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第三十七話 いざ王都キャメロットへ
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魔術師マーリンの話ではアヴァロン王国は二元政治をとっているのだと言う。
王都キャメロンとその周辺を治める王家と王国のほとんどを実質支配する聖杯教会とにである。
現在、女王の地位にあるのはギネビアという人物で今年で十八歳になるという。モードレッドの姉にあたる人物だ。
「どうして教会は王家を滅ぼさないんだ?」
僕はマーリンに訊いてみた。
たぶんだけど完全に滅ぼしてしまうと民衆の反発を招きかねないといったところか。
幕末の日本に近いと考えればいいのかな。
「そうよ、朝倉君の考えがだいたいあってるわ。今の王家は最初の百人のリーダーだったエリザベスの血をひいているのよ。さらに四代まえのビクトリアはウーサーの百人の花嫁の一人だったわ」
マーリンが説明してくれた。
あれこれと規則をおしつけ、重税をかす教会は民衆から完全に嫌われている。しかしながら民衆が教会に従うのは子供をつくるという科学技術をもっているからだ。
しかし、僕たちの陣営には、僕とさらにモードレッドという男子がいる。
その事を民衆に伝えれば教会の支配はかなり揺らぐと思われる。
「我が君が王都キャメロットに行くといわれるのはならば、私をつれていってください」
アルタイルが形の良い胸に手をあてて、そう言った。
ターバンを失ったアルタイルはミサンガのヘアアクセサリーをつけている。
それは僕がカーナボンでプレゼントしたものだ。さらにここではしていないが、つば広の帽子も彼女にあげた。
エキゾチック美人のアルタイルは帽子がよく似合うんだよね。
アルタイルはめちゃくちゃ喜んでくれた。
「王都への道のりは私が案内するわ」
料理を食べ終わり、ヒメノ姉さんは言った。
ワインをグビリとあおる。
「あまり大勢で行くとこちらに戦意ありと思われかねないわ。同行者は厳選しないとね」
ユリコが意見をのべる。
そう、僕たちは戦うのではない。
この国の人たちを全員味方にして、無敵になるのだ。
「そうなの、私の白鳥騎士団の出番だと思ったのに……」
リリィは残念そうだ。
僕の陣営での最大の戦力をもつのはリリィだ。
リリィの軍団を使うのはここぞという時にしたい。
「僕はもちろん、お兄ちゃんと一緒だよね」
馬乳酒を飲み過ぎて顔を赤くしているクロネが言った。
「もちろんだよ」
僕はクロネの頭をなでる。
そうするとクロネは嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。
「私は王都近くのトレント川で待機してるわ。危なくなったら逃げてきてよ」
ベアトリクスは主食である酒をがばがばと飲んでいる。まるでうわばみだな。
「私も領境近くで太陽の騎士団を待機させるわ」
ユリコはきれいな笑みを浮かべる。
「私も鉄鎖騎士団を出せる準備をいたします」
そう言うのはシーアであった。
「じゃあ、私はシーアと共に留守番をしとくわね。王都はいい思い出がないんで、あんまり行きたくないんだよね」
チラリとサラはシーアを見る。
シーアは軽く頷く。
王都へ行くのは僕とクロネ、アルタイルとヒメノ姉さんと言うことになりそうだな。
「じゃあ、私が近衛騎士団々長のアヤメ・ランスロットに手紙を送っておくわ」
ヒメノ姉さんが言った。
美味しくてたべすぎちゃったわと付け足した。
「それとね、朝倉君の存在を領土の内外に知らせた方がいいと思うのよね」
マーリンが言い、僕の唇についたソースをナプキンで拭き取って、それをぺろりなめた。
一同あっずるいと声をそろえて言った。
僕のことを国中に教えて、教会に先制をかけようと言うことかな。
「朝倉君、君の基本方針を教えてくれないかな?」
マーリンは僕に問う。
僕の基本方針はこの国の女の子全員と仲良くなることだ。
ただこれをそのまま国内に知らせるのはどうかなと思う。
うーんと考えてみる。
教会というのはあれこれと規則や罰則を決めて、民衆を苦しめている。
みんなこれに辟易としているわけだ。
ということはこの規則を最小限にまで減らしたらどうか?
僕はサーシャがいれてくれた紅茶を飲む。
しばらく考え、思案がかたまる。
「人を殺さない、人から奪わない、人を騙さない。僕の領土での法律はこの三つだけとする。こんなのでどうだい?」
僕はマーリンのかわいい顔を見る。
彼女はにこりと微笑む。
この三つの法が僕の領土での基本的な方針としようと思う。
リリィとユリコは立ち上がり、拍手喝采した。
アルタイルなんか涙を流している。
モードレッドはただ黙って食事をしていた。
「我が君、やはりあなた様は王の器です」
ぽろぽろと涙を流して、アルタイルはそれを手の甲でぬぐった。
なんか皆、感動して褒めてくれるけどたいしたこと言ってないと思うけどね。
「良いでしょう、それを私と連名で国中に知らせましょう。きっと味方が増えるわ」
うふふっとマーリンは笑う。
この後、僕はマーリンが作った書面にサインをする。そして、その横にマーリンも署名する。
「我が領土の法は三つと定める。人を殺さない、人から奪わない、人を騙さない以上である」
アーサー・クロード・ペンドラゴン侯爵
最初の百人の一人にしてペンドラゴン侯爵の家宰マーリン
翌日からそう書かれた文章がサーシャやザンザ、ガイの手によって国中にばらまかれた。
数日後、六月末のある日、僕たちは王都キャメロットに向かうべく、ヒメノ姉さんの居城であるリーズ城に集結した。
王都キャメロンとその周辺を治める王家と王国のほとんどを実質支配する聖杯教会とにである。
現在、女王の地位にあるのはギネビアという人物で今年で十八歳になるという。モードレッドの姉にあたる人物だ。
「どうして教会は王家を滅ぼさないんだ?」
僕はマーリンに訊いてみた。
たぶんだけど完全に滅ぼしてしまうと民衆の反発を招きかねないといったところか。
幕末の日本に近いと考えればいいのかな。
「そうよ、朝倉君の考えがだいたいあってるわ。今の王家は最初の百人のリーダーだったエリザベスの血をひいているのよ。さらに四代まえのビクトリアはウーサーの百人の花嫁の一人だったわ」
マーリンが説明してくれた。
あれこれと規則をおしつけ、重税をかす教会は民衆から完全に嫌われている。しかしながら民衆が教会に従うのは子供をつくるという科学技術をもっているからだ。
しかし、僕たちの陣営には、僕とさらにモードレッドという男子がいる。
その事を民衆に伝えれば教会の支配はかなり揺らぐと思われる。
「我が君が王都キャメロットに行くといわれるのはならば、私をつれていってください」
アルタイルが形の良い胸に手をあてて、そう言った。
ターバンを失ったアルタイルはミサンガのヘアアクセサリーをつけている。
それは僕がカーナボンでプレゼントしたものだ。さらにここではしていないが、つば広の帽子も彼女にあげた。
エキゾチック美人のアルタイルは帽子がよく似合うんだよね。
アルタイルはめちゃくちゃ喜んでくれた。
「王都への道のりは私が案内するわ」
料理を食べ終わり、ヒメノ姉さんは言った。
ワインをグビリとあおる。
「あまり大勢で行くとこちらに戦意ありと思われかねないわ。同行者は厳選しないとね」
ユリコが意見をのべる。
そう、僕たちは戦うのではない。
この国の人たちを全員味方にして、無敵になるのだ。
「そうなの、私の白鳥騎士団の出番だと思ったのに……」
リリィは残念そうだ。
僕の陣営での最大の戦力をもつのはリリィだ。
リリィの軍団を使うのはここぞという時にしたい。
「僕はもちろん、お兄ちゃんと一緒だよね」
馬乳酒を飲み過ぎて顔を赤くしているクロネが言った。
「もちろんだよ」
僕はクロネの頭をなでる。
そうするとクロネは嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。
「私は王都近くのトレント川で待機してるわ。危なくなったら逃げてきてよ」
ベアトリクスは主食である酒をがばがばと飲んでいる。まるでうわばみだな。
「私も領境近くで太陽の騎士団を待機させるわ」
ユリコはきれいな笑みを浮かべる。
「私も鉄鎖騎士団を出せる準備をいたします」
そう言うのはシーアであった。
「じゃあ、私はシーアと共に留守番をしとくわね。王都はいい思い出がないんで、あんまり行きたくないんだよね」
チラリとサラはシーアを見る。
シーアは軽く頷く。
王都へ行くのは僕とクロネ、アルタイルとヒメノ姉さんと言うことになりそうだな。
「じゃあ、私が近衛騎士団々長のアヤメ・ランスロットに手紙を送っておくわ」
ヒメノ姉さんが言った。
美味しくてたべすぎちゃったわと付け足した。
「それとね、朝倉君の存在を領土の内外に知らせた方がいいと思うのよね」
マーリンが言い、僕の唇についたソースをナプキンで拭き取って、それをぺろりなめた。
一同あっずるいと声をそろえて言った。
僕のことを国中に教えて、教会に先制をかけようと言うことかな。
「朝倉君、君の基本方針を教えてくれないかな?」
マーリンは僕に問う。
僕の基本方針はこの国の女の子全員と仲良くなることだ。
ただこれをそのまま国内に知らせるのはどうかなと思う。
うーんと考えてみる。
教会というのはあれこれと規則や罰則を決めて、民衆を苦しめている。
みんなこれに辟易としているわけだ。
ということはこの規則を最小限にまで減らしたらどうか?
僕はサーシャがいれてくれた紅茶を飲む。
しばらく考え、思案がかたまる。
「人を殺さない、人から奪わない、人を騙さない。僕の領土での法律はこの三つだけとする。こんなのでどうだい?」
僕はマーリンのかわいい顔を見る。
彼女はにこりと微笑む。
この三つの法が僕の領土での基本的な方針としようと思う。
リリィとユリコは立ち上がり、拍手喝采した。
アルタイルなんか涙を流している。
モードレッドはただ黙って食事をしていた。
「我が君、やはりあなた様は王の器です」
ぽろぽろと涙を流して、アルタイルはそれを手の甲でぬぐった。
なんか皆、感動して褒めてくれるけどたいしたこと言ってないと思うけどね。
「良いでしょう、それを私と連名で国中に知らせましょう。きっと味方が増えるわ」
うふふっとマーリンは笑う。
この後、僕はマーリンが作った書面にサインをする。そして、その横にマーリンも署名する。
「我が領土の法は三つと定める。人を殺さない、人から奪わない、人を騙さない以上である」
アーサー・クロード・ペンドラゴン侯爵
最初の百人の一人にしてペンドラゴン侯爵の家宰マーリン
翌日からそう書かれた文章がサーシャやザンザ、ガイの手によって国中にばらまかれた。
数日後、六月末のある日、僕たちは王都キャメロットに向かうべく、ヒメノ姉さんの居城であるリーズ城に集結した。
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