上 下
38 / 75

第三十七話 いざ王都キャメロットへ

しおりを挟む
魔術師マーリンの話ではアヴァロン王国は二元政治をとっているのだと言う。
王都キャメロンとその周辺を治める王家と王国のほとんどを実質支配する聖杯教会とにである。
現在、女王の地位にあるのはギネビアという人物で今年で十八歳になるという。モードレッドの姉にあたる人物だ。

「どうして教会は王家を滅ぼさないんだ?」
僕はマーリンに訊いてみた。
たぶんだけど完全に滅ぼしてしまうと民衆の反発を招きかねないといったところか。
幕末の日本に近いと考えればいいのかな。

「そうよ、朝倉君の考えがだいたいあってるわ。今の王家は最初の百人のリーダーだったエリザベスの血をひいているのよ。さらに四代まえのビクトリアはウーサーの百人の花嫁の一人だったわ」
マーリンが説明してくれた。

あれこれと規則をおしつけ、重税をかす教会は民衆から完全に嫌われている。しかしながら民衆が教会に従うのは子供をつくるという科学技術をもっているからだ。
しかし、僕たちの陣営には、僕とさらにモードレッドという男子がいる。
その事を民衆に伝えれば教会の支配はかなり揺らぐと思われる。

「我が君が王都キャメロットに行くといわれるのはならば、私をつれていってください」
アルタイルが形の良い胸に手をあてて、そう言った。
ターバンを失ったアルタイルはミサンガのヘアアクセサリーをつけている。
それは僕がカーナボンでプレゼントしたものだ。さらにここではしていないが、つば広の帽子も彼女にあげた。
エキゾチック美人のアルタイルは帽子がよく似合うんだよね。
アルタイルはめちゃくちゃ喜んでくれた。

「王都への道のりは私が案内するわ」
料理を食べ終わり、ヒメノ姉さんは言った。
ワインをグビリとあおる。

「あまり大勢で行くとこちらに戦意ありと思われかねないわ。同行者は厳選しないとね」
ユリコが意見をのべる。
そう、僕たちは戦うのではない。
この国の人たちを全員味方にして、無敵になるのだ。

「そうなの、私の白鳥騎士団の出番だと思ったのに……」
リリィは残念そうだ。
僕の陣営での最大の戦力をもつのはリリィだ。
リリィの軍団を使うのはここぞという時にしたい。

「僕はもちろん、お兄ちゃんと一緒だよね」
馬乳酒を飲み過ぎて顔を赤くしているクロネが言った。

「もちろんだよ」
僕はクロネの頭をなでる。
そうするとクロネは嬉しそうに喉をゴロゴロと鳴らした。

「私は王都近くのトレント川で待機してるわ。危なくなったら逃げてきてよ」
ベアトリクスは主食である酒をがばがばと飲んでいる。まるでうわばみだな。

「私も領境近くで太陽の騎士団を待機させるわ」
ユリコはきれいな笑みを浮かべる。

「私も鉄鎖騎士団を出せる準備をいたします」
そう言うのはシーアであった。

「じゃあ、私はシーアと共に留守番をしとくわね。王都はいい思い出がないんで、あんまり行きたくないんだよね」
チラリとサラはシーアを見る。
シーアは軽く頷く。

王都へ行くのは僕とクロネ、アルタイルとヒメノ姉さんと言うことになりそうだな。

「じゃあ、私が近衛騎士団々長のアヤメ・ランスロットに手紙を送っておくわ」
ヒメノ姉さんが言った。
美味しくてたべすぎちゃったわと付け足した。

「それとね、朝倉君の存在を領土の内外に知らせた方がいいと思うのよね」
マーリンが言い、僕の唇についたソースをナプキンで拭き取って、それをぺろりなめた。
一同あっずるいと声をそろえて言った。

僕のことを国中に教えて、教会に先制をかけようと言うことかな。
「朝倉君、君の基本方針を教えてくれないかな?」
マーリンは僕に問う。
僕の基本方針はこの国の女の子全員と仲良くなることだ。
ただこれをそのまま国内に知らせるのはどうかなと思う。

うーんと考えてみる。
教会というのはあれこれと規則や罰則を決めて、民衆を苦しめている。
みんなこれに辟易としているわけだ。
ということはこの規則を最小限にまで減らしたらどうか?
僕はサーシャがいれてくれた紅茶を飲む。
しばらく考え、思案がかたまる。
「人を殺さない、人から奪わない、人を騙さない。僕の領土での法律はこの三つだけとする。こんなのでどうだい?」
僕はマーリンのかわいい顔を見る。
彼女はにこりと微笑む。

この三つの法が僕の領土での基本的な方針としようと思う。
リリィとユリコは立ち上がり、拍手喝采した。
アルタイルなんか涙を流している。
モードレッドはただ黙って食事をしていた。
「我が君、やはりあなた様は王の器です」
ぽろぽろと涙を流して、アルタイルはそれを手の甲でぬぐった。
なんか皆、感動して褒めてくれるけどたいしたこと言ってないと思うけどね。

「良いでしょう、それを私と連名で国中に知らせましょう。きっと味方が増えるわ」
うふふっとマーリンは笑う。

この後、僕はマーリンが作った書面にサインをする。そして、その横にマーリンも署名する。

「我が領土の法は三つと定める。人を殺さない、人から奪わない、人を騙さない以上である」
アーサー・クロード・ペンドラゴン侯爵
最初の百人の一人にしてペンドラゴン侯爵の家宰マーリン

翌日からそう書かれた文章がサーシャやザンザ、ガイの手によって国中にばらまかれた。
数日後、六月末のある日、僕たちは王都キャメロットに向かうべく、ヒメノ姉さんの居城であるリーズ城に集結した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

貞操観念が逆転した世界に転生した俺が全部活の共有マネージャーになるようです

卯ノ花
恋愛
少子化により男女比が変わって貞操概念が逆転した世界で俺「佐川幸太郎」は通っている高校、東昴女子高等学校で部活共有のマネージャーをする話

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...