賞味期限が切れようが、サ終が発表されようが

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34 良い夢を

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 ロードが入ったのだ、と気付いたのは周りがブラパの部屋になってからだ。
 夕陽に照らされる家具と波の音──この数ヶ月でブラパとはかなり親しくなっていた気がしたけれど、そういえばここに来るのは久しぶりだった。
 2人きりになるとしても、ブラパはいつも俺の部屋に来たがっていたし。

「あの、」
「抱くか抱かねぇか、決めかねてる」
「……はい?」

 あの場で他のギルメンに見せられないような勢いで怒られるならせめて先に理由を知りたいと思って聞こうとしたのに、ブラパから出たのは意味不明な呟き。
 眉を顰めてブラパを見上げれば、彼は俺をベッドへ降ろし、そのまま上に乗り上げてくる。

「ブラパ……?」
「傍に置いとくだけの方が良い気がするが、いっそ抱いちまった方が楽な気もする。どうしたらいいと思う?」

 これは、質問なのか、それとも独り言なのか。 
 仰向けに寝かされた俺の脚の間に腰を割り込ませてきたブラパは、さっきと同じ射抜くような鋭い眼差しで俺を睨み付け、なのにいつもと同じ優しい手つきで頬を撫でてくる。
 怒っている訳では……ない、のか?

「……迷う理由はなんですか?」

 抱くか、抱かないか。
 その問いは俺の扱いに関するもので間違いないだろう。
 最初から抱くつもりで依頼を受けたんだろうに、どうして今になって迷うのか。
 現実の俺は拒否されたが、こっちの俺なら抱けるというならさっさと抱けばいいのに。
 ブラパは俺の質問に僅かに眉を動かしただけで、答えはくれない。
 頬を撫でた手が首筋へ降り、指先だけでなぞられると体が強張った。

「ブラパ、あの」
「俺はVRと現実はまったく別物べつもんだと思ってる」

 険しいままの顔が近付いてきたかと思えば、額にキスを一つ落とし、少し離れ、また寄ってきて今度は眉間に唇が押し当てられる。

「こっちは夢を見る場所だ。現実は現実。こっちで何をしようが、誰とどんな関係になろうが、夢は夢で──現実には一切関係ない」

 ……これは、予防線だろうか。
 現実で会った数日前、俺がどんな心境だったかが見抜かれていて、それがブラパを悩ませることになったのだろうか。
 それなら彼が急に俺に近寄らなくなったのも納得がいく。
 VR内の遊び相手としか思っていないのに現実でも本気にして言い寄られたら、そりゃあVRこっちでの対応も再検討したくなるか。
 怒ったように見える表情は、悩みの重さから?
 まさかあの短時間で気付かれると思っていなかったから、予定外の負担をかけてしまっていた事に申し訳なくなる。

「俺もそう思いますよ」

 ブラパは俺に拒否られたくなくて、……なんて。
 とんだ斜め上の助言をくれた鹿花さんを思い出し、親しい彼でも理解しきっている訳ではないんだな、と少しだけ安心して笑みが浮かんだ。

「こっちはこっち、あっちはあっち。そんなの当たり前じゃないですか」

 ブラパはBUCK LAPINで、兎村未來じゃない。
 中身が一緒でも、人に見せる一番外側が違うなら、それは違うもの。
 一緒にしてはいけないもの。
 同じだと言うのは詐欺師で、同じだと思うのは子供だから。
 ……大人が言いそうなことだ。
 ブラパからは聞きたくなかったな。

「まあ、俺が選んでいいっていうなら、抱かない方でお願いしたいです。やっぱり、なんだかんだ……初めては好きな人と、ってのが理想ですし」 

 へへ、と苦笑を浮かべると、俺を撫でていたブラパの手が止まった。
 俺からの好意が負担になって関係が壊れるくらいなら、そんなの無かったことにした方がいい。
 どうせもう二度と『兎村未來』とエンカウントすることは無いのだし。

「曲がりなりにも成人までVR童貞守ってきたんで、いっそ理想の人を待ってみるのもテだと…………え、あれ、あの、ブラパ?」

 ダメ押しにブラパとは正反対の理想のタイプでも並べてみようかと黒髪の反対はー、などと考えていたら、急にTシャツを腹から上に捲られ、ズボンの方も下着ごと膝まで引き下ろされて目を丸くする。

「あの、選んでいいんじゃ……」
「訊いただけだ。選ばせてやるとは言ってねぇ」
「えぇ……」

 べち、と太腿を叩かれ、首を傾げると「脚抜け」とズボンを引っ張られた。
 ……まあいいか。
 どうやらブラパは俺を抱く方を選んだらしいし、誤解を解く事には成功したようだから。

「優しくして下さいね」
「態度による」
「めちゃくちゃ堂々と慣れてる風にすればいいんですね」
「分かってんじゃねぇか」

 クッ、とやっと笑ってくれたブラパを見て安堵する。
 どうせ実らないと捨てた恋に悩まされるなんて鬱陶しい。
 これからはブラパに対して好意を出し過ぎないように気を付けないと。
 服装設定をしていないアバターに初期装備として与えられる白Tと黒いズボンと下着、それらを脱がされてしまうともう素っ裸だ。
 同性の前だからそれほど恥ずかしくもないけれど、これからする事を考えると身の置き所がよく分からずふらふらと視線を彷徨わせた。

「いつも通りにしてろ」

 迷彩のジャケットを脱ぎ床に落としたブラパは、再び俺の上に覆い被さるとそう言いながら唇に唇を重ねてきた。
 押し当てられる柔らかさと温かさは慣れたもの。次いで撫でてくる手もいつもと同じ。
 大丈夫。いつも通りでいいなら、ちゃんと出来る。
 唇を舐められる。舐め返す。甘噛みされて、少し強めに噛み返す。舌を噛まれる。ブラパの背中に回した腕に少し力を込めれば何度も噛んでくれる。
 唇と舌が出す水音と吐息の合間に、遠くから波の音が聞こえた。
 薄っすら目を開ければ、オレンジ色に照らされたブラパの顔が見える。
 はブラパ。
 BUCK LAPIN。
 これから遊びで俺を抱く人。
 まかり間違ってもまた恋してしまわないよう、言い聞かせるように心の中で唱える。
 抱かれたからって好きになんかなるな。遊び以外の意味なんかない。「可愛い」以上の気持ちなんてくれない。俺と同じ気持ちになんかなってくれない。
 だから俺も、遊びで抱かれろ。
 ふっとブラパの瞼が開いて、視線がぶつかった。

「……」

 何か言おうとしたみたいに合わさったままのブラパの唇が動いて、けれど無言のまま瞼も口も閉じられる。
 分かるようになったことはいくつもあって、けれど分からないことはいつまで経っても分からない。
 こうしてよくブラパが言い淀む理由も、飲み込んだ言葉も、きっと俺には一生分からない。
 別にそれでいいじゃないか、とブラパを抱き締める手を緩める。
 一生一緒なわけじゃない。
 飽きたら終わりの遊びなんだから、本気になるなんてむなしいだけだ。
 唇が離れ、上半身を起こしたブラパの頭が離れていく。
 目も合わず俯くそこからは上手く感情が読み取れない。
 少し位置を下げて戻ってきたブラパの顔は、俺の顔ではなく胸の上へきた。

「……っ」

 何をするかと思えば、乳首に噛み付かれた。
 前歯の先で甘噛みされて小さな痛みに肩が跳ね、舌に舐め上げられ拳を握る。

「反応」

 良し悪し応えるのを忘れているぞと短く叱られ、迷いつつ、拒むようにブラパの肩を押した。

「嫌か?」
「……キスの方が好きです」
「嫌かどうかを訊いてんだよ」

 視線を下げれば、眉間に皺を寄せたブラパの目とぶつかる。

「嫌じゃ、ない……です」

 今さらブラパに何をされても、よっぽど変態的な事じゃなければ嫌だと思えないだろう。
 それくらい察しの良いブラパなら分かりそうなものなのに、どうしていちいち──ああ、そうか。訊きたいからか。答えさせたいからか。
 俺から応じる言葉を引き出すことこそを、ブラパは楽しみたいのだ。
 強く目を閉じ、ぷいと顔を逸らした。

「さ……さっさと、したらどうですか。俺だって暇じゃないんですよ」
「あ?」

 この態度が雰囲気を壊すことくらい理解している。だからこそだ。
 ブラパを必要以上に興奮させない為には、怯えず可愛らしくない、スレた態度でいる必要があるから。

「可愛げのねぇ……」

 ぶつぶつ文句を言っているが、ブラパも俺がどうしてそんな言い方をしたかは分かったのだろう。
 またブラパが身体を起こして離れた気配がして、それから「下触るぞ」とご丁寧に断りがあった。
 ごく、と唾を飲んで覚悟をする間をくれてから、太腿の内側にブラパの指が差し込まれる。
 押し開かされた脚の付け根から尻の狭間へ入ってきて奥歯を噛み締めた。
 分かってる。知ってる。男同士は尻の穴を使うんだよな。
 ブラパとのオフが決まってから調べたからやり方も具体的に覚えてる。
 オフの日、「準備してきた」と言ったのも冗談じゃない。
 大丈夫、分かってる。何も怖がることなんか無い。
 いつも通り、されるがままに転がって、ブラパが望むように反応すれば、それで大丈夫。
 ブラパの指が尻の穴の上を行き来する中、呪文みたいに大丈夫と自分に言い聞かせていると、不意にブラパが大きく体勢を変えた。

「んっ……!」

 唇が温かいもので覆われる。
 ブラパの唇だ。目を閉じていたって分かる。
 ついばむように唇を軽く吸われてから、場所を変えて頬に何度もキスが降ってきた。
 虚勢も緊張もバレバレだったんだろう。
 宥めるようなそれに、ブラパの頭を抱き締めるように腕を回すことで返事をした。

「濡らすから、少し冷たいぞ」

 俺の頬に口付けたまま、ブラパが言う。
 指を鳴らすモーションで何かアイテムを取り出したのか、脚の狭間から一瞬離れたブラパの手が、数秒後にはヒヤリと冷たいものを纏って戻ってきた。

「!」
「ちゃんと言ったろうが。……すぐ慣れる。我慢しろ」

 俺の体温と大差無かったブラパの手は不愉快なほど冷たくぬるついていて、嫌がって身を捩ると頬に噛み付かれた。
 肌に食い込む歯の感触にぞくりと悪寒が走って、けれど嫌ではなくて大人しく力を抜く。

「そうだ、それでいい。大人しくしてろ」

 高圧的に吐き捨てるような言い方はいつものブラパらしくない。
 薄目を開けて間近の彼を窺えば、何かに耐えるような苦しげな表情をしていた。
 セックスは始めたらすぐ挿入したいタイプなのかもしれない。
 焦らして怒らせたい訳でもないので、目を閉じブラパの手が動き易いよう脚を開いた。
 ブラパの手によって、粘液が尻と太腿の間を濡らしていく。
 最初は冷たかったそれも、すぐに体温で温まって冷たさを感じなくなった。
 ぬる、ぬる、と前後に大きく動いていた手は、十分辺りを濡らすと本来の目的地である尻の穴に指を這わせてくる。

「……っ……」

 ゆっくりと、少しだけ埋まってきて、すぐ抜かれていく。
 指の動きに焦る様子はなく、また雑でもない。
 ずぶり、ずぶり、と少しずつ。けれど確実に。
 ブラパの指が俺の中を一往復する毎に、深く抉ってくるようになる。
 それが気持ちいいのか悪いのかなんて分からない。
 ただ尻の中にある指がブラパの物だと思うだけでやたら興奮してきてしまって、腕の中にあるブラパの頭を掻き抱いてしがみ付いた。
 指が深くまで入ってきて、とうとう根本を感じる。
 隣にある他の指の存在を思い出すと同時に、次のストロークで2本目が追加されていた。
 また浅くからに戻った指に物足りなさを感じ、けれど穴を拡げられる感覚が怖いような気がして呼吸が早くなる。
 ブラパの顔を見て安心したいのに、俺の知っている表情じゃなかったらと思うと目が開けられない。
 2本が3本になる。3本が4本になる。
 4本が根本まで入ってくると、穴の縁が悲鳴を上げるみたいに引き攣れて痛んだ。
 ここに肉体は無い。
 痛みを感じるのは体ではなく、脳の反応。
 ということは、俺の脳みそにとって尻の穴は指3本までは痛みなく受け入れて然るべし、と思っているんだろうか。
 それとも、ロキワの痛覚設定としてそうなっているだけなのか。
 余裕があるわけではないけれど、作業みたいな単調さの中、そんな事を考える余地はある。
 それでもまだブラパは本番を──陰茎を挿入してこようとはしない。
 4本の指を執拗に俺の尻穴へ出し入れし、何かを探るように繰り返すだけ。
 無視され続けた俺の陰茎はガチガチに張り詰めて、先端から我慢汁を溢れさせている。
 少し触られただけでも吐き出してしまいそうなのに、尻穴への刺激だけでは勃起は出来てもイくまでは出来なくてもどかしい。
 もうさっさと挿入してしまって欲しいのに、それを口に出せるほど豪胆でも甘え上手でもなく。
 尻の中をひたすら指に弄り犯され、気持ちいいような気はするがイけるほど明確な刺激は与えられないという、一種の拷問にも似た苦行を耐えるしかない。

「ブラパ……、その、……そろそろ……」
「まだだ」
 
 恥を忍んで乞うたのに、返ってきたのは短いそれだけ。
 男同士というのはこんなに入念に慣らさないといけないんだろうか。
 ある程度の傷なら時間経過で自然治癒するから放置されるのが常のVRですらこれなら、現実では? もっと時間をかけるのか?
 10分や20分ではない。
 前戯だけに少なくとも30分以上かけないと繋がるのが難しいなんて知らなかった。
 この間ずっと勃起しっ放しで我慢しなければいけないのだろうか、と想像以上に困難な男同士のセックスに少しうんざりし、ずっと同じ体勢を続けて痛んできた脚を楽になる方向に少し倒した時だった。

「……ッ!?」

 ビクッ、と腰が大きく跳ねる。
 一瞬何が起きたか分からなかった。
 尻の中を動く指が強烈な快感を呼んだのだと、身をもって知らされたのはブラパの指に同じことをされてからだ。

「え……? は? なん……?」

 指が中に突き立てられる度、視界が白く明滅してガクガクとみっともなく下半身がおどる。
 経験したことのない強烈な快感で起きているはずの意識がぶつ切りになって、気持ちいいのに恐怖心が湧いてブラパに縋ろうとした腕が彼に引き剥がされた。

「待っ……」
「やっとか」

 ブラパは笑みを浮かべていた。
 目を細め、指の動きに合わせてへこへこと無様に腰を振る俺をブラパは舌舐めずりで見下ろしてくる。
 やっと、という事は、ブラパはこれを探していたのか。
 俺の尻穴の中の気持ちいい所を文字通り手探りで、あんなに長時間。
 ブラパ一人が快感を得るだけならばきっと、やはりこんなに長い前戯は必要無かったんだ。
 さっさと挿入れて勝手に気持ち良くなればいいものを、どうしてこの人はこんなに俺に優しくするのか。
 ……それとも、誰に対しても、誰を相手にするとしても、ブラパはなのか。
 ぎゅ、と胸が痛くなる。
 俺にとっては初めての人だとしても、ブラパにとっては何回も経験してきたうちのたった1回に過ぎない。
 それでいいと思って始めたのに、今さら嫌だと思う自分が身勝手過ぎて嗤ってしまう。
 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、とブラパの手が俺の尻穴を犯す音がやたら耳障りだ。
 いっそ気持ち良さで気をやってしまえればいいのに、鮮烈過ぎるせいでうかうか失神も出来ないでいる。

「……っ、ぅ、……は……っ……」

 指で突き上げられると涎を垂らしてよがり狂いそうになる辺りがあって、しかもブラパはそこばかりを執拗に狙ってきていた。
 身体の方はとっくにそれを受け入れて強請るように腰を振り、置いてけぼりの頭だけが必死にみっともない声を出さないようにと息を詰めて耐えている。
 揺らぐ視界の中、見上げた先にブラパが居て。
 じっと俺を見ている。食い入るように俺を睨んでいる。
 どうして?

「ッ……!」

 ぐりっとそれまでより強く中を抉られ、順じて強くなった快感に押し流されるように身体が痙攣した。
 ブラパの手の動きとは関係なく、何度も勝手に腰が跳ねる。
 何度もくる波のような気持ち良さに、陰茎の方でイくのとはまた別種だなぁ、と涙で淡くなった目を瞬いた。
 息が乱れて心音が急にうるさく感じる。
 深呼吸でそれらを整えながら、これでやっとそろそろ本番が始まるんだろうと思ったのに、ブラパが指を抜くことはなく、また動きを変えることもしなかった。

「……ブ、……ブラパ……?」

 あいも変わらず、同じ律動で、同じ場所を狙ってくる。
 教えられた快感を生む場所はイッたばかりでも突き上げられるとすぐ気持ち良くなって、乱した息を元に戻せないまま、身体はもう次の絶頂を目指し始めてしまう。
 腰は小刻みに震え、心臓はずっと早いまま。
 2度目はそれほど時間が掛からなかった。
 もう覚えてしまったのか、1度目より明らかに容易に絶頂してしまった。
 全力疾走の後みたいに息が切れて苦しいけれど、これもブラパに言わせれば脳の反射なんだろう。
 現実でこんな短時間に2度も達せば、それはこうなるだろうと思う。

「…………ブラパ?」

 さすがにもう、冗談だろ。
 ブラパの手がまだ俺の中を弄り出して、青ざめながら彼を仰ぎ見るのに、俺の目に映るのは首を横に振る彼の姿だ。

「まだだ」
「へ……」
「こっちにゃがねぇんだ。何回連続でイこうが、疲れて終わりってことはねぇから安心しろ」
「はぁぁ……!? ちょっ、何言って、むむ、無理……っ!」

 一体何を考えているのかと思えば、肉体が無いから連続絶頂が可能? は? アダルト動画かよセックス初心者にやらせる事じゃないっての!
 本気で嫌だという態度を見せるなら少しくらい暴れた方が効果的だろうとブラパを蹴るつもりで振り上げた脚は、しかし予測していたのか綺麗に受け流され掴まれてしまう。

「ブラパッ!」

 怒らせるつもりで全力で怒鳴ったのに、見下ろしてくるブラパの表情は笑ったまま。
 それが不気味で怯んだ瞬間、また尻の中で指が動き始めた。

「っ……!」
「いいから大人しくしとけ」

 まただ。今日のブラパはやたら『大人しく』を連呼する。
 そんな疑問が頭を掠め、けれど次の息を吸う時にはもう、快楽に流されて脳内が熱さと眩い白さで埋め尽くされてしまう。
 それから俺は5回イかされた。4回が尻、1回が陰茎。
 ブラパは俺を前でイかす気が無かったみたいで、事故みたいにブラパの腕が掠ってイッてしまった後からは陰茎の根本を握ったまま後ろを責め続けられて狂うかと思った。
 やっと指が抜かれた時はもう九死に一生を得たような気分で、いざブラパの陰茎が挿入されても、もう動く気力もなくされるがままだった。
 疲れる肉体が無いんだから、疲れない?
 そんなのは脳みそを自己暗示で自由に出来るブラパのような狂人だけだ。
 俺のような一般人は、7回もイけばもう脳みその判定としては疲労困憊で身動き一つ出来なくても当たり前でしかなく。
 なのにブラパは、そこから更に陰茎でもって俺を4回も絶頂に追い込んだ。
 最後の方はもうひたすら泣いていた記憶しかない。
 ぼろぼろと勝手に溢れる涙をブラパが喜ぶ犬みたいに顔中舐め回してきて、それが彼をさらに興奮させてしまうのだと分かっていたのに止められなかった。

 目が覚めたのは、真っ暗なドリームラボの中。
 寝落ちしたら強制ログアウトするように設定していたおかげで、現実に逃げてこられたようだった。
 どこも汚れていない身綺麗な自分の体を撫で、内側からドアロックを解除する。

「明けましておめでとうございまーす。今年もどうぞご利用下さ~い」

 ポッドから出ると、見慣れた顔の店員が退店の挨拶をしてきて、それに会釈を返しながら店の自動ドアをくぐった。
 ついさっきまで疲れていたアバターは、もう無い。
 ここに居るのは戸林隆也。
 さっきまでの激しいセックスは、全部、夢。


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