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第四十二話 女王に謁見する
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アヤメ・ランスロットの屋敷で一泊し、翌日の午前中に女王ギネビアに謁見することになった。
朝食のあと、僕は屋敷のお風呂で身を清めた。お風呂ではヒメノ姉さんが体をきれいに洗ってくれた。いつものようにエッチなこともしたかったが、これから王宮にいくのでそれは控えた。
僕は姉さんに軽くキスをする。
姉さんも体を石鹸で洗う。
「これが落ち着いたらたっぷり可愛がってもろおうかな」
ふふふっとヒメノ姉さんは微笑む。
僕は濡れた姉さんの髪をさわる。
「そうだね、リーズ城に戻ったらお願いしようかな」
僕は姉さんにそう約束した。
お風呂を出て、体をふき、髪を乾かす。
謁見用の正装に着替えて、王宮に向かう。
王宮にいくための馬車はアヤメ・ランスロットが用意してくれた。
王宮に入れるのは爵位のある姉さんだけだということで、クロネとアルタイルは留守番をすることになった。
王宮には馬車で小一時間ほどで到着できた。
その王宮は王都と同じ名のキャメロットという。
一国の王宮にふさわしい、絢爛豪華な王宮であった。さすがに中にはいるのは緊張した。
姉さんが手をつないでくれなかったら逃げだしていたかもしれない。なんていったってつい最近まで僕は社畜だったんだからね。
いや、そんな弱気ではいけない。
僕にはやらなければいけないことがあるんだから。僕のことを信じて仲間になってくれた人たちを裏切るわけにはいかない。
控えの間でそわそわしているとアヤメ・ランスロットがはいってきた。
「待たせたな。女王陛下がお会いになられる。ついてきてもらおう」
軽く会釈し、アヤメは言った。
僕たちはアヤメのあとに続き、王宮の廊下を歩く。映画でしか見たことのない王宮の風景が続く。やがて大きな扉が見えてきた。
扉の左右には衛兵が立っていた。
二人の衛兵はアヤメに敬礼し、扉をあける。
扉の向こうには赤い絨毯が引かれていて、その奥の一段高いところにある王座に一人の女性が腰かけている。
まだ姿がはっきりわからないが、彼女がこのアヴァロン王国の女王であるギネビアであろう。
僕はアヤメ・ランスロットの後に続いて室内に入る。大広間の左右にはおそらく貴族や高位の文官武官が控えていた。中には神官らしい人間も複数いる。
「ふん、悪魔の子が神聖なるこの王宮にはいりこむとは……」
神官の一人が僕を見て、そう言った。
眼帯の神官は右目だけで僕をにらんでいる。
こいつのことは覚えている。
星の塔で僕たちを襲ったアリアガンヌという女騎士だ。
「ひかえなさい、アリアガンヌ。女王陛下の御前であるぞ」
そういってマリアガンヌをたしなめるのは漆黒の神官服をきたおかっぱ頭の女性であった。細い目で僕を見ている。
あれは聖杯教会の鋼鉄騎士団団長のクロムエルよ。聖杯教会でもっとも危険な女ね。
さすがに女王の前で無茶はしないと思うけどね。
そう念話でヒメノ姉さんが言った。
あいつらといずれ剣を交えないといけないのか。憂うつな気分になるな。
大広間の中央でアヤメ・ランスロットは立ち止まる。深く頭を下げる。
ヒメノ姉さんが膝をつく。
僕も同じように膝をついた。
「ギネビア陛下、アーサー・クロード・ペンドラゴン卿をお連れいたしました」
アヤメ・ランスロットが女王にそう告げた。
「苦しゅうない。楽にせよ……」
鈴のなるような美声が聞こえる。
僕は下げていた頭をあげる。
どうにかギネビア女王の顔が視認できる距離にいる。
そこにいるのは、ほっそりとしたスタイルのよく整った顔立ちの女性であった。白みがかった長い銀髪をギネビア女王は手で撫でていた。
不思議なのはギネビア女王はずっと目蓋を閉じているということだった。
目が不自由なのだろうか。
「ランスロット近くに」
ギネビア女王はアヤメにそう命じる。
アヤメはつかつかと女王のもとに歩みより、彼女に手をさしのべる。
そのアヤメの手を握り、ギネビア女王は立ち上がる。
やはり、ギネビア女王は目が不自由なのだ。
ギネビア女王はアヤメと手をつなぎ、僕の前にくる。
そっと手をのばして僕の顔をその白い手でさわる。ベタベタと僕の顔の形を確かめるように手のひらで撫でる。
「男の人というのはこんなにごつごつしているのですね」
僕の頬を撫でながら、ギネビア女王は言った。
ねえ聞こえるかしら?
その声は僕の脳内に直接響いてくる。
これは間違いない。
念話だ。
ということはギネビア女王は念話のスキルをもっているということか。
ふふふっ。ちょっとちがうわね。わらわは目が見えない代わりに感覚共有の特技を持っているのよ。
特技というのは最初の百人がこのアヴァロンで生き残るために遺伝子に組み込んだものなのよ。
脳内でギネビア女王が語る。
うれしいわ、こうして男の人にふれあえるなんてね。
その脳内の声は少女のようにはしゃいでいた。
なんだか思っていたイメージと違うな。
女王というからもっと厳格な人だと思っていた。
女王の前に一人の女の子だからね。
ねえ、アーサー君、ききたいんだけどね?
ギネビア女王は脳内で僕に問いかける。
周囲のものたちはそれを黙って見ている。
わらわね、女王なんて本当はしたくないのよね。人の上にたつのなんて疲れるだけなのよね。アーサー君が代わってくれるならいつでも良いわよ。
脳内ではそう言っているが、目の前のギネビア女王はただ微笑むだけだ。
この女性もリリィと同じように人の上にたつという重責に耐えかねているということか。
誰もかれもがリーダーになりたいということではないのだ。
そうよ、女王なんてプライベートがなくて嫌なのよね。わらわはガーデニングをして暮らしていきたいのよね。
アーサー君、わらわをお庭係りにしてくれるならこの国あげちゃうわ。
微笑みのまま女王ギネビアは脳内にそう提案した。
これは想像していなかった展開だ。
念話というのは心と心の会話なので、嘘はつけない。女王ギネビアの本心といっていいだろう。
「御意……」
僕は短く答えた。
「アーサー・クロード・ペンドラゴンよ。そなたをギネビアの名において公爵ならびにアヴァロン王国宰相の位に任じる」
ギネビア女王は僕の右肩に手を置いて、大広間に響きわたる声でそう宣言した。
朝食のあと、僕は屋敷のお風呂で身を清めた。お風呂ではヒメノ姉さんが体をきれいに洗ってくれた。いつものようにエッチなこともしたかったが、これから王宮にいくのでそれは控えた。
僕は姉さんに軽くキスをする。
姉さんも体を石鹸で洗う。
「これが落ち着いたらたっぷり可愛がってもろおうかな」
ふふふっとヒメノ姉さんは微笑む。
僕は濡れた姉さんの髪をさわる。
「そうだね、リーズ城に戻ったらお願いしようかな」
僕は姉さんにそう約束した。
お風呂を出て、体をふき、髪を乾かす。
謁見用の正装に着替えて、王宮に向かう。
王宮にいくための馬車はアヤメ・ランスロットが用意してくれた。
王宮に入れるのは爵位のある姉さんだけだということで、クロネとアルタイルは留守番をすることになった。
王宮には馬車で小一時間ほどで到着できた。
その王宮は王都と同じ名のキャメロットという。
一国の王宮にふさわしい、絢爛豪華な王宮であった。さすがに中にはいるのは緊張した。
姉さんが手をつないでくれなかったら逃げだしていたかもしれない。なんていったってつい最近まで僕は社畜だったんだからね。
いや、そんな弱気ではいけない。
僕にはやらなければいけないことがあるんだから。僕のことを信じて仲間になってくれた人たちを裏切るわけにはいかない。
控えの間でそわそわしているとアヤメ・ランスロットがはいってきた。
「待たせたな。女王陛下がお会いになられる。ついてきてもらおう」
軽く会釈し、アヤメは言った。
僕たちはアヤメのあとに続き、王宮の廊下を歩く。映画でしか見たことのない王宮の風景が続く。やがて大きな扉が見えてきた。
扉の左右には衛兵が立っていた。
二人の衛兵はアヤメに敬礼し、扉をあける。
扉の向こうには赤い絨毯が引かれていて、その奥の一段高いところにある王座に一人の女性が腰かけている。
まだ姿がはっきりわからないが、彼女がこのアヴァロン王国の女王であるギネビアであろう。
僕はアヤメ・ランスロットの後に続いて室内に入る。大広間の左右にはおそらく貴族や高位の文官武官が控えていた。中には神官らしい人間も複数いる。
「ふん、悪魔の子が神聖なるこの王宮にはいりこむとは……」
神官の一人が僕を見て、そう言った。
眼帯の神官は右目だけで僕をにらんでいる。
こいつのことは覚えている。
星の塔で僕たちを襲ったアリアガンヌという女騎士だ。
「ひかえなさい、アリアガンヌ。女王陛下の御前であるぞ」
そういってマリアガンヌをたしなめるのは漆黒の神官服をきたおかっぱ頭の女性であった。細い目で僕を見ている。
あれは聖杯教会の鋼鉄騎士団団長のクロムエルよ。聖杯教会でもっとも危険な女ね。
さすがに女王の前で無茶はしないと思うけどね。
そう念話でヒメノ姉さんが言った。
あいつらといずれ剣を交えないといけないのか。憂うつな気分になるな。
大広間の中央でアヤメ・ランスロットは立ち止まる。深く頭を下げる。
ヒメノ姉さんが膝をつく。
僕も同じように膝をついた。
「ギネビア陛下、アーサー・クロード・ペンドラゴン卿をお連れいたしました」
アヤメ・ランスロットが女王にそう告げた。
「苦しゅうない。楽にせよ……」
鈴のなるような美声が聞こえる。
僕は下げていた頭をあげる。
どうにかギネビア女王の顔が視認できる距離にいる。
そこにいるのは、ほっそりとしたスタイルのよく整った顔立ちの女性であった。白みがかった長い銀髪をギネビア女王は手で撫でていた。
不思議なのはギネビア女王はずっと目蓋を閉じているということだった。
目が不自由なのだろうか。
「ランスロット近くに」
ギネビア女王はアヤメにそう命じる。
アヤメはつかつかと女王のもとに歩みより、彼女に手をさしのべる。
そのアヤメの手を握り、ギネビア女王は立ち上がる。
やはり、ギネビア女王は目が不自由なのだ。
ギネビア女王はアヤメと手をつなぎ、僕の前にくる。
そっと手をのばして僕の顔をその白い手でさわる。ベタベタと僕の顔の形を確かめるように手のひらで撫でる。
「男の人というのはこんなにごつごつしているのですね」
僕の頬を撫でながら、ギネビア女王は言った。
ねえ聞こえるかしら?
その声は僕の脳内に直接響いてくる。
これは間違いない。
念話だ。
ということはギネビア女王は念話のスキルをもっているということか。
ふふふっ。ちょっとちがうわね。わらわは目が見えない代わりに感覚共有の特技を持っているのよ。
特技というのは最初の百人がこのアヴァロンで生き残るために遺伝子に組み込んだものなのよ。
脳内でギネビア女王が語る。
うれしいわ、こうして男の人にふれあえるなんてね。
その脳内の声は少女のようにはしゃいでいた。
なんだか思っていたイメージと違うな。
女王というからもっと厳格な人だと思っていた。
女王の前に一人の女の子だからね。
ねえ、アーサー君、ききたいんだけどね?
ギネビア女王は脳内で僕に問いかける。
周囲のものたちはそれを黙って見ている。
わらわね、女王なんて本当はしたくないのよね。人の上にたつのなんて疲れるだけなのよね。アーサー君が代わってくれるならいつでも良いわよ。
脳内ではそう言っているが、目の前のギネビア女王はただ微笑むだけだ。
この女性もリリィと同じように人の上にたつという重責に耐えかねているということか。
誰もかれもがリーダーになりたいということではないのだ。
そうよ、女王なんてプライベートがなくて嫌なのよね。わらわはガーデニングをして暮らしていきたいのよね。
アーサー君、わらわをお庭係りにしてくれるならこの国あげちゃうわ。
微笑みのまま女王ギネビアは脳内にそう提案した。
これは想像していなかった展開だ。
念話というのは心と心の会話なので、嘘はつけない。女王ギネビアの本心といっていいだろう。
「御意……」
僕は短く答えた。
「アーサー・クロード・ペンドラゴンよ。そなたをギネビアの名において公爵ならびにアヴァロン王国宰相の位に任じる」
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