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第六話 ドンレミ村の人々

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 ゴプリンを殲滅させた僕への最初の報酬は村娘たちからのキスの嵐だった。
 体のいたるところに彼女らは口づけをする。
 体中キスマークだらけになった。キスマークって内出血のことだから、けっこう痛い。
 それにその様子をクロネはジト目で見ていた。

 ある程度されるがままにしていると村娘たちは落ちついたのか、僕からはなれていった。それでも何人かはよだれをたらして、僕を見ている。そんなにがっつかなくていいのに。

「勇者様、本当にありがとうございます。なんとお礼をしたらいいのか。わたくしどもでできるもてなしは何でもいたします……」
 村長のジョアンナさんはさすがに落ち着いているな。
 僕は何でもという言葉を聞き逃さない。
 何でもか、何をしてもらおうかな。
 考えただけで下半身に熱がこもる。
 このために異世界にきたんだからね。

 くいくいっとクロネが僕の服の袖を引っ張る。
 もしかして焼きもち焼いているのかな。
 かわいい奴だ。
 もちろん、クロネもたっぷりと可愛がってあげるよ。やっぱり初めての女の子は特別な存在だからね。
「違うよ、お兄ちゃん。緑の小鬼ゴプリンたちをやっつけたのはいいけどまだ死体が残っているよ」
 クロネは言う。

 それは考えもしなかったことだ。
 死体をそのままにしておいたら、伝染病の原因になりかねない。
 ゲームなんかだと倒したらお金やアイテムを手に入れて終わりだけど現実はその死体が残るのだ。ここがゲーム世界ではなく、現実だということを思い知らされた。
「それにね、死体をそのままにしてたら野犬や狼、魔物がよってくるかもしれないんだ。処理は早めにしておいた方がいいよ」
 クロネが提案する。
 その意見には僕も賛成だ。
 緑の小鬼ゴプリンの死体を土葬か火葬しないといけない。

「それはわたくしどもで処理いたします。勇者様がたの手をわずらわせる訳にはいきません」
 村長のジョアンナは言った。
 村長さんはそういうけど、僕も手伝おうと思う。人手は多い方がいいからね。
 僕も手伝うと言うとジョアンナ村長は首を横にふる。
 何度か説得するとしぶしぶ納得してくれた。

 特技スキル交渉術を獲得しました。
 視界に文字が流れる。
 交渉術か、異世界生活ではかなり使えるスキルを手にいれたぞ。
 もしかして、魅了と組み合わせたら、落ちない女性はいないんじゃないかな。
 さっきのキスの嵐も魅了の効果だと思うんだよね。


 僕たちは村の人々と一緒に緑の小鬼ゴブリンの遺体を処理することになった。
クロネの提案で土葬することになった。
 火葬するにはこの村には必要な燃料がないからということだ。
 火炎魔法の使い手がいたら、一気に焼くんだけどそんな魔法使いはこのドンレミ村にはいないとジョアンナさんは説明した。
 僕とクロネの風魔法で地面に穴をあける。
 これはいい魔法の練習になった。

 風魔法の風刃ウインドブレイドを覚えました。風弾ウインドパレットを覚えました。視界にテキストが流れる。
 なるほど、こうやって魔法の種類を増やしていくんだね。
 魔法を使って思ったんだけど、本格的に異世界にきたんだなと感慨深い気持ちになった。
 魔法を使うのはそんなに難しいことではなかった。ステイタス画面の魔法欄をクリックし、あとは手をかざして精神を集中するだけだ。

「初めてにしては上出来だよ。魔法のこつは想像して創造すること。ジャック先生の受け売りだけどね」
 クロネが褒めてくれた。
 クロネに褒められて、いい気になって穴をぼこぼこ開けているとジョアンナ村長にもうそれぐらいでけっこうですと窘められた。

 できた穴に緑の小鬼ゴブリンの死体を投げいれていく。死体を乱暴に扱うのは、気が引けたが仕方がない。
 村の人たちと協力して、土を埋める。
 僕はその埋めたてた土地のほぼ中央に、自分の頭ほどの大きさの石を置いた。
 簡易的だが、慰霊碑のつもりだ。
 相手は敵であったが、その死の安寧は祈ろうと思う。これはただ単に何もしなかったら、僕の寝つきが悪くなるという理由だけだ。
 はっきり言ってしまえば、身勝手なエゴだと思う。ただの自己満足だ。

「お兄ちゃん甘ちゃんだね」
 どこか嬉しげ気に祈りおえた僕にクロネは声をかける。ぼくはまあねとだけ返答した。

「憎き魔物にすら慈悲の心を向ける勇者様に我ら感動いたしました」
 涙目で村長のジョアンナさんが言った。
 そんなに慈悲の心なんかないんだけどね。まあいいや、良いように勘違いしてくれているのなら、そのままにしておこう。

 称号「弔い人」を獲得しました。
 視界に文字が浮かび、消えていく。

 気がつけば、もう日は沈みかけている。
 今夜はジョアンナ村長の好意で、彼女の家に泊めてもらうことになった。
 ドンレミ村で唯一お風呂があるのは村長の家だけだということだ。

 今夜はお風呂に入れるぞ。
 僕は心のそこから喜んだ。
 日本人は風呂好きだからね。
 クロネは露骨に嫌な顔をしていた。
 そうか、猫娘のクロネはお風呂が苦手なのか。

 僕たちが案内されたのは大きな風呂桶がおかれた土間であった。
 風呂桶に木の板が引かれていて、そこで体も洗えるようだ。
 僕がもし家を手に入れることができるようになったら、ちゃんとした風呂付きにするぞ。

 その風呂桶にジョアンナさんが桶で熱いお湯をいれてくれる。
 お風呂のお湯は熱いけど、追い焚きできないので仕方ないか。
 クロネは烏の行水ならぬ猫の行水でさっさとでていってしまった。
 僕が一人でお湯を楽しんでいると、誰かが入ってきた。

 その人は薄いタオルだけを体にまきつけている。巻きつけたタオルは胸をおおうだけでいっぱいっぱいのようだ。魅力的な胸の谷間が見える。
 その人は僕が最初に助けた村娘だ。
「ジョアンナの娘のアンナと申します。勇者様、助けていただいたお礼にせんえつながら、お風呂をお手伝いさせていただきます」
 スルリとタオルをとり、アンナはその豊満な体に湯をかける。
 そして、風呂桶に入ってきた。
 これはさらにお風呂が楽しくなってきたぞ。
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