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第三十九話 呪われた子

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なぜ彼女には名前がないのか?
魔獣の子とはどういう意味なのだろうか?
濃い小麦色の肌をした大柄な美女を見て、僕の脳内に疑問がいくつか浮かぶ。

名無しの獣人の頭には猫耳が生えていて、大きくボリュームたっぷりのヒップには黒いしっぽが生えている。

これはクロネに次いでのケモ耳娘ではないか。
クロネはエッチの時に興奮して猫耳が生える習性があるが、普段は黒髪はボブだ。
目の前のケモ耳娘は正真正銘の亜人である。ちょっと興奮してきた。


弟よ、考え込んでるところ悪いけど聞いてくれるかな?

ヒメノ姉さんが念話で僕に話しかける。

なんだい、姉さん。

魔者に犯された女は教会の法では処刑されるというのは知っているわね。
でもね、中には教会から逃れて子供を生むものもいるのよ。
でもね、そうして生まれたた子供は呪われた血の子ということで捨てられるのよ。
そして、魔者を父にする子は彼女のように異形の姿をしているの。

姉さんがそう説明してくれた。

「君は……」
僕はケモ耳娘の大きな瞳を見て、言葉をつまらせた。
なんと言葉をかけていいかわからない。

「私は運良く、雌豹に拾われて育てられた。その後、親切な老婆に拾われたが、その人も教会に殺されてしまった……」
ケモ耳娘のあまりにもつらい過去に僕の瞳からは勝手に涙が流れた。

「お兄ちゃん、涙もろいね。そういうところ大好きだよ」
馬上で僕の背中に抱きついて、クロネは言った。クロネはいつでも僕の味方をしてくれる。ありがたい限りだ。

「姉さん、名前がないのはどうしてなんだい?」
僕は声に出して聞いた。
「聖杯教会が言うには魔物の子に名前を与えると自身も魔物になると言われるの。まあ迷信だと思うけどね」
ヒメノ姉さんは言った。
まったくむちゃくちゃなことを言うな。
冷静に考えれば魔物の子とはいえ、子供が増やせるとなると教会の権威と権力が落ちるからと考えるのが妥当だろう。

僕には教会の権威とか法は関係ない。
彼女に名前を与えても問題はない。

よく考えてね、魔獣に名を与えるというのはその者の主人となることよ。
ヒメノ姉さんが忠告する。
望むところだ。
僕はこの国のすべての女の子を彼女にすることを目標としている。
ケモ耳娘なんて願ったりかなったりだ。

「いいよ、君が僕の友だちになってくれるなら、名前をあげるよ」
僕はオリオンからおりて、名無しのケモ耳娘に近づく。
ケモ耳は僕に跪く。

さて、名前をあげるっていってはみたものの、どういう名前がいいだろうか?
僕は少し思案する。
そう言えば父さんが好きだったアニメに黒豹に変身するキャラクターがいたな。
父さんは昭和のアニメが好きだったんだよな。
たしかロデムっていったな。
そのままじゃあ、芸がないからロムにしよう。
うん、呼びやすい名前だ。
それと前にリリィに聞いたことがある人物の名を姓にしよう。
ウーサー王の百人の花嫁の中でもっとも力の強い者の名がラモラックといった。
そうだ、彼女の名をロム・ラモラックとしよう。
我ながら良い名前だと思う。

僕は聖剣エクスカリバーを抜き、ケモ耳娘の右肩に刀身をあてる。
「汝の名をアーサー・クロード・ペンドラゴンが名付ける。これより汝はロム・ラモラックと名乗るが良い」
僕は中二病全開で格好をつけた。
なぜか背後のヒメノ姉さんとアルタイルが涙を流している。
二人とも僕に負けないぐらい涙もろいじゃないか。

目の前のケモ耳娘ことロム・ラモラックも涙を流している。
「名だけでなく、姓まで与えていただくとは……」
ポロポロとロムの金色の瞳から涙が落ちて、地面に広がる。

「姓を与えるというのは騎士として認めるということなのよ」
ヒメノ姉さんが言った。
そう言えばシーアもそんなことを言っていたな。

「汝、ロム・ラモラックよ。我が騎士としてつかえよ」
どうせなら、僕の配下にしよう。彼女強いしね。
そう言えば僕の直の家臣って少ないんだよね。
クロネにアルタイル、ベアトリクスぐらいかな。
「ははっ、このロム・ラモラック身命をとしてお仕えいたします」
こうして僕はケモ耳娘のロムを新たに仲間にした。聖剣エクスカリバーを鞘に戻す。

「我が君には出自など関係ないのですね。その広いお心に感服いたします」
アルタイルが感動している。
僕はこのグラマーなケモ耳娘とエッチなことをしたいだけなんだけどね。

「ご主人様、お願いがございます。私は他にも同じような境遇の子の面倒をみています。その子たちも配下にお加えください。できれば我が家に来ていただけますか?」
ロムは深く頭を下げる。
ロムが言うには彼女は同じような境遇の子を二十人ほどかくまっているという。

さて、どうしたものか。
まあ、こたえはもちろんイエス何だけね。僕は来るもの拒まずだからね。
問題は時間の方なんだよね。
僕たちは王宮の女王に謁見して、この国で正式に立場を認めてもらわなければいけない。
最終的には王を目指すのだけどできるだけ平和的にことを進めたい。
段階をふんで力をつけ、教会の支配力を弱めて、僕はこの国のすべての女性を彼女にする。
できるだけ流す血は少なくしたい。
前にそれをクロネに言うと大甘ちゃんだねと笑われて、そのあとエッチした。

僕はちらりとヒメノ姉さんを見る。
「まあ乗りかかった船だね。あんまり長居はできないよ」
ふふっと微笑み、姉さんは承諾した。

僕たちは王都の外れにあるロムの家に向かった。
そこは墓地の近くで、ロムの話では縁者のない貧民たちが葬られているのだという。
教会は貧しいものに厳しいとアルタイルは言った。自らの努力が足りないと貧しい人たちを切り捨てる政策をとっているのだという。
普通の人間でそのような待遇なので、魔者の子たちはもっとひどい状態にあるとロムは語った。

「ここです」
ロムがとある一軒家を指差す。そこはお世辞にも家とは呼べないあばら屋であった。
こんなおんぼろな家に二十人近くがすんでいるのか。

「お姉ちゃん!!」
その家から粗末な服をきた犬耳の少女が出てきた。年のころはノアたちぐらいだろうか。

そのあと、わらわらとケモ耳の少女たちが出てくる。皆が興味津々といった目で僕を見ている。
「このかたは私たちの新しいご主人様になるアーサー様だ」
ロムは少女たちに僕を紹介した。
    
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