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第五十八話 反乱軍との戦い
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ウインザー城で僕はサーシャからクロムエルが反旗を翻したとの報告を受けた。
マーリンがクロムエルがアヴァロン王国全土に発した檄文を読み上げる。
この国は聖女たちの楽園である。我が国は建国以来の危機にある。
悪魔の子アーサーがギネビア女王のそばで圧政を強いているのである。
かつて男子たちは聖女らを虐げ、搾取してきた。まさに悪魔の所業である。
悪魔は聖女らを自らの欲望を叶えさせるための道具としか考えていなかった。
人の世は聖女だけがおさめるのが、理想なのである。
この世に悪魔はいらない。
善良なるこの国の民よ、悪魔の子アーサーを討ち取るために立ち上がれ。
我が女王を悪魔の子のもとから救いだすのだ。
檄文を読み上げるとマーリンはそれをぐちゃぐちゃにして、床に捨てた。
「呆れた原理主義者ですわ」
マーリンはきれいな顔を赤くしている。
「まったく許せません。我が君をこれ程侮辱するとわ、このクロムエルなる人物万死に値します」
アルは今にも飛び出しそうだ。
「主様をこれ程侮辱されてはじっとはしていられません。付き合いますぞパーシバル殿」
一緒にロムも駆け出しそうだ。
「お二人とも落ち着いてください」
と執事のアンナが止めてくれた。
「話してもわかりあえない人はどこにもいるにゃ」
クロネは両手を頭の裏にあて、そう言った。
クロネの言うことには一理ある。クレーマーとかがそうだよな。前の世界で苦情の電話を受けたことがあるけど、ひたすら怒鳴られるだけだった。あいつらにとってこちらに落ち度がなくても関係ないのだ。
自分こそが一番正しいと思っている。
「やっぱり戦わないといけないのか」
僕はマーリンに尋ねた。
戦いは好きではない。
武術大会のようにお互いの力量を試し、称え合う戦いならばいいが、思想をぶつけ合い殺し合う戦いはできればさけたかった。
「あえて言います。ここで朝倉君の理想と共感できないものを排除するのです。どうせ彼女ら原理主義者は話し合いにすら応じないでしょう。ならばここで戦い、一掃するのです」
マーリンの声は冷たい。
その言葉を聞き、アルもロムも頷いた。
椅子に座る僕の横に立ち、クロネは手を握ってくれた。
クロネに手を握られると落ち着く。
さすがは第一の円卓の騎士にして、初めての女の子だ。
僕はクロネの手を握りかえす。
「マーリン、彼女らがこの王都に攻めあがってくるのにどれ程の日数が必要だと思う?」
僕はマーリンに訊いた。
「クロムエル配下の鋼鉄騎士団はおおよそ三千騎といわれています。装備糧食を整え、北進し、この地に着くのははやくて二週間はかかると思います」
マーリンはそう答えた。
マーリンの言葉を聞き、僕は思案する。
この王都周辺を守るのはロムの聖獣騎士団とアヤメの金剛騎士団のみだ。全員で二百人と少し。まともな戦いにならないだろう。
リリィやユリコ、ヒメノ姉さんたち軍団長に集合をかけないと。
「サーシャすまない。さっそくだけどヒメノ姉さんのとこに行ってくれないか」
僕がサーシャに頼むと彼女はかしこまりましたと微笑み、大広間に出ていった。
リリィとシーア、ユリコには聖剣エクスカリバーの力を使い、僕から連絡を取ろう。
その前にまずは王宮のギネビア女王のところにいかないと。
僕はアンナに手伝ってもらい、正装に着替える。マーリン、アル、クロネをともない王宮キャメロットに出向いた。
ロムにはウインザー城に残り、これから集結するであろう軍団長たちの出迎え準備をさせた。
王宮キャメロットに到着するとアヤメ・ランスロットが出迎えてくれた。
僕たちはギネビア女王が待つ広間に案内される。
そこには円卓が用意されていた。
僕たちは椅子に腰掛け、円卓を囲む。
侍女たちが飲み物を用意してくれた。
「ついに原理主義者どもが暴発しましたな」
形のいい顎に手をあて、アヤメが言った。
あいつらは頭が固いからなとつけくわえた。
「これでは妾が騙されて、操られているみたいではないですか」
ギネビアが僕の手を握り、頬をふくらませている。
僕がアヴァロン王国全土にばらまかれた檄文の一つを黙読したからだ。
「これでは妾は自意識のない操り人形ではございませんか」
ギネビアはかなり怒っている。
感覚を共有しているので、その熱量が直にわかる。
クロムエルたちの大義名分はいわゆる君側の奸を討つというものだ。ギネビア女王は僕に騙されているという設定なのだ。悪いのは僕で、女王は悪くない。だからクロムエルたちは女王を救う正義の戦いをするのだと表向きはいっているのだ。この際、本当のギネビア女王の気持ちは関係ない。
「ところでモルガン教皇はどうしているんだ?」
モルガン教皇の身柄も心配だ。強硬派のクロムエルたちに乱暴なことをされていなければいいのだが……。
「わたくしがつかんだ情報によると聖ニニアン島の真珠騎士団にその身をほごされているとか」
アヤメがそう言った。
どうやら無事のようだ。
あの武術大会を心から楽しんでいたモルガン教皇は僕たちの側についたと思われても仕方がない。暴発した原理主義者たちに何をされるかはわからない。
それとクロムエルが実際に指揮できるのは鋼鉄騎士団だけのようだ。
聖杯教会の他の武装勢力である真珠騎士団と聖歌騎士団はうごかせないようだ。
アヤメの考えでは、この反乱はクロムエルの独断であろうとのことだ。その証拠に他の騎士団が同調していないからだ。
ということは僕たちが実際に相手をするのはクロムエルとその配下の鋼鉄騎士団だけですみそうだ。
「アーサー、わたくしと金剛騎士団はすぐにうごける。今すぐウインザー城に入ろう」
アヤメが心強いことを言ってくれた。
この後、まずはウインザー城に軍勢を集結させ、北上してくるクロムエルたちを迎え撃つという作戦の基本方針が決定した。
三日後にはヒメノ姉さんが幻影騎士団を率い、ウインザー城に入った。さらに十日後にリリィ、シーア、ユリコが各々と騎士団を率い、到着した。
そしてその翌日、ウインザー城の南数キロメートルのカムラン平原にクロムエルが陣をはっているという情報がサーシャからもたらされた。
マーリンがクロムエルがアヴァロン王国全土に発した檄文を読み上げる。
この国は聖女たちの楽園である。我が国は建国以来の危機にある。
悪魔の子アーサーがギネビア女王のそばで圧政を強いているのである。
かつて男子たちは聖女らを虐げ、搾取してきた。まさに悪魔の所業である。
悪魔は聖女らを自らの欲望を叶えさせるための道具としか考えていなかった。
人の世は聖女だけがおさめるのが、理想なのである。
この世に悪魔はいらない。
善良なるこの国の民よ、悪魔の子アーサーを討ち取るために立ち上がれ。
我が女王を悪魔の子のもとから救いだすのだ。
檄文を読み上げるとマーリンはそれをぐちゃぐちゃにして、床に捨てた。
「呆れた原理主義者ですわ」
マーリンはきれいな顔を赤くしている。
「まったく許せません。我が君をこれ程侮辱するとわ、このクロムエルなる人物万死に値します」
アルは今にも飛び出しそうだ。
「主様をこれ程侮辱されてはじっとはしていられません。付き合いますぞパーシバル殿」
一緒にロムも駆け出しそうだ。
「お二人とも落ち着いてください」
と執事のアンナが止めてくれた。
「話してもわかりあえない人はどこにもいるにゃ」
クロネは両手を頭の裏にあて、そう言った。
クロネの言うことには一理ある。クレーマーとかがそうだよな。前の世界で苦情の電話を受けたことがあるけど、ひたすら怒鳴られるだけだった。あいつらにとってこちらに落ち度がなくても関係ないのだ。
自分こそが一番正しいと思っている。
「やっぱり戦わないといけないのか」
僕はマーリンに尋ねた。
戦いは好きではない。
武術大会のようにお互いの力量を試し、称え合う戦いならばいいが、思想をぶつけ合い殺し合う戦いはできればさけたかった。
「あえて言います。ここで朝倉君の理想と共感できないものを排除するのです。どうせ彼女ら原理主義者は話し合いにすら応じないでしょう。ならばここで戦い、一掃するのです」
マーリンの声は冷たい。
その言葉を聞き、アルもロムも頷いた。
椅子に座る僕の横に立ち、クロネは手を握ってくれた。
クロネに手を握られると落ち着く。
さすがは第一の円卓の騎士にして、初めての女の子だ。
僕はクロネの手を握りかえす。
「マーリン、彼女らがこの王都に攻めあがってくるのにどれ程の日数が必要だと思う?」
僕はマーリンに訊いた。
「クロムエル配下の鋼鉄騎士団はおおよそ三千騎といわれています。装備糧食を整え、北進し、この地に着くのははやくて二週間はかかると思います」
マーリンはそう答えた。
マーリンの言葉を聞き、僕は思案する。
この王都周辺を守るのはロムの聖獣騎士団とアヤメの金剛騎士団のみだ。全員で二百人と少し。まともな戦いにならないだろう。
リリィやユリコ、ヒメノ姉さんたち軍団長に集合をかけないと。
「サーシャすまない。さっそくだけどヒメノ姉さんのとこに行ってくれないか」
僕がサーシャに頼むと彼女はかしこまりましたと微笑み、大広間に出ていった。
リリィとシーア、ユリコには聖剣エクスカリバーの力を使い、僕から連絡を取ろう。
その前にまずは王宮のギネビア女王のところにいかないと。
僕はアンナに手伝ってもらい、正装に着替える。マーリン、アル、クロネをともない王宮キャメロットに出向いた。
ロムにはウインザー城に残り、これから集結するであろう軍団長たちの出迎え準備をさせた。
王宮キャメロットに到着するとアヤメ・ランスロットが出迎えてくれた。
僕たちはギネビア女王が待つ広間に案内される。
そこには円卓が用意されていた。
僕たちは椅子に腰掛け、円卓を囲む。
侍女たちが飲み物を用意してくれた。
「ついに原理主義者どもが暴発しましたな」
形のいい顎に手をあて、アヤメが言った。
あいつらは頭が固いからなとつけくわえた。
「これでは妾が騙されて、操られているみたいではないですか」
ギネビアが僕の手を握り、頬をふくらませている。
僕がアヴァロン王国全土にばらまかれた檄文の一つを黙読したからだ。
「これでは妾は自意識のない操り人形ではございませんか」
ギネビアはかなり怒っている。
感覚を共有しているので、その熱量が直にわかる。
クロムエルたちの大義名分はいわゆる君側の奸を討つというものだ。ギネビア女王は僕に騙されているという設定なのだ。悪いのは僕で、女王は悪くない。だからクロムエルたちは女王を救う正義の戦いをするのだと表向きはいっているのだ。この際、本当のギネビア女王の気持ちは関係ない。
「ところでモルガン教皇はどうしているんだ?」
モルガン教皇の身柄も心配だ。強硬派のクロムエルたちに乱暴なことをされていなければいいのだが……。
「わたくしがつかんだ情報によると聖ニニアン島の真珠騎士団にその身をほごされているとか」
アヤメがそう言った。
どうやら無事のようだ。
あの武術大会を心から楽しんでいたモルガン教皇は僕たちの側についたと思われても仕方がない。暴発した原理主義者たちに何をされるかはわからない。
それとクロムエルが実際に指揮できるのは鋼鉄騎士団だけのようだ。
聖杯教会の他の武装勢力である真珠騎士団と聖歌騎士団はうごかせないようだ。
アヤメの考えでは、この反乱はクロムエルの独断であろうとのことだ。その証拠に他の騎士団が同調していないからだ。
ということは僕たちが実際に相手をするのはクロムエルとその配下の鋼鉄騎士団だけですみそうだ。
「アーサー、わたくしと金剛騎士団はすぐにうごける。今すぐウインザー城に入ろう」
アヤメが心強いことを言ってくれた。
この後、まずはウインザー城に軍勢を集結させ、北上してくるクロムエルたちを迎え撃つという作戦の基本方針が決定した。
三日後にはヒメノ姉さんが幻影騎士団を率い、ウインザー城に入った。さらに十日後にリリィ、シーア、ユリコが各々と騎士団を率い、到着した。
そしてその翌日、ウインザー城の南数キロメートルのカムラン平原にクロムエルが陣をはっているという情報がサーシャからもたらされた。
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