベリックさんの弟さんがお勤めなんです、ちょっと愛想の悪いイケメンです」
『……もしかしてあの人かしら』
ああ、結衣さんの顔がとても嫌そうに歪みます。何かしたんですか、セヴランさん。
「まあ、それはいいです。というか忘れてください。じゃあ、ずっと研究所にいたのですか?」
『ええ。毎日いろいろな事を聞かれたわ。私が最初に研究者だって名乗ってしまったのがいけなかったの……ずっと軟禁されていたのも同然よ』
「では、何か技術供与をしたんですか?」
『できないわよ! 王都に辿り着くまでに見た景色、使われる道具、交通手段を見ればそれがどんなに恐ろしい事かくらい、分からないわけがないもの』
「……そうですね」
うん、でもそれで軟禁。
あれ?
「王都では誰が、結衣さんのお世話をしていたのですか?」
『研究所の人だと思うけれど。たまに手際の良い女性が何人か……』
「王様には会いましたか?」
『いいえ! そもそも、あの嫌味な官吏とか貴族とか、そんな人と会うのだって今回ローウィンに来るまで一度もなかったわ。出ようとは思わなかったけど、外出だってほとんどしてないし』
それはもしかして……
私の疑問が形になるその時、気だるそうな声が割って入ってきたのです。
「あんたは守られてたんだよ、落ち人のお嬢さん」
振り向けば、そこに立っていたのは足に包帯を巻き、片手に杖を持ったソランさんでした。
痛々しい姿ではありますが、昨日会った時より元気そうです。まあ、私服は逆に元気がなさそうによれていますが。
「あんたが危惧することくらい、俺たちだって当然認識している。だからあんたは保護され、その悲劇に酔った勢いで、とんでもない馬鹿に騙されないよう、見張られてたんじゃないか?」
『悲劇に酔ったって……』
ソランさんは分かった風にそう言い切り、結衣さんを見下ろしています。
一方結衣さんは、まさか突然現れた見知らぬオッサンにとんでもない侮辱を受け、怒りに肩を震わせています。
なんて事言い出すんですか、ソランさん。
「その通りだから言い返せないんだろう?」
『違うわ! なんであなたにそんな事言われなくちゃいけないの、失礼だわ』
「酔ってるんじゃないなら、なぜ紛失物のことを言わなかったんだ、警備隊に」
『盗った彼らに言って戻ってくるわけないじゃない! 誰も信用なんてできないわ!』
「俺ならちゃんと聞いた」
『え? なにを言っているのよ』
ソランさんの言葉に、私はピンときて「あ!」と思わず叫んでしまいました。
「覚えてないのも無理ないだろうがさ、逃げ出したあんたを最初に保護した警備兵ってのが、俺」
その言葉に、結衣さんが驚きのあまり立ち上がり、ソランさんの顔を凝視しました。
いやあ、縁は異なもの味なものとは言いますが……いえ、これは男女の関係とは違いますけれど、偶然ってあるものなんですね。なんてほっこりしていたら……
パンという乾いた音。
ソランさんの少しこけた頬に、結衣さんの綺麗な手がクリティカルヒットしていました。
『最低! 顔も見たくないわ!』
もしかして、結衣さんの人間不信の原点て……まさかあなただったんですか、下っぱさん!
──この加護についての記述は、真実か?
加護のない落ち人。
私にとって加護は、とても重い存在感をもって在るものです。大変なことも多かったけれど、あったからこそ築けた関係もありました。最初は驚きと恐怖で始まったそれは、今となっては無いなんて考えられないわけで……。
『あなたには、加護があるのね』
結衣さんの言葉は、羨むものではありません。だけどそれでいてどこか寂しげでした。
同郷の彼女のこれまでを知りたい。落ちてからの事、そして落ちる前の彼女自身を。いえ、知らなくてはならない、そう感じたのです。
「結衣さん、私は……」
その時、私の言葉を遮るようにして声をかけてきた人物がいたのです。結衣さんと同時に振り向くそこに立っていたのは、とても上品な着物をまとった男性。アルベリックさんより幾つか年上……三十代半ばくらいでしょうか、落ち着いた雰囲気です。顔立ちはとても整っていて、いわゆるイケてるおじさま。
流れるように美しい金髪をなでつけ、見下ろす瞳は青味がかかった灰色。眼差しは静かではありますが、強く自信に満ちています。そして明らかに貴族階級のようないで立ち。王都でよく見かけた薄手のローブ、その下にはきっちりとネクタイを締めた上物の白いシャツ。太めのベルトは黒く染めた皮に、薄色の刺繍。無駄なシワひとつないズボンには、これまた汚れなど見当たらない皮のブーツが合わせられていました。
どうやら私たちが通行のお邪魔だったようですね。
私は結衣さんを促してその場を譲ります。
だけどその方はその場を去る気配がありません。どうしたのかと見上げれば、じっと目が合いました。
「聞こえなかったか、お前たちが落ち人の娘かと聞いていたのだが」
尊大ではありますが、淡々と述べる男性は落ち着いた声でそう問いかけてきたのです。
見るからに貴族階級の男性に、内心ビクビクとしながらも、リュファスさんの言葉を思い出しつつ、聞き返します。彼が言うにはつまり、淑女たるもの先に名乗ってはならぬ。
「どちら様でしょうか」
「私はジャコブ・ルネル子爵が長子、オディロン・ルネル。訳あってローウィンに滞在している」
軽く右手を胸に添えてそう名乗るのは、貴族階級の挨拶なのです。私は軽く膝を折って会釈で応えます。
「カズハ・レヴィナスです、初めまして。連れの彼女はユイ・ホンダさんです、人見知りですのでご挨拶はご容赦願えますか」
「かまわない」
ルネルと名乗る男性の視線は、結衣さんに留まっていたので、彼女になにか用があるのかと思ったのですが。
「通りで見かけて声をかけた。貴女に肖像画を依頼したいと……」
どうやら声をかけた目的は私のようです。
なのに結衣さんに釘付けとは、どういう事でしょう。結衣さんは困惑しつつ、ルネルさんから視線を反らしてしまいました。
「ユイ……といったか」
「え?」
結衣さんが無言で振り返りました。
「美しい貴女にも、一緒に話を聞いてもらいたい」
それまで動くことがなかった、彼の端正な顔立ちが優しく緩むのを見ると、結衣さんは驚いたみたい。ほんの少し頬を染めまていました。
とはいえこのルネルさん、なんとストレートかつスマートな口説き方でしょうか。あ、いえ。そんな気はないのかもしれませんが、純情奥手な日本人女性ならイチコロに違いない、という見事な攻撃です。
しかし突然のことながら、私は困惑しました。目の前の紳士は、貴族らしく柔らかい物腰の中に凛とした雰囲気がありますが、だからといって絵の依頼を、はいそうですかと受けるわけにはいきません。今はまだ、私の加護がいつ発動するか分からないのですから。
私はアルベリックさんの困った顔を思い出しながら、残念ですがお断りすることに。
「あの、とてもありがたい申し出なのですが、今は休暇としてローウィンに来ています。道具や時間の都合もあるので、引き受けられません」
「ああ、貴女の言うことも尤もだ。ならば、レヴィナス家に正式に依頼を願い出よう。それなら構わないだろうか」
「……ええと、そんな事ができますか?」
「もちろん。地位こそ低い子爵ではあったが、今はそれなりの働きをもって仕える身。だがそれにはまず、話だけでも貴女にしておきたいのだが。少しでかまわない、時間をもらえるだろうか」
上品な紳士の申し出に、考えあぐねていると。
「ルネル様、いらっしゃいませ」
店の主人であるおばさんが、ルネルさんに気づいて声をかけてきたのです。愛想の良いおばさんの様子から、彼がここの上客なのだとと思われます。
「へえ、肖像画を? ルネル様はね、うちのお得意様でもあるけれど、それをさっ引いても気さくで良い方だよ。私からも頼むよ、長くこのローウィンに滞在するルネル様の、一時の慰みになってくれないかい」
「ここには、もう長く?」
不思議に思ってつい聞き返した私に、ルネルさんは紳士らしく答をくれました。
「ああ、我が父が身体を壊し臥せっている。私は跡目を継ぐ身、足りない時間を補うために、ここで父のための最後の仕事を」
『お体が悪いのですか?』
結衣さんが思わずついた言葉に、自ら驚いたように口を手で覆います。そして小さな声で「すみません」と。
「かまわない。父はもう長くはないだろう。できうる限り穏やかに人生を締めさせてやりたい」
「じゃあ、お父様の肖像画を?」
頷く紳士の笑顔は、どこか憂いを含んで見えました。
そんな話をしている間に、店主のおばさんが私たちに店の奥にある椅子が置かれた一角に案内してくれました。流されるままに話を聞くことになってしまいそうです。
私は結衣さんにそっと確認します。
「結衣さんまで巻き込んでしまいますが、大丈夫ですか? 何なら一旦、サミュエルさんの所に戻ってから出直しても……」
『私は大丈夫よ、せっかくだから話を聞いてあげて』
「……わかりました」
私たちのやり取りを黙って見ていたルネルさんは、話がついたのを見計らって、結衣さんのために椅子を引きます。それを受けて結衣さんも照れ臭そうです。
「貴女は、上流階級の出身なのだな、ユイ」
『え? いいえ、とんでもない』
「そうなのか? 所作に無駄がなく美しい。それでいて慎ましいのは、良い教育を受けた者のそれだと思えたのだが」
『私くらいは、普通です』
「そうか……ならば苦労をしたのではないか?」
結衣さんは驚いたようにルネルさんを見上げ、そして首を横に振ります。それを優しい眼差しで見つめるルネルさん。
「私ならば、とても耐えられるものではない。強い女性だ」
頬を染める結衣さん。ルネルさんもまた結衣さんに微笑み返していますよ。これはもしかして、もしかしなくとも私はお邪魔虫ですか?
「それで、肖像画なのだが」
「あ、はい。お父様でしたね、ご病状によってはあまり長い時間お邪魔できませんね。その辺りはどうですか?」
「確かに。だが貴女の腕でしたら、何度か通ってもらえればどうとでもなるのでは?」
「……それは買いかぶりです。といいますか、どこかで私の絵をご覧になったことがあるのですか?」
「ああ、王都でも噂だ。役者絵を、使いの者が手に入れて」
ああ、そういう事ですね。
数はまだ少ないものの、ディディエさんたちエトワール芸戯団の興行で売ってもらった役者絵。念のため絵に重なるように印判を押したそれらが、動き出したという報告はまだありません。そもそも役者絵を見て涙を流すことはかなり少ないだろうという判断のもと、売り出したものでした。
光栄なことに、かなりの評価をいただきました。
「まだまだ修行中です。それに、ご依頼は嬉しいのですが、やっぱりアルベリックさんに許可を貰わないと、お返事はできません。それでいいですか?」
「ああ、もちろんだ」
先日の柳さんのように無理強いをしないルネルさんに、私は好感を持ちます。絵にかいたような紳士なのです。
そのルネルさんは、結衣さんの方にも気遣いを忘れません。ああ、サミュエルさんに爪の垢を飲ませたいのです。
「依頼が成立したあかつきには、ぜひ貴女も同席していただきたい」
『え、私も?』
「ええ。実は私の屋敷には、この街を作った落ち人にまつわる物がいくつか収められているのですよ。きっと貴女を慰める。ただそこで少しでも穏やかに過ごせばいい。それに私には、貴女に求めるものは何もないのだから」
その言葉が、結衣さんの心を初めて押したのかもしれません。私は初めて耳にする結衣さんの声に、ほんの少しだけ安堵したのでした。
「はい」
たった一言だけど、日本語ではない言葉でした。まずは、彼女にとっての大切な第一歩なのです。
宝飾店で注文していた品を受け取る頃には、既にルネルさんは去った後でした。
ですから帰ろうとしたところで、店のおばさんから渡された箱に、私と結衣さんは顔を見合わせて驚きました。
「ルネル様から、そちらの娘さんにって。きっと懐かしいものだろうからとおっしゃっていたよ」
『私?!』
箱を開けるとそこに収められていたのは、先ほど二人で眺めた懐中時計でした。
「わあ、凄いです。これってもの凄く高価ですよね?」
『え、そうなの? じゃあもらえないわ!』
「お代はもうルネル様に貰っちまったよ。あんたが要らないって言うと、私が困るよ」
「そうですねぇ……あ、そうだ。次に会ったときにどうするか決めたらいいですよ。肖像画のこともありますから、きっと何かしら連絡してくると思いますし」
私とおばさんに押されるようにして、結衣さんは懐中時計を受け取ったのでした。
それから、私は結衣さんを連れてローウィンの街の中央にある広場にやって来ました。ここは訪れるお客さんたちのために、綺麗な花々が咲き乱れていて素敵な場所なのです。
結衣さんを促して、ベンチに座ります。
「素敵な紳士でしたね、ルネルさんて方」
『……そうね。初対面なのに、あんな風に労わってもらったの、初めてだったかもしれないわ』
遠くを見る結衣さんの脳裏には、これまでの苦労が思い出されているのでしょう。
「結衣さん、私に聞かせてもらえますか、落ちてから結衣さんがこの世界で経験したことを」
過ぎたことを知ってももう何もできません。ですが、それを知っているからこそ差し出せる手もあるのです。そんな私の気持ちが通じたのでしょうか、それともルネルさんとのやり取りが、彼女を溶かし始めたのかも。結衣さんは、話し始めました。
『私が落ちたのは、農家の納屋の中だったって言ったわね。……最初は混乱したわ。何の冗談か、それとも誘拐されたのか。でも混乱しつつもすぐに悟ったわ、ここは普通じゃないって』
結衣さんの話はこうでした。
最初に保護されたその農家のおかみさんは、とても優しく受け入れてくれたそうです。身の回りの世話を焼き、食事を与えてくれ、慣れるまでいていいよと言ってくれたのだそうです。ですが、それもつかの間。当然ながら結衣さんの存在は警備隊に連絡され、取り調べを受けることに。
それは私も同様です。まずはリュファスさんから、ねちねちと細かく聞かれましたからね。でもきっと農家のおばさんは、結衣さんの事を思って連絡したのでしょう。落ち人には政府の保護が約束されています。
ですが、結衣さんの言い分は少し違いました。
『それは不愉快な思いをしたわ。……一緒に落ちて来た私物を奪われたの。中にはとても大切なものがあったのに……』
「え、と。調べられただけでなく、奪われたのですか?」
『そうよ。いくつかは戻ってきたけれど、大事なものが戻らなかった。携帯電話と、手帳……手帳の中には写真があったの。携帯はいずれ電池がなくなるから諦めもつくわ。でも写真は……』
苦しげに俯く結衣さん。
まさか辺境警備隊内でそのような事が起こるとは思っていなかったので、私は驚きを隠せません。ノエリアの街の兵隊さんたちは、みんな正直で真面目、気が優しい方ばかりでしたし。
しかしですね、ふと思い出したのです。最初に結衣さんが落ちた場所を聞いたときの違和感を。
「結衣さんが落ちた街って……」
『エーデという所』
「ああ、そうだった……エーデでした!」
それがどうしたのかと私を凝視する結衣さん。
エーデという街は、ここローウィンで私を攫った茶髪オール……ええと名前はそう、マナドゥ中佐! 彼の出身地でした。しかも彼の一族が元々治めていた領地。だからソランさんを脅して下っぱに仕立て上げることが出来たのです。当然、警備隊に所属していたソランさんを意のままに移動できるのです、その警備隊が問題を抱えていてもおかしくはありません。
私は結衣さんの巡り会わせの悪さを、心の底から同情します。
『それだけじゃないわ。農家にお世話になってしばらくして、そこの息子に……』
突然いやらしい目つきで見られるようになったと思ったら、なんと身体を触られることもあったそうです。それを農家のおばさんにも見られてしまい、辛くなってその家を飛び出したのだそうです。
それが、この世界に落ちて来て、たった一週間での出来事。
「何も分からないままだったでしょう? まさか街から出てはいませんよね?」
この世界必須の知識もあったとは思えません。街から独りで出てしまったら、それこそ魔獣の餌食でジ・エンドです。
『すぐに警備隊に捕まったわ。すごく態度の悪い警備兵だったの、泣いて嫌がる私を無理やり宿舎に連れ帰って、事もあろうに牢屋に入れたのよ、信じられる? それから農家へは帰れないから、どうしようかと思ったの。そうしたら何日かして王都から迎えがきて……有無を言わさず連れて行かれたわ。それが王立技術研究所という施設よ』
「ああ、セヴランさんの……」
『セヴラン?』
「あ、ええと。あのですね、アルベリックさんの弟さんがお勤めなんです、ちょっと愛想の悪いイケメンです」
『……もしかしてあの人かしら』
ああ、結衣さんの顔がとても嫌そうに歪みます。何かしたんですか、セヴランさん。
「まあ、それはいいです。というか忘れてください。じゃあ、ずっと研究所にいたのですか?」
『ええ。毎日いろいろな事を聞かれたわ。私が最初に研究者だって名乗ってしまったのがいけなかったの……ずっと軟禁されていたのも同然よ』
「では、何か技術供与をしたんですか?」
『できないわよ! 王都に辿り着くまでに見た景色、使われる道具、交通手段を見ればそれがどんなに恐ろしい事かくらい、分からないわけがないもの』
「……そうですね」
うん、でもそれで軟禁。
あれ?
「王都では誰が、結衣さんのお世話をしていたのですか?」
『研究所の人だと思うけれど。たまに手際の良い女性が何人か……』
「王様には会いましたか?」
『いいえ! そもそも、あの嫌味な官吏とか貴族とか、そんな人と会うのだって今回ローウィンに来るまで一度もなかったわ。出ようとは思わなかったけど、外出だってほとんどしてないし』
それはもしかして……
私の疑問が形になるその時、気だるそうな声が割って入ってきたのです。
「あんたは守られてたんだよ、落ち人のお嬢さん」
振り向けば、そこに立っていたのは足に包帯を巻き、片手に杖を持ったソランさんでした。
痛々しい姿ではありますが、昨日会った時より元気そうです。まあ、私服は逆に元気がなさそうによれていますが。
「あんたが危惧することくらい、俺たちだって当然認識している。だからあんたは保護され、その悲劇に酔った勢いで、とんでもない馬鹿に騙されないよう、見張られてたんじゃないか?」
『悲劇に酔ったって……』
ソランさんは分かった風にそう言い切り、結衣さんを見下ろしています。
一方結衣さんは、まさか突然現れた見知らぬオッサンにとんでもない侮辱を受け、怒りに肩を震わせています。
なんて事言い出すんですか、ソランさん。
「その通りだから言い返せないんだろう?」
『違うわ! なんであなたにそんな事言われなくちゃいけないの、失礼だわ』
「酔ってるんじゃないなら、なぜ紛失物のことを言わなかったんだ、警備隊に」
『盗った彼らに言って戻ってくるわけないじゃない! 誰も信用なんてできないわ!』
「俺ならちゃんと聞いた」
『え? なにを言っているのよ』
ソランさんの言葉に、私はピンときて「あ!」と思わず叫んでしまいました。
「覚えてないのも無理ないだろうがさ、逃げ出したあんたを最初に保護した警備兵ってのが、俺」
その言葉に、結衣さんが驚きのあまり立ち上がり、ソランさんの顔を凝視しました。
いやあ、縁は異なもの味なものとは言いますが……いえ、これは男女の関係とは違いますけれど、偶然ってあるものなんですね。なんてほっこりしていたら……
パンという乾いた音。
ソランさんの少しこけた頬に、結衣さんの綺麗な手がクリティカルヒットしていました。
『最低! 顔も見たくないわ!』
もしかして、結衣さんの人間不信の原点て……まさかあなただったんですか、下っぱさん!
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