もっと僕を見て

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 呆れた事に、それから僕と潮島の関係は、大学を卒業して二十七歳になった今も続いていた。
 僕がモルフォとして潮島に抱かれたのが二十歳そこそこの時だから、もうほぼ七年になる。自分のことながら本当に呆れる。
 潮島は、大学卒業間近になって急に古着とか個人アパレルブランドを扱うネットショップを興した。当初は仕入れた服をモデルに着せて撮影して、ネットショップにアップして注文された品を納品するまでを全て自分でやっていたようだが、今は従業員は十数名を超えたらしい。
 何故知っているかといえば、まず大山が通販担当の臨時アルバイトとして雇われて、今でも正社員として働いているからだ。数年前にモデル業を辞めた白田も雇い入れたとかで、彼をモデルにしてから通販数が爆上がり。業績は右肩上がりで、そのうち実店舗としてセレクトショップを開いてやる、と潮島は豪語している。
 華やかな潮島の躍進に対して、僕はといえば。大学卒業後、プロカメラマンのアシスタントとして雇われた。でも月に数度の臨時バイトみたいなそれだけじゃ食べていくにもお金が足りなくて、メインは殆ど大手通販会社の配達ドライバーとして働いている。
 節約に節約を重ねて買い換えたばかりの近接レンズに入れ替えて、道路脇に生えたハルジオンを撮る。貧乏草と呼ばれることもあるこの小さな花の花言葉は、追想の愛。だからだろうか、昔を思い出して懐かしくなったのは。
 目の前の家の駐車場に車が戻ってくるのが見えて、慌てて運転席のドアを開けてカメラを置いた。

「こんにちはー、先ほど電話した運送会社の者ですが」
「ああ、待っててくれたんですね。ありがとうございます」

 宅配先の人間だと確認してから、判子を貰って商品を手渡す。車に戻ると、スマホに不在着信が残っていた。不在票を置いてきた宅配先の何処かからだろうか。折り返すと正にそれで、再配達時刻の確認をして電話を切った。
 スマホをホルダーに置き、カメラをバッグに仕舞った。配達の合間に撮るのがやっとで、このところ遠出出来ていない。丸一日撮影に使えたのはいつの事だろう。
 学生の頃は賞を取りまくり期待の新星だと持て囃されたのに、今では半年に一度自費で個展を開くのがやっとだ。そこでもレンタルスペースに払う費用とフライヤー代やら諸費用を引いたら残るのは僅かばかりのボーナス程度。マイナスになった事は無いが、だからといって三十目前にした年齢でこの有様では、写真家だと自称するのすら失笑ものだ。
 運転中、キンコンと私用スマホの方にメッセージが入った音がした。それで時刻が昼を過ぎたのを知る。決まって昼時になると毎日のように来るそれに、僕が返事をした事は無い。それでも既読をつけるだけで彼は納得しているようだから、それほど負担でも無かったのだが。
 昔を思い出して、今の生活を鑑みて。この所、これでいいのかと落ち込む事が多くなった。雑用ばかりのアシスタントを続けるより、きっぱり趣味として割り切って正社員として働いた方が、生活も楽になるし何より好きに写真を撮りに行く時間が増えそうな気がする。
 不在が重なって最後の配達を終えて帰宅したのはもう十時過ぎで、シャワーを浴びてベッドに転がって私用のスマホを確認する頃には、目を開けているのもやっとなくらい眠かった。

「ん……」

 珍しく、『潮島』じゃなくて『胡椒さん』の方からメッセージがきている。
 使い分けをするみたいに、彼は僕をホテルに誘う時は必ず『胡椒さん』の方で連絡してくる。それが彼との壁を感じさせるみたいで、いまだに僕も、彼にそれ以上踏み込めていない。
 メッセージを開くと、明日の夜はどうかという誘いだった。何年経っても、この瞬間は胸が高鳴る。まだ淡いまま続いているこの片想いも、しかし最近は嬉しいと感じた直後には鬱陶しさを感じるようになってしまっていた。
 丁寧な断りの文句を書くにも、予測変換を押していくだけで終わる。送信を押すと、数十秒で既読がつく。それだけで少し気分が浮上した。
 潮島からの誘いを断る理由は、単なる妬みでしかない。彼と会うと自分と比較して辛くなるから。それだけだ。会っていないのは実質二ヶ月くらいだけども、正直自分の身体を持て余しているから僕にとっても良くない。けれど、どうしても気分が乗らないのだ。
 寝ようとスマホを充電器に繋いだら、またメッセージの音がした。潮島が食い下がることはまず無い。他の誰かだろうと一応開いて確認したら、今度は『潮島』の方からだった。
 昼時にその日の様子やら仕事の進捗やらを送ってくるのが続いた一番下に、来週末白田とそのパートナー、それから大山と鏡田と飯に行くからお前もどうだという誘いが増えていた。

「白田の彼女か……」

 絶対また派手系美人だな。良い奴なのに何故か相手に浮気されて振られるのが続いた白田が彼女を作るのは久しぶりな気がする。今度は浮気されないといいな。
 来週末の配達のバイトはまだ予定を入れていなかったから、それには行くと返事を書いた。すぐに既読がついて、『OK』とスタンプが送られてくる。時間があったら、その後誘われるかもしれない。それまでには、この心のざわめきが収まっているといいのだけれど。
 明日の配達ルートを脳内にシミュレーションしながら眠りについた。












 白田のパートナーが男だった事に、驚いたのは僕だけだった。
 潮島は先に知っていたのか、平然としている。というか、接し方を見るに初対面でも無さそうだ。大山も鏡田も、あまり気にしていないように見える。

「どうも、高久田です」
「服有です。今日は大学の集まりだっていうのに、部外者が混じっちゃってすみません」
「いえ、僕もあまり顔出してなかったから、もう部外者みたいなものですよ」

 服有さんは、ごくごく普通の人だった。愛想は良いが、容姿は人並み。話の流れで聞いた仕事も、ガソリンスタンドの店長だという。三十過ぎという年齢にしては童顔な方かもしれないが、だからといって可愛いという感じでもない。落ち着いた普通の社会人男性、という印象でしか無くて、なのに白田と全く気負わず並び立てているのが不思議だった。
 料理を取る時に服有さんに肘が当たってしまって、白田に軽く睨まれた事に驚く。わざとらしく服有さんの肩を持って自分の方へ寄せるのを見て、独占欲が強いのかと意外な一面が見えて笑いを堪えた。
 昼から営業しているカジュアルな居酒屋で開かれた久しぶりの食事会で、僕が驚かされたのはそれだけでは無かった。
 早々に酔っ払った鏡田が、大山の膝枕で寝だしたのだ。大山もそれを咎める風でもなく、聞いてみれば同棲しているのだと言う。

「って事は、その、大山と鏡田も……?」
「まあ、付き合ってるって事になるんだろう」

 膝の上の鏡田の前髪を愛しげに撫で、大山は複雑な表情で笑う。いまだに簾のような前髪を切らない大山は、しかし大学時代より笑顔が柔らかくなった気がする。

「君に振られた彼を慰めているうちに、なんだか可愛らしく感じてしまってね」

 落とすのは難儀だったけれど、と大山は僕に視線を移して、

「まさか友人が全てゲイになるとは思わなかったけれど」

 と言った。

「うん? 僕は……」
「君と潮島も付き合っているんだろう?」
「は!? いいや!?」

 慌てて否定する僕の声が大きかったのか、潮島と話していた白田が「どうかした?」と混じってこようとする。

「いや、別に何でもないよ。大山が変な事を言い出すものだから」

 潮島はこちらを、何の感情も見えない目で見て、すぐに視線を逸らした。あ、服有さん、笑いかけてもらってる。いいなぁ。相も変わらず潮島は僕にだけ塩対応で、今日だってまだ一言も交わしていない。
 この男が毎日のように日記のようなメッセージを送ってきている意味も分からないし、信じられない。何がしたいのか聞いてみたくとも、そもそも潮島と言葉を交わす事自体が少な過ぎて叶わない。

「……まさか、こいつより臆病だったとは」

 大山は顔を顰めて鏡田を撫でた。
 僕が、鏡田より? ああそうだ。気が付かれていたのか。
 何も言わず苦笑を溢すと、ずいと酒のグラスが差し出された。

「久しぶりに見たいな、高久田の気持ち悪い飲み方」
「……? ああ」

 構わないが、と水の如く一気飲みをすると、大山が店員を呼んで「一番度数の高いのを六つ下さい」と頼んだ。

「大山?」
「俺もね、少しは飲めるようになったんだ。勝負しないか、高久田」

 どうやら大山は、僕と飲み比べをしようというらしい。いいよと受けて、酒を待ちながらザーサイを摘んだ。

「結構な自信だね、大山。鏡田みたいに倒れるまで飲まないでくれよ?」

 彼らが今は恋仲なのを知っていて煽るように言うと、大山が珍しく気分を害した風に僕を睨んだ。

「おいおい。俺は君を応援してるんだぞ」
「余計なお世話だね」
「相変わらず素直じゃないね。……この勝負、勝ったら君をお持ち帰りしてもいいかい?」
「ん?」

 急に声を張って言われて、首を傾げる僕に大山は続けて言う。

「この通り今日はこいつが使い物にならなそうだからね。たまには違うのを味見してみたい」

 何を言い出すのか。全く彼らしくない物言いに、ただ困惑してしまう。

「大山? なんだ、なんでまたそんな話に……」

 白田が呆れ気味に寄ってくると同時に、酒のグラスを持った店員がやって来た。置かれたお盆から三つずつ取って自分の前に置く。

「さあ」

 乾杯、と強引に始めさせられて、でも負ける気はしなかった。
 大山が頼んだのは度数の高いウイスキーがそれぞれ三杯。おそらく彼はこれが限界なのだろう。対して僕は、ストレートでも三杯くらい余裕だ。
 ──そう思っていたのだけれど。それが大山の策だったと分かったのは、十五杯目のグラスを飲み干した瞬間、正面の大山が余裕で十六杯目に口を付け始めたのを見たからだった。

「そら、君の番だ、高久田」
「う……」

 急かされて十六杯目を飲み干すと、流石に目眩がしてきた。
 一々店員に頼むのも面倒だからと、飲み放題なのをいいことに瓶ごと頼んだ大山は、十七杯目をショットグラスに注いで二瓶目を空にした。く、く、く、と三回に分けてそれを飲み干して、グラスをテーブルに置く。

「どうする高久田。もう一瓶頼むかい?」

 まだ気持ち悪くはないけれど、大山の方を見ると彼の輪郭が歪んで見える。酔うってこういう事なのか、と初体験に少し楽しい気分になってきた。
 だけど多分、これが僕の限界だ。

「いいや。僕の負けだ」
「おや、案外あっさり認めるね」
「頭がグラグラして、……もう、無理だ。倒れるような醜態は晒したくない」
「なら、行こうか。鏡田、帰るよ」

 大山は膝の上で寝こけていた鏡田を優しく揺り起こして、帰ろうと声を掛けた。
 ああ、やっぱり冗談だったか。さすがに恋人を交えてしたりしないだろう。彼らの家はどんなだか、見ておくのも悪くない。少し酔いが醒めたら、また酒の続きを楽しむのもいいかもしれない。
 立ち上がろうとしてフラついた僕を、横で見守ってくれていた服有さんが支えてくれた。

「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。でも、貴方に触ると白田に睨まれる」

 くすくす笑うと、服有さんは面食らったみたいに目を丸くして背後で僕を射殺しそうな視線で睨んでいた白田の方を振り返った。

「おいカナメッ」
「……だって」
「だってじゃねぇだろ」
「あんたに触るのは俺だけでいいもん」
「もん、じゃない。可愛こぶるな」

 白田と服有さんが喋ると、白田が面白い。コロコロ笑い続ける僕に、大山が呆れて腕を引っ張ってきた。

「高久田。行くよ」
「いいなぁ、白田と服有さん。仲良くて羨ましい」
「……仲良くすればいいじゃないか」
「僕? 僕は無理だよ。まず相手がいない。羨ましいなぁ、みんな相手がいて」

 僕が言うと、何故か沈黙が下りた。
 ああ、まずい。空気を悪くしてしまったな。

「すまない。酔うのは初めてで、勝手が分からない。言いたくない事まで口に出てしまうようだ」

 ゆっくり立ち上がって、鏡田に肩を貸す大山から財布を受け取る。中から二人分取り出して白田に渡した。自分の財布から自分の分を払って、白田と服有さん、それからずっと黙ったままの潮島に手を振った。

「じゃあ、また」
「気をつけてな」

 白田や服有さんのようになんて、高望みもいいところだ。僕らならせいぜい、……そうだ、せめて、挨拶を返してくれるくらい。ぼんやり考えながら大山の後について潮島の横を通り抜けようとして、服の背中が引っ張られてつんのめった。
 どこかに引っ掛けただろうかと見たら、何故か僕の服を潮島が摘んでいる。

「……? 離してくれないか」

 潮島の目はこちらに向かず、なのにその手はしっかりと服を掴んでいて離してはくれない。

「あの、潮島?」
「……」
「離してくれないか」
「……」
「潮島ー?」

 一体何なんだ。困った僕が先を行く大山の方を見ると、振り返った彼は呆れた風に口角を上げた。

「世話が焼ける」
「え、あ、ごめん。今行くから」
「いいや。今日は無しだ。潮島とよく話すといい」
「は?」

 こいつと何を話せというのか。現に今、全く喋りもしないのに。
 結局何故か置いて行かれて、それでも潮島は僕の服を離さないので彼の隣に座り直す事になった。

「僕はいつまでこうしていればいいんだ……」
「えーと、とりあえずソフトドリンクでも飲みます?」

 気を遣った服有さんが声を掛けてきてくれて、なのに白田は首を振った。

「もうお開きにしよう。おい潮島、お前もちょっとハッキリさせろよ面倒くせぇ」

 命令口調の白田を初めて見た。驚く僕に構わず白田は潮島を引っ立てて席を立たせ、僕も服有さんに促されるままに店を出る。

「その、俺が言えた義理じゃないんだけど……ちゃんと話をした方が、いいと思うよ」
 
 初対面の服有さんにまで大山と同じ事を言われてしまって、話してくれないのは潮島なのにと唇を噛んだ。
 電車で帰るという二人を駅で見送って、黙ったままの潮島を窺い見る。潮島はいつの間にか僕から手を離している。このまま離れれば逃げられるだろう。でも、まだ何かされた訳でもない。逃げなきゃならない理由が見当たらなくて、だけど居続けていい理由もない。

「あの……潮島」
「……行く?」

 帰るから、と声を掛けようとしたのに、潮島から返ってきたのはそんな台詞。どこに、なんて問うほど馬鹿じゃない。
 結局彼が必要としているのは、性処理の為の僕か。
 ここ最近で一番、気分が悪くなった。なのに僕の体は何も考えず頷いている。

「じゃあ、近くのでいいかな」

 今度は僕が黙る番だ。どうせ奴隷に言葉なんて必要ない。頷きを返して、あとは潮島について行くだけでいい。
 当然のようにホテルに連れて行かれて、部屋に入ってすぐに口付けられた。抱き寄せられて服を脱がされて、いつものように風呂で洗われる。中を洗浄してからベッドに転がされて、抱かれた。
 事務的なくらいの『いつも通り』。いつまでこんな事を繰り返すんだろう。

「……ねぇ、何考えてるの」

 どうしても心ここに在らずになってしまって、集中しきれないのを見咎められた。

「……」
「返事は?」
「ごめんなさい……」

 投げやりに言うと、舌打ちが降ってきた。だけれど、背後から抱く潮島はあくまで動くのを止めるつもりは無いらしく、僕に腰を打ちつけながら耳を舐めてきた。慣れてはいても、耳はやっぱり弱い。震えて僕の中の潮島を締め付けると、彼が息を詰めるのが聞こえた。
 ふふ、と笑いが漏れてしまって、それが聞こえたらしい潮島に後頭部の髪を鷲掴みにされて引っ張られる。

「何がおかしい」
「べ、別……に、イッ」
「最近お前、調子に乗ってるよな」
「へ?」
「お仕置きだな」

 潮島の声が、いつもの優しいそれじゃなくなっていくのが怖い。
 一度抜かれて、離れていった潮島が、ベッド脇のテーブルからスマホを取って戻ってくる。足首を掴んでうつ伏せから仰向けにひっくり返されて、窄まりに陰茎が宛てがわれた。

「はい、笑って」

 訝しげに彼を見上げた僕に、パシャ、という撮影音が降ってくる。

「な……」
「ほら、カメラ見てて。挿れるよ」
「やっ、な、なんでそんな……っうぁ」

 パシャ、パシャ、と何度も撮られながら、ゆっくりと潮島の陰茎が挿入されてくる。スマホのカメラはずっと僕の顔の方を向いていて、顔を背けても追うように潮島が動かすので、たまらずぎゅっと瞼を閉じた。

「や、ぁ」

 挿入れられて感じ入る姿なんて見られたくないのに、顔ばかり撮られて泣きそうだ。

「可愛い、……真広」
「っ!?」

 急に名前で呼ばれて、心に冷や水された気分だ。目を剥く僕を見下ろして、潮島は愉しげに口端を歪めた。

「真広」
「やっ、やだ……っ、やめろよっ!」
「真広、真広。可愛い。俺のチンポ挿入れられて感じてる顔、すごくかわいい」
「……や、めろ、よぉ……」

 僕はモルフォだ。ご主人様に抱かれているのは真広じゃない。僕じゃない。じゃないと……。

「ひぁっ、や、やだぁ、やだあぁぁっ」

 奥まで突かれて、僕が強制的に押し上げられてしまう所を潰されて、咽び泣いた。腰から揺すぶられ、浅い所から最奥までを潮島の肉にゴリゴリと擦られる。喘ぐ身体を潮島は何度も写真に撮って舌舐めずりした。

「かーわいぃ……。真広、今日が俺達の初夜だね?」
「や、だっ! やめろ! 僕は……僕はっ!」

 嫌だ。モルフォじゃなくなったら。彼に抱いて貰える僕まで真広になったら、潮島に冷たくされる。優しくしてもらえない。そうしたら、もう……潮島と、居られない。

「僕は……モルフォだ」

 奥まで犯されて泣きながら叫ぶ僕は、潮島にはどれだけ滑稽に映っているだろう。
 ご主人様と奴隷で居させてくれ。それ以上なんて贅沢、今さら望んだりしないから。泣きじゃくりながら達した僕の中で、潮島が萎えていく。ぬるりと抜けていく感触に震えた僕の頰を、潮島の冷たい指が撫でる。

「ねぇ……俺はいつまで、モルちゃんのご主人様でいなきゃいけないの?」
「……っ!!」

 ぶつけられた台詞の意味を解した瞬間、潮島を殴り飛ばしていた。ベッドに倒れ込んだ潮島に、痛む手を押さえながら怒声を浴びせた。

「ふざけんなっ! だったらもう呼ばなきゃいいだろう!!」

 頭に血が上って、倒れた潮島の腹を蹴りつけてからベッドを降り、着替えて財布とスマホを掴んだ。呻く彼にまだ怒鳴り足りなくて、自分のスマホを投げつけて「死ね!!」と子供みたいなことを叫んだ。
 振り向く事もせず、ホテルを出る。
 潮島との繋がりは、あのスマホだけだから。あれを解約してしまえば、それで全部終わりだ。
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