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第三十五話 王を目指す

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魔術師マーリンの豊かな胸で僕はどれほど泣いただろうか?
体感ではまるっきりわからない。
涙を流し終えた僕をどこかすっきりした気分にマーリンはさせてくれた。僕は彼女に母性のようなものを求め、感じていたのかもしれない。そして、マーリンはそれに答えてくれた。
ただ黙って僕の頭を撫でてくれる。

「ねえ、マーリン先生。お兄さんはどうして泣いているの?」
不思議そうにモードレッドはマーリンに問いかける。
「聖杯教徒は僕たちを苦しめた敵なんだから、もっと殺して数を減らしたほうが良かったんじゃない? ここにいる人たちならそれができたはずたよ」
さらにモードレッドは不思議そうにそうマーリンに訊く。彼は心底不思議そうな顔をしている。

「モードレッド、人間は苦しみ悩むものなのです。いろいろな矛盾を抱えて生きるのです。朝倉君のようにね……」
マーリンは僕を抱きしめたまま、モードレッドに答えた。
モードレッドはただふーんと答えるだけだった。

「ありがとう、マーリン。どうにか心の整理がついたよ」
僕はマーリンに答える。
マーリンは僕にそっとキスをする。

「さあ、立ち上がって。一人でもあの子のような女の子を増やさないためにも朝倉君には頑張ってもらわないといけないわ」
マーリンは立ち上がって、僕に手を差しのべる。
僕はその手をつかみ、立ち上がる。
そうだ、マーリンの言う通りだ。あんな不幸な死にかたをする子を僕は減らさないといけない。僕は彼女たちを殺すためにこの異世界アヴァロンに来たのではない。女の子たちと仲良くなるために来たんだ。

ユリコが僕に近寄り、右膝をつく。
「アーサー、あなたの涙を見てユリコ・ガヴェインは決意したわ。私はあなたをこの国の王にすると」
すっと頭を下げる。

続き、リリィが右膝をつく。
「マスター、あなたこそ我らの王にふさわしい。このリリィ・ガラハット身命をかけてお仕えいたします」
とリリィが金髪ツインテールを下げる。

「我が君、このアルタイル・パーシバルはあなた様の剣となり盾になることを誓います」
アルタイルは右膝をつき、赤毛の頭を深く下げる。

さらに姉さんもそれに続き、右膝をつき。にこりと微笑み、僕の顔を見る。
「王太、あなたが私の弟でよかった。我が分身を誇りに思うわ。このヒメノ・ケイはいつでも我が王に命をささげます」
姉さんは微笑みながら、涙を流すという不思議な表情で僕に誓ってくれた。

つかつかと歩みより、ベアトリクスも皆のように僕に片膝をつく。
提督アドミラルあなたこそ、聖賢王ウーサーの真の後継者です。あなたこそこのアヴァロンの王にふさわしい。私の身も心もあなたのものです。どうぞ好きにお使い下さい」
出会ったばかりのベアトリクスも忠誠を誓ってくれた。

サラ・ボールスも僕に片膝つき、サングラスを外し、豊かな胸に挟む。
「アーサー様、どうかお願いがございます。このサラ・ボールスもこの末席くわわることをお許し下さい」
サラは深く頭を下げる。
僕はもちろんだよとサラに言うと彼女は満面の笑みになった。やっぱり女の子は笑顔にかぎるね。

とことことクロネが皆の前に歩いて来て、膝をつく。クロネが一番前でその後ろに皆が膝をついている形になる。
クロネが一番前に来ても誰も文句は言わない。
これより先、クロネは第一の円卓の騎士ファーストナイツオブラウンドと呼ばれることになる。
「お兄ちゃん、僕たちの王様になってよ。僕はずっとずっとお兄ちゃんの味方だよ」
黒髪が猫耳のようになり、ピコピコと動いている。
僕はすでに知っている。
これはクロネが喜んでいる証拠だ。


僕はあらためて皆に忠誠を誓ってもらえた。誓いをたててくれた皆の好感度は当然のように百になっていた。
僕は彼女たちの思いに答えなくてはいけない。
「みんな、ありがとう。僕は皆に誓うよ。いずれこの国の王になり、みんなが幸せに暮らせる国をつくるよ」
僕も大好きな彼女たちにそう誓いをたてた。
ここに誓いをたてた七人を特別にウロボロスの七騎士と呼ばれるようになる。

マーリンがクロネの横で両ひざをつく。正座に誓い姿勢だ。
「最初の百人の一人にして星の搭の管理者、聖賢王の宰相マーリンはアーサー王に忠誠を誓います。全知全能をもってアーサー王にお仕えいたします」
三つ指をつき、マーリンは僕に約束してくれた。和風で古風な誓いだなと僕は思った。
頭をあげ、マーリンはにこりと微笑む。
「ありがとう、マーリン。あなたの笑顔に僕も答えられるように努力します」
僕はかつて憧れていたマーリンの手をとり、そう約束した。

モードレッドだけはこの様子を黙って見ていた。


この後、戦艦ウロボロスは港町カーナボンに向けて、海原を走り出す。ちょうど日が沈んだころに帰りつくことができた。
そのままカーナボンの城で僕たちは休むことにした。
カーナボン城の自室に僕はマーリンを招き入れた。
もちろん彼女と一つとなるためだ。
前の世界で憧れていた彼女と体を重ねられるのは正直とても嬉しい。
「朝倉君、こうなるのを私は五百年も待っていたのよ」
マーリンはむさぼるように僕にキスをする。
お互い生まれたままの姿になり、僕はマーリンの体の一番深いところでつながった。

この夜は性的快楽をもとめるだけではなく僕たちのつながりをより深くするためのものだった。あまり激しく動かず、僕は一つになる。
マーリンも顔を赤くして、僕を受け入れてくれた。
「ああっ、とても気持ちいいわ。朝倉君、ずっとずっとこうしたかったの。あなたと一つになれてすごく幸せだわ♡♡」
マーリンは僕の背中に手を伸ばし、抱きしめる。
僕はゆっくりと動き、時間をかけてマーリンを愛した。
マーリンとの夜は忘れられない特別なものになった。
僕がマーリンの肉体の一番深いところに愛情を注ぐ度に、彼女は大きく背をのけ反らした。
心地よい疲労のなか、僕はマーリンの豊かな胸に顔をおしつける。
マーリンはそんな僕の髪を優しく撫でてくれる。この髪を撫でられるのはセックスとは違う気持ち良さがあるな。
心が安らぐ。
僕はこの異世界で母親のような存在を見つけたのかもしれない。

僕たちは抱きしめあい、深い眠りについた。
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