75 / 75
第七十三話 会話にすらならない
しおりを挟む
兵士たちの数はざっと十名ほどだ。各々が剣や槍で武装している。彼らが皇帝の命令を受けて、僕たちを包囲する。
いったいなんだってんだ。
僕はこの皇帝ルキウスに会いに来た。彼と国と国とのどのように付き合うかを話し合いに来た。
それなのに彼ルキウスは僕を見るなり、兵士を差し向けてきた。
まったくもって理解不能だ。
ウィリアムが抗議のため、一歩前進する。
「モンフェラート侯、これはどういうことですか」
兵士を率いる長髪の男にウィリアムは叫ぶように言う。たしか皇帝との面会をとりもった貴族の名前がモンフェラートだった。
「これは陛下のご意思である。大人しく降伏しろ」
モンフェラートは長剣を抜き、その切っ先をウィリアムに向ける。
ウィリアムはそれを見て、後退りする。
サーシャがそんなウィリアムの腕に抱きつく。
聞く耳持たないということか。
「これが海を越えてやって来た者への貴国のやり方なのか」
僕はルキウスにそう告げる。
「アーサー貴様は女たちを無理矢理従わせているそうではないか。暴虐の限りをつくし、欲望のまま女たちを汚していると聞く。余はその様な悪魔を討つ正義を遂行するのだ」
まるでルキウスは舞台俳優のように声高に言う。
その目は恍惚としていた。
自分に酔っている。そんな印象だ。
こいつとは話し合いなど出来ない。
黒髪の背の高い女がルキウスの横に立ち、何やら耳打ちする。
それを聞き、ルキウスは大きく頷く。
「お前たち、余がその悪魔から解放してやろう。さあこちらに来るがいい」
ルキウスは僕の周囲にいるマーリンやアヤメ、アルたちにそう語りかける。
「貴方は馬鹿なのですか。これが異国からきた者へのもてなしなのですか。これでは平和的な話し合いなど出来ないではないですか」
マーリンが正論を言う。もちろんアルガルド語なので、その言葉は通じている。
マーリンの言葉を聞き、ルキウスは顔を真っ赤にして、怒りだす。
「モンフェラート、こやつらを殺せ!!」
皇帝ルキウスは右手を振り下ろす。
それを合図に兵士たちは襲いかかってくる。
「あっちいってよ!!」
クロネが風魔法で兵士たちを吹き飛ばす。
バタバタと彼らは倒れる。
「やはり奴らは悪魔の使徒なのだ。であえ、であえ!!」
この光景を見て、ルキウスは周囲に向かって叫ぶ。
控えていた兵士たちが数十人単位で集結する。
僕たちは瞬時に囲まれた。
アヤメやアル、クロネの力ならばここにいる兵士たちを全員倒すことができるだろう。
しかしそれは虐殺だ。
ルキウスの言動はどうあれ、ラーマ帝国の人間を必要以上に殺すのは得策ではない。
ここはエクスカリバーの能力を使い、戦艦ウロボロスに撤退しよう。
「みんな集まって。ここは一度撤退しよう」
僕の言葉のあと、すぐさま全員が集結する。
転移するには皆の身体がどこかでつながっている必要がある。クロネが背に抱きつき、右腕にマーリンがしがみつき、左腕にアルが抱きつく。さらにマーリンの手をアヤメが握る。背中のクロネにリオが抱きつく。
サーシャと手をつないだウィリアムがアルに抱きつく。
僕たちを囲む兵士たちが襲いかかる。
弓を持つものは矢を撃つ。
剣や槍を持つものは突撃してくる。
僕はエクスカリバーの転移能力を発動させる。
僕たちは光につつまれる。
目を開けていられないほどの眩しさだ。
この光のすぐ後、僕たちは戦艦ウロボロスに瞬間移動しているだろう。
「逃がすかっ!!」
弓をつがえたモンフェラートが矢を放つ。
どうやら彼は弓の名手のようだ。
矢は真っ直ぐに僕の顔めがけて飛来する。
「アーサー様!!」
サーシャが前に出て、その矢を剣でなぎ払う。
サーシャは僕たちから離れてしまった。もちろんウィリアムもだ。
僕たちを包む光は戦艦ウロボロスへと移動させた。
サーシャとウィリアムをあの帝都バルバロッサに置いてだ。
一瞬のことで身動きできなかった。
これは僕の落ち度だ。
みすみすサーシャたちをあの中に置いてけぼりにしてしまった。
サーシャたちを救出するために帝都に戻るべきか。
いや、それは駄目だ。
アヤメたちは強いがあまりにも多勢に無勢だ。
多くの犠牲をラーマ帝国に強いることはできるが、無駄死にする可能性が高い。
やはりここはアヴァロン王国に一度撤退するべきだろう。
皇帝ルキウスが兵を率いて、アヴァロン王国に攻め入る可能性も十分考えられる。
僕の考えを言うとアヤメたちは賛成してくれた。
「我が君、他の円卓の騎士たちに召集をかけましょう。これは国家の一大事です」
アルが僕に進言した。
彼女の意見はもっともだ。
僕はベアトリクスに命じて戦艦ウロボロスを王都キャメロットに向けて出発させた。
事態は風雲急を告げていた。
いったいなんだってんだ。
僕はこの皇帝ルキウスに会いに来た。彼と国と国とのどのように付き合うかを話し合いに来た。
それなのに彼ルキウスは僕を見るなり、兵士を差し向けてきた。
まったくもって理解不能だ。
ウィリアムが抗議のため、一歩前進する。
「モンフェラート侯、これはどういうことですか」
兵士を率いる長髪の男にウィリアムは叫ぶように言う。たしか皇帝との面会をとりもった貴族の名前がモンフェラートだった。
「これは陛下のご意思である。大人しく降伏しろ」
モンフェラートは長剣を抜き、その切っ先をウィリアムに向ける。
ウィリアムはそれを見て、後退りする。
サーシャがそんなウィリアムの腕に抱きつく。
聞く耳持たないということか。
「これが海を越えてやって来た者への貴国のやり方なのか」
僕はルキウスにそう告げる。
「アーサー貴様は女たちを無理矢理従わせているそうではないか。暴虐の限りをつくし、欲望のまま女たちを汚していると聞く。余はその様な悪魔を討つ正義を遂行するのだ」
まるでルキウスは舞台俳優のように声高に言う。
その目は恍惚としていた。
自分に酔っている。そんな印象だ。
こいつとは話し合いなど出来ない。
黒髪の背の高い女がルキウスの横に立ち、何やら耳打ちする。
それを聞き、ルキウスは大きく頷く。
「お前たち、余がその悪魔から解放してやろう。さあこちらに来るがいい」
ルキウスは僕の周囲にいるマーリンやアヤメ、アルたちにそう語りかける。
「貴方は馬鹿なのですか。これが異国からきた者へのもてなしなのですか。これでは平和的な話し合いなど出来ないではないですか」
マーリンが正論を言う。もちろんアルガルド語なので、その言葉は通じている。
マーリンの言葉を聞き、ルキウスは顔を真っ赤にして、怒りだす。
「モンフェラート、こやつらを殺せ!!」
皇帝ルキウスは右手を振り下ろす。
それを合図に兵士たちは襲いかかってくる。
「あっちいってよ!!」
クロネが風魔法で兵士たちを吹き飛ばす。
バタバタと彼らは倒れる。
「やはり奴らは悪魔の使徒なのだ。であえ、であえ!!」
この光景を見て、ルキウスは周囲に向かって叫ぶ。
控えていた兵士たちが数十人単位で集結する。
僕たちは瞬時に囲まれた。
アヤメやアル、クロネの力ならばここにいる兵士たちを全員倒すことができるだろう。
しかしそれは虐殺だ。
ルキウスの言動はどうあれ、ラーマ帝国の人間を必要以上に殺すのは得策ではない。
ここはエクスカリバーの能力を使い、戦艦ウロボロスに撤退しよう。
「みんな集まって。ここは一度撤退しよう」
僕の言葉のあと、すぐさま全員が集結する。
転移するには皆の身体がどこかでつながっている必要がある。クロネが背に抱きつき、右腕にマーリンがしがみつき、左腕にアルが抱きつく。さらにマーリンの手をアヤメが握る。背中のクロネにリオが抱きつく。
サーシャと手をつないだウィリアムがアルに抱きつく。
僕たちを囲む兵士たちが襲いかかる。
弓を持つものは矢を撃つ。
剣や槍を持つものは突撃してくる。
僕はエクスカリバーの転移能力を発動させる。
僕たちは光につつまれる。
目を開けていられないほどの眩しさだ。
この光のすぐ後、僕たちは戦艦ウロボロスに瞬間移動しているだろう。
「逃がすかっ!!」
弓をつがえたモンフェラートが矢を放つ。
どうやら彼は弓の名手のようだ。
矢は真っ直ぐに僕の顔めがけて飛来する。
「アーサー様!!」
サーシャが前に出て、その矢を剣でなぎ払う。
サーシャは僕たちから離れてしまった。もちろんウィリアムもだ。
僕たちを包む光は戦艦ウロボロスへと移動させた。
サーシャとウィリアムをあの帝都バルバロッサに置いてだ。
一瞬のことで身動きできなかった。
これは僕の落ち度だ。
みすみすサーシャたちをあの中に置いてけぼりにしてしまった。
サーシャたちを救出するために帝都に戻るべきか。
いや、それは駄目だ。
アヤメたちは強いがあまりにも多勢に無勢だ。
多くの犠牲をラーマ帝国に強いることはできるが、無駄死にする可能性が高い。
やはりここはアヴァロン王国に一度撤退するべきだろう。
皇帝ルキウスが兵を率いて、アヴァロン王国に攻め入る可能性も十分考えられる。
僕の考えを言うとアヤメたちは賛成してくれた。
「我が君、他の円卓の騎士たちに召集をかけましょう。これは国家の一大事です」
アルが僕に進言した。
彼女の意見はもっともだ。
僕はベアトリクスに命じて戦艦ウロボロスを王都キャメロットに向けて出発させた。
事態は風雲急を告げていた。
29
お気に入りに追加
612
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(5件)
あなたにおすすめの小説
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
貞操観念逆転世界におけるニートの日常
猫丸
恋愛
男女比1:100。
女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。
夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。
ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。
しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく……
『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』
『ないでしょw』
『ないと思うけど……え、マジ?』
これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。
貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う
月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話
カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます!
お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あらすじ
学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。
ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。
そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。
混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?
これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。
※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。
割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて!
♡つきの話は性描写ありです!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です!
どんどん送ってください!
逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。
受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか)
作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最近交信頻度多くて嬉しいです。これからも楽しみにしてます!
ファンタジーカップに参加しています。応援よろしくお願いします!!
更新待ってました〜
ありがとうございます。励みになります
誤字報告
☓涙とよだれを足らして→○涙とよだれを垂らして