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オマケ(※小スカ注意)
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「よし、行くか」
首輪に繋がる紐を持ってにっこり笑った師匠は、玄関のドアノブにもう手をかけている。
「……っ、あの、師匠」
「どうした?」
「ほ、本当に……?」
「なんだよ、『何でも』って言ったのはお前だろ?」
そうだよ、言ったよ。
師匠の誕生日だからなんでもしてあげるよ、って。
そういう言い方をしたら絶対師匠はエロい意味でとることも、ちゃんと分かって言った。
けどさ、けど……。
「いくらなんでも、これは……っ」
俺の現在の格好は、ほぼほぼ全裸。
膝上まである長い靴下と手袋がかろうじて服飾品と呼べるものだろうか。どちらもふわふわの毛皮が表地で、裏地はしっとりした伸縮性のある生地だ。手袋はともかく、こんな靴下を服屋で見たことは無い。一体どこで買ってきたのやら。
他は犬用の赤い細い首輪と尻尾だけで、胴体部分は素っ裸だ。
窓を閉めている室内では汗だくになるような陽気だから風邪をひくことはないだろうが、身に纏う布地が無いことがこんなに心細いものだとは思わなかった。
ぐ、と首輪に繋がるリードを引かれて一歩踏み出す。途端、腹の中の物が揺れて息を詰めた。
「……ッ、……し、しょ……」
「おーおー、もう勃ってんじゃねぇか。そんなに嬉しいかよ?」
俺の股間を見て師匠は揶揄うように笑みを深くした。
膝裏まで届くふさふさ毛並みの長い尻尾の先は、俺の中に埋まっている。長くて柔らかい団子が連なったような形状の棒が、尻尾毛が生える境目までずっぽりと。
少し動くだけで、その棒の先が腹を抉ってくる。いつも師匠が嵌め込んで俺を狂わせる一番奥の、その一歩手前。
あと少し奥、ほんの少し奥を叩いてくれればもっと気持ち良くなれると分かっているのに、ただの棒であるそれは俺の疼きなんか分かっちゃくれない。
「師匠ぉ……」
少量の潤滑油を使ってそれを挿入されたのはついさっきだ。
それから首輪を付けられて、玄関まで数十歩歩いてきただけ。
なのにもう俺の身体は限界で、リードを持って外へ行こうとする師匠の腕に縋り付いた。
「ギブアップ早すぎんだろ、エシャ」
「だって、これ……、奥、届かな……」
あと少し、ほんの少しでいい。奥の狭まった所を割り開いて肉を嵌め込んで、そこからぐぽっと音が聞こえるくらい勢いよく引き抜かれたい。あれをされると頭が蕩ける。性行為に使うようには作られていない穴の、平均よりずっと長いはずの師匠の陰茎でやっと届く一番奥に正気を失うほど気持ちいい場所があるというのがなんとも不思議だ。
いつも師匠がしてくれるのを脳内に反芻してぶるりと尻を震わせると、師匠は目を細めて「恥ずかしいとかじゃねぇのかよ」と小さく呟いた。
「だって……、魔術、掛けてくれるんでしょ?」
だったら恥ずかしがる方が不自然だ、と答えると、師匠は俺の頭を撫でながら考えるような素振りをみせる。
今日は師匠の誕生日。
師匠がプレゼントに望んだのは『俺を犬にして外を散歩したい』というものだった。さすがに全裸首輪姿で外出するなんて出来ないと却下しようとしたのだけど、「周りに認識湾曲魔術を掛けてお前を普通の『犬』に見えるようにする」「外といっても庭まで」と言うので渋々了承した。
全裸だとしても周りからは犬に見えるのだからそれを不自然がる人はいないだろうし、なら俺が恥ずかしがる方が不審に思われる。
それよりも、尻の中に埋まる棒の方が厄介だ。師匠の希望するプレイをしてあげたいのはやまやまだけれど、先に一度抱いてからにしてほしくなる。
ぎゅう、と師匠の腕を掴むが、彼は俺の額を人差し指で押してきた。
「……? ししょ……」
「『お座り』だ、エシャ」
師匠の表情は柔らかい。だけれど、その声に拒否を許す色は含まれていなかった。
その場に膝をついてみたが、師匠は首を横に振って「違う」と言う。
「犬はそんな座り方するか?」
「……細かい」
しゃがんだ状態から両足を開き、その間に両手を揃えてついた。小さく愚痴る俺の額を師匠がバチッと指で弾く。
「喋りもしねぇんだよ。……そうだな、声出したら魔術解除な。気ぃ張れよ」
「っ!?」
へ、と言おうとして慌てて口を閉じた。
ちょっと待ってと止めようとしたのに師匠はさっさと玄関のドアを開けて、パッと眩しい光が入ってきて目を細める。
風が股間の下を通り過ぎていって、そんな所に風を感じたことがなくて身を竦ませた。
「おーう三つ編みぃ。珍しいな、昼間っから起きてるなんて」
「!!」
ちょうど配達に来た所だったのか、庭の柵の向こう側に郵便配達員が立っていて、師匠に声を掛けてきた。
師匠のトレードマーク兼あだ名の由来だった長い三つ編みは卒業試験の時に切れてしまって、だけれどそれで師匠への呼び名を変えるのも面倒だと色々な人から言われ、今は頭の右半分だけを編み込んでいる。
肩までしかない長さを三つ編みにすると幼女のようで違和感があったから編み込みにしたのだけど、口調の乱暴さと相まって柄の悪さが半端ない。酒場で酔い潰れていても財布を抜かれるのが少なくなったのは不幸中の幸いか。
師匠はリードの先を玄関に落としてさっさと庭へ出ると、配達員から柵越しに手紙を受け取った。
「ああ。犬を預かっちまってな、庭に出してやるかと思って」
そう答えながら師匠は俺の方を顎でしゃくって示す。
配達員が玄関の中に座っている俺に視線を向けてきて、ビクリと身体を強張らせた。
「犬ぅ? お前が世話……は無ぇか、エシャちゃんはどうしたんだ?」
師匠の認識湾曲魔術はちゃんと発動しているらしく、配達員は家の中の俺に目を凝らしてからすぐに師匠へ視線を戻した。
素っ裸よりも恥ずかしい格好の俺を見ても動揺も困惑もしないんだから、大丈夫そうだ。
ホッと胸を撫で下ろし、彼らの会話が終わるのを待つ。
「あいつがいねぇから俺がやってんだよ」
「そりゃまた偉いじゃねーか。飼い犬が犬の世話たぁよ」
「誰が飼い犬だ」
逆だろ、とぶつぶつ文句を言いながらこちらへ戻ってきた師匠は、手紙を玄関先のチェストに置くとリードの先を拾い上げた。
「ほら、挨拶しろ、エシャ」
「……!?」
ぐい、と首輪に繋がる紐を引かれて驚いて前に手をつく。
どういう事か意味が分からず抵抗する俺を玄関から引きずりだそうとする師匠の後ろで、配達員がカラカラと笑った。
「おいおい、エシャちゃんがいねーからって犬を代わりにしてんのかよ」
「そーだよ。こいつが今は『エシャ』だ。ほらエシャ、出てきてお客さんにご挨拶だ」
「……っ、……!!」
俺が『普通の犬』に見えているだろう配達員は師匠の言葉を冗談としか思っていないようで、必死に踏ん張っているのにずるずると外に出された俺を見て「綺麗な毛並みの犬だな」なんて観察してくる。
俺がぶんぶん首を振って嫌がるのに師匠は口元をニヤつかせて強引に引っ張り、とうとう柵の近くまで連れてこられてしまった。裏地付きの長い靴下と手袋はこうして無理やり引きずっても俺の肌に傷を付けない為だったか、と今さら気付く。
暖かい陽光とほどよい微風。見慣れた家の庭に、けれど今、俺はほぼ全裸で、四つん這いになっている。
顔見知りの配達員の前でこんな格好をしている状況に手が震え、急所を隠すように小さく身体を丸めた。
「ん? なんだこいつ、外が怖いのか?」
配達員が首を傾げ、しゃがみこんで俺と目を合わせてくれようとする。
「おーいワンコロ、どうした? こわくないぞー、ほれこっち来い、撫でてやるぞー?」
師匠の家には何重も結界が張られているから、向こう側から手を伸ばしてきても中の俺には触れられない。それが分かっているからか、師匠は口元を笑ませながらよしよしと俺の頭を撫でた。
「どうも人慣れしてなくてな。やっと一個芸を覚えさせたんだが」
「おっ、どんなのだ?」
芸? そんなの仕込まれた覚えはない。
いきなり何を言い出すのかと師匠を見上げると、彼は一層意地悪そうな笑みを深くして指をクイと下から上に上げる仕草をした。
「エシャ、『ちんちん』」
………………。
その言葉で犬がどんな芸をするのか、分からないわけではない。俺自身は犬を飼ったことは無いけれど、この近所には番犬として飼っている家が多い。そうでなくとも、スラムでは躾けた野良犬と幼児が家族同然に育っているのも珍しくない。
だからそのコマンドがどんな姿勢を示しているのか、それはちゃんと分かる。……分かる、けど。
俺が睨んでも師匠は全く意に介してないみたいに、もう一度同じ仕草を繰り返す。
ぐっと拳を握り、俺は犬俺は犬、と心の中で唱えながら前脚を上げるように膝立ちした。何も着ていない胴体と恥部を晒す格好に強く目を瞑って耐える。
師匠の誕生日だから。お祝いとして発案したのは俺だから。恥ずかしくない、だって今は犬、俺は犬、犬が芸をするのは当然、だから絶対に何も恥ずかしくない。
「おー、ちゃんと出来るじゃねぇか。偉いな、ワンコロ」
配達員は最後まで俺をただの犬としてしか認識しないまま、「じゃあな~」と手を振って隣の家へと移動していった。
去って行く気配にホッとして腕を下げると、頭に師匠の手が乗った。
「思ってた反応と違うな」
はい?
俺が目を開けて睨むと師匠は顎を摩りながら不満そうに首を傾げた。
「お前、こういうので興奮しねぇ性質か? アテが外れたな」
師匠は俺の股間へ視線を落として、そこがすっかり萎んでしまっているのを示してくる。
こういうので興奮、って。どこに興奮すればいいんだ? 外で裸になっていること? それとも、師匠の犬になっていること?
師匠への誕生日プレゼントなのに師匠の期待に添えないのは申し訳ない。どういう反応を求めているのだろう、と師匠の膝に頭をつけて、そこから師匠の思考に潜り込もうとしたら額を強めに小突かれた。
「っ……」
痛い、と声に出しそうになって、すんでのところで口を噤む。声を出したら魔術が解けてしまう。こんな格好で庭先に出ているところを近所の人に見られたら、半年はその話題で揶揄われるに違いない。
「何しようとした、おい」
俺の前にしゃがみこんできた師匠に睨まれ、恨みがましく睨み返す。
喋れないんだから意思疎通するには思考を読むしかないじゃないか。
じっと見つめても通じるはずもなく、師匠は俺の顎の下から耳たぶをすりすりと撫でてくる。あ、これ、気持ちいい。
師匠の掌に自分から押し付けるように頭を擦り付けると、師匠は睨む目を和らげて口元を綻ばせた。
「犬が嫌なわけじゃねーんだな?」
問いかけられ、口を閉じたまま頭を縦に振って答える。
「んー……」
大人しく犬座りで撫でられる俺に、師匠は少し考えるように黙ってからリードを引いてきた。自然と上向かされ、師匠と目を合わせると顔が寄ってきて唇が重ねられる。触れるだけで離れていくはずもなく、舌が入ってきて少し焦った。
これ、はたから見たら師匠は犬とディープキスする人だ。
それはそれで近所にどんな噂が流れるか考えるとたまったものではなく、バシバシと師匠の肩を叩くとその手首を掴まれた。
「魔術式変更したから安心しろ。柵の外から俺たちの姿は見えねぇ」
声出してもいいぞ、と続けて告げられ、眉を顰めた。俺の反応が期待通りじゃなかったから、もう終わりって事だろうか。
「あの、師匠……、えっと、どういう反応して欲しいのか先に言ってくれたら、その通りにするから」
「そんなん望んでねーよ」
どう演技すればいいのかと訊いてみるのに、すげなく却下されてしまった。どうしよう。師匠は俺のことが大好きだから、どんな反応でも結局は喜んでくれると思って油断していた。
もっと恥ずかしがるべきだった? いや、十分恥ずかしかった。庭に出されるのも抵抗して縮こまっていたのに、更に恥ずかしい芸までさせられた。だったら何がいけなかったんだろう。一体どんな反応をすれば──。
「だぁから、『俺の思い通りに』なんて望んでねんだっつの」
「いたっ」
額を指で弾かれ、沈んでいた思考が引っ張り上げられる。
何度もデコピンを喰らってヒリつく額を撫でながら師匠の言葉に首を傾げると、師匠は俺の尻を撫でてそこに埋まる棒をぐっと押し込んできた。
「……っは、ぁ」
腹の奥を抉られて思わず前のめりに倒れそうになるのを師匠が抱き留めてくれて、けれど続けざまに棒を出し入れされて背筋が弓なりに反った。
棒は師匠のに比べると細くて短く、尻尾毛のある境目ギリギリまで入れられても一番奥に届かない。ぶちゅぶちゅと内側から垂れてきたローションが泡立つ音がするほど激しくされても、物足りなさに拍車がかかるばかりで焦れったさに身体が疼いた。
喉元が熱くて苦しい。師匠が入れてくれればこんな焦燥感はすぐ飛んでいくだろうに。
「やっ、……師、匠」
「こっち弄るとすぐ勃つなぁお前。そんなにケツん中ほじられんのが好きかよ?」
「……っ」
師匠はわざと下卑た言葉で俺を辱めようとしてくる。彼の言葉通り、さっきまで萎びていた俺の肉茎はすっかり勃ち上がっていて、後孔に棒を抜き挿しされる勢いで身体が揺れる度に臍の下に先端が当たっている感触がある。
反論出来ないから唇を噛んで声を我慢しようとしたのに、師匠は俺の耳に唇をつけてその中を舐めてきた。ぴちゃ、と小さい筈の水音がやけに大きく響く。湿った舌は耳穴の入り口をぐるりと舐めると耳朶を甘噛みしてきた。先の尖った犬歯が刺さってくる感覚に身震いして、俺の身体を抱き留めたままの師匠に縋りつく。
「い、意地悪、しないで、師匠……っ」
「してねぇよ。楽しんでるだけだ」
師匠は俺の胸を撫でると「忘れてた」と呟き、ローブのポケットをごそごそと漁って何かを取り出した。
「……なに、それ?」
「楽しさが増す玩具。たぶんお前、すげー好きだぞ」
師匠の掌の中にあったのは金属製のアクセサリーのような物だった。丸い金具と、その先に細長いチェーンが伸びていて、先端には大きな緑色の石がある。
師匠の瞳の色に似た、綺麗な宝石。じっと見つめていると師匠は満足げに口元を笑ませ、丸い金具の切れ欠になっている所で俺の乳首を挟み込んだ。
「んっ」
「痛いか? 少しなら緩められるぞ」
「……ううん。痛くはない、かな」
切れ欠の端が丸くなっているから痛みはなく、けれど乳首の根元をしっかりと挟み込んで石の重みでも落ちる気配はない。
平らな胸にぽつりと立つ乳首の下にぶら下がる緑の宝石を見下ろし、ただの綺麗なアクセサリーにしか見えないこれが一体どんな猥褻な玩具なのかと首を傾げた。
師匠は反対の乳首にもそれを付けて、それから俺の頭をひと撫ですると立ち上がって庭の端の方へ歩いて行く。
俺のいる場所から、普通に歩いて大体二十歩程度。そこまで行った師匠はこちらをくるりと振り返ると、パンパンと手を叩いた。
「よし。こっちまで四つん這いで来れたら、尻尾じゃなくて俺の突っ込んでやる」
来い、と手招きされ、なんの疑問もなく四つん這いで膝を一歩前に出した途端、腹の中の棒がそれまでと違う場所を擦って息を詰めた。内側の腹側の、割と浅い所にある気持ちいいところ。奥の悦さに比べると劣るけれど、息を乱すには十分過ぎる快感だ。
「ふ……っ」
加えて、四つん這いで身体を動かすと胸にぶら下がった石が錘のようにブラブラと揺れ出して乳首にじわっと刺激がきた。揺れに合わせて微かに乳首が引っ張られるようで、身悶えるとかえって揺れが不規則になって先端が火照っていく。
乳首への刺激はじっとしていられなくなるような甘さに満ちていて、それだけでは到底イけないのにひどく中毒性がある。ジンジンするような快感は股間の方にも繋がって、無意識に後ろに入っている棒を締め付けて自分で自分を苦しめた。
「し、しょ……」
「いい表情になったな」
一度膝を前に出しただけで動けなくなってしまった俺を咎めるでもなく、師匠は楽しげに顎を摩りながらこちらを眺めている。
震える膝に力を入れて、さっきのと反対の膝を上げて前へ出した。
「……っ、は、ぁ」
足が動くと腹の中も蠢いて、中の棒の角度が変わる。両手を先に動かし、それに合わせるように交互に膝を出していくだけなのに数歩ごとにその場に蹲りたくなった。
動く度に、後孔に挿入された棒が少し抜けてはまた入ってくる。まるで意思を持ってわざと俺を苛んでいるみたいだ。穴の方を責められているだけで息が乱れて辛いのに、優しく虐められている乳首が更に意識に靄をかけてくる。
全身が熱くて、日光の所為じゃなくじっとりと汗をかいて陰部以外も濡らしていく。
気持ちいいのに、まだ狂えない。頭がぼぅっとして上手く動かないのに、正気は保ったまま。
中途半端に押し上げられた身体が辛く、涙目になりながら必死で師匠の元へ進んでいく。
「……っ、あ、あぅ、っ」
いっそ一気に進んでゴールしてしまえばこのもどかしさから解放されるかも。そう思って勢いをつけて四つん這いのまま数歩駆けてみたら、浅い方の気持ちいい所を師匠に挿入れられている時みたいに連続でごつごつ叩かれて悶絶した。
「随分一人上手じゃねぇか、エシャ。イッちまったのか?」
尻を高く上げる格好でビクビク震えて止まった俺に、師匠が揶揄うような声を掛けてくる。
呼吸するとひゅうひゅうと喉を空気が抜けていく音がして、けれどそんな事に気遣う余裕はない。荒い息を飲み込んで寄せる波を必死に我慢して、ともすれば浅いところで決壊しそうなのを散らす。
「……ま、だ……っ」
ギリギリだけれど、堪えられた。師匠が目の前にいるのに、棒なんかにイかされたくない。あと数歩、あと数歩頑張れば、師匠が抱いてくれる。
「早く来い。……エロ過ぎて俺の方が我慢きかなくなりそうだ」
再び牛歩で進み始めた俺に、師匠が腕を組んで苦笑する。膝丈のローブの下がどうなっているのかは見えないが、どうやら俺の痴態は彼の興奮を呼んだらしい。
なんとか誕生日プレゼントらしいことが出来ただろうか、と思いながらフラつく腕と足を動かし、師匠の膝に額を付けたところで崩れ落ちた。
「ついた、……師匠、ついた、よ」
「ああ。頑張ったな」
蹲る俺の横に膝をついた師匠は俺の背中を撫で、その手が下へと下がっていったかと思うとおもむろに尻尾を掴んだ。
「ひ……ッ」
深くまで挿さっていた棒が引き抜かれ、じゅぽっ、と大きな水音がする。俺の内側を裏返しそうな勢いに、思わず喉から細い悲鳴が出た。
腹の中を埋めていたものが一気に出た快感は違う感覚を引き寄せてしまい、耐える間もなく勃起した陰茎からしょわ、と小水が漏れていく。
「や……、やぁあ……っ」
止めたいのに、止められない。それまで我慢し続けていた所為で排尿ですら震え上がるほどの開放感で、人前で、それもよりにもよって師匠の前での失禁だというのに止めることが出来ない。
「んー?」
「あ、や、ししょっ……」
音に気付いたのか師匠は俺の片膝を掴んでひょいと持ち上げて、俺が肉茎の先から黄色い小便を垂れ流しているのを見て意地悪く笑った。
「犬ならこの格好だろ? エシャ」
片膝を高く上げる格好になると陰茎の先が師匠の靴を濡らしてしまって、嫌がって身を捩るのに師匠は手を離してくれない。
どころか、そのまま俺の後ろに回ってきたかと思うとローブをたくし上げて股間を露わにし、後孔に陰茎の先を押し付けてきた。
「ひ、……っ」
ローションで濡れた穴はすんなりと師匠の猛りたった肉を飲み込み、そのまま根元までずっぷりと押し込まれた。腹の中の一番奥の、狭まった所を師匠の陰茎が無理やり割り開いて頭を捻じ込んでくる。
「ぃあっ、あ、あ、ししょ……っ、ししょお……っ」
次いで、そこから引き抜かれて足先まで電気が走ったみたいに痙攣した。まだ小便が出続けている所為で精が吐けず、なのに腹の中だけが先に達してビクビクと何度も跳ねる。
「あーっ、あ、あぁぁっ、奥っ、奥ぅ、ししょお、もっと、もっとしてぇ……っ」
やっぱり師匠のが一番気持ちいい。熱くて硬くて、俺の一番気持ちいいところを的確に抉ってくれる。
歓喜に震える身体は意識しなくても勝手に師匠の肉を締め付け、もっと奥へ引き込もうとするみたいに動く。師匠はそれに逆らおうとはせず、ゆっくりと一番奥までハメたり抜いたりを繰り返した。ぐぽ、ぬぽ、と粘度の高い水音が腹の中から響いて正気を手放しそうになったのに、師匠に囁かれた言葉に冷水を浴びせられたように一気に目が覚めた。
「かわいーから邪魔したくねぇけど、一応忠告しといてやるぞ。『姿が見えない』だけで、声は柵の外まで筒抜けだからな?」
「……ッ!?」
慌てて掌で口を塞ぐと、師匠はくっくと喉を鳴らして笑う。
周囲に視線を回すが、幸いなことに通行人の姿は無い。だけれど、どうせ聞こえないと思って結構な声量で叫んでいたから、もし隣家の住人が在宅だったら間違いなく聞こえていただろう。こんな真っ昼間から外に聞こえるほどの嬌声を上げるなんて、よほどの好き者みたいだ。
羞恥から頬も耳も熱くなって反省に身悶えるのに、師匠は俺の様子を気にした風もなく抽挿を続けてくる。
「言葉の裏までちゃんと考えねぇのはお前の悪い癖だな」
「~~っ」
怒りたいけれど、その通りだからやはり言い返せない。思い返してみれば、師匠はちゃんと『姿は見えない』『声を出してもいい』と言っていた。声も聞こえない、とは言っていなかったのだ。
恥ずかしさと八つ当たりみたいな怒りを師匠にぶつけたいのに、師匠はやっと排尿を終えた俺の肉茎を指で弄ぶようにしゅこしゅこと擦り立ててくる。
「っ……、師匠っ、こ……ここじゃ……っ」
「んん? あんあん啼けねぇと不完全燃焼になっちまうか?」
持ち上げていた膝からやっと手を離してくれた師匠は、しかし今度は後ろから腰骨を掴んできたかと思うとそのまま俺の身体を持ち上げた。足下の土は俺の小便を吸ってすっかり黒く色を変えていて、けれど師匠は気にすることなく柔らかくなった土を踏んで玄関の方へ移動していく。
「は……っ、ぁ、う」
奥深くまで挿入された状態で抱え上げられ、師匠の肉が嵌め込まれた奥が気持ち良くて呻いた。乳首にぶら下がった石がぶらんぶらんと大きく揺れて、強い刺激に背を反らすと腹の中で師匠がぶるっと震えて大きくなる。
玄関のドアのところまで来ると師匠は俺を立たせ、そこに手をつくように示してきた。
「……犬は立たないんじゃなかった?」
ほんの少しやり返したかっただけだ。
それなのに、師匠は俺の後ろでふっと笑ったかと思うといきなり激しく腰を振り出した。
カリの太いところまで引き抜いて、そこから一気に押し込まれて腹の奥を叩かれる。太い肉で内側を擦られて焼け焦げそうな心地で、一気に上り詰めた。
「──ッ」
びゅるる、と自分の肉茎が白濁を吐き、玄関のタイルに落ちて染みを作るのを目下にする。
俺がイッても師匠は止まってくれないのはいつもの事で、敏感になった内側を更に苛むようにゴリゴリと擦られて何度も腰が跳ねた。
どちゅどちゅとローションが肌と肌の間で粘ってぶつかる音が響き、卑猥さに耳を塞ぎたくなるのに揺さぶられる身体を支える為にはドアに手をついているしかない。
「犬ならワンワン鳴いてみろ、ほら」
「あっ、ぅ……、ん、ああぁ……っ」
今さら唇を噛んで声を我慢しようとする俺に、師匠は後ろから手を伸ばしてきて口端から指を捻じ込んできた。滑らかで長い指が俺の口の中で濡れた粘膜を撫ぜ、その感覚に啼く俺をもっと追い上げたいみたいに腰の動きが乱暴になる。
「やぁ、ししょ、師匠っ、やら、声、聞かれたくない、師匠以外はやだ……っ」
頭を振って嫌がるとなんとか師匠の指が口から抜けていって、また唇を噛もうとするのに乳首を摘まみ上げられて小さく悲鳴を上げてしまった。
「あっ、あう、う」
びくびく、と内腿が震えて、乳首への刺激でまた陰茎から精を吐く。
師匠とセックスするようになってから弄り回されるのに慣れたそこはすっかり快感の種で、腹の中を抉られながら摘ままれると痛みより気持ちよさの方が勝った。片方は石の揺れで刺激され、もう片方はそれに加えて師匠の指で先端をぐりぐりと捏ね回される。
息をするのも忘れそうな快感に倒れ込みそうな俺の腰骨を掴んで支える師匠も息荒く、俺の中で一層肉を膨らませて奥へ叩きつけてきた。
「可愛いなぁ、エシャ……、お前、ほんとに可愛い……っ」
「は……っ、……っあ、ぅ……!」
ラストスパートに一番奥の狭い所でぐぽぐぽと抜き挿しされ、目の前に星が散った。ぐらんぐらんと揺れる視界が明滅して、腹の中で師匠の陰茎が大きく震える。じゅわ、と温かい感覚が広がって、俺の中で師匠が果てたのを知った。
俺も師匠も全力疾走の後みたいに息が荒い。師匠に後ろから押されるように玄関の中に入り、床に敷かれた絨毯の上に倒れ込んだ。
「はー……、師匠……、満足した……?」
しばらくそこで繋がったまま息を整え、ようやく喋れるようになってからそう訊くと師匠は返事のように俺の中に入ったままの肉を膨らませた。
「……え、また?」
「なに言ってんだ。日付が変わるまでは俺の誕生日だろ?」
「………………」
無言で逃げだそうとした腰を掴まれ、また深く挿入される。まだ柔らかいのに長い師匠の肉に俺の中が期待で染まって、俺は逃げたいのに身体の方が陥落して無抵抗に崩れ落ちた。
「師匠っ、おねが……、せめて少し、休憩させて」
「もう一回したらな」
俺が逃げるのを諦めたのを感じ取ったのか師匠は一度俺の中から抜いて、今度は俺を仰向けにさせて向かい合う格好で挿れてくる。浅い所を先端で強めに擦っていかれて、跳ね起きるように俺の肉茎が臍につくのを師匠が楽しげに笑った。
……仕方ない。だって今日は、師匠の誕生日なんだから。
そう考えて、はたと気付く。
「誕生日おめでとう、師匠」
まだ言ってなかった、と焦る俺を見下ろして師匠は「やっとか」と笑って、それから唇にキスを落としてくれた。柔らかいそこが触れ合って、お互いの体温が馴染んでいく感覚に嬉しくなる。
セックスも好きだけど、キスは格別だ。俺と師匠がちゃんと好き合った恋人なんだって実感出来る。
「そういえば、師匠って何歳になったの?」
必要に駆られたこともなく気にした事も無かったのだけど、ついでとばかりに訊いてみたら師匠はわざとらしくにっこりと笑った。……あ、これ、誤魔化されるやつ。
「そんなんどうだっていいだろ。ほら、続きすんぞ」
「待って、なんで教えてくれないのさ。なにか秘密でもあるの?」
「ねーよ。どうでもいいだけ」
「うっそだー、師匠、都合悪いことそうやって笑って誤魔化すの知ってるんだから……」
言い募ろうとした口を舌を絡めるキスで塞がれて、駄目押しとばかりに乳首を摘ままれて腰が浮いた。
「師匠、ずるい……っ」
「可愛いぞ、エシャ」
「またそうやってっ」
誤魔化す、と叫ぼうとした声は師匠の口に食べられて飲み込まれた。
まぁでも、いいか。師匠が何歳だろうと、俺の大好きな師匠であることに変わりはないんだから。
首輪に繋がる紐を持ってにっこり笑った師匠は、玄関のドアノブにもう手をかけている。
「……っ、あの、師匠」
「どうした?」
「ほ、本当に……?」
「なんだよ、『何でも』って言ったのはお前だろ?」
そうだよ、言ったよ。
師匠の誕生日だからなんでもしてあげるよ、って。
そういう言い方をしたら絶対師匠はエロい意味でとることも、ちゃんと分かって言った。
けどさ、けど……。
「いくらなんでも、これは……っ」
俺の現在の格好は、ほぼほぼ全裸。
膝上まである長い靴下と手袋がかろうじて服飾品と呼べるものだろうか。どちらもふわふわの毛皮が表地で、裏地はしっとりした伸縮性のある生地だ。手袋はともかく、こんな靴下を服屋で見たことは無い。一体どこで買ってきたのやら。
他は犬用の赤い細い首輪と尻尾だけで、胴体部分は素っ裸だ。
窓を閉めている室内では汗だくになるような陽気だから風邪をひくことはないだろうが、身に纏う布地が無いことがこんなに心細いものだとは思わなかった。
ぐ、と首輪に繋がるリードを引かれて一歩踏み出す。途端、腹の中の物が揺れて息を詰めた。
「……ッ、……し、しょ……」
「おーおー、もう勃ってんじゃねぇか。そんなに嬉しいかよ?」
俺の股間を見て師匠は揶揄うように笑みを深くした。
膝裏まで届くふさふさ毛並みの長い尻尾の先は、俺の中に埋まっている。長くて柔らかい団子が連なったような形状の棒が、尻尾毛が生える境目までずっぽりと。
少し動くだけで、その棒の先が腹を抉ってくる。いつも師匠が嵌め込んで俺を狂わせる一番奥の、その一歩手前。
あと少し奥、ほんの少し奥を叩いてくれればもっと気持ち良くなれると分かっているのに、ただの棒であるそれは俺の疼きなんか分かっちゃくれない。
「師匠ぉ……」
少量の潤滑油を使ってそれを挿入されたのはついさっきだ。
それから首輪を付けられて、玄関まで数十歩歩いてきただけ。
なのにもう俺の身体は限界で、リードを持って外へ行こうとする師匠の腕に縋り付いた。
「ギブアップ早すぎんだろ、エシャ」
「だって、これ……、奥、届かな……」
あと少し、ほんの少しでいい。奥の狭まった所を割り開いて肉を嵌め込んで、そこからぐぽっと音が聞こえるくらい勢いよく引き抜かれたい。あれをされると頭が蕩ける。性行為に使うようには作られていない穴の、平均よりずっと長いはずの師匠の陰茎でやっと届く一番奥に正気を失うほど気持ちいい場所があるというのがなんとも不思議だ。
いつも師匠がしてくれるのを脳内に反芻してぶるりと尻を震わせると、師匠は目を細めて「恥ずかしいとかじゃねぇのかよ」と小さく呟いた。
「だって……、魔術、掛けてくれるんでしょ?」
だったら恥ずかしがる方が不自然だ、と答えると、師匠は俺の頭を撫でながら考えるような素振りをみせる。
今日は師匠の誕生日。
師匠がプレゼントに望んだのは『俺を犬にして外を散歩したい』というものだった。さすがに全裸首輪姿で外出するなんて出来ないと却下しようとしたのだけど、「周りに認識湾曲魔術を掛けてお前を普通の『犬』に見えるようにする」「外といっても庭まで」と言うので渋々了承した。
全裸だとしても周りからは犬に見えるのだからそれを不自然がる人はいないだろうし、なら俺が恥ずかしがる方が不審に思われる。
それよりも、尻の中に埋まる棒の方が厄介だ。師匠の希望するプレイをしてあげたいのはやまやまだけれど、先に一度抱いてからにしてほしくなる。
ぎゅう、と師匠の腕を掴むが、彼は俺の額を人差し指で押してきた。
「……? ししょ……」
「『お座り』だ、エシャ」
師匠の表情は柔らかい。だけれど、その声に拒否を許す色は含まれていなかった。
その場に膝をついてみたが、師匠は首を横に振って「違う」と言う。
「犬はそんな座り方するか?」
「……細かい」
しゃがんだ状態から両足を開き、その間に両手を揃えてついた。小さく愚痴る俺の額を師匠がバチッと指で弾く。
「喋りもしねぇんだよ。……そうだな、声出したら魔術解除な。気ぃ張れよ」
「っ!?」
へ、と言おうとして慌てて口を閉じた。
ちょっと待ってと止めようとしたのに師匠はさっさと玄関のドアを開けて、パッと眩しい光が入ってきて目を細める。
風が股間の下を通り過ぎていって、そんな所に風を感じたことがなくて身を竦ませた。
「おーう三つ編みぃ。珍しいな、昼間っから起きてるなんて」
「!!」
ちょうど配達に来た所だったのか、庭の柵の向こう側に郵便配達員が立っていて、師匠に声を掛けてきた。
師匠のトレードマーク兼あだ名の由来だった長い三つ編みは卒業試験の時に切れてしまって、だけれどそれで師匠への呼び名を変えるのも面倒だと色々な人から言われ、今は頭の右半分だけを編み込んでいる。
肩までしかない長さを三つ編みにすると幼女のようで違和感があったから編み込みにしたのだけど、口調の乱暴さと相まって柄の悪さが半端ない。酒場で酔い潰れていても財布を抜かれるのが少なくなったのは不幸中の幸いか。
師匠はリードの先を玄関に落としてさっさと庭へ出ると、配達員から柵越しに手紙を受け取った。
「ああ。犬を預かっちまってな、庭に出してやるかと思って」
そう答えながら師匠は俺の方を顎でしゃくって示す。
配達員が玄関の中に座っている俺に視線を向けてきて、ビクリと身体を強張らせた。
「犬ぅ? お前が世話……は無ぇか、エシャちゃんはどうしたんだ?」
師匠の認識湾曲魔術はちゃんと発動しているらしく、配達員は家の中の俺に目を凝らしてからすぐに師匠へ視線を戻した。
素っ裸よりも恥ずかしい格好の俺を見ても動揺も困惑もしないんだから、大丈夫そうだ。
ホッと胸を撫で下ろし、彼らの会話が終わるのを待つ。
「あいつがいねぇから俺がやってんだよ」
「そりゃまた偉いじゃねーか。飼い犬が犬の世話たぁよ」
「誰が飼い犬だ」
逆だろ、とぶつぶつ文句を言いながらこちらへ戻ってきた師匠は、手紙を玄関先のチェストに置くとリードの先を拾い上げた。
「ほら、挨拶しろ、エシャ」
「……!?」
ぐい、と首輪に繋がる紐を引かれて驚いて前に手をつく。
どういう事か意味が分からず抵抗する俺を玄関から引きずりだそうとする師匠の後ろで、配達員がカラカラと笑った。
「おいおい、エシャちゃんがいねーからって犬を代わりにしてんのかよ」
「そーだよ。こいつが今は『エシャ』だ。ほらエシャ、出てきてお客さんにご挨拶だ」
「……っ、……!!」
俺が『普通の犬』に見えているだろう配達員は師匠の言葉を冗談としか思っていないようで、必死に踏ん張っているのにずるずると外に出された俺を見て「綺麗な毛並みの犬だな」なんて観察してくる。
俺がぶんぶん首を振って嫌がるのに師匠は口元をニヤつかせて強引に引っ張り、とうとう柵の近くまで連れてこられてしまった。裏地付きの長い靴下と手袋はこうして無理やり引きずっても俺の肌に傷を付けない為だったか、と今さら気付く。
暖かい陽光とほどよい微風。見慣れた家の庭に、けれど今、俺はほぼ全裸で、四つん這いになっている。
顔見知りの配達員の前でこんな格好をしている状況に手が震え、急所を隠すように小さく身体を丸めた。
「ん? なんだこいつ、外が怖いのか?」
配達員が首を傾げ、しゃがみこんで俺と目を合わせてくれようとする。
「おーいワンコロ、どうした? こわくないぞー、ほれこっち来い、撫でてやるぞー?」
師匠の家には何重も結界が張られているから、向こう側から手を伸ばしてきても中の俺には触れられない。それが分かっているからか、師匠は口元を笑ませながらよしよしと俺の頭を撫でた。
「どうも人慣れしてなくてな。やっと一個芸を覚えさせたんだが」
「おっ、どんなのだ?」
芸? そんなの仕込まれた覚えはない。
いきなり何を言い出すのかと師匠を見上げると、彼は一層意地悪そうな笑みを深くして指をクイと下から上に上げる仕草をした。
「エシャ、『ちんちん』」
………………。
その言葉で犬がどんな芸をするのか、分からないわけではない。俺自身は犬を飼ったことは無いけれど、この近所には番犬として飼っている家が多い。そうでなくとも、スラムでは躾けた野良犬と幼児が家族同然に育っているのも珍しくない。
だからそのコマンドがどんな姿勢を示しているのか、それはちゃんと分かる。……分かる、けど。
俺が睨んでも師匠は全く意に介してないみたいに、もう一度同じ仕草を繰り返す。
ぐっと拳を握り、俺は犬俺は犬、と心の中で唱えながら前脚を上げるように膝立ちした。何も着ていない胴体と恥部を晒す格好に強く目を瞑って耐える。
師匠の誕生日だから。お祝いとして発案したのは俺だから。恥ずかしくない、だって今は犬、俺は犬、犬が芸をするのは当然、だから絶対に何も恥ずかしくない。
「おー、ちゃんと出来るじゃねぇか。偉いな、ワンコロ」
配達員は最後まで俺をただの犬としてしか認識しないまま、「じゃあな~」と手を振って隣の家へと移動していった。
去って行く気配にホッとして腕を下げると、頭に師匠の手が乗った。
「思ってた反応と違うな」
はい?
俺が目を開けて睨むと師匠は顎を摩りながら不満そうに首を傾げた。
「お前、こういうので興奮しねぇ性質か? アテが外れたな」
師匠は俺の股間へ視線を落として、そこがすっかり萎んでしまっているのを示してくる。
こういうので興奮、って。どこに興奮すればいいんだ? 外で裸になっていること? それとも、師匠の犬になっていること?
師匠への誕生日プレゼントなのに師匠の期待に添えないのは申し訳ない。どういう反応を求めているのだろう、と師匠の膝に頭をつけて、そこから師匠の思考に潜り込もうとしたら額を強めに小突かれた。
「っ……」
痛い、と声に出しそうになって、すんでのところで口を噤む。声を出したら魔術が解けてしまう。こんな格好で庭先に出ているところを近所の人に見られたら、半年はその話題で揶揄われるに違いない。
「何しようとした、おい」
俺の前にしゃがみこんできた師匠に睨まれ、恨みがましく睨み返す。
喋れないんだから意思疎通するには思考を読むしかないじゃないか。
じっと見つめても通じるはずもなく、師匠は俺の顎の下から耳たぶをすりすりと撫でてくる。あ、これ、気持ちいい。
師匠の掌に自分から押し付けるように頭を擦り付けると、師匠は睨む目を和らげて口元を綻ばせた。
「犬が嫌なわけじゃねーんだな?」
問いかけられ、口を閉じたまま頭を縦に振って答える。
「んー……」
大人しく犬座りで撫でられる俺に、師匠は少し考えるように黙ってからリードを引いてきた。自然と上向かされ、師匠と目を合わせると顔が寄ってきて唇が重ねられる。触れるだけで離れていくはずもなく、舌が入ってきて少し焦った。
これ、はたから見たら師匠は犬とディープキスする人だ。
それはそれで近所にどんな噂が流れるか考えるとたまったものではなく、バシバシと師匠の肩を叩くとその手首を掴まれた。
「魔術式変更したから安心しろ。柵の外から俺たちの姿は見えねぇ」
声出してもいいぞ、と続けて告げられ、眉を顰めた。俺の反応が期待通りじゃなかったから、もう終わりって事だろうか。
「あの、師匠……、えっと、どういう反応して欲しいのか先に言ってくれたら、その通りにするから」
「そんなん望んでねーよ」
どう演技すればいいのかと訊いてみるのに、すげなく却下されてしまった。どうしよう。師匠は俺のことが大好きだから、どんな反応でも結局は喜んでくれると思って油断していた。
もっと恥ずかしがるべきだった? いや、十分恥ずかしかった。庭に出されるのも抵抗して縮こまっていたのに、更に恥ずかしい芸までさせられた。だったら何がいけなかったんだろう。一体どんな反応をすれば──。
「だぁから、『俺の思い通りに』なんて望んでねんだっつの」
「いたっ」
額を指で弾かれ、沈んでいた思考が引っ張り上げられる。
何度もデコピンを喰らってヒリつく額を撫でながら師匠の言葉に首を傾げると、師匠は俺の尻を撫でてそこに埋まる棒をぐっと押し込んできた。
「……っは、ぁ」
腹の奥を抉られて思わず前のめりに倒れそうになるのを師匠が抱き留めてくれて、けれど続けざまに棒を出し入れされて背筋が弓なりに反った。
棒は師匠のに比べると細くて短く、尻尾毛のある境目ギリギリまで入れられても一番奥に届かない。ぶちゅぶちゅと内側から垂れてきたローションが泡立つ音がするほど激しくされても、物足りなさに拍車がかかるばかりで焦れったさに身体が疼いた。
喉元が熱くて苦しい。師匠が入れてくれればこんな焦燥感はすぐ飛んでいくだろうに。
「やっ、……師、匠」
「こっち弄るとすぐ勃つなぁお前。そんなにケツん中ほじられんのが好きかよ?」
「……っ」
師匠はわざと下卑た言葉で俺を辱めようとしてくる。彼の言葉通り、さっきまで萎びていた俺の肉茎はすっかり勃ち上がっていて、後孔に棒を抜き挿しされる勢いで身体が揺れる度に臍の下に先端が当たっている感触がある。
反論出来ないから唇を噛んで声を我慢しようとしたのに、師匠は俺の耳に唇をつけてその中を舐めてきた。ぴちゃ、と小さい筈の水音がやけに大きく響く。湿った舌は耳穴の入り口をぐるりと舐めると耳朶を甘噛みしてきた。先の尖った犬歯が刺さってくる感覚に身震いして、俺の身体を抱き留めたままの師匠に縋りつく。
「い、意地悪、しないで、師匠……っ」
「してねぇよ。楽しんでるだけだ」
師匠は俺の胸を撫でると「忘れてた」と呟き、ローブのポケットをごそごそと漁って何かを取り出した。
「……なに、それ?」
「楽しさが増す玩具。たぶんお前、すげー好きだぞ」
師匠の掌の中にあったのは金属製のアクセサリーのような物だった。丸い金具と、その先に細長いチェーンが伸びていて、先端には大きな緑色の石がある。
師匠の瞳の色に似た、綺麗な宝石。じっと見つめていると師匠は満足げに口元を笑ませ、丸い金具の切れ欠になっている所で俺の乳首を挟み込んだ。
「んっ」
「痛いか? 少しなら緩められるぞ」
「……ううん。痛くはない、かな」
切れ欠の端が丸くなっているから痛みはなく、けれど乳首の根元をしっかりと挟み込んで石の重みでも落ちる気配はない。
平らな胸にぽつりと立つ乳首の下にぶら下がる緑の宝石を見下ろし、ただの綺麗なアクセサリーにしか見えないこれが一体どんな猥褻な玩具なのかと首を傾げた。
師匠は反対の乳首にもそれを付けて、それから俺の頭をひと撫ですると立ち上がって庭の端の方へ歩いて行く。
俺のいる場所から、普通に歩いて大体二十歩程度。そこまで行った師匠はこちらをくるりと振り返ると、パンパンと手を叩いた。
「よし。こっちまで四つん這いで来れたら、尻尾じゃなくて俺の突っ込んでやる」
来い、と手招きされ、なんの疑問もなく四つん這いで膝を一歩前に出した途端、腹の中の棒がそれまでと違う場所を擦って息を詰めた。内側の腹側の、割と浅い所にある気持ちいいところ。奥の悦さに比べると劣るけれど、息を乱すには十分過ぎる快感だ。
「ふ……っ」
加えて、四つん這いで身体を動かすと胸にぶら下がった石が錘のようにブラブラと揺れ出して乳首にじわっと刺激がきた。揺れに合わせて微かに乳首が引っ張られるようで、身悶えるとかえって揺れが不規則になって先端が火照っていく。
乳首への刺激はじっとしていられなくなるような甘さに満ちていて、それだけでは到底イけないのにひどく中毒性がある。ジンジンするような快感は股間の方にも繋がって、無意識に後ろに入っている棒を締め付けて自分で自分を苦しめた。
「し、しょ……」
「いい表情になったな」
一度膝を前に出しただけで動けなくなってしまった俺を咎めるでもなく、師匠は楽しげに顎を摩りながらこちらを眺めている。
震える膝に力を入れて、さっきのと反対の膝を上げて前へ出した。
「……っ、は、ぁ」
足が動くと腹の中も蠢いて、中の棒の角度が変わる。両手を先に動かし、それに合わせるように交互に膝を出していくだけなのに数歩ごとにその場に蹲りたくなった。
動く度に、後孔に挿入された棒が少し抜けてはまた入ってくる。まるで意思を持ってわざと俺を苛んでいるみたいだ。穴の方を責められているだけで息が乱れて辛いのに、優しく虐められている乳首が更に意識に靄をかけてくる。
全身が熱くて、日光の所為じゃなくじっとりと汗をかいて陰部以外も濡らしていく。
気持ちいいのに、まだ狂えない。頭がぼぅっとして上手く動かないのに、正気は保ったまま。
中途半端に押し上げられた身体が辛く、涙目になりながら必死で師匠の元へ進んでいく。
「……っ、あ、あぅ、っ」
いっそ一気に進んでゴールしてしまえばこのもどかしさから解放されるかも。そう思って勢いをつけて四つん這いのまま数歩駆けてみたら、浅い方の気持ちいい所を師匠に挿入れられている時みたいに連続でごつごつ叩かれて悶絶した。
「随分一人上手じゃねぇか、エシャ。イッちまったのか?」
尻を高く上げる格好でビクビク震えて止まった俺に、師匠が揶揄うような声を掛けてくる。
呼吸するとひゅうひゅうと喉を空気が抜けていく音がして、けれどそんな事に気遣う余裕はない。荒い息を飲み込んで寄せる波を必死に我慢して、ともすれば浅いところで決壊しそうなのを散らす。
「……ま、だ……っ」
ギリギリだけれど、堪えられた。師匠が目の前にいるのに、棒なんかにイかされたくない。あと数歩、あと数歩頑張れば、師匠が抱いてくれる。
「早く来い。……エロ過ぎて俺の方が我慢きかなくなりそうだ」
再び牛歩で進み始めた俺に、師匠が腕を組んで苦笑する。膝丈のローブの下がどうなっているのかは見えないが、どうやら俺の痴態は彼の興奮を呼んだらしい。
なんとか誕生日プレゼントらしいことが出来ただろうか、と思いながらフラつく腕と足を動かし、師匠の膝に額を付けたところで崩れ落ちた。
「ついた、……師匠、ついた、よ」
「ああ。頑張ったな」
蹲る俺の横に膝をついた師匠は俺の背中を撫で、その手が下へと下がっていったかと思うとおもむろに尻尾を掴んだ。
「ひ……ッ」
深くまで挿さっていた棒が引き抜かれ、じゅぽっ、と大きな水音がする。俺の内側を裏返しそうな勢いに、思わず喉から細い悲鳴が出た。
腹の中を埋めていたものが一気に出た快感は違う感覚を引き寄せてしまい、耐える間もなく勃起した陰茎からしょわ、と小水が漏れていく。
「や……、やぁあ……っ」
止めたいのに、止められない。それまで我慢し続けていた所為で排尿ですら震え上がるほどの開放感で、人前で、それもよりにもよって師匠の前での失禁だというのに止めることが出来ない。
「んー?」
「あ、や、ししょっ……」
音に気付いたのか師匠は俺の片膝を掴んでひょいと持ち上げて、俺が肉茎の先から黄色い小便を垂れ流しているのを見て意地悪く笑った。
「犬ならこの格好だろ? エシャ」
片膝を高く上げる格好になると陰茎の先が師匠の靴を濡らしてしまって、嫌がって身を捩るのに師匠は手を離してくれない。
どころか、そのまま俺の後ろに回ってきたかと思うとローブをたくし上げて股間を露わにし、後孔に陰茎の先を押し付けてきた。
「ひ、……っ」
ローションで濡れた穴はすんなりと師匠の猛りたった肉を飲み込み、そのまま根元までずっぷりと押し込まれた。腹の中の一番奥の、狭まった所を師匠の陰茎が無理やり割り開いて頭を捻じ込んでくる。
「ぃあっ、あ、あ、ししょ……っ、ししょお……っ」
次いで、そこから引き抜かれて足先まで電気が走ったみたいに痙攣した。まだ小便が出続けている所為で精が吐けず、なのに腹の中だけが先に達してビクビクと何度も跳ねる。
「あーっ、あ、あぁぁっ、奥っ、奥ぅ、ししょお、もっと、もっとしてぇ……っ」
やっぱり師匠のが一番気持ちいい。熱くて硬くて、俺の一番気持ちいいところを的確に抉ってくれる。
歓喜に震える身体は意識しなくても勝手に師匠の肉を締め付け、もっと奥へ引き込もうとするみたいに動く。師匠はそれに逆らおうとはせず、ゆっくりと一番奥までハメたり抜いたりを繰り返した。ぐぽ、ぬぽ、と粘度の高い水音が腹の中から響いて正気を手放しそうになったのに、師匠に囁かれた言葉に冷水を浴びせられたように一気に目が覚めた。
「かわいーから邪魔したくねぇけど、一応忠告しといてやるぞ。『姿が見えない』だけで、声は柵の外まで筒抜けだからな?」
「……ッ!?」
慌てて掌で口を塞ぐと、師匠はくっくと喉を鳴らして笑う。
周囲に視線を回すが、幸いなことに通行人の姿は無い。だけれど、どうせ聞こえないと思って結構な声量で叫んでいたから、もし隣家の住人が在宅だったら間違いなく聞こえていただろう。こんな真っ昼間から外に聞こえるほどの嬌声を上げるなんて、よほどの好き者みたいだ。
羞恥から頬も耳も熱くなって反省に身悶えるのに、師匠は俺の様子を気にした風もなく抽挿を続けてくる。
「言葉の裏までちゃんと考えねぇのはお前の悪い癖だな」
「~~っ」
怒りたいけれど、その通りだからやはり言い返せない。思い返してみれば、師匠はちゃんと『姿は見えない』『声を出してもいい』と言っていた。声も聞こえない、とは言っていなかったのだ。
恥ずかしさと八つ当たりみたいな怒りを師匠にぶつけたいのに、師匠はやっと排尿を終えた俺の肉茎を指で弄ぶようにしゅこしゅこと擦り立ててくる。
「っ……、師匠っ、こ……ここじゃ……っ」
「んん? あんあん啼けねぇと不完全燃焼になっちまうか?」
持ち上げていた膝からやっと手を離してくれた師匠は、しかし今度は後ろから腰骨を掴んできたかと思うとそのまま俺の身体を持ち上げた。足下の土は俺の小便を吸ってすっかり黒く色を変えていて、けれど師匠は気にすることなく柔らかくなった土を踏んで玄関の方へ移動していく。
「は……っ、ぁ、う」
奥深くまで挿入された状態で抱え上げられ、師匠の肉が嵌め込まれた奥が気持ち良くて呻いた。乳首にぶら下がった石がぶらんぶらんと大きく揺れて、強い刺激に背を反らすと腹の中で師匠がぶるっと震えて大きくなる。
玄関のドアのところまで来ると師匠は俺を立たせ、そこに手をつくように示してきた。
「……犬は立たないんじゃなかった?」
ほんの少しやり返したかっただけだ。
それなのに、師匠は俺の後ろでふっと笑ったかと思うといきなり激しく腰を振り出した。
カリの太いところまで引き抜いて、そこから一気に押し込まれて腹の奥を叩かれる。太い肉で内側を擦られて焼け焦げそうな心地で、一気に上り詰めた。
「──ッ」
びゅるる、と自分の肉茎が白濁を吐き、玄関のタイルに落ちて染みを作るのを目下にする。
俺がイッても師匠は止まってくれないのはいつもの事で、敏感になった内側を更に苛むようにゴリゴリと擦られて何度も腰が跳ねた。
どちゅどちゅとローションが肌と肌の間で粘ってぶつかる音が響き、卑猥さに耳を塞ぎたくなるのに揺さぶられる身体を支える為にはドアに手をついているしかない。
「犬ならワンワン鳴いてみろ、ほら」
「あっ、ぅ……、ん、ああぁ……っ」
今さら唇を噛んで声を我慢しようとする俺に、師匠は後ろから手を伸ばしてきて口端から指を捻じ込んできた。滑らかで長い指が俺の口の中で濡れた粘膜を撫ぜ、その感覚に啼く俺をもっと追い上げたいみたいに腰の動きが乱暴になる。
「やぁ、ししょ、師匠っ、やら、声、聞かれたくない、師匠以外はやだ……っ」
頭を振って嫌がるとなんとか師匠の指が口から抜けていって、また唇を噛もうとするのに乳首を摘まみ上げられて小さく悲鳴を上げてしまった。
「あっ、あう、う」
びくびく、と内腿が震えて、乳首への刺激でまた陰茎から精を吐く。
師匠とセックスするようになってから弄り回されるのに慣れたそこはすっかり快感の種で、腹の中を抉られながら摘ままれると痛みより気持ちよさの方が勝った。片方は石の揺れで刺激され、もう片方はそれに加えて師匠の指で先端をぐりぐりと捏ね回される。
息をするのも忘れそうな快感に倒れ込みそうな俺の腰骨を掴んで支える師匠も息荒く、俺の中で一層肉を膨らませて奥へ叩きつけてきた。
「可愛いなぁ、エシャ……、お前、ほんとに可愛い……っ」
「は……っ、……っあ、ぅ……!」
ラストスパートに一番奥の狭い所でぐぽぐぽと抜き挿しされ、目の前に星が散った。ぐらんぐらんと揺れる視界が明滅して、腹の中で師匠の陰茎が大きく震える。じゅわ、と温かい感覚が広がって、俺の中で師匠が果てたのを知った。
俺も師匠も全力疾走の後みたいに息が荒い。師匠に後ろから押されるように玄関の中に入り、床に敷かれた絨毯の上に倒れ込んだ。
「はー……、師匠……、満足した……?」
しばらくそこで繋がったまま息を整え、ようやく喋れるようになってからそう訊くと師匠は返事のように俺の中に入ったままの肉を膨らませた。
「……え、また?」
「なに言ってんだ。日付が変わるまでは俺の誕生日だろ?」
「………………」
無言で逃げだそうとした腰を掴まれ、また深く挿入される。まだ柔らかいのに長い師匠の肉に俺の中が期待で染まって、俺は逃げたいのに身体の方が陥落して無抵抗に崩れ落ちた。
「師匠っ、おねが……、せめて少し、休憩させて」
「もう一回したらな」
俺が逃げるのを諦めたのを感じ取ったのか師匠は一度俺の中から抜いて、今度は俺を仰向けにさせて向かい合う格好で挿れてくる。浅い所を先端で強めに擦っていかれて、跳ね起きるように俺の肉茎が臍につくのを師匠が楽しげに笑った。
……仕方ない。だって今日は、師匠の誕生日なんだから。
そう考えて、はたと気付く。
「誕生日おめでとう、師匠」
まだ言ってなかった、と焦る俺を見下ろして師匠は「やっとか」と笑って、それから唇にキスを落としてくれた。柔らかいそこが触れ合って、お互いの体温が馴染んでいく感覚に嬉しくなる。
セックスも好きだけど、キスは格別だ。俺と師匠がちゃんと好き合った恋人なんだって実感出来る。
「そういえば、師匠って何歳になったの?」
必要に駆られたこともなく気にした事も無かったのだけど、ついでとばかりに訊いてみたら師匠はわざとらしくにっこりと笑った。……あ、これ、誤魔化されるやつ。
「そんなんどうだっていいだろ。ほら、続きすんぞ」
「待って、なんで教えてくれないのさ。なにか秘密でもあるの?」
「ねーよ。どうでもいいだけ」
「うっそだー、師匠、都合悪いことそうやって笑って誤魔化すの知ってるんだから……」
言い募ろうとした口を舌を絡めるキスで塞がれて、駄目押しとばかりに乳首を摘ままれて腰が浮いた。
「師匠、ずるい……っ」
「可愛いぞ、エシャ」
「またそうやってっ」
誤魔化す、と叫ぼうとした声は師匠の口に食べられて飲み込まれた。
まぁでも、いいか。師匠が何歳だろうと、俺の大好きな師匠であることに変わりはないんだから。
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エシャが健気でえろ可愛くて最高でした。師匠の溺愛も素敵です
初めまして!
ランキングでこの作品を見つけ一気に読ませていただいたのですがもう。。。最高すぎました...
本当に綺麗で読みやすくて物語にのめり込んでしまいました!!!
エシャが純粋で本当可愛い...勘違いしてたりボートしてたり頑張り屋だったり...本当可愛い。。。
途中でユルカはただ師匠を呼ぶ為に使ってるだけでユルカの目に自分は写ってないって所思わず泣いちゃいました...そしてその後の悔しさをバネにアッと言わせたエシャの頑張りも...😭
師匠も意外と成人まで我慢して性欲をエシャにおくびにも見せなかったりユルカとの戦いも余裕だったり、そういうプロさというか“師匠”さというか、本当にカッコよかったです...
あと登場人物の名前がそれぞれにピッタリな感じで本当好きです(特に、ユルカって名前が好きです!!!)
素敵な作品をありがとうございます😭