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53 決戦当日
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ローディング終了直後、体が動くようになるのと同時に視界の中でカウントダウンが始まった。
ハイドが切れるまで30秒しかない中、何をするかは当然決めてある。
マップの何処に転送されようが、とにかく一番近いアイテムボックスまで全力で走るのだ。
「……!」
走り出すと同時に、しかしそう遠くないところから土を蹴る音がした。
考えることは皆同じなのだろう。同じ場所のボックスを目指しているとしたら厄介なので、一瞬足を緩め足音の消えていく方向を定めるため耳を澄ませた。
……少しだけ、俺の目指している方とは角度が違う。
どうやらアイテムボックスを開ける前に一戦交えずに済むようだ。良かった。
安堵し、また脚に力を込める。
周囲の景色から、城主決定戦の舞台に選ばれたマップは『壱』のようだ。
草原、砂地、山、谷、住宅地、ビル群、廃墟と一般的なPvPマップに使われるシチュエーションを網羅していて、武器による有利不利が出にくいからプレイヤーに一番人気のマップ。
ロキ様なら九龍城を模した『弍』でもおかしくないと覚悟していたが、ロードを終えた瞬間煤けたコンクリ壁が見えなくて心底からホッとしていた。
蹴る地面の感触から、今俺が居るのは3776の5148──砂地と山の境界あたりか。
今回だけの特別ルールとして、アイテムボックスは100個すべてが出現するとゲーム開始5分前に事前告知があった。
城主決定戦の参加人数はソロコロランキング100位までのプレイヤー。つまり、最高100人が参加している。
ボックスとプレイヤー数は同数ではあるが、しかし固有出現ではない。何らかの理由で不参加のプレイヤーが数人いたとしても、ボックスが開けられなければ1つも武器を手にすることなく敗退も考えられる。
自分が一番得意な武器をドロップ出来る可能性は更に低いだろう。特にスコープ付き武器しか使えない俺などは。
だから兎にも角にも、1つめにドロップした武器で誰かを倒して奪うか、もしくは重量制限で置いて行かれた武器を拾って回るか……可能性は低いから、本当に他にどうしようもない時の択でしかないが。
なのでとにかく初動は死ぬ気で走ってアイテムボックスの確保だ。
木々がまばらに生える草地に突入すると、カウントダウンは残り8秒。
打倒ブラパと奮起していたギルメンの皆は武器を持ったら廃墟4700の5880の教会跡地に集合だと言っていたっけ。
スポーンした砂地と廃墟は隣り合っているマップで、この山を登ればちょうど……うん、良い位置だ。
アイテムボックスの出現位置がこれまでと違ったらどうしようと不安だったのだが、5秒残しで目当ての木陰にボックスが見えて胸を撫で下ろした。
出来ればスコープ付きの銃が出てくれ、と願いながらボックスを開ける。
……が。
「画鋲……」
飛び出すようにドロップしてきた皮袋を掴んで天を仰いだ。
画鋲10個入り。3袋もドロップしてきたのは、他の武器なら弾薬が一緒に出てくるからその分だろうか。
せめてナイフや手榴弾ならまだ勝機も見出せたかもしれないのに、よりにもよって最弱の画鋲とは。
画鋲の確定数は確か10。つまり、1袋のうち1個でも外れれば倒しきれない。奇襲や囮で使うことはあるが、画鋲だけでキルを狙うのは現実的ではない。一度でも地面に触れれば消えてしまう使い切りだし。
懐に忍ばせておくのに3袋もあると邪魔なのでじゃらじゃらと1袋に纏めて入れ直していると、カウントが0になって半透明だった体に色が戻ってきた。
周囲に音は無く、しゃがんだ姿勢で木々の合間から遠くを警戒してみるが動く姿は視認出来ない。
まあ100位以内に入るようなプレイヤーが初動で堂々とその辺を歩いているわけがないから、それも想定の範囲内なのだけ……前言撤回。
「……」
居た。
堂々と歩いている人が。
赤黄橙の3色が入り混じったうねる長髪を風になびかせ、近所でも散歩しているかのようにのほほんとした表情で身を隠そうとか警戒しようという素振りすらない。
脳内マップにこの周辺のアイテムボックスが何処にあったか思い出す。
走って3分圏内に5個。
しかし、まだゲーム開始から1分以内だというのに、彼の──DragOnさんの手には1丁のショットガンと、背中に長い棒。
1個のアイテムボックスから出てきたにしても引きが強すぎるんじゃないか、それは。
「こんにちは、DragOnさん」
「ん? やあ。意外だな、君の方から声を掛けてくるなんて。隠れてやり過ごすつもりなら1回は見逃してあげようと思ったんだけど」
どうせバレているだろうと立ち上がることもせず小声で挨拶したのに、40メートルほど離れた位置のDragOnさんは正確に俺の方を見てヒラヒラと手を振ってきた。
「声が大きいです。他の人に見つかるじゃないですか」
「俺と君が一緒にいるところに出てくる度胸のあるプレイヤーがいるなら、それはそれで見てみたいかな」
「ブラパとか鹿さんとか」
「残念ながら、その2人はたぶん近くにいないね。勘だけど」
勘、と言いながらDragOnさんはまるでどこまでも遠くまで見えているみたいな顔で周囲に目を配る。たまに彼が視線を止めた先で微かな音がするから、きっとその先に居たプレイヤー達が恐れ慄いて逃げ出したんだろう。
はぁ。無理無理。こんな人に勝とうなんて、俺には絶対無理。
「提案があるんですが」
音だけは最小限に、木陰から出てDragOnさんに見えるよう姿を晒した。片手に空の皮袋を掲げて見せ、俺の所持武器が彼に届かないことを示す。
「それは俺にも利のあることかな?」
「勝ち負けだけを考えるなら何のメリットもありませんが、楽しさを考えるならそれなりだと思います」
俺の言葉を聞き、DragOnさんはニッと口元を笑ませて先を促すように小首を傾げた。
「俺と組みませんか?」
運良くDragOnさんと会えて、さらに運良くDragOnさんが交渉に乗ってくれたら、と事前に考えていた作戦の1つではあった。
しかしまさかこんな序盤で彼と会えて、邪魔も入らずスムーズに話を聞いてもらえるとは思っていなかったけれど。
「君と組むの、そんなに楽しいかな」
DragOnさんは純粋にそこが気になるらしい。
欲の虜にいたのは短期間だったが、彼の行動原理が『興味を引かれるか否か』なのは知っている。一言目に拒否の言葉が返ってこないのだから、それなりの関心はあるということ。
「実はうちのギルメン、組み打ちして俺を城主にしようとしてるんですよ」
「へえ。ブラパじゃないんだ?」
ソロ戦なのに徒党を組むことにした、という話をしてもDragOnさんは驚く素振りもない。やはり彼もルールの穴については察していたのだ。ということは。
「明星もDragOnさんを城主にしようと動いてるんですね?」
「そうだね。そんなことしなくて良いよって言ったんだけど」
肩を竦めて困ったように、けれどさして興味も無さそうな表情でDragOnさんは頷く。
本当に今日は幸運だ。こんなに想定通りが続くなんて。
少し小高くなったここから、遠くに視認出来る廃墟地区の教会の尖った屋根を指差した。
「うちのギルメンは武器を持ったらまずあそこで集合なんです」
俺の動きを注視しつつ、指差した先に何があるか、それから俺が移動しようとしていた方向を視線だけで確認したDragOnさんはもう俺の意図を読んだのかハハッと声をあげて笑う。
「いいの? そんなことして。嫌われちゃうかもよ?」
「実は最初の1人にする人には事前に言ってあって、了承してもらいました。……楽しいですよ、きっと」
最前席で見たいでしょう? と訳知り顔で笑ってみせると、DragOnさんは思案するように顎を撫でて笑みを深くした。
「何人くらい?」
「今何人集まっているかは分かりませんが、うちのギルメンは全部で13人ほど参加してます」
「なるほど、多いね。うちは5人だったかな」
「チーム戦が苦手で城戦に参加していなかった人も結構いたようなので」
「城戦に参加してなかったメンバーの名前は?」
「え、えっと……塩結びさん、ゆかりん⭐︎天使さん、あと予備エマさん、だったかな」
「うん、全員知ってる名前だ。城戦メンバーで落ちたのはももとリンかな?」
「……はい。潜る時間が足りなかったみたいです」
「あの2人はソロで上がってこられないよ。最初の1人は誰?」
「地球さんです。乗り気じゃないのにランク外まで落ちられずに申し訳なさそうにしていたので、開始前に話を持ち掛けたら、楽しそうだね~いいよ~、と」
「いい人選だ。あの犬、演技上手いからこっちの合図を間違えなければかなりのヘイトを稼げるね」
……話が早すぎる。
そんなに回転の早い頭は持ち合わせていない俺は、余裕ぶった表情を作ってはいるが正直DragOnさんの質問に答えるのが精一杯だ。
心臓はバクバクだったけれど、DragOnさんはそれすらも見抜いたように鷹揚な顔で「よし、乗ろう」と言いつつ背中に背負った長い棒を下ろし俺に差し出してきた。
「……くれるんですか?」
「だって、画鋲1袋じゃ地球くんだけ殺って戻ってくるのは無理だろう? もう少し登って、そこから狙おうか。合図は決めてあるの?」
「いえ。スナを拾えるまでは合流もしない、と言ってあるだけです」
「じゃあ地球くんにレーザーサイトを当てて合図をしよう。きっと楽しい始まりにしてくれるよ」
DragOnさんはウキウキと弾んだ声でそう俺に指示すると、もっと斜面の上の、教会がよく見える位置を目指して歩き出す。
一見無警戒に見えるが渡された長い棒で殴りつけるのすら無造作に避けられそうな気がして、ほんと無理、と思いながら俺もそれを追いかけた。
標高が上がるほど木々の生える間隔が狭くなるこの辺りは、隠れ易いが逃げにくい。
あまり得意な地形じゃないんだよな、と思いながら周囲の警戒を怠らず登っていると、視界の中で何かが動いた気がして反射的にその場にしゃがみ込んだ。
と同時に、長い棒を構える。
「もう少し右」
俺が最警戒で銃を構えているのに、のんびりと振り返ったDragOnさんはしゃがみすらせず銃身を上から2本指で挟んで僅かに動かし、「ここだよ」と止める。
トリガーを引くと、光線が飛んだ。
薄暗い緑と茶色の中で、かなり遠く──1200メートルは先で同じ色の何かが爆ぜたようだった。
視界の右端にプレイアウトしたプレイヤーの名前と自分の名前が表示されてやっと、気のせいでなかったと知る。
「冗談でしょう……」
「あれに気付く君もかなりだよ」
俺ですら見間違いかもと思うような遠くのプレイヤーの動きを、おそらくは俺より正確に察知して位置を把握していたDragOnさんにドン引きしたのに、まるで彼の方が驚いたように拍手してくるのがわざとらしくて悔しい。
「うん、今ので邪魔しそうだった子たちは一旦退いてくれたみたいだ。ちゃちゃっと開戦の狼煙を上げようか」
木々ばかりに見える景色を見回したDragOnさんはそう言って、また歩き始めた。
俺には分からないが、他にも数人潜んでいたようだ。
底知れなさが恐ろしく、これに勝とうと本気で挑み続けているブラパや鹿さんを改めて尊敬し直してしまう。俺には無理だ、挑む前からもう心折れてしまっている。
「あそこなんかどうかな」
「いいですね」
先を行くDragOnさんが指差した先には、大岩が突き出した少しばかりの崖のような場所があった。
白く大きな岩が足場になっていて、あそこなら眼下の教会からも目立ってよく見えるだろう。
狙撃ポイントに辿り着き、そういえばさっきは慌てていてスコープを直で覗いたんだっけと思いながらサブモニターを開いてそこにスコープの中の映像を出した。
……うん、やっぱりこっちの方が慣れていて見易い。
アバターの身長が伸びても亀だった頃の癖が抜けず、結局DragOnさんのように格好良い姿勢で構えるより体全体で長い棒を支えてサブモニターを使って狙う方が落ち着いてしまう。
「ギルドに居た頃も思ったけど、亀くんの狙撃姿勢って独特だよね」
理由を答えようかと思ったが、これ以上手の内を明かして後で後悔するのも嫌だから曖昧に愛想笑いを浮かべるだけに留めてまたサブモニターに視線を戻した。
教会の中までは直線距離で3500メートル前後だろうか。
「ボイス操作オン」
サブモニターを極限まで拡大すると少しの揺れで数メートル揺れてしまうから、数回深呼吸してから「狙います」と宣言し息を止めサブモニター内の映像に全神経を集中した。
教会の中に、欲の虜メンバーが1、2、3、……7人。開始10分以内にこれだけ集まれるのだから、本当にあのギルドの人たちは有能だ。
その中に地球さんの姿も見つけたので、彼の肩口から腕にかけて何度か滑らすようにレーザーサイトを当てた。
モフモフの金茶の毛並みに埋もれた黒い瞳がこちらを向き、目が合ったように感じた一瞬後、彼はペロッと赤い舌を出した。
「──、──!」
地球さんが何か言いながらこちらに向かって手を振る。
つられたように周囲のギルメンたちが俺とDragOnさんがいるこちらを見上げた。──さすが上手い、地球さん。
「『撃て』」
DragOnさんがヒュウと口笛を吹くのと同時に、地球さんの胴を狙った光線はまっすぐに彼を貫いた。
視界の右側にキルログが流れる。
教会の中ではギルメン達が地球さんのいた場所と俺たちのいる方を指差して驚きに何か話しているようだが、まだ逃げ出す素振りはない。
……8、7、6、5。
長い棒の再装填を口の中で数えながら、次に誰を狙うべきか目算をつける。
マシューさん、……笑ってる?
オルテガさん、あ、レーザーサイトに気付いた。
双子……あ、もう裏から出てる。
……HAYATOさんでいいか。
彼なら避けるだろうと思いつつ、けれどもう一撃くらい入れないと俺の本気が伝わらないかと狙いを付けた。
大将になれと担ぎ上げられた俺が、仇敵であるDragOnさんと組んでのギルド裏切り。
これがDragOnさんへ提案した『楽しい』だ。
地球さんはおそらく、俺の名前を呼んで手招きしたんだろう。
ギルメンたちの注目は十分集まっていて、だから高台からの狙撃体勢を崩さない俺の姿も、隣で手を振るDragOnさんもしっかり見えている筈なのだ。
なのに、何故逃げない。
鹿さんが合流していたら「アンタら何ボーッとしてんの!? さっさと走りなさい木偶の棒っ!」などと怒声が飛んでいるぞと思いつつ、エネルギー再装填を終えた長い棒の先でHAYATOさんに狙いを付けた。
「無駄撃ちはダメだよ」
「『撃て』、え、あっ」
射撃の瞬間に銃身を上から押されたと思ったら、サブモニターが大きくぶれ、てんでおかしな方向に光線が飛んだ。
と、思ったのに。
『亀吉 が ごまだんご を審判の光で倒した!』
「えっ……」
視界の右端にキルログが流れ、思わず銃の先を肉眼で確認するとこちらへ猛烈な勢いで走ってくる笑顔さんが見えた。
他のギルメンより先んじて裏口から出ていた双子は、どうやら俺の視界の外でもうこちらに向かっていたらしい。
片割れを殺された笑顔さんは俺と目が合うと俺を指差し、それから親指を下に向けた。遠目からでも分かる。怒っている。
「移動しましょうか」
「そうだね。他の子たちも動き出したようだし、少しずつ数を減らそう」
「笑顔さんはこのまま引っ張って、たぶんそのフォローにオルテガさんが来るので彼を先にやりましょう。……もっと武器が欲しいですね」
長い棒を抱え、まずはさっきキルしたプレイヤーのロストした武器を拾いに行こうと指を差すとDragOnさんはそれだけで意図を汲んだのか頷いて走り出す。
「他の子たちはどう動くと思う?」
「マシューさんはおそらく鹿さんを探しに行って鹿さんにキルされます。他の方々は俺が裏切ったのを見てもうソロに頭を切り替えていると思うので、しばらくは俺たちじゃなく他のプレイヤーを狙って武器集めに走ると思います」
半年以上毎日のように組んできた仲間のことだから、ある程度予測はついた。
すらすらと口にして、それからふと感慨深く思う。
周りから浮かないよう努力していた高校時代にクラスメイトで同じ予測をしてみろと言われても、きっと出来なかっただろう。見えない空気を読もうとするばかりで、目の前の人がどんな人なのかを見ていなかったから。
このギルドでも最初は同じことをして、けれどいつの間にか空気のことなんか忘れていた。スコープの中の人がどんな行動原理を持ってどんな時にどう反応するのか、それをちゃんと目で見て理解しようと努めれば、空気なんてものがいかに不確定で信用に値しないものか分かったから。
見るべきはその人の言動と表情。言葉が嘘なら行動に表れないし、行動が嘘なら目線や表情に出る。すべてを巧妙に偽装出来る人は少ない。
あのブラパでさえ、思い返してみればずっと俺への好意を隠せてはいなかったのだ。俺がもっと早くまっすぐに彼を見てさえいれば、誤解を抱く余地なんか無いほどに。
俺のことなんか微塵も興味もなく信用もしていないくせに無防備に背中を晒す、DragOnさんのような人も居るには居るけれど……。
「おおむね同感だ。ごめんね、つい今まで少し君を低く見積もっていたかもしれない」
俺の予測を聞いてチラと肩越しに振り返ったDragOnさんに笑いながら言われ、肩を竦めてため息を吐いた。
「どうぞそのまま侮っていて下さい。もしかしたらその油断で寝首を掛けるかもしれないので」
侮られようがまったく気にしていないのに心にも無い挑発をしてみたが、DragOnさんは「そうだね」と朗らかに目を細めただけだった。
それから22分。
俺とDragOnさんは危なげなくキルを重ね、武器を集めながらマップを移動し続けた。
正直、当たったことの無かった深夜帯のプレイヤー達というのもそれほど脅威では無く拍子抜けした。
というか、玄人だからこそ俺とDragOnさんなら当たり前に俺を狙うし、亀砂の悪名を知ってるからこそミド~リンさんに使った『わざと隙をみせる』という罠にも簡単にかかってくれて。
一度なんか、隙を作る位置に事前にDragOnさんが薙刀を構えていたらまっすぐそこに飛び込んできて勝手にプレイアウトしていった人がいて驚いた。DragOnさんに「君は殺意をかうのが上手いんだね。苛立ちが視野を狭くして、罠だと分かっていても息の根を止めたくて飛び出してきてしまうんだろう」と評され、褒められているのか貶されているのか微妙な気持ちになったが。
現在地は住宅地の一角、家の外壁と塀の間の隙間で一息ついている。
100人近く居たプレイヤーも、残り人数は俺たちを含めて5人となった。
30分の制限時間も残り3分で、けれどまだブラパと鹿さんとは出会っていない。
ただたまにDragOnさんが無言で一方向を見つめていたりするから、鹿さんはまだ生きているんだろう。
ブラパがもう他の誰かにキルされていたとしたら……まあ、順当といえば順当に、このままDragOnさんが優勝するだけだ。
幾分つまらない幕引きにはなるが、ブラパとの賭けは俺の勝ちということでいいだろう。正直俺は城の主人なんてどうでもいいし、ブラパとも勝とうが負けようが結果は同じ。
ただ1年近く励んできたゲームが終了するのに後悔の無い幕引きにはしたかったから、そういう意味でならおおむね満足いく最終試合といえよう。
俺もDragOnさんも所属ギルドと交戦した時はお互い手を出さず引いて待機して、悔いを残さないように配慮した。裏切りについては試合後に詰められるだろうが、本心では組み打ちがだるいと思っていたギルメンには感謝されるはずだ。
手元には赤リンダが一丁と、腰にDragOnさんが重量制限で持てなくなった『懐古の情』一丁、背中に残り1発の長い棒、それから懐に画鋲。残弾に不安はない。
「俺、囮に出ましょうか?」
通常のソロコロは時間切れになるとその時点で残っているプレイヤーの人数に合わせて全員がその順位になる。3人残っていれば全員3位、見たことはないが10人残っていれば全員10位なんだろう。
とすれば、変更が広報されていない今回も同じはず。
同率5位の5人を城主にするとは考えられないから、おそらく城は城主不在、もしくは今後のイベントの報酬となるだろう。
全員に分け隔てなく、なんてしない。ロキワはそういう世界で、ロキ様はそういう神だ。
それは参加している皆が分かっている筈で、けれどここまで残っているプレイヤーが今さら時間切れ間近だからといって無策に飛び出してきてくれるとも考えにくい。
ならいっそ1位を目指していない俺が出ていって誘き出すかとDragOnさんに問い掛けたその瞬間、視界の上部真ん中に表示されていた数字が変化した。
『3/100』。
何処かで相打ちがあったか、もしくは2人を同時に倒した誰かがいたか。
どちらにせよもう残りのプレイヤーが俺たちともう1人だけになったのは確定した。
「囮は俺の方が良いね。援護よろしく」
「はい」
待っていたかのように立ち上がったDragOnさんは、しかしふらりと変な方向に上半身を曲げた。
直後、パヒョッという音と共に真横の壁に穴が開く。
狙撃されたのだ、と気付いた瞬間、DragOnさんは前に走り、俺は後ろに飛び退いた。何処から狙われても二手に分かれて逃げられる場所に隠れていたが、一瞬だけ振り返ったDragOnさんの目配せで少し間を空けて彼の後を追うことにした。
南西から撃たれたとばかり思ったのに、DragOnさんが向かうのは北西方向だ。
弾痕の方向からはかなり無理があると思うのに、小走りのDragOnさんは途中で何か見つけたとばかりに道脇の家に入って行ったかと思えば、すぐ出てきた。
肩にロケットランチャーを掲げて。
「6677の3450、高さ3000の辺りに飛んでる。狙って。俺は着地点に撃ち込む」
「あっ、はい!」
飛んでる? と思いつつ、言われた通りの方向に赤リンダを構えた。射程はギリギリ届くかどうかだが、長い棒で狙うより的が見え易い。
サブモニターに出したスコープの中には、ロープのようなものに棒を引っ掛けてまるでジップラインのように高速移動するプレイヤーが表示されていた。
ビル群の高層階から撃ってすぐ、他のビルの低層へ移動しているらしい。
俺なんかVRだと分かっていても2、3階から下を覗き込むだけで足が竦むのに、金のポニーテールを靡かせる彼はおそらく今地上60mをその辺に落ちていたロープと鈍器か何かに頼って悠々と移動している。
「何食べたらあんな度胸つくんだよ……『撃て』」
ロープは対岸のビルに繋がっており、幸い動く速度もラインも一定で狙い易かった。置き撃ちすれば外すことは無いだろうと思いながらボイスコマンドで発射する。
ほぼ同時にDragOnさんがロケランを発射し、前方に見えるビルの一部が損壊した。
が、……キルログは流れない。
「えぇぇ……」
「ジャスト回避。ほんと厄介だね、ラパンは」
サブモニターの中では、俺の発射のほんの僅かに直前、自らロープを切り鈍器をビルの中に投げ、そこに巻きつけていたロープを頼りにするすると降りていくブラパの様子が映っていた。
まるで俺の狙うタイミングなどお見通しとばかりで、爆風で煙るビルを眺めながらDragOnさんも呆れたように口を尖らせつつ、次の弾をロケランに装填している。
ああ、やはり始まってしまった、人外対決が。
ブラパと対戦するならと懸念していたことが実際になってしまって、しない筈の頭痛がしてくる。
思い込みで脳を騙して身体を制御する、なんて荒唐無稽な人外戦術をブラパに教えたのはそもそもDragOnさんなのだ。教えた彼が使えないわけもなく、おそらくは使っているからこそ無敵の強さなわけで、そんな2人がぶつかるとなればもう俺に立ち入る隙は……無いわけでもないのが、嫌なものだ。
いや、立ち入りたくないのだけど。出来ればもう自キルして離脱したいくらいなのだけど、それをやっておそらくは今待機ルームで試合を見ている鹿さんに後でなんと叱られるかを考えたらそっちの方が恐ろしいので、だったら今俺に出来ることをやるしかない。
ある意味、俺でなければ出来ないことだし。
「あそこからなら、走れば50秒後には接敵するでしょうか」
「30秒だよ。全速力で走るラパン、俺より早いから」
早くても当たらなければ意味ないんだけど、と呟きつつ、DragOnさんがロケランの2射目を撃つ。ビルとビルの合間に着弾したそれは盛大な音と煙を立て辺りを瓦解させたが、やはりキルログは流れなかった。
DragOnさんはロケランを投げ捨て、近距離戦に思考を切り替えたのかショットガンを抱え上げる。
「俺が前に出て油断させるので、俺の真後ろに隠れていけそうな時にキルして下さい」
「君を貫通させてもいい?」
「どうぞどうぞ」
それでブラパを討ち取れるなら、と赤リンダにマガジンを装填し構えながら走り出した。
DragOnさんは俺の提案通り、ぴったり背後に張り付くように隠れてくれている。
……チャンスは一度。
所詮人類の枠に囚われた俺が人外と人外の対決に水を差す形にならないといいのだけれど。失敗した時に試合外で観戦している人たちにどう騒ぎ立てられるかを考えると、頭ばかりでなく今度は胃まで痛くなる気がした。
「……!」
まだ爆風が残って砂煙で灰色に霞むビル街の中、微かに砂を踏む音が聞こえた。
赤リンダを構える指に緊張で汗が滲む。
おそらくは短射程でも当たる距離に、もうブラパは近付いている。まだ撃ってこないのは彼からはDragOnさんの位置が分からないからだろう。DragOnさんは正確にブラパの視線を把握しているのだ。
視線を把握。
頭にチリ、と何かが掠める。
ブラパの位置を把握しているのに、どうしてDragOnさんはまだ撃たないんだ?
DragOnさんの持っているショットガンはセミオートで、装填間隔は約1秒。残弾は18発。ブラパが俺しか見えていない今はかなり好機の筈で、俺ごと撃てばそれで試合終了なのに──何故?
強く風が吹く。あと数秒でブラパの姿が見えるはずだ。
こちらからハッキリ見えるということは、あちらからも同じ。その前に決着をつけるべきなのは明白だ。相手の位置が分かっているなら。
ここにきて焼き切れそうな速さで頭が回転を始める。
死んでも構わないと思っていたのに、死ななくて済むルートが見えた瞬間、縋り付きたくなってしまうのはもはや本能ってやつに違いない。
思い出す。以前軽く観た、DragOnさんの過去の野良試合。強かった。圧倒的な索敵と身体能力で何百試合も1位を欲しいままにしていた。
だが、負け試合が無かったわけではない。ただそれは他のプレイヤーを狙った流れ弾にたまたま当たったとか、第三者のプレイヤーとの相打ち覚悟の自爆に偶然巻き込まれただとかで、彼を攻略するのに参考にはならないと思っていた。
──逆だ。
DragOnさんは、狙ってはいけないのだ。
原理も仕組みも分からない。だが、これまで彼と組んだ試合を思い返せば彼の動きの不自然さが見えてくる。DragOnさんはいつも狙われ易い、開けた場所を好んだ。隠れるのは他から指示されたか、もしくは今日なら俺が休むことを提案したから。まるで出来る限り視線を集めていたいと言わんばかりで、反撃の自信があれば隠れることすら必要としないのかと舌を巻いていたのだけど……おそらく、違う。
どうやっているのかはまったく分からないけれど、DragOnさんは周囲からの視線を感じ取っている。それも、位置や方角すら分かるレベルで正確に。
だから今は撃てないのだ。
俺が陰になって邪魔だから。
おそらくブラパが居ると分かっていても、確実じゃないから撃てない。撃ち損じればブラパが視線について悟ってしまうから、自身の弱みを見せない為に無駄撃ちはしない……出来ないでいる。
天啓ってこういうのかな、などと浮かれて馬鹿なことを考えた。
また風がビュウと吹いて、周囲を曇らせていた最後の砂煙を飛ばしていった。
走りながらこちらにライフルの銃口を向けるブラパと目が合う。
直後、背中から右に向かってDragOnさんが飛び出した気配がした。ブラパの視線がそっちに移る。
「DragOnさんを見ちゃダメです、ブラパ!」
瞬く間に銃声の応酬となった場から逃げ出しつつ叫んだ。「ハァ!?」とブラパの怒声が聞こえる。
流れ弾で死ぬのは御免とばかりにちょうどいい位置にあった瓦礫の陰に滑り込む間にも何十発も聞こえてくるが、キルログは流れない。
「亀吉くん。もう共闘は終わりかな?」
「あっ、はい! 終了で! お世話になりました!」
「こちらこそお疲れ様。ラパンが終わったら仕留めてあげるから、大人しくしててね」
「バ亀援護ッ!」
「ばっ、ばかめ!? ひどっ」
おそらく公式試合として試合は録画され外部にも中継されているだろうが、音声は一緒に流してもらえているんだろうか。
会話が聞こえなければ俺はギルドを裏切りDragOnさんを裏切り、最後の最後にブラパに組みした2重スパイみたいな有様で、俺へのブーイングは想像に難くない。音声、流れてるといいな。
崩れて大小重なり合ったビルの瓦礫の下を這い、ブラパとDragOnさんが交戦しているのを横からちょっかいかけられそうな位置を探してリンダを構えた。
DragOnさんは視線に気付く。だったら撃つ瞬間だけ視線を外してみたらどうか。試しに撃つ瞬間だけ目を閉じてみたが、軽々と躱されたようでキルログは流れなかった。
それならば、と腰に下げていたリボルバーを掴み上げる。拳銃を握る感覚に慣れておらず、小ささに何だか不安感が込み上げた。だが、当てなきゃという気負いはない。
DragOnさんが言ったのだ。運極の俺の弾は当たる時は確実に当たる、と。いくら人外の動きが出来るとしても、当たると判定が確定した弾を避けることは出来ないだろう。
薄目にしてDragOnさんの姿を極力入れないようにしながらリボルバーを構え、目を閉じた。さっきは直後に撃ってしまったから悟られた。なら、少し間を置けば?
「ブラパー、避けて下さいねー!」
一応叫んでから撃ち始めたのだけど、遠くで何か俺に文句を言っているのが聞こえたような、聞こえないような。
瓦礫の合間は銃声が反響して耳が痛く、目を瞑ったまま6発撃ち切った後には耳鳴りがするようだった。
目を開け、さてどうかなとキルログを確認しようとした俺の頭に、ごつりと硬い物が押し当てられる。
「まったく。大人しくしててって言ったのに、困った子だね」
残念ながら俺の策は失敗に終わったようだった。
しかし、無意味ではない。わざわざ俺を先に仕留めに来ようとする程度には、DragOnさんにとって鬱陶しい行動だったということだから。
勘の良いブラパなら、さっき言った俺の言葉も含めて十分察するに必要なピースは集まっただろう。もしかしたら2人ともを出し抜けるかとも夢を見たが……残念。
「撃たないんですか?」
「言ったろう。君はラパンの後だ」
囮だよ、とDragOnさんが呟いたのが先か後か、彼が俺の頭に押し付けていた銃が弾き飛ばされていった。
頭上で風切り音を鳴らしたのは迷彩服を纏った脚だ。
「あんまソイツ舐めてっと痛い目見ますよ」
「そうだね。師匠より聡いようだ」
揺らぐように身を躱したDragOnさんに、追撃するようにブラパが拳を振るう。ここまで近距離だと銃はかえって邪魔なのか、DragOnさんはもう片手に持っていたショットガンを盾代わりに構えて薄く微笑みを浮かべた。
そこにもう俺への警戒はない。ここにきてまだDragOnさんに視線を向けるブラパへも同様だ。どちらにも勝てる気でいる。勝つ為に距離をとるかこのまま接近戦に応じるか、それだけを考えている。
目に映るDragOnさんの表情からそう読み取って、俺は反射的に懐の皮袋を高く投げていた。
そして、瓦礫の下から飛び出し、DragOnさんと、ついでにブラパにタックルするように2人の腕を捕らえて抱え込む。
「ブラパ、ナイフ!」
ブラパが手首の内側にナイフを仕込んでいるのは動きで分かっていた。俺が分かるんだから、DragOnさんだってそうだ。
だから、俺に言われて咄嗟にブラパがナイフを構えるのも、それをDragOnさんが膝で蹴り上げるのも、想定済み。……怖いくらいに、全部。
空中でナイフが刺さり、皮袋から画鋲がばら撒かれる。
「運に頼るのは良くないな。鹿花に叱られるよ」
頭上を仰ぎ見、けれどDragOnさんはさして気にするまでもないとばかりに俺に視線を戻し、軽蔑したみたいに肩を竦めた。
「そうですね。でも、叱られるのは俺だけじゃないですよ」
DragOnさんは俺を侮っている。だから逃げない。10個の画鋲がすべて自分だけに降ってくるわけはないと思っているから。
ぎゅ、と掴んだ2本の腕をことさらに力を込めて抱え直した。
キルログが流れる。
優勝者は1人。
空に、初めて見る『Congratulations!』という花火が上がった。
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