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しおりを挟む「こんにちは。サツマさんで合ってますか?」
「あ、はい」
七月の午後は暑い。
いつも仕事中は空調をガンガンに効かせた車移動だから忘れていたが、直射日光はすさまじく痛いのだ。
帽子を被ってこなかったことを後悔しながらも、時間まであと十分ほどだから待ち合わせの場所から無闇に動くのは避けたい。
時間通りに来てくれると助かるな、と思いながらため息を吐いた瞬間、話し掛けられて目線を上げて息を呑んだ。
「早めに来て良かった。暑いですよね、どこか日陰の方に入りましょう」
青年がにこ、と柔和に笑った瞬間、周囲のざわめきが一瞬止まったような錯覚に陥る。
顔の造りは、整った方ではあるが普通の範囲を外れない。なのに、それなのに、目が離せない。
真夏の日差しにも負けない眩いばかりの存在感に目を細めると、ユキトはすっと俺へ手を差し出してきた。
細く長く骨張った男の指。けれど白く滑らかで、毛の一本どころかきめ細か過ぎて皺すら見えない。
男物の人形みたいだ、と思いながらそれを見つめているとユキトがクスッと笑って、勝手に俺の手を取って歩き出した。
「え、あの」
「暑くてぼんやりしちゃってる? 待たせてごめんね」
一言目は敬語だったのに、二言目はタメ語。俺への対応はその方が良いと判断したのだろうか。どうしてだろう。
手を繋ぐ俺とユキトを見て、周りから小さな悲鳴が聞こえたのはたぶん幻聴じゃない。
顔が良いとか悪いとか、そういう次元を超越した男。
ユキトの第一印象はそれだった。ヤスがライブ配信の時に「俺はユキトの引き立て役」と言っていたのも今なら頷ける。
ただ顔が良いだけでは、絶対にこの男には勝てない。ヤスが『だけ』の男では無いと知っているけれど、それでもあまりに分が悪い。
芸能人やアイドルを生で間近にした人がよく「オーラが違った」とか「そこに居るだけで輝いてた」なんて言ったりするが、間違いなくユキトもその類の存在だ。
幸は確かに顔は特級品だが、ユキトと比べてしまうと存在感は無いに等しいだろう。
惚れた欲目を差し引いても冷静にそう判断してしまうほどの圧倒的な差に、どうしようかと途方に暮れる気持ちが湧いた。
──なんでユキトに予約入れてんだよっ!!
『サツマ』って名乗ったら予約を入れられるよう店長に頼んでおいたよ、とバイト中の幸からメッセージが来て、悩んだ挙げ句ダメ元でユキトに予約を入れたあの日、帰宅するなり幸はそう叫んだ。
なんでも何もヤス以外に興味なんて無いから、と答えると幸は玄関にウエストバッグを叩き付けて「出て行くから!」と叫んで荷物を纏めようとして、足に縋って一時間近く半泣きで謝り倒してどうにかやっと思い留まってもらう事に成功した。
幸としては謝罪とパソコンを買って貰う対価としてデートを提案したつもりだったらしく──金はしっかり俺が払う事が前提だったらしいが──、ユキトを選んだことに浮気だ浮気だとぶつぶつ言い続けていた。
今日も家を出る前に無言で睨んできたので、仕方なく「ユキトがどんなデートするか俺が経験すればヤスの糧になるかもしれないでしょう?」と幸の為にもなると説得したのに。
手を繋ぐユキトを見て、どう分析したらいいか全く分からない絶望にため息を吐きそうになって我慢する。一応デート中なのだ。俺がもてなされる方とはいえ、ため息は失礼だろう。
「……あの、あまり人混みは好まないので、どこか静かな喫茶店でお話するのはどうでしょうか」
「ん? いいよ、行きたいお店ある?」
「いえ、特には」
「じゃあ俺の好きなお店行こっか。こっちだよ。少し路地の奥に入った所だから、お店自体も静かな所にあるんだ」
とにかく、成果が『オーラがやばい』だけでは全くの役立たずになってしまう。
話術に関してだけでも学ぶ所を見つけられないかと標的のスキルを絞るつもりで提案すると、ユキトはすぐに目的地を定めたらしく横を歩きながら流し目で見てきた。
「想像してたより普通に男だね」
「はい?」
人通りが少ない路地に入ってもすれ違う人の視線がユキトに向くのだからすごい。まるで光る物体を横に置いて歩いているみたいだ。何かが視界の中で光っていれば自然とそちらへ視線が向くように、どの人も吸い寄せられるようにユキトを見ている。
どうやったらこんな人間が出来上がるんだ、と真横に居てさえ眩しい思いで目が離せなくて観察していたら、ユキトはそれを不愉快に思う様子もなく俺の頬をつついた。
「ヤスから『変な所つついたら壊れちゃいそうな人』って聞いてたから、もっと細くて女の子みたいに弱々しいのを想像してた」
それはきっと、精神的な意味で、だと思う。
ユキトに俺の事を話していたことは驚いたが、その説明には苦笑するしかない。
「ヤスが図太過ぎるんですよ」
「サツマさん、ヤスの友達なんだっけ? 今日はどうして俺を指名したの?」
あいつめっちゃ怒ってたよ、と笑うユキトに連れられて辿り着いた路地裏のカフェは、外見こそ寂れているが内装は綺麗だった。
艶々に磨かれたマホガニーの調度品に、壁にずらりと並ぶ大小様々な色柄のランタン。うっすら掛かっているジャズと、コーヒーの匂い。そこへ洒落た顎髭の生えたギャルソン服の店主が「いらっしゃい」なんて声を掛けてくるんだから、女の子だったら一撃死だろう。
雰囲気の良いカフェでのんびりデート、がどれだけ難易度の高いものか、彼女持ちの男なら誰でも理解出来ると思う。過去の彼女がそれを提案してくる度、胃が痛くなったものだ。なにせ、スタバやドトールを選べば期待外れだと即フラれるし、かといって近所の純喫茶に連れて行けば周囲の客が爺婆だらけなことに不満を言って結局フラれる。コーヒーや紅茶の味は横に置いておいて、とにかく内装とスイーツの飾り付けが『映え』る、雰囲気全振りの店を選ばないといけないのだ。しかも、混んでいないという条件付きで。
君が言っているのは『昼飯は野菜炒めとかチャーハンとかの手抜きでいいよ』と同様の相手を慮っているフリをした無理解なんだぞと何度言ってやろうと思ったことか。
イケメンはこういう店を知っているからイケメンなのだ、なんて格言めいた言葉が脳裏をよぎる。
「あの、向かい側へどうぞ……?」
「デートなのに?」
「あ~……、では、隣で」
控えめな動作で案内に出てきたウエイトレスにボックス席に案内され、先に座った俺の隣へ当然のようにユキトが隣に座ってこようとしてぎょっとするが、不思議そうに首を傾げられて承諾してしまった。
過去の彼女たちとのデートで、ボックス席に案内されているのにわざわざ横に座ったことは無い。
電話やトイレで席を立ちたい時にいちいち断って退いてと頼ませるのも悪いだろうと気を利かせていたつもりだったのだが、もしかしてこの方が女受けが良いのか――と、訊ねてみようとして横のユキトを見て、ああ違う、と即座に分かった。
「なに頼む?」
太腿同士がくっつくほど詰めて座ってきたユキトは、声量を落として囁きかけてくる。
これは営業だ。
光り輝くイケメンが、逃げ道を塞いで迫ってくる。いわゆる『壁ドン』と同じ効果があるのだ、これは。相手が少なくない好意を自分に向けているという自負があるからこそ効果的な行為。俺には無縁だ、忘れよう。
「……アイスティーを」
三つ折りのメニュー表を開いて俺寄りに置いたユキトは、それを見もせず答えた俺に一つ瞬きして、それから口角を上げてデザートの辺りを指差した。
「ここ、スイーツも美味しいよ。パティシエ志望で製菓学校に通ってる店員さんが作ってるんだって」
「へぇ。オススメはありますか」
「お店が推してるのは季節のケーキ。一月毎に変わる旬のフルーツが中心のケーキだから、そのフルーツが苦手じゃなければ絶対ハズレない。今月は桃だって」
店内の壁に張られたポップを確認して俺にどうかと勧められ、「どうしましょうかね」と考える。
甘い物は大好物だ。製菓をちゃんと学んでいる人が作っているというのもポイントが高い。だからこそどれを食べるか絞りきれなくて悩んでしまう。
期間限定と言われると惹かれてしまうが、今月はどこも桃尽くしで食傷気味。初めての店。それも作っているのが店長ではなく店員というなら仕入れる桃までは拘れないだろう。旬だから確かに大きく外れはしないだろうが――。
「もしかして、割と本気で悩んでる?」
「そうですね。すみません、先にドリンクだけ頼んでも構いませんよ」
飲み物だけオーダーしてゆっくり考えようかと提案すると、ユキトはメニュー表の一カ所を指差した。
「俺はいつもこれ。紅茶の時は特に」
彼の長い指に叩かれた『焼き菓子盛り合わせ』の文字を読み上げ、首を傾げる。
盛り合わせ、って。まるでカラオケ屋か居酒屋メニューのようだ。
喫茶店でわざわざ焼き菓子? と訝しむが、軽く手を挙げて店員を呼んだユキトは俺の返事を待たず注文していく。
「アイスティー二つと、焼き菓子盛り合わせも二つ」
「アイスティーはミルクかレモンがお選び頂けますが」
「一つはストレートで。サツマさんは?」
「俺はミルクで」
承りました、と一礼してウエイトレスが去ると、なんの気無しにテーブルに置いていた俺の手にユキトの手が重ねられた。ギョッとして彼の顔を見るが驚いた俺に驚いたみたいにパチパチと瞬きする。
「どうしたの?」
「え、いや、手」
「デートなんだからこれくらい普通でしょ?」
「え……」
普通。
それが『付き合っているなら普通』なのか『レンタル彼氏の仕事内容なら通常サービス』なのか判断出来ず手を引っ込めるべきか否か迷った。
そして今さら、幸も客の女の子に対してこういう事をしているんだろうな、というのが頭を掠めて一瞬胸が痛くなる。分かっていたことだ。けれど、考えた事は無かった。いいや、深く考えないようにしていた。
性的サービス禁止、密室で二人きりになることも無し。だったらどうやって客を満足させるのか、と考えた時、性的にならない範疇で身体の接触があるのなんて当然なのに。
幸が──ヤスが女の子と手を繋いだり、肩を抱いたり。するだろうな。うん、しているだろう。金になるなら抵抗無くするだろう。そういう奴だ。知っている。
「……すみません。実は、彼氏になってほしいというより、『彼氏』をしてお金を取れるレベルの人がどんな方なのか興味があったんです」
「んん? つまり?」
「男側として参考にしたいので、ボディタッチまでは結構です」
そうハッキリ断って手を引こうとするのに、上に乗ったユキトの手は重ねられたままだ。
「あの……?」
「うーん。サツマさん、十分モテてるでしょ? 俺の何を参考にするの?」
首を傾げて困ったような表情をされ、俺も釣られて首を傾げてしまう。
「モテませんよ。こ……ヤスがそう言ったんですか?」
「いや、だってサツマさん、明らか俺側だから」
「ユキトさん側?」
一体全体、それはどんな陣営なのだろう。
初対面の、それも自分となんて一つも共通点が見つからなさそうな男に同類と判断されて眉を顰めるしかない。
俺の訝しむ顔を見てユキトはやっと重ねた手を離し、そして言葉を探すように顎を撫でた。
「人間の中にはね、生まれ持って『光』になる人がいるんだよ」
「…………」
笑顔のまま言われた意味を脳内で処理して、すぐさま目線を動かして逃げ場を探す。
横に座られたからそこから逃げるのは不可能だ。テーブルの下をくぐるのは無作法だけれど、いざとなったら出来ないことも無いだろう。次に店員が来たタイミングでトイレに行くからと言って席を立とう。
「待って待って、スピ系でも宗教でもないから」
俺が逃げ出す算段をつけているのを視線の動きから読み取ったのか、ユキトが苦笑しながら違う違うと手を振る。
「自覚無い? 自分は顔がそれほど良いわけでもないのにモテるよな~、って思ったこと一度も無いの?」
「……無いわけでもないですが」
「俺もそうでしょ。顔の良さならヤスの方が絶対綺麗。だけど俺の方が圧倒的にモテるよ。客でもそうじゃなくても」
自信があるからというより単純に事実だから、といった風に言うユキトに少し興味が湧いてきて続きを促すように黙って見つめているとウエイトレスがオーダー品を運んできた。
それぞれの前にアイスティーのグラスが置かれ、表面についた水滴に急に喉の渇きを思い出す。
「俺ね、昔俳優を目指してたんだ」
ウエイトレスが去るのを待ち、ストローの紙袋を裂きながらユキトはまた話し始めた。
「井の中の蛙ってやつでさ、地元じゃ俺以上に存在感のある奴なんていない! 絶対俳優になれる! って誰も彼も大賛成で送り出されたんだよ。上京してまず渋谷でぶらついて、一番最初にスカウトしてきた芸能事務所に入ったんだけど……あ、これ、このピーカンナッツのクッキーすごい美味しいよ。一個あげる」
焼き菓子の盛り合わせはミルク色の皿こそ同じだが、盛られている菓子が違う。
ユキトは自分の方にだけあったクッキーの一つを摘まんで俺の皿に移動させ、「このサブレもらっていい?」と指差した。ホワイトチョコレートを挟んだシンプルなもので、特段の興味も惹かれないから「どうぞ」と承諾するとユキトはひょいと指で持っていってそのまま口に入れた。
「ん、美味し」
サクサクと噛みながら目を細めるのを見て、キラキラしい割りに案外素朴なものが好きなんだな、と親近感を覚える。
ポーションではなくミニポットに入ってきたミルクをグラスに注いでストローで混ぜていると、ユキトは自分の皿からマドレーヌを掴んで丁寧に薄紙を剥がし始めた。
「どこまで話したっけ」
「上京して事務所にスカウトされたところです」
「あ、そうそう。そこまでだったね、俺の人生が薔薇色だったのは」
「まだ入ったばかりでしょう? 早くないですか」
「だって、俺くらいの光なんてゴロゴロいるんだよ、芸能界って」
もちろんヤスみたいに顔が抜群に良くて光らない子もいるけど、と言いつつユキトは剥がした薄紙を丁寧に畳んで皿の端によけてからマドレーヌに齧り付いた。
「一握りのスターはね、光りが強い上に顔までいいんだ。あー、俺じゃ勝てないな、ってすぐに分かった」
「そんな……」
「努力で這い上がろうとするほど俳優になりたかったわけでもなくて、数年は事務所に言われるままオーディション受けて端役とかやってたんだけど、何年経っても大きい役は貰えなくて、そろそろ辞めて地元戻ろうかな、って話を波田にしたら……あ、波田っていうのは俺とヤスが働いてる店の店長ね。当時は俺の事務所で働いてたマネージャー兼事務員だったんだけど、だったら一緒に会社でも興さないか? って誘ってきて、それで二人で相談して始めたのが今の店」
何故だか昔話を始めたユキトを止めるつもりもなく、逆に時間が潰れるから有り難いと思いながら焼き菓子に手を伸ばした。
表面が岩のようにゴツゴツしたクッキーで、硬そうだと慎重に噛んだのに歯の先が当たった所からほろりと崩れて口の中に落ちてきた。割れ目からふわりとナッツの香ばしさとバターの甘い匂いがして、一口噛むとザクッといい音がした。
細かく砕いたカシューナッツと、……オートミール?
クッキー生地自体は柔らかく、クッキーというよりサブレに近いほど舌の上で溶け易いのに、大量に入った具のザクザク食感で食べ応えがある。微かにアーモンドの匂いもする、と飲み込むのが勿体なく感じるほど堪能していると、ユキトが嬉しそうに笑った。
「ね、美味しいでしょ?」
「ええ。焼き菓子はあまり食べないんですが、これはとても美味しいです」
嚥下してから紅茶を飲むと、ほんの少し口内に残ったナッツの香りと混じって惚れ惚れするような気持ちになる。
文句無しに美味しい。これがまだ製菓学校に通っている途中の生徒が作ったというんだから、将来が楽しみという他無い。
「持ち帰りとか無いんですかね……」
「分かる! 俺も初めて食べた時、店員さんに聞いた」
ケラケラッと笑ったユキトは俺に半身を向けるように肩肘をテーブルについて、それから肩を竦めて眉尻を下げた。
「でも残念、無いの。件の店員さんがシフトに入るのが土日だけで、その日に一気に焼いてるんだって。保存料使ってないから一週間売り切りで、余ったらバイトのおやつになるから皆余れ余れって念じてるらしいよ」
どうやらユキトは本当にこの店の常連らしい。プライベートで利用している店を客に教えて大丈夫なんだろうか、と他人事ながら心配していると、表情を変えた俺に気付いたのかユキトは意味ありげに目を細めて唇を歪める。
「うん、本当、こっち側だわ」
「……言わんとする意味はなんとなく分かりましたが……」
ユキトが言う『光になる人』というのに俺が当てはまっているとしても、彼に比べたら笑ってしまうほど弱々しい光だろう。
そもそもどうしてこんな話を始めたんだっけ、と思い出そうとした瞬間、ユキトが表情を引き締めて真剣な眼差しで口を開いた。
「ヤスが欲しいんだ」
「…………はい?」
幸が欲しい? それって、もしかして、恋愛的な意味で──。
「あ、違う違う。彼氏にしたいとかそういう意味じゃない」
違うらしい。
安心してホッと息を吐いて、それを見たユキトの眉間に皺が寄るのに気付いて血の気が引く。
バレた。この人、今、俺の反応を見る為にわざと。
「あの、違、俺とヤスはそういう関係ではなく」
「知ってる。ヤスから聞いてるから。サツマさんの片想いでしょ」
勘違いされると困ると慌てて訂正しようとする俺に、ユキトは冷静に返してくる。
幸がそこまでユキトに話していると知って驚きに閉口した。
「ヤスが……幸がどんな経緯であなたのところに居るのか、それも聞いてます。彼の生い立ちから、どうしてペットなんてやり始めたのか、……あなたに対してどう思っているのかまで」
全部幸本人から聞いている、と言われて唇を噛んだ。
俺は何も聞いていない。
俺が聞かなかったから、ではない。俺が聞いてもきっと幸は話さないだろうと知っているから、尚のこと湧き上がる嫉妬心を飲み込む為にユキトから視線を逸らした。
「勘違いしないでほしいんだけど、幸が自分から話したわけじゃないよ。俺が先に話して、俺の生い立ちと幸の生い立ちが似てたから話してくれたんだと思う。さっき端折ったんだけど、俺はモテてたけど、幸せな家庭の出身じゃないから」
俯く俺を気遣うようにフォローを入れられ、一体この人は俺をどうしたいのか、と瀕死のメンタルを必死に立て直そうと気を張る。
「俺と波田の店に幸が欲しいんだ。今みたいにバイトの立場じゃなくて、ゆくゆくは社員として運営側に。一緒に会社をやっていく仲間として幸が欲しい。俺と同じで、あの子は人を誑かす才能がある」
あまり外聞の良くない才能だ。しかし、上手く使えば金を産めるスキルであるのに違いない。
営業のトーク力と同様、業界が変わっても活きるスキルというのは意外と希有で潰しが効く。
幸が正社員として一般社会に戻れるというのは良い道に違いなく、幸自身が嫌がっていないのなら全く問題無いと思うのだが、と考えて気が付いた。
「幸が俺を引き合いにして断ってるんですね?」
「そう。あなたの勤務時間内に帰れないなら嫌、土日に休みが無いのも嫌、と言って」
ため息を吐くユキトに、申し訳ない、と軽く頭を下げると苦笑される。
「まあ、幸の立場なら飼い主のあなたの言いつけを守る方が大事なのは分かるよ。急に宿無しになりたくないからね」
さらっと『飼い主』と口にされ、今は違うと訂正したいけれど話がこんがらがってしまう気がして聞き流した。
乾いた唇を紅茶を一口飲んで湿らせ、少し考えてから「帰ったら話してみます」と答えた。
俺が幸の社会復帰の足止めになってはいけない。俺がペットから人にしたのだ、人なら人として働く方がいいに決まっている。メッセージの返事だけ今まで通りしてもらえれば、土日に幸がいなくても耐えられ……る、と、思う。たぶん。必死に我慢すれば、きっと。
一気に苦々しくなってしまった口の中に甘いサブレを入れると、しゅわっと溶けてレーズンバターのいい匂いに気分が僅かに浮上した。が。
「ごめんね、引き離すようなことして」
「え?」
「恋人だっていうなら別れさせようとまでは思わないんだけどね。お金で繋がった関係なら精算しておいてほしくて」
ユキトの言葉を反芻し、まさかと唇が引き攣る。
「幸を手放せ、と?」
「そうだよ? 言ったろ、欲しい、って。幸の住む場所はもう確保してあるんだ。給料も一人暮らしに十分な額を保証してる。あとは幸の返事待ち」
『飼い主』の家を出て、一人暮らしをして正社員で働く。
理想的だ。幸の過去を知った上で、彼をまっとうな道へ戻す為に人間として迎えてくれるという。喜ぶべきことだ。……俺が、幸に依存しきっていなければ。
「そ、れは……、あの、別に俺は幸に何かしているわけではなく、ただ一緒に住んでもらっているだけで」
「メッセージの返事を時間制限付きで強要して、休日は飼い主がべったり付きっきりで自由時間無し。それで、『ただ一緒に住んでるだけ』?」
「……」
何も加害していないような言い方をするな、と言わんばかりの目で睨まれて息を詰める。
そうだ。幸があまりに気にしないから麻痺しているだけで、俺の望むことは普通の人にとっては異常な要求なんだった。
指先が震える。ぎゅっと握っても拳が震えるだけと分かっているから、さりげなくテーブルの下に隠して仕事用の笑顔を浮かべた。
「幸と話してみます。彼自身が望むのなら、俺も反対はしません」
大嘘だ。幸から話してこない限り絶対に話題にするものかと心の中で唾棄した。
そこでピピピ、と控えめな音が鳴って、ユキトがポケットの中から出したスマホの画面を指で撫でる。
「五分前だ。お菓子、持って帰れないから食べちゃわないと」
「はい」
幸に強制的に予約させられたつもりだったから一番短い一時間で予約していたのが幸いした。
焼き菓子は一つ一つどれも凝って美味しく、二度と来られないのが残念だ。
「あ、そういえばお支払いを……」
「いいよ。今日は俺が話をしただけで仕事してないから」
最初からそのつもりで波田にも言ってきたから、とレンタル料金の支払いを拒否され、ならばと喫茶店の支払いを持つことにした。出来る限り借りを作っておきたくない。
涼しい店を出ると、まだ和らぐことのない直射日光に刺されてげんなりした。
「日高!」
駅まで歩いてそれじゃあ、と別れようとしたところで名前を呼ばれ、ユキトと一緒に声の方を見ると幸が駅の構内から走り寄ってくるところだった。
タイダイ柄の派手なTシャツに淡い色のダメージデニム姿でぱたぱたと駆けてくる姿が愛らしすぎて胸を押さえる。
「どした、日高? 苦しいの?」
「いえ。全く予期していないタイミングで幸が視界に入ってきたので心臓発作を起こしかけました」
「やばすぎるじゃん」
アホか、と拳で軽く胸をどつかれ、緩みそうになる表情をユキトの前だからと必死に引き締めた。
「幸、お前その私服のダサさどうにかしろ」
「えー、ださい? いいじゃん、似合うでしょ」
「お前のそれは似合ってるんじゃなくて顔の良さで服の印象を消してるだけ」
派手色は幸の可愛い性格を表しているようで俺は好みなのだけれど、ユキトからするとダサく映るらしい。
さっき俺といた時と話し方を変え幸のTシャツを引っ張って「ガキかよ」と笑うユキトは、唇を尖らせて拗ねる幸と相まって本当の兄弟のようだ。
生い立ちが似ている、とユキトは言っていた。幸せな家庭の出身ではない、とも。
だから尚更、幸を助けたいのかもしれない。
きっとユキトは悪い人間ではない。それは分かるのだけれど。
「んじゃ、俺まだこれから仕事あるから。また明日な、幸」
「うん、また明日」
ばいばい、と手を振った幸は俺をちらっと見て駅の方へ歩き出す。
迎えに来てくれたのかと思ったが、どうやらたまたま出掛けた先で見つけたから寄ってきただけだったらしい。スマホを出して確認して、数十分前に『服買いに行ってくる』と幸からメッセージが入っているのを見てゆっくり息を吐く。こうしていちいち行動するだけを連絡させるのも、普通はおかしいんだろう。
「あなたの光じゃ弱すぎる」
幸の後ろ姿を見送っていると、ユキトが忠告のように声を落として呟いた。
「……はい?」
「幸の抱えてる闇は、あなたじゃ照らしきれない。『普通の日常』に引っ張り上げきれない。幸を思うなら、早めに手放して下さい」
それでは、と丁寧に腰を折って頭を下げた彼はもう用は無いとばかりに踵を返して駅へと入っていった。
人の行き交う駅前広場に一人取り残され、額に浮いた汗を手の甲で拭ってもう一度ため息を吐く。
……いいな。幸には、異常から引き上げようとしてくれる人が現れた。俺にもそんな人が現れればいいのに。
羨ましく思ってから、ユキト曰く俺は彼と同じく『助ける側』らしいんだっけと嗤う。
馬鹿らしい。
さっき見た幸は手ぶらだったから、服を買うのはこれからなんだろう。今日の一時間の用事の為に平日午後の半休を取ってしまったから、これから帰宅しても何もやることがない。
誰もいない家に帰るくらいなら適当にデパ地下でも巡ってスイーツ漁りをしようか。幸が来てから仕事の後は直帰していたから、馴染みの店の新作もそろそろ切り替わっているかもしれない。
そうしよう、と駅ではなく通りを渡った向こう側のビルへ行き先を決めて信号待ちしていると、急に後ろから肩の辺りをバシッと叩かれた。
「……っ、なん」
「どこ行こうとしてんの!? ついてきてると思ってたから普通に話し掛けてたんだけど! 一人で喋ってるヤバい奴になってたじゃん!!」
「え」
てっきり服を買いに行ったのだと思っていた幸が戻ってきて俺の背中をバシバシ叩きまくってきて、周囲からの好奇の目を気にしつつ「すみません」と謝る。
「幸は一人で行きたいのかと思いまして」
「いや、わざわざ時間に合わせて迎えにきたんだから二人で行くに決まってるでしょ。どういう誤解したらそうなるのさ」
腰に手を当てて怒ってますというポーズをする幸の可愛さに、俺だけじゃなく周りの何人かが心を撃ち抜かれたらしく大袈裟に顔を逸らして震えているのが視界の端に映った。
何せ幸は、一瞬すら忘れる隙が出来ないほどの超絶美人なのだ。男の骨格をしているが顔のパーツは中性的な人形のようで、媚びるような甘さは一切無い。怜悧なほど整った容姿に、けれど対照的な無邪気な子供のような言動。
刺さる人には満塁ホームランだろう。分かるぞ。
俺を『飼い主』として媚びてくる幸は確かに可愛らしかったけれど、我儘さと無遠慮な毒舌を隠さない今の方が俺は好きだ。
じろじろと見てくるのではなくさりげなく視界に入れるように幸を観察する人々に勝手に仲間意識を芽生えさせていると、幸が訝しげに俺の顔の前で手を振った。
「日高ー? 起きてるー?」
「ああ、目の前に居るのは天使じゃなくて幸でしたか」
「その類の冗談、正直全く面白くないからね」
「……自重します」
「そうして。で、日高はどこ行く気だったの?」
歩行者信号が青になって、一斉に人が動き出す。
人波に乗りながら向かいの通りへ渡り、そのまま近場のビルへ入った。エレベーターホールを抜けて壁にフロアガイドが張ってある場所まで行き、幸を振り返る。
「俺は適当にスイーツを買っていこうと思っただけです。幸は服を買いに来たんですよね? このビルに興味のある店はありますか?」
「スイーツ? 好きだねーほんと」
毎週日曜はコンビニを数軒回って新作スイーツ購入に付き合わされているからか、幸は若干呆れたような表情でフロアガイドを見上げた。
「んー……。ここ、ちょっと俺には高い店ばっかりかも」
「プレゼントしましょうか?」
「いい。夏物はそんなに金かけたくない」
「そうですか」
「そ。買うなら冬にいいコート買って」
「分かりました。秋口になったらまた来ましょう」
幸の口から自然に冬の話が出てきたことにテンションが上がる。
ユキトからの誘いはかなりの好条件だろうに、今のところ幸にそのつもりは無いようだ。
俺の所にいる方が利が多いと判断されているなら嬉しい。もっともっと居心地を良くして、俺が出て行けと言っても嫌だと駄々を捏ねてくれるくらいにしてやりたい。
「スイーツって、ひんやり系?」
「いえ、全く決めてません」
「何か目当ての物があるんじゃないの?」
「無いです。幸のいない家に帰るのが嫌だったので、暇つぶしをしようとしただけなので」
何か食べたい物があるならそれにしましょう、と地下の惣菜コーナーに幸が好みそうな中華系の惣菜店が無いか探していると、ぎゅっと横から腕を掴まれた。
「幸?」
「じゃあさじゃあさ、俺、行きたいとこあるんだけど」
「行きたい所?」
俺は行動先まで束縛したりしないから行きたいなら行けばいいのに、何故か幸は期待半分恥じらい半分みたいな顔で俺を見つめてくる。
「いいですよ。行きましょう」
「ほんとっ? あのね、ここなんだけど──」
行き先も聞かず俺が承諾の言葉を吐くと、幸はごそごそとデニムのポケットからスマホを出して弄り、画面を見せてきた。
『カラオケ! ゲーム! ビリヤード! ダーツ! その他なんでもやり放題!』とでかでかと書かれたサイトは、複合アミューズメント施設のホームページのようだ。
「ここに行きたいんですか? 確かこの近くにあったような……」
何度か通った時に看板を見たような記憶がある。
幸のスマホをそのまま指で叩いて店舗検索して、ここから徒歩五分ほどに一店舗あるのを確認して頷いた。
「ありますね」
「いいの? ……あ、あの」
「はい?」
「俺、その……」
珍しく言い淀む幸を引き連れてビルを出て、また日光の下でじりじり肌を焼かれながら移動する。
平日の午後は俺と同年代よりも少し下、大学生くらいかもっと上の世代が多い。ぶつかるほどではないが歩道の中ですれ違うのに気を遣う程度の人出の中でも幸の容姿は目立つのか、若い女の子の八割くらいがすれ違ったあと二度見するように振り返っている。
──幸の抱えてる闇は、あなたじゃ照らしきれない
さっきユキトに言われた言葉を思い出し胸が悪くなる。ユキトに比べればそりゃ光るような存在感は無いが、それでも、闇と呼ぶような淀みが幸にあるとは思えない。
「ここですね」
思ったより早く着き、早速店内に入ろうとした所で幸に引き留められた。
「幸?」
「あの、俺、は、……初めてなんだけど」
「そうですか。店内ルールは最初に店員さんが説明してくれるので特に問題は……」
「違う。……カラオケもビリヤードも、やったこと無い。ゲームは最近ユキトとゲーセンに行ったけど、音がうるさくて耐えられなくてすぐ出てきちゃったし、他に書いてあるダーツとかボウリングも、一回も……」
大丈夫かな? と消え入りそうな声で聞かれ、心底から不安で心細そうな表情に一瞬クラリと目眩がした。
「…………何度殺せば気が済むんですか」
「は?」
「いえ。大丈夫ですよ、俺もやった事ないものがほとんどです。幸と一緒ですよ」
カラオケとボウリングは友達と何度か遊んだ経験があるが、上手いとは言えない。
ダーツとビリヤードに至っては真ん中に当てればいいんだっけ? とか、9を落としたら負けだっけ? という程度にルールすら曖昧だ、と説明すると、幸は安心したのか表情を和らげて笑みを浮かべてくれた。
「そっか、日高も一緒か。うん、それなら大丈夫かも」
「…………」
あーーーーーーーー、うん、可愛い、可愛い、お願いだから一瞬だけぎゅうっと抱き締めるのを許してくれたりしないだろうか。全くやましい気持ちなんて無いから。ただ可愛さが有頂天で俺の中で天元突破してるだけだから。
ぎゅっと俺の手を握って店の自動ドアをくぐっていく幸に、デートみたいですねと言ったら怒られるんだろうな、と思いながら付いて入った。
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でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
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