淫夢王 サキュバスを統べる者

白鷺雨月

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第八話 サキュバスとの交わり

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 午後の仕事を終えた僕は帰路につく。
 会社の時計は午後六時を半分ほど回っていた。
 一ノ瀬美華係長は残業の様だ。
 企画営業部から頼まれた仕事があると言っていた。
 たしか来月六月中ごろに開催される神宮寺コレクションに関する業務とのことだ。
 神宮寺コレクションはインデックス神宮寺で開催される若い女の子向けのファッションショーだ。モデルだけでく有名アーティストやお笑い芸人も参加するけっこう大きな規模のイベントである。わが社はその神宮寺コレクションの協賛企業の一つであった。

 帰りの電車で僕は同期の芥川からもらった神宮寺コレクションのパンフレットを暇つぶしに読む。
 へえあの樋口林檎も出るのか。
 樋口林檎は僕の好きなアーティストだ。たしかな歌唱力と圧倒的なパフォーマンス、そして独特の世界観で人気がある。本人もけっこうなオタクらしく、それが僕が樋口林檎を推す理由の一つだ。ルックスもかなりのものでスタイルもよく、そこいらのグラビアアイドル顔負けなのだ。去年出版された写真集を僕も購入した。
 パラパラとパンフレットをめくると見覚えのある顔をみつけた。
 彼女の名前は二之宮蒼にのみやあおいといった。年齢は二十四歳で僕と同い年だ。
 二之宮蒼は僕の高校の同級生だ。まあ同級生でクラスメイトだったけど、当たり前に接点はなかった。
 いや、何かあったような気がするが思い出せない。
 きっと気の所為だ。
 二之宮蒼はいわゆるスクールカーストのトップでその当時からモデルとして活動していた。
 僕はといえば、底辺の陰キャオタクだ。
 交わる点も糸もあるわけがない。

 そうこうしていると最寄り駅に着いた。
 駅を出て、僕はいつもたちよるコンビニで夕食のお弁当をかう。
 今日はチキン南蛮弁当だ。
 期間限定でチキンが増量だということだ。
 この日もレジはピンク髪のツインテールの女の子だった。小柄な体格で多分だけど身長は百五十センチメートルもないんじゃないかな。顔立ちは幼い感じでけっこうかわいい。
「あたためますか?」
 消えそうなほどの小さい声でピンク髪ツインテールに聞かれる。僕はいいえと答える。
 手早くレジ袋にいれ、お釣りをわたされる。その時触れたピンク髪ツインテールの手の温度は温かかった。

 帰宅した僕はチキン南蛮弁当をレンジで温める。
 その間に買い置きしていたインスタンス味噌汁を入れる。コップに麦茶を入れ、リビングのテーブルに持っていく。
 テレビでサブスクのアニメを見ながら、夕食をとる。お弁当は美味しかったけど、なんだか味気ない。お昼に食べた一ノ瀬係長のお弁当が思い出される。
 コンビニのお弁当だからなのか、一人だからなのか、僕にはわからない。だけど僕にはそのチキン南蛮弁当が味気ないものに感じられる。

 お弁当を食べているとスマートフォンがピコンと鳴る。僕のスマートフォンでラインの着信が宣伝以外で届くのは珍しい。
 なんと相手は一ノ瀬美華であった。

 お疲れ様です。 
 という文字とともにかわいい猫が頭をペコリとしているスタンプが送られてきた。

 僕はすぐにお疲れ様ですと返信する。

 明日もお昼どうかしら?

 ぜひお願いします。
 そう返信し、女の子のアニメキャラが両手を合わせているスタンプも送る。
 鬼上司にこんなスタンプを送る日が来るとは。

 猫が両手を上げているスタンが返信される。
 猫の下に嬉しいの文字が書かれている。

 夢野君、週末暇かしら?

 その文を見て、僕は固まる。
 まさか休日出勤しろとかだろうか?
 やはり一ノ瀬美華はパワハラ上司なのか。

 良かったら映画でも見に行かない?
 その文のあとにアニメ映画のURLリンクが貼られている。
 その映画は「キラキラ光る」というものだ。
 あの樋口林檎が主役声優をつとめている。鈴木キララと相澤光という二人の女性の恋と友情の物語だ。
 この映画気になってんだんだよな。

 僕は空いてます。行きましょうと返信する。
 アメコミヒーローが頭の上で両手で丸をつくっているスタンプも返信する。

 あの恐ろしい鬼上司一ノ瀬美華とデートの約束をしてしまった。怒涛の展開に頭がついていかない。
 麦茶を一気飲みし、頭をクールダウンさせる。

 生まれてはじめてのデートの約束に僕はウキウキな気分になる。一ノ瀬美華はアラサーだけどおっぱいの大きな美人だから、そんな女性とデートできるなんてむちゃくちゃ嬉しい。でも忘れてはいけない。
 あの女は昨日まで僕をいびり倒していた鬼上司でサキュバスにするターゲットだ。
 僕は梨々花にもらった真っ赤な血のタブレットを小さなジップロックに入れる。

 お風呂場にいき、熱いシャワーを浴びる。
 念入りに身体を洗う。
 あのトイレで梨々花が言ったこたが事実なら、今日はむふふっな夜が待っている。想像するだけで肉の竿に血液が集まる。しごきたい衝動にかられるが、ここでムダ玉を撃つのはもったいない。

 お風呂を出て、髪と身体をふく。パンツとTシャツという姿でリビングに戻ると梨々花が椅子に座り、買い置きしていたポテトチップスをポリポリと食べていた。
 目があうと梨々花はこくりとうなづいた。
「この世界の食べ物は美味いな」
 梨々花はポテトチップスを食べきる。念入りに指についたポテトチップスの塩を舐める。赤いぬるっとした舌がエロい。

「さてさて、上の口を満たしたら下の口の口を満たしてもらおうかな」
 梨々花は下品なことを言う。

 僕たちはベッドルームに向かう。
 部屋に入ると梨々花はスルスルとゴシックロリータの衣装を脱ぎ捨てる。
 その体は細く、肉付きは良くない。
 平らな胸に薄い肉のお尻とその身体は女性的な魅力に欠けている。なのに僕はその梨々花の裸を見た瞬間、心臓が高鳴るのを覚えた。
 痛いほど心臓が速くなり、体温が二、三度あがる錯覚を覚える。とくに下半身の肉棒にはちきれんばかりの血液が集まるのを自覚する。

 梨々花の下半身、その秘密の割れ目には毛が一本も生えていない。綺麗な肌が目にまぶしい。
 気がつくと僕は梨々花の唇にむしゃぶりついていた。
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