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八月に入って、二週間後にインターンを控えた日の夜。
ルームに入って手錠をされプレイの準備中、次に来るのは恐らく一番早くても六日後になる、とヤジに言ったら、理由を聞かれたので素直にインターンだと答えた。
「そっか。イサトくん、大学生なんだ。狙いは? やっぱ関東圏内?」
「ですね。埼玉の会社が第一候補です。今通ってる大学も埼玉だし」
答えてから、少し詳細に話し過ぎたか、と口を閉じた。このゲームで身バレしたら最悪だ。ヤジは穏やかで、警戒心を失くさせる。彼が俺の情報をどうこうすることは無いだろうが、他のプレイヤーと遊ぶ時には気を引き締めないと。
俺の返事を聞いたヤジは、少し沈黙してから、俺を抱き締めて「リアルで会ってみない?」と囁いてきた。
「……いや、それ、規約違反でしょう」
「就職についての色々とか、相談に乗ってあげたいなー、なんて。俺、一応現実では役職付きだし。……ダメかな」
「ここでいいじゃないですか」
「ここだとね、ほら、会社名とかログに残るとまずいから」
うーんと考える素振りはしてみるけれど、フリだけだ。相談なんていうのが口実に過ぎないなんていうのは分かりきっていて、その見え透いた嘘をヤジは隠そうともしない。だから、遠慮なく首を振って断った。
「すみません」
「うーん……、そっか。じゃあ、俺が勝手に行くだけってことで」
「はい?」
「川越駅前で、次の土曜日の午後三時」
「あの、だから」
「俺の予定を言っただけだよ」
「……」
断ったのに、ヤジはそれすら想定内みたいに、それきり話題を変えた。
勝手に取り付けられた約束だとしても、求められてしまったら、それを断るのは心が痛む。
もしかしたら、そんな俺の弱点を見抜かれているのかもしれない。そう思いつつも、土曜日の午後、俺は駅ビルの前に立っていた。
少し話をするだけだ。すっぽかしてなんかいないと言い訳する為だけ。期待なんかしていない。
……いや、大嘘だ。期待しているからこそ、来てしまった。現実の方で男とセックスするなんて初めてだけれど、ヤジなら上手く導いてくれるだろうと、妙に安心していた。
時刻は午後二時五十五分。
半袖Tシャツに黒スキニーの自分の格好を見下ろして、まあ変ではないよな、と確認してから、駅前広場の一番端のベンチに腰を下ろした。駅から出てくる人が見える絶好のポイントで、そのうえ駅ビルの庇のおかげで日陰になっている。
この駅は観光地の最寄り駅だからか、ひっきりなしに人が出入りしていた。ここから三駅の俺のアパートの最寄り駅では、この時間の乗り降りなんて両手で足りるくらいしかいないのに。人の集まる場所とそうでない場所の落差があると、田舎だなぁ、と感じずにいられない。
三分ばかりスマホを弄りながら待っていると、女の子に声を掛けられた。
「あの~……、すみません、この辺に猫屋敷があるって聞いたんですけど、方向を教えてもらえませんか?」
「え、うーん、俺地元じゃないんで……。ちょっと待って下さいね」
年頃は同じくらいだろうか。ぴっちりした半袖の襟ぐりの広い胸元からのぞく谷間の線に視線がいってしまいそうになって、慌てて逸らしてスマホで検索を掛ける。
「えっと、あっちの階段から降りてアーケードの横の大通りまっすぐ行けばいいみたいですよ。菓子屋横丁の中の一軒がそうらしいって……」
「一緒に行きませんか?」
スマホの画面を見ながら説明すると、一歩前に詰めてきた女の子が上目遣いに頼んできた。
「ごめん、今人待ってるので」
「そうですかぁ」
「大丈夫? 一人で行けそう?」
「……はい。大丈夫です」
ありがとうございました、と丁寧に頭を下げて、女の子は去って行った。
危ない、あれナンパだったのか。最近されてなかったから油断してた。大学では授業以外の時間はサークルの部室に籠っていて、他の生徒が少なくなってから帰るから滅多に捕まらないのだけど。
どうにも誘われると断り辛く、一人だといつも流されてしまう。ヤジとの約束が無ければ今日ものこのこ一緒に猫屋敷とやらまで連れて行っていただろう。
顔は普通だけれど、やたら伸びた身長は女の子にはそれだけで魅力的に映るらしく、ナンパされるのは珍しいことではない。
父よりはマシだけれど、多少でも遺伝してしまったこの性質が呪わしい。
はぁ、と暑さの所為でどうしようもない事にげんなりして溜め息を吐くと、こちらを見つめる視線を感じた。
顔を上げると、半袖の開襟シャツにデニムの細身の男が立っていた。じっと俺を見つめて、なんだか複雑そうな表情をしている。あまり良い感情は見えない。絡まれるのは嫌だな、と場所を移動しようとした俺の前にそれより早く男が近付いてきて、そして俺に向かって笑い掛けた。
「はい、解散。帰っていいよー」
「……はい?」
急に何を言われたのか分からず呆然とする俺に、男はよく見知った笑顔を作って手を振った。
「ごめんね、俺、美少年専門だから。君みたいなデブは無理。じゃあねー」
くるりと踵を返した男は、それだけ行って駅へと入っていってしまった。
……デブ?
言われたどの言葉も意味不明だったが、一番俺に似つかわしくない言葉を拾い上げて首を傾げた。普通体型の自分の体を見下ろして、皮しか掴めない腹をTシャツ越しに撫でる。いや、デブでは、ないよな。
ベンチの上でよくよく考えて、あれがヤジだったのだと暫くしてから思い当たった。そして俺が、初見でフラれたということにも。
「……マジかぁ」
脇から垂れた汗が腕を伝ってポタリと足元のレンガに落ちて、色を変えた。
それから、三日くらいゲームにログインしなかった。
あまり悩まないタイプなんだけれど、ゲーム内であれだけ可愛がってくれたヤジに現実の見た目だけでフラれたのは相当ショックだった。というか、美少年専門なら最初からそう言っておいてほしい。言っておいてくれれば、「俺は違うんで」と断れたのに。
ごろごろとベッドの上で転がって、久しぶりに現実の方で股間を握った。
「……ん」
ゲームでも現実でも、そう変わらない感触に、あのゲームがどれだけ精巧か思い知る。ゲーム内であれだけ良かったんだから、ヤジとのセックスはきっと現実でも……と、考えそうになって苛立ってまたゴロリと寝返りを打った。
「駄目だ。インして他の人とセックスしよ」
あのアバターだから、ヤジは俺を可愛がっていたのだ。
だったらもうあれは使わないようにしよう。最初からやり直そう。
よし、と身体を起こして、早速VRのヘッドギアを掴んで設定に入る。新しいアバターを作って、そっちでインしよう。名前は変えられないけれど、アバターを複数持っていて気分で変えているプレイヤーは珍しくない。
アバターの設定が面倒そうだと思って敬遠していたのだけれど、やってみるとそう難しいものでもなかった。身長から体重、体型まで、設定された項目の数値を弄っていくだけで、アバターの形が変わっていく。
どんな外見にしようか考えて、もうヤジに捕まらない系統のものにしよう、と真っ先に考えた。俺をデブと呼ぶならやはり、いつものアバターくらいの細身が好みなんだろうから、だったら普通体型で。顔は普通で、ちょっと身長は高めにしよう。『美少年』のイメージから離れよう離れよう、と考えていたら、出来上がったのは俺そっくりのアバターだった。
「あ~……」
少し迷ったけれど、どうせゲイサーバーだ。現実の知り合いと出会ってしまったとしても、そいつもゲイだ。言い触らしたりは出来ないだろう。それに、このアバターなら今後もしオフで会っても外見で幻滅はされない。いや、オフで会わなきゃいい話なんだろうけど。
まあいいや、とそれで新規アバターの設定を終えて、ヘッドギアを装着した。ゲームのスタートボタンを押して、ログインする。
目を閉じて、開いて。スポーン位置はあの懐かしい草原で、ちょうど一年くらいか、とその辺を散歩してみた。
よくよく見れば、少し離れた位置に何人か座って待機してるプレイヤーが居る。あれが初物食い狙いの連中か。しかし、今日はアバターの所為か誰も声を掛けてこない。バーチャルでも顔で判断されるのか。俺はどうやら、最初から良いアバターを引き過ぎていたようだ。
誰も声を掛けてこないので、『総合雑談ルーム』への扉を出した。
開けた屋外の広場のような場所で、ぽつりぽつりとベンチが置いてある。結構たくさんの人が居て、俺の上に浮いた表示名を見て立ち上がろうとしたプレイヤーが、アバターを見て腰を下ろすのが散見された。
結構みんな、あのアバターが好きで声掛けてきてたんだな。
ヤジの後だから気にしてしまうけれど、考えてみれば普通のことだ。俺だって、このアバターと美少年アバターだったら美少年がいい。
現実の女の子からは引っ切りなしにお誘いを受けるこの外見も、ゲイサーバーのここではあまりウケが良くないのか誰も声を掛けてこない。嫌味ではなく、逆に新鮮だ。
このアバターでも相手をしてくれそうなルームを探してベンチに座ってルーム一覧を出して操作していたら、こふぅこふぅと変な呼吸の仕方をする男に声を掛けられた。
「あ、あの……、良かったら、デンチルーム行かない?」
デュフフ、と笑われて、キャラ作り込んでるなぁ、と感心した。
少ない髪から垣間見える、テカった頭皮。たるんだ腹はTシャツの中に収まりきらず、捲れた裾から肌が少し見えている。胸に描かれた美少女アニメキャラは可哀想に伸びて歪んでしまっている。何故かかなり際どく短いショートパンツを履いていて、そこから伸びる大根六本分くらいありそうな脚にはモサモサと毛が生えていた。
背負ったリュックからはソフトビニール製の怪獣の玩具が飛び出していて、『ザ・不審者』としての完成度は抜群だった。
「デンチ?」
「『電車痴漢』。『バス痴漢』はバスチ。『エレベータ痴漢』は……」
「いいですよ」
なんだか長々と続きそうだったので、途中で遮ってそう答えた。
「え? いいの? そっか、じゃあ、行こう。あの……これ」
「え?」
視界に『プレゼント』の文字が飛んで、急な事に驚いた。いや、まだ始めてもないのに。
「学生服……着て欲しいな……デュフ」
扉を開いた男は息を荒くして二チャリと笑っている。
……キャラ、だよな?
どっちでもいいか、ととりあえずその場でプレゼントされた詰襟の黒い制服に着替えて、そして男と一緒に扉を潜った。
ルームの中は本物の電車さながらで、ガタンゴトンという音以外に振動まで体感出来る。朝のラッシュを少し過ぎたくらいの混み具合で、真ん中に人一人が通り抜けられる道は空いているけれど、席は満席のようだ。
ところどころに頭の上にプレイヤー名が表示されているアバター以外はセット扱いのNPCなのかただじっと座って本を読んだりぼうっと立っている。
そういえば、と男の頭の上の表示名を見た。
「こころ……、え? こころ?」
「あ、やっと気付いた」
コロコロ笑ったこころはいつもの喋り方になって、それからコフゥと重そうな息を吐いた。
「やっぱりイサトだよね? 表示名でもしかしてと思って声掛けたんだけど、このアバターでも平気でオーケーしてくれるから絶対そうだと思ったよ」
「えー、前のアバ封印して新しい俺になるつもりだったのに。一番最初から知り合いに見つかっちゃうなんてなあ」
唇を尖らせて肩を落とすと、また視界に『プレゼント』の文字が飛ぶ。今度はなんだ、と開いたら、学生帽が出てきた。頭に被ると、こころが嬉しそうに、やはりデュフフと笑う。
「俺はそのアバターも結構好みだからイケるけど、今までよりは声掛けられるの減るかもね」
「もう結構体感してます。全然声掛けられない」
「イサトを独り占め出来そうで、俺は嬉しいけど」
話しながら、ぐいぐいと腹肉に押されて電車の壁際まで押しやられた。ドアへ手をついた俺の太腿の後ろ側に、こころが息を荒くしてその盛り上がった股間を押し付けてくる。
ガタンと揺れた電車が、窓の方へと身体を揺らす。すごいな、重力まで感じられるのか。
あまり気にしていなかったけれど、体重が感じられるなら、重力は最初から設定されていたのだ。電車の加減速で身体が揺らされる感覚まで再現されて、後ろでハァハァしているこころを忘れてそんな事に感心してしまった。
「ハァ……DKの香り……」
クンクンと匂いを嗅がれて、気色悪さに思わず噴き出した。
「っふふ、なにそれ」
「コラ、今イサトは男子高……じゃなかった、男子学生なんだから。怖がってくれなきゃ」
「はーい」
くすくす笑う俺の脇腹をこしょこしょとくすぐり、こころが叱る。すうと一呼吸してから、こころから離れたいみたいに一歩前に出た。すかさずこころがその距離を詰めてきて、俺は電車のドアとこころの巨体に挟まれるみたいになってしまった。
電車がカーブするみたいに揺れて、こころの勃起した陰茎が太腿の隙間に収まって挟まった。う、と唸ったこころがグッ、グッ、と腰を押し付けてきて、どうやら着衣のまま俺の身体で擦り始めてしまったらしい。
これが現実だったら本気で泣いていたと思うくらい怖く、怯える演技で周囲に助けを求める視線を送るけれど、身長の所為で頭一つ抜けた俺は、下を向く他の乗客には気付いてもらえない。
「ぁ……」
ぞくりと背筋に冷たいものが走って、なのに股間が軽く持ち上がった。
こころのアバターはおそらく百七十センチ程度だろうか。大体の友人はそれくらいの身長で、だから馴染みがあり過ぎて気付かなかったのだけれど。
──これ、『俺』が本当にされてるみたいだ。
自分と全然違うアバターでプレイしてきたから、セックスもそれにまつわる恥ずかしいことも、自分とは乖離して考えていた。でも、これは、このアバターは、ほとんど現実の俺と同じ。
「……っ、ま、……待って……」
現実でこんなことをされたら? 嫌だ。嫌な筈だ。嫌がらなければならない筈だ。
なのに、後ろから学生服の中に手を滑り込ませてきたこころに、抵抗出来ない。服を掻き分けて汗ばんだ太い指に肌を撫でられて、期待に股間が張り詰めている。駄目だ。こんなの駄目だ。これで興奮しちゃ駄目なのに。
ぐいぐい股間を押し付けてきていたこころが、控えめに抵抗をし始めた俺に興奮したみたいに更に強く押し付けてくる。閉じる太腿の間で擦られて、ズボンを履いたままの筈なのになんでこんなにちゃんと挟めるんだと下を向いたら、俺の制服の太腿の間から赤い亀頭がはみ出ていた。
「なっ、ん」
「シー、ほら、周りに気付かれちゃうよ? 電車の中で素股するえっちな子だと思われたい?」
「……っ」
どうやら、やたら短いショートパンツはこの為だったらしい。ズボンの裾から丸出しになったそれが、俺の脚の間で電車の揺れとこころの腰振りに合わせて擦られて先端から透明な汁を滲ませている。
怖がらなきゃ、気色悪いと思っていなければ駄目なのに、ぞくぞくして後ろが切なくなる。
……このままここで挿入されたら。いつものアバターだったら、それは当たり前のことだった。だってゲーム内だから。周りはNPCか同じゲームプレイヤーしかいないんだから、恥ずかしいって言ってもみんな同じようなことをしているし。でも、今は、『俺そっくりのアバター』だ。それなのに、こんなことをされて、喜んで。現実でもそうなってしまったらどうしよう。痴漢されて、現実でもこうして喜んでしまったら?
怖い、やめなきゃ、と思うのに、きっと気持ちいいよ、と囁きかける俺がいる。
「……う~……」
「……イサト?」
呻いて窓に手をついて頭を振る俺に、こころが一度手を止めて心配そうに声を掛けてくる。
現実と虚構を一緒にしちゃ駄目だ。現実で出来ないからこうしてゲームでやってるんだから、だから、ここで興奮したって良いはずだ。間違ってなんかない。
ガチャガチャとベルトを外して学生服のズボンを下着ごと下ろして自ら尻を出し、待ちきれないみたいに後ろの彼に擦り付けた。
「こころ……、お願い、もう挿入れて……」
俺が強請ると、こころは一瞬驚いたみたいに止まってから、窄まりに彼の肉の先端を充てがってきた。
「イサトから強請ってくるとか、超レア。そんなに欲しいなら、このまま挿入れていい?」
少し痛いかもしれないけど、と言われて、コクコクと頷いた。なんでもいい。痛いのも好きだから、大歓迎。
濡らさないとさすがに先端すら入らないからと、俺の窄まりに押し当てたまま、こころが狭間に涎を垂らしてくる。一瞬冷たい、と思った唾液が、すぐに体温に馴染んで狭間を垂れて窄まりと陰茎を濡らした。ぬちゅ、ぬちゅ、と何度かそれで入り口を押した肉が、こころの「いくよ」という声と共に中に入ってくる。
「んんん……っ」
「うぅ……イサト、少し緩めて……、そんなに絞らないで」
「ん、うん、……こころ、こころ、動いて」
「……どうしたの。今日、ほんといつも以上に可愛いね」
身体を割り開かれるのは、慣らされていない所為で引き攣れる痛みなんて気にならないくらい気持ち良かった。三日ぶりどころか、一ヶ月くらいしてなかったみたいに身体が喜んで、貪欲に奥へ奥へと絞ってしまう。
自分から腰を揺らしてこころの肉を貪ると、腰を掴まれて止められた。
「あ、ゃ、こころ、止めないで」
「なんだろうなぁ、今のイサト、無性に虐めたくなる」
「え……」
SMプレイの弊害かとギクリとして固まるけれど、こころはそのまま激しく腰を振り出した。バチ、バチ、と肌がぶつかる大きな音が響くのに、周囲の乗客は誰一人としてこちらを見ないので、ちゃんとゲームの中だ、と安心した。
こころの言う『虐める』というのは激しい腰振りのことだったらしく、腹の中を硬い陰茎に叩かれる痛みに、『SMルーム』ではないからか途中から痛みの感覚が消えた。痛みが消えてからは気持ちいいばっかりで、そのまま電車の中でお互いに三回出すまで続けた。
ルームに入って手錠をされプレイの準備中、次に来るのは恐らく一番早くても六日後になる、とヤジに言ったら、理由を聞かれたので素直にインターンだと答えた。
「そっか。イサトくん、大学生なんだ。狙いは? やっぱ関東圏内?」
「ですね。埼玉の会社が第一候補です。今通ってる大学も埼玉だし」
答えてから、少し詳細に話し過ぎたか、と口を閉じた。このゲームで身バレしたら最悪だ。ヤジは穏やかで、警戒心を失くさせる。彼が俺の情報をどうこうすることは無いだろうが、他のプレイヤーと遊ぶ時には気を引き締めないと。
俺の返事を聞いたヤジは、少し沈黙してから、俺を抱き締めて「リアルで会ってみない?」と囁いてきた。
「……いや、それ、規約違反でしょう」
「就職についての色々とか、相談に乗ってあげたいなー、なんて。俺、一応現実では役職付きだし。……ダメかな」
「ここでいいじゃないですか」
「ここだとね、ほら、会社名とかログに残るとまずいから」
うーんと考える素振りはしてみるけれど、フリだけだ。相談なんていうのが口実に過ぎないなんていうのは分かりきっていて、その見え透いた嘘をヤジは隠そうともしない。だから、遠慮なく首を振って断った。
「すみません」
「うーん……、そっか。じゃあ、俺が勝手に行くだけってことで」
「はい?」
「川越駅前で、次の土曜日の午後三時」
「あの、だから」
「俺の予定を言っただけだよ」
「……」
断ったのに、ヤジはそれすら想定内みたいに、それきり話題を変えた。
勝手に取り付けられた約束だとしても、求められてしまったら、それを断るのは心が痛む。
もしかしたら、そんな俺の弱点を見抜かれているのかもしれない。そう思いつつも、土曜日の午後、俺は駅ビルの前に立っていた。
少し話をするだけだ。すっぽかしてなんかいないと言い訳する為だけ。期待なんかしていない。
……いや、大嘘だ。期待しているからこそ、来てしまった。現実の方で男とセックスするなんて初めてだけれど、ヤジなら上手く導いてくれるだろうと、妙に安心していた。
時刻は午後二時五十五分。
半袖Tシャツに黒スキニーの自分の格好を見下ろして、まあ変ではないよな、と確認してから、駅前広場の一番端のベンチに腰を下ろした。駅から出てくる人が見える絶好のポイントで、そのうえ駅ビルの庇のおかげで日陰になっている。
この駅は観光地の最寄り駅だからか、ひっきりなしに人が出入りしていた。ここから三駅の俺のアパートの最寄り駅では、この時間の乗り降りなんて両手で足りるくらいしかいないのに。人の集まる場所とそうでない場所の落差があると、田舎だなぁ、と感じずにいられない。
三分ばかりスマホを弄りながら待っていると、女の子に声を掛けられた。
「あの~……、すみません、この辺に猫屋敷があるって聞いたんですけど、方向を教えてもらえませんか?」
「え、うーん、俺地元じゃないんで……。ちょっと待って下さいね」
年頃は同じくらいだろうか。ぴっちりした半袖の襟ぐりの広い胸元からのぞく谷間の線に視線がいってしまいそうになって、慌てて逸らしてスマホで検索を掛ける。
「えっと、あっちの階段から降りてアーケードの横の大通りまっすぐ行けばいいみたいですよ。菓子屋横丁の中の一軒がそうらしいって……」
「一緒に行きませんか?」
スマホの画面を見ながら説明すると、一歩前に詰めてきた女の子が上目遣いに頼んできた。
「ごめん、今人待ってるので」
「そうですかぁ」
「大丈夫? 一人で行けそう?」
「……はい。大丈夫です」
ありがとうございました、と丁寧に頭を下げて、女の子は去って行った。
危ない、あれナンパだったのか。最近されてなかったから油断してた。大学では授業以外の時間はサークルの部室に籠っていて、他の生徒が少なくなってから帰るから滅多に捕まらないのだけど。
どうにも誘われると断り辛く、一人だといつも流されてしまう。ヤジとの約束が無ければ今日ものこのこ一緒に猫屋敷とやらまで連れて行っていただろう。
顔は普通だけれど、やたら伸びた身長は女の子にはそれだけで魅力的に映るらしく、ナンパされるのは珍しいことではない。
父よりはマシだけれど、多少でも遺伝してしまったこの性質が呪わしい。
はぁ、と暑さの所為でどうしようもない事にげんなりして溜め息を吐くと、こちらを見つめる視線を感じた。
顔を上げると、半袖の開襟シャツにデニムの細身の男が立っていた。じっと俺を見つめて、なんだか複雑そうな表情をしている。あまり良い感情は見えない。絡まれるのは嫌だな、と場所を移動しようとした俺の前にそれより早く男が近付いてきて、そして俺に向かって笑い掛けた。
「はい、解散。帰っていいよー」
「……はい?」
急に何を言われたのか分からず呆然とする俺に、男はよく見知った笑顔を作って手を振った。
「ごめんね、俺、美少年専門だから。君みたいなデブは無理。じゃあねー」
くるりと踵を返した男は、それだけ行って駅へと入っていってしまった。
……デブ?
言われたどの言葉も意味不明だったが、一番俺に似つかわしくない言葉を拾い上げて首を傾げた。普通体型の自分の体を見下ろして、皮しか掴めない腹をTシャツ越しに撫でる。いや、デブでは、ないよな。
ベンチの上でよくよく考えて、あれがヤジだったのだと暫くしてから思い当たった。そして俺が、初見でフラれたということにも。
「……マジかぁ」
脇から垂れた汗が腕を伝ってポタリと足元のレンガに落ちて、色を変えた。
それから、三日くらいゲームにログインしなかった。
あまり悩まないタイプなんだけれど、ゲーム内であれだけ可愛がってくれたヤジに現実の見た目だけでフラれたのは相当ショックだった。というか、美少年専門なら最初からそう言っておいてほしい。言っておいてくれれば、「俺は違うんで」と断れたのに。
ごろごろとベッドの上で転がって、久しぶりに現実の方で股間を握った。
「……ん」
ゲームでも現実でも、そう変わらない感触に、あのゲームがどれだけ精巧か思い知る。ゲーム内であれだけ良かったんだから、ヤジとのセックスはきっと現実でも……と、考えそうになって苛立ってまたゴロリと寝返りを打った。
「駄目だ。インして他の人とセックスしよ」
あのアバターだから、ヤジは俺を可愛がっていたのだ。
だったらもうあれは使わないようにしよう。最初からやり直そう。
よし、と身体を起こして、早速VRのヘッドギアを掴んで設定に入る。新しいアバターを作って、そっちでインしよう。名前は変えられないけれど、アバターを複数持っていて気分で変えているプレイヤーは珍しくない。
アバターの設定が面倒そうだと思って敬遠していたのだけれど、やってみるとそう難しいものでもなかった。身長から体重、体型まで、設定された項目の数値を弄っていくだけで、アバターの形が変わっていく。
どんな外見にしようか考えて、もうヤジに捕まらない系統のものにしよう、と真っ先に考えた。俺をデブと呼ぶならやはり、いつものアバターくらいの細身が好みなんだろうから、だったら普通体型で。顔は普通で、ちょっと身長は高めにしよう。『美少年』のイメージから離れよう離れよう、と考えていたら、出来上がったのは俺そっくりのアバターだった。
「あ~……」
少し迷ったけれど、どうせゲイサーバーだ。現実の知り合いと出会ってしまったとしても、そいつもゲイだ。言い触らしたりは出来ないだろう。それに、このアバターなら今後もしオフで会っても外見で幻滅はされない。いや、オフで会わなきゃいい話なんだろうけど。
まあいいや、とそれで新規アバターの設定を終えて、ヘッドギアを装着した。ゲームのスタートボタンを押して、ログインする。
目を閉じて、開いて。スポーン位置はあの懐かしい草原で、ちょうど一年くらいか、とその辺を散歩してみた。
よくよく見れば、少し離れた位置に何人か座って待機してるプレイヤーが居る。あれが初物食い狙いの連中か。しかし、今日はアバターの所為か誰も声を掛けてこない。バーチャルでも顔で判断されるのか。俺はどうやら、最初から良いアバターを引き過ぎていたようだ。
誰も声を掛けてこないので、『総合雑談ルーム』への扉を出した。
開けた屋外の広場のような場所で、ぽつりぽつりとベンチが置いてある。結構たくさんの人が居て、俺の上に浮いた表示名を見て立ち上がろうとしたプレイヤーが、アバターを見て腰を下ろすのが散見された。
結構みんな、あのアバターが好きで声掛けてきてたんだな。
ヤジの後だから気にしてしまうけれど、考えてみれば普通のことだ。俺だって、このアバターと美少年アバターだったら美少年がいい。
現実の女の子からは引っ切りなしにお誘いを受けるこの外見も、ゲイサーバーのここではあまりウケが良くないのか誰も声を掛けてこない。嫌味ではなく、逆に新鮮だ。
このアバターでも相手をしてくれそうなルームを探してベンチに座ってルーム一覧を出して操作していたら、こふぅこふぅと変な呼吸の仕方をする男に声を掛けられた。
「あ、あの……、良かったら、デンチルーム行かない?」
デュフフ、と笑われて、キャラ作り込んでるなぁ、と感心した。
少ない髪から垣間見える、テカった頭皮。たるんだ腹はTシャツの中に収まりきらず、捲れた裾から肌が少し見えている。胸に描かれた美少女アニメキャラは可哀想に伸びて歪んでしまっている。何故かかなり際どく短いショートパンツを履いていて、そこから伸びる大根六本分くらいありそうな脚にはモサモサと毛が生えていた。
背負ったリュックからはソフトビニール製の怪獣の玩具が飛び出していて、『ザ・不審者』としての完成度は抜群だった。
「デンチ?」
「『電車痴漢』。『バス痴漢』はバスチ。『エレベータ痴漢』は……」
「いいですよ」
なんだか長々と続きそうだったので、途中で遮ってそう答えた。
「え? いいの? そっか、じゃあ、行こう。あの……これ」
「え?」
視界に『プレゼント』の文字が飛んで、急な事に驚いた。いや、まだ始めてもないのに。
「学生服……着て欲しいな……デュフ」
扉を開いた男は息を荒くして二チャリと笑っている。
……キャラ、だよな?
どっちでもいいか、ととりあえずその場でプレゼントされた詰襟の黒い制服に着替えて、そして男と一緒に扉を潜った。
ルームの中は本物の電車さながらで、ガタンゴトンという音以外に振動まで体感出来る。朝のラッシュを少し過ぎたくらいの混み具合で、真ん中に人一人が通り抜けられる道は空いているけれど、席は満席のようだ。
ところどころに頭の上にプレイヤー名が表示されているアバター以外はセット扱いのNPCなのかただじっと座って本を読んだりぼうっと立っている。
そういえば、と男の頭の上の表示名を見た。
「こころ……、え? こころ?」
「あ、やっと気付いた」
コロコロ笑ったこころはいつもの喋り方になって、それからコフゥと重そうな息を吐いた。
「やっぱりイサトだよね? 表示名でもしかしてと思って声掛けたんだけど、このアバターでも平気でオーケーしてくれるから絶対そうだと思ったよ」
「えー、前のアバ封印して新しい俺になるつもりだったのに。一番最初から知り合いに見つかっちゃうなんてなあ」
唇を尖らせて肩を落とすと、また視界に『プレゼント』の文字が飛ぶ。今度はなんだ、と開いたら、学生帽が出てきた。頭に被ると、こころが嬉しそうに、やはりデュフフと笑う。
「俺はそのアバターも結構好みだからイケるけど、今までよりは声掛けられるの減るかもね」
「もう結構体感してます。全然声掛けられない」
「イサトを独り占め出来そうで、俺は嬉しいけど」
話しながら、ぐいぐいと腹肉に押されて電車の壁際まで押しやられた。ドアへ手をついた俺の太腿の後ろ側に、こころが息を荒くしてその盛り上がった股間を押し付けてくる。
ガタンと揺れた電車が、窓の方へと身体を揺らす。すごいな、重力まで感じられるのか。
あまり気にしていなかったけれど、体重が感じられるなら、重力は最初から設定されていたのだ。電車の加減速で身体が揺らされる感覚まで再現されて、後ろでハァハァしているこころを忘れてそんな事に感心してしまった。
「ハァ……DKの香り……」
クンクンと匂いを嗅がれて、気色悪さに思わず噴き出した。
「っふふ、なにそれ」
「コラ、今イサトは男子高……じゃなかった、男子学生なんだから。怖がってくれなきゃ」
「はーい」
くすくす笑う俺の脇腹をこしょこしょとくすぐり、こころが叱る。すうと一呼吸してから、こころから離れたいみたいに一歩前に出た。すかさずこころがその距離を詰めてきて、俺は電車のドアとこころの巨体に挟まれるみたいになってしまった。
電車がカーブするみたいに揺れて、こころの勃起した陰茎が太腿の隙間に収まって挟まった。う、と唸ったこころがグッ、グッ、と腰を押し付けてきて、どうやら着衣のまま俺の身体で擦り始めてしまったらしい。
これが現実だったら本気で泣いていたと思うくらい怖く、怯える演技で周囲に助けを求める視線を送るけれど、身長の所為で頭一つ抜けた俺は、下を向く他の乗客には気付いてもらえない。
「ぁ……」
ぞくりと背筋に冷たいものが走って、なのに股間が軽く持ち上がった。
こころのアバターはおそらく百七十センチ程度だろうか。大体の友人はそれくらいの身長で、だから馴染みがあり過ぎて気付かなかったのだけれど。
──これ、『俺』が本当にされてるみたいだ。
自分と全然違うアバターでプレイしてきたから、セックスもそれにまつわる恥ずかしいことも、自分とは乖離して考えていた。でも、これは、このアバターは、ほとんど現実の俺と同じ。
「……っ、ま、……待って……」
現実でこんなことをされたら? 嫌だ。嫌な筈だ。嫌がらなければならない筈だ。
なのに、後ろから学生服の中に手を滑り込ませてきたこころに、抵抗出来ない。服を掻き分けて汗ばんだ太い指に肌を撫でられて、期待に股間が張り詰めている。駄目だ。こんなの駄目だ。これで興奮しちゃ駄目なのに。
ぐいぐい股間を押し付けてきていたこころが、控えめに抵抗をし始めた俺に興奮したみたいに更に強く押し付けてくる。閉じる太腿の間で擦られて、ズボンを履いたままの筈なのになんでこんなにちゃんと挟めるんだと下を向いたら、俺の制服の太腿の間から赤い亀頭がはみ出ていた。
「なっ、ん」
「シー、ほら、周りに気付かれちゃうよ? 電車の中で素股するえっちな子だと思われたい?」
「……っ」
どうやら、やたら短いショートパンツはこの為だったらしい。ズボンの裾から丸出しになったそれが、俺の脚の間で電車の揺れとこころの腰振りに合わせて擦られて先端から透明な汁を滲ませている。
怖がらなきゃ、気色悪いと思っていなければ駄目なのに、ぞくぞくして後ろが切なくなる。
……このままここで挿入されたら。いつものアバターだったら、それは当たり前のことだった。だってゲーム内だから。周りはNPCか同じゲームプレイヤーしかいないんだから、恥ずかしいって言ってもみんな同じようなことをしているし。でも、今は、『俺そっくりのアバター』だ。それなのに、こんなことをされて、喜んで。現実でもそうなってしまったらどうしよう。痴漢されて、現実でもこうして喜んでしまったら?
怖い、やめなきゃ、と思うのに、きっと気持ちいいよ、と囁きかける俺がいる。
「……う~……」
「……イサト?」
呻いて窓に手をついて頭を振る俺に、こころが一度手を止めて心配そうに声を掛けてくる。
現実と虚構を一緒にしちゃ駄目だ。現実で出来ないからこうしてゲームでやってるんだから、だから、ここで興奮したって良いはずだ。間違ってなんかない。
ガチャガチャとベルトを外して学生服のズボンを下着ごと下ろして自ら尻を出し、待ちきれないみたいに後ろの彼に擦り付けた。
「こころ……、お願い、もう挿入れて……」
俺が強請ると、こころは一瞬驚いたみたいに止まってから、窄まりに彼の肉の先端を充てがってきた。
「イサトから強請ってくるとか、超レア。そんなに欲しいなら、このまま挿入れていい?」
少し痛いかもしれないけど、と言われて、コクコクと頷いた。なんでもいい。痛いのも好きだから、大歓迎。
濡らさないとさすがに先端すら入らないからと、俺の窄まりに押し当てたまま、こころが狭間に涎を垂らしてくる。一瞬冷たい、と思った唾液が、すぐに体温に馴染んで狭間を垂れて窄まりと陰茎を濡らした。ぬちゅ、ぬちゅ、と何度かそれで入り口を押した肉が、こころの「いくよ」という声と共に中に入ってくる。
「んんん……っ」
「うぅ……イサト、少し緩めて……、そんなに絞らないで」
「ん、うん、……こころ、こころ、動いて」
「……どうしたの。今日、ほんといつも以上に可愛いね」
身体を割り開かれるのは、慣らされていない所為で引き攣れる痛みなんて気にならないくらい気持ち良かった。三日ぶりどころか、一ヶ月くらいしてなかったみたいに身体が喜んで、貪欲に奥へ奥へと絞ってしまう。
自分から腰を揺らしてこころの肉を貪ると、腰を掴まれて止められた。
「あ、ゃ、こころ、止めないで」
「なんだろうなぁ、今のイサト、無性に虐めたくなる」
「え……」
SMプレイの弊害かとギクリとして固まるけれど、こころはそのまま激しく腰を振り出した。バチ、バチ、と肌がぶつかる大きな音が響くのに、周囲の乗客は誰一人としてこちらを見ないので、ちゃんとゲームの中だ、と安心した。
こころの言う『虐める』というのは激しい腰振りのことだったらしく、腹の中を硬い陰茎に叩かれる痛みに、『SMルーム』ではないからか途中から痛みの感覚が消えた。痛みが消えてからは気持ちいいばっかりで、そのまま電車の中でお互いに三回出すまで続けた。
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