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第五十四話 教皇との密約

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アヴァロン王国ではじめて行われた武術大会は、アヤメ・ランスロットの優勝で幕を閉じた。
優勝者であるアヤメに軍旗が授けられた。
アヴァロン王家の紋章である方舟がデザインされたものだ。それは約五百年前にはじめてこの地に降りたった百人の女性たちが乗っていた宇宙船がデフォルメされたものだ。
さらにアヤメには王家の秘宝でおるロンゴミニアドの槍が与えられることになった。
だが、アヤメはその槍を受けとることを断った。

「なぜですか?」
僕の手を握り、アヤメの前に立つギネビア女王は静かに尋ねた。

「わたくしにはすでに魔剣アロンダイトを所持しています。これ以上伝説の武器を持つのは正直荷が重いのです。アルタイル・パーシバルならばきっとその神槍ロンゴミニアドを使いこなすでしょう」
アヤメはそう言い、アルタイルの手を取る。
「さあ、貴君ならばいずれわたくしをも凌駕する騎士になるでしょう。この神槍ロンゴミニアドの持ち主にふさわしいのはあなたです」
さらにアヤメは言った。

「そんな私は負けた身です。このようなものを受けとる資格はありません……」
アルタイルは恐縮している。

「アルタイル、君はよく戦った。君にはこれを受けとる資格は十分にあると思うよ」
僕が言うと観客席から割れんばかりの拍手がおこった。
背後ではうんうんと頷きながら教皇モルガンが泣いていた。
この武術大会を楽しんでもらえたならなによりだ。

「我が君がそう言われるならば……」
アルタイルはうやうやしくギネビア女王から神槍ロンゴミニアドを受け取った。
これよりアルタイルは槍のパーシバルという異名を持つことになる。


武術大会のあと、円卓の騎士たちの戦いをねぎらうために、盛大な宴が行われた。
王宮の大広間のテーブルには豪華な料理が並べられ、ワインやエール酒もふるまわれた。
文武の高官や高位の貴族、モルガン教皇とその側近たちも招待された。
楽団が優雅な音楽をかきならしている。
クロネは二日酔いになることなど気にせずにガバガバとワインを飲んでいる。
アルコールが主食のベアトリクスはぷはーっと気持ちよさそうにエール酒をあおっていた。

僕はアルタイルをダンスに誘った。
皆が楽しそうなので、踊りたい気分だ。
「踊りなんて私には……」
アルタイルが断ろとしたが、僕は無理に彼女の手をひく。
「僕もダンスなんてできないよ。楽しかったらそれで良いじゃないか」
なんてったって僕は学生時代の体育の成績は一だからね。特技スキルで補正しているけど元の僕は運動音痴なんだ。
でも運動とかスポーツって楽しむためにするものだろう。

僕はアルタイルの手を握り、くるくると回り社交ダンスまがいを踊る。
アルタイルは身体能力が高いので、適当に音楽にあわせるだけで様になった。
僕はそれについていくのに精一杯だったけど、楽しかった。
「我が君、とても楽しいですね」
にこりとアルタイルは微笑む。
「そうだろう」
僕は答えた。

ちらりと横を見るとモードレッドとシーアが踊っていた。こちらはプロ並みだ。めちゃくちゃ絵になる。
まあ、僕たちは気にせずに楽しむだけだ。
「ロンゴミニアドを授けられたことよりも、我が君とこうしていられる方が私には最大の褒美です」
アルタイルは言った。
喜んでもらえてなによりだ。
この後、ギネビアに頼まれて、一曲踊った。さらにリリィとユリコとヒメノ姉さんとも踊った。
かなり疲れたので、僕はバルコニーで休むことにした。


バルコニーで夜風に当たっていると誰かが僕の横に立った。
その横顔はギネビア女王に似ている。ギネビアよりはふっくらしている。
モルガン教皇だ。
モルガン教皇はバルコニーの手すりにもたれかかる。彼女の巨乳が手すりにのっているので良い眺めだ。
僕はその横に立つ。
「今日はとても楽しかったぞよ。アーサー褒めてつかわす」
にこりとモルガン教皇は微笑む。
「ありがたき幸せ」
僕は下手な役者みたいなセリフを言う。
それを聞き、モルガン教皇はふふっと微笑む。
「少し酔った。夜風に当たり余の話しを聞け、アーサー」
モルガン教皇がそう言うので僕は「ははあっ」と時代劇みたいに返事した。

「実はのう、我らが秘宝聖杯の寿命はもって後百年もないのじゃ。女だけで人の世を繋ぐのはどんなに長く見積もっても百年が限界と賢者共がいっておった。さらに不具合も出始めている。双子や三つ子が多く生まれる。どんなに調整しても男子が生まれるのじゃ……」
手にもつワイングラスに口をつけ、モルガン教皇はくびりとあおる。
少し中身の残ったそのワイングラスを僕に差し出す。
僕はそれを受け取り、ワインを一息にのんだ。
酒が苦手な僕の喉は焼けるように傷んだ。
すぐに顔が赤くなる。

「いい飲みっぷりじゃのう」
モルガン教皇は楽しそうだ。
「余は賢者の一人ロジャー・ベーコンにきいた。このままでは多くの疾患を抱えた子供が多く生まれるようになる。それを食い止めるには異界の血を入れるとよいと。五百年の間にこのアヴァロンに住むものの血は近くなりすぎた。かつてウーサーのお陰でわずかに延命できたが、聖杯が限界を迎える日も近い」
そこでモルガン教皇はふーと息を吐く。
どことなく目が潤んでいる。
目を潤ませた美女は絵になる。
「このアヴァロン王国を存続させるには元の社会のように男子が必要なのじゃ。そのためにはアーサーそなたらの遺伝子が必要なのじゃ。遠い血を入れることが肝要なのじゃよ」
そっと僕の手にモルガン教皇は手を重ねる。
「我が配下にはそれに反対するものが多くいる。聖女ジャンヌ主義のものたちは男子を悪魔の子と呼び忌み嫌う。男子がいなければこの国自体の存続が危ういというのにだ」
僕の手に重ねられた手に熱がこもる。
「アーサー、余と約束してほしい。余はこの国が好きじゃ。この国を保つために力を貸してほしい」
その言葉を聞き、僕はモルガン教皇の手を握りかえす。
アヴァロン王国の女の子たちと仲良くなり、エッチなことをして子供をつくるのは僕の望むところだ。
「ええ、約束しますよ」
僕の返事にモルガン教皇は満面の笑みを浮かべた。
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