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第三話 天使とお買い物

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 眼の前にいる金髪美女天使が言うには人類滅亡までのタイムリミットは一年だという。
 なんか昔のアニメにそういうのがあったな。
 そうだ、宇宙戦艦ムサシだ。放射能汚染された地球を救うために宇宙戦艦ムサシが銀河の彼方にむかって旅立つというSFアニメだったはずだ。
 そんなことを思い出しながら、僕は壁のカレンダーを見る。
 今日は六月一日だ。
 ということは来年の五月三十一日までに大天使ミカエルに、僕は人間は救うべき存在だということを証明しなければいけない。もしできなければ、人類は滅亡する。当たり前だが、僕も死んでしまう。これは他人の話ではなく、僕自身の話でもあるのだ。

「あと、一年で……」
 僕はどうにか言葉を吐き出す。
 それは社畜童貞にはあまりにも荷が重い話だ。
 とてもやりとげる自信はない。
 しかし、ことわれば即座に人類は絶滅する。
 あれっもしかして詰んでいるのか。


 そっとミカエルは僕の手を握る、その手は温かくて柔らかで、本当に心地良い。
 心の中の不安が薄まるような気がしてきた。
「あと一年ではなく、まだ一年もあると考えてみたらどうですか?」
 ふふっと天使級の可愛い笑みを僕にむける。
 そうだな、ようは気のもちようか。
 一年もあるのだし、その間にどうにかなるかもしれない。
 もともとネガティブな人間なのにこんな楽観的な考えになるなんて自分でも驚きだ。
 ここで僕の脳裏にある疑問が浮かんだ。
「あ、あのミカエルさん?」
「なにかしら」
 微笑みを絶やさずミカエルは僕の目を見る。
 こんな美人に見つめられると頭がぼおっとしてくるや。
 おっとミカエルの美貌に我を忘れている場合ではない。
「ミカエルさんって着替えとかの荷物が無いように思うのですが」
 僕はミカエルの手を見る。綺麗な手だな。
 彼女はずっと僕の手を握っている。
 ああっこのままずっと握っていてほしいな。
「ええっありませんよ。私の目的は霧人きりひと君に神のお告げを伝え、使命を全うすることですから」
 大きな胸をはって、ミカエルは言った。
 そんな自信満々に言われても。
「で、ミカエルさんは僕の家に一年は住むのですよね?」
 僕はさらに疑問をぶつける。
「はい、そうですよ。ところで霧人君。ちょっといいですか?」
 質問を質問で返されてしまった。
「さっきからミカエルさんって言ってますけどこれから一緒に住むのに他人行儀ではありませんか」
 だってさっきあったばかりじゃない。僕はそんな陽キャじゃないよ。陰キャのオタクだよ。こうして金髪美人のミカエルと話しているだけで緊張しまくっているのに。
「私のことはミカちゃんと呼んでくだいさいませんか?」
 ミカエルはぎゅっと僕の手を強く握る。
 そんなついさっきあった人をちゃん付けで呼ぶなんて童貞の僕にはハードルが高すぎる。
「あらっ呼んでくださらないと終末のラッパが鳴りますわよ」
 ええーそれはもう脅迫ではないか。
「そ、それじゃあ、ミミミ、ミカちゃん……」
 むちゃくちゃ緊張した。
 女性をちゃん付けで呼ぶなんて人生初めてだ。
「はいっ霧人君」
 満面の笑みでミカちゃんは言った。

 おっと話を本題に戻さなくては。
「ミ、ミカちゃん」
 僕は金髪美人天使の名を呼ぶ。
「はいっ」
 またあの満面の笑みだ。なんか体がちょっと光ってないか。後光みたいなのがさしている。後光って仏教用語だったような気がするがまあこの際気にしないでおこう。
「ミカちゃん、着替えとか生活必需品ないと不便じゃないの?」
 僕は尋ねる。
「あらっ言われてみればそうですわね。私、服はこれしか無いですわ。うっかりしてましたわ」
 豊かすぎる胸に手を置きミカちゃんは言い、てへっと舌をだす。
 やばいめちゃくちゃ可愛い。
 僕はこの短い時間のうちに色々な顔を見せるミカちゃんの魅力に虜になりつつあった。
「それじゃあ、買い物いく?」
 と提案してみる。
「いいですね。お買い物デートですね。行きましょう霧人君」
 ミカちゃんの体がさらに輝く。
 もしかしてミカちゃんって嬉しくなると体が光るのか。視線をミカちゃんの頭上にやるとうっすらと輪っかのようなものが浮かんでいる。これは天使の輪というもなのか。



 僕たちは車で近くのショッピングモールに向かった。
 そのショッピングモールは車で二十分ほどのところにある。
 よく郊外にあるなんでもそろうあの大型ショッピングモールである。そこは映画館なんかも併設していて、休日なんかは家族連れでよく賑わっている。
 僕は運転しながら助手席に座るミカちゃんを見た。ミカちゃんの巨乳にシートベルトが食い込んでいる。シートベルトが食い込んでいるため巨乳の形がよりくっきりとわかる。
「どうしたんですか、霧人君。ちゃんと前むいて運転してくださいね。もし、あなたが事故で死んだりしても終末は訪れますからね」
 めっとミカちゃんは注意する。
 やばい、注意されたのに気持ち良くなってきた。
 これはまた新たなる性癖の目覚めかもしれない。
 そうこうしているうちにそのショピングモールに到着した。

「ねえ、霧人君。せっかくだから手をつなぎましょうか」 
 ちゅちょせずにミカちゃんは僕の手を握る。なんとミカちゃんは指を僕の指の間にいれてきた。これはいわゆる夢にまで見た恋人つなぎではないか。
 あれっまたうっすらと体が光っている。
「数百年ぶりの下界なんで、私よく分からないんですよね。ちょっと前まで騎士や貴族がいたのにすっかり様が代わりしていて、迷子になりそうなんですの。だから、霧人君しっかり握っていてくださいね」
 それはもちろん構わないよ。だってこんな絶世の美女と手つなぎデートできるなんて人生最高の幸せだ。
 童貞なので死んでしまうかもしれない。
 おっと僕が死んでも人類は滅亡するんだ。
 これは気つけねば。
「ところで前に地上にきたのはいつなの?」
 なんとなく気になったので訊いてみた。
「そうですね、前にこの国に来たのは確か秀吉さんっていう人がリーダーだったわね。高山右近君が道案内してくれたのよ」
 つい昨日のことのようにミカちゃんは言った。
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