終末は大天使とだいたい一緒にいます。

白鷺雨月

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第一話 自称大天使ミカエルがやってきた

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 僕の名前は飯矢いいや霧人きりひと、年齢は二十八歳のいわゆる社畜だ。
 もちろん彼女なんていたためしはない。
 年齢イコール彼女いない歴である。
 職業はオフィスビルや商業施設の警備をしている。まえに底辺の仕事なんていわれたあれである。本当にひどい記事だ。記事はひどいけど、まあ実際つらいことも多い仕事であるのはいなめない。
 身長は百六十八センチで百七十センチはないと人権がないらしいので、どうやら僕には人権はないらしい。
 体重は七十五キロ、これが筋肉だったらいいんだけど悲しいかな贅肉なんだな。よくいえばぽっちゃり、悪く言えばただのデブだ。こんな見た目で仕事も不規則なため、彼女なんていた試しはない。

 その日、僕は夜勤あけで眠っていた。四時間の仮眠はあったとはいえ、そんなのは睡眠のうちにははいらない。なので僕はシャワーをあびたあと、Тシャツとボクサーパンツという姿でベッドで深い眠りについていた。

 ピンポーン。
 それは僕の安眠をさまたげるチャイムの音だった。
 僕の住むマンションは築三十年とけっこうふるい。
 インターホンにカメラなんてついていない。
 だから誰がきたかはインターホンに出るまでわからない。
 夜勤明けで眠いので僕は居留守をきめこむことにした。
 まえに訪問販売に出てしまい、一時間ちかく玄関でねばられたことがある。誰が布団に百万もだすっていうんだよ。
 たしか通販とかも頼んでいなし、きっと訪問販売のたぐいだろう。それか新聞の勧誘か。どちらにしても睡眠不足の僕はベッドから出たくはない。
 布団を頭までかぶり、僕はチャイムを無視する。

 ピンポーン。
 ピンポーン。
 ピンポーン。
 
 ああっもううるさいな。
 あんまりにもチャイムを連打されるので僕は腹がたってきた。
 人間お腹が空いているときと睡眠を妨害されるのが一番むかつくのだ。
 睡眠を邪魔された僕はあんまりにも腹がたったので、追い返してやろうとあえて出ることにした。
 もちろんすぐに警察を呼べるようにスマフォを握る。
 たしか玄関に防犯用の金属バットがたてかけてある。最悪そいつを使う羽目になるかもな。
 僕は玄関の金属バットを確認する。
 よし、あるぞ。
 その間にもピンポーン、ピンポーンとチャイムが鳴らされる。
 僕は玄関扉の鍵をあける。
「もううるさいな」
 声をあらげて怒鳴ってやろうと思ったけどなれないことをしたので裏返ってしまった。

 玄関を開けて、僕が目にしたのは金髪の美女だった。
 けっこう背が高い。目測だけど百七十五センチはあるだろう。すらりとしていて、手足がながい。それにスタイルが抜群だ。いわゆるボンキュッボンというやつだ。
 服装は清楚な感じの白ワンピースだった。いわゆる避暑地でお嬢様がきるような服装だ。
 彼女は僕の顔を見るとにっこりと微笑んだ。
 それは反則級のかわいらしさだ。
 彼女は青い瞳で僕の顔をじっとみつめる。
「あなたが飯矢いいや霧人きりひとさんですね」
 その金髪美女は言った。その声はいわゆる鈴がなるような美しい声だった。
 この人、声優なのではと思わせるような美声であった。
 見た目も声もいいな。
 僕はさっきまでの怒りなんかすっかり忘れて、目の前の金髪美女の美貌に見とれていた。

「は、はいそうですが、あなたはどななたですか?」
 もちろんだが社畜童貞の僕にこんな美人の知り合いなんていない。

「わたくしはミカエルと申します。この世界七十億の人類が存続するに値するかを見極めるために下界に降臨しました」
 息をするのも忘れるほどの美しい笑顔をたたえ、金髪美女はそう名乗る。
 僕はこの言葉を聞き、この人、美人だけどやばいと思った。
 訪問販売じゃなかったけどきっと宗教の勧誘かなにかだ。
 これはやばいと思った僕は玄関のドアを閉める。
「あっそういうの間に合ってます」
 僕はドアを勢いよく閉める。
「ちょっとちょっとまって下さい」
 金髪美女はそう言い、玄関のドアを手で止める。
 その力はものすごいものだった。
 見た感じその女性は細身なのにドアがピクリともしない。
 それどころか、玄関に入ってきた。

 あまりの勢いのため、僕は後ろにひっくりかえる。
 慌てた僕はなにかにつかまろうとする。
 それはその金髪美女の腕であった。
「きゃっ」
 短い悲鳴をあげて、金髪美女は僕の方に倒れ込む。
 不意をつくかたちになったのでどうやら彼女も慌てたようだ。
 バランスを崩して倒れる。
 ごんっという鈍い音がする。
 後頭部に激痛が走る。
 僕は受け身もとれずに頭を打った。
 痛い、めちゃくちゃいたい。
 あれっ後頭部はむちゃくちゃ痛いけど右手の手のひらには何やら柔らかい感触がある。それに唇にもとびきりの柔らかさがある。
 目を開けた僕の視界にはいったのはゼロ距離の金髪美女の顔であった。
 僕は彼女とキスをしてなおかつその大きな胸をさわってしまっていた。
 おもわずもみもみしてしまう。
 これが女子のおっぱいの感じなのか。すごく柔らかくてきもちいい。それに唇の感触もたまらない。
 無意識に下半身が反応してしまう。
「あっこれは失礼しましたわ」
 そう言い、彼女は顔を離す。
 倒れた僕に馬乗りしたような体勢になる。
 こ、これは騎乗位というやつでは。
 僕の下半身はさらに反応しようとする。
 僕の下半身は彼女と密着している。このままでは僕が興奮しているということがばれてしまう。
「このことは不問といたします。そのかわり私の話をきいていただきますね」
 金髪美女は人差し指を僕の唇にあてる。
 僕に反論の余地はなかった。

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