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神を裏切り貴方と繋ぐ
オマケ 志摩宮 視点
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「食ってったらどうですか」
「あ……? 俺がか?」
そう声を掛けたのは、彼が日に日に痩せてきているのは明白だったからだ。
性懲りもなく朝飯を作りに来て、それなのに静汰の顔を見る事すら叶わない。それでも文句も言わず来ては帰っていく。
恋敵なのに同情してしまうのは、その強過ぎる執着心に自分にも覚えがあるからだ。あの人タラシの被害者仲間だと思うと、親近感も湧いてしまう。俺が彼と同じ状況下に置かれたら、同じように死刑宣告されるその日まで、みっともなく縋りついてしまうだろう。
「二人分も三人分も、あんま変わんないでしょ。明日からここで食えばいいんじゃないっスか」
返事は無かった。
けれど、翌日彼は黙って俺と食卓についた。布団を目深に被って出てこない静汰を見て目を虚ろにしたまま、それでも完食して帰っていった。
彼が望んでいるのはおそらく、ただ静汰の顔を見る事だけだ。
それ以上をなんて望んでいないように思える。ここに来た当初より、静汰はだいぶ痩せた。それを心配して、静汰に嫌がられているのを分かっていても飯を作りに来ている。
ただ元気に生きている静汰の顔が見たいだけの彼を追い返せはしない。
それに。
「帰りましたよ」
俺が声を掛けると、もぞもぞと静汰が起き出して布団から這い出てきた。
ローテーブルの上に並ぶ少し冷めた朝食を見て、そこにあの人が居なくて寂しそうな表情をしているのを、きっとこの人は自覚していない。
静汰の心の健康の為に、あの人は必要なのだ。
『一生俺だけの物にはできない』と、神様は言った。それはつまり言い換えれば、共有する事は可能ということだ。独占出来なくていい。それは死んでからいくらでも出来るみたいだから、今生くらいは我慢してやる。
この人以外の静汰は全て、俺の物にする。
絶対に、俺以外を選ばせたりしない。
俺を裏切る静汰なんて、全て無かった事にしてやればいい。
俺の底に燻るこの暗い炎を、この人は知らないだろう。この人の望む都合のいい忠犬として、せいぜい可愛がられてやろう。
絶対に渡さない。俺だけの物に出来なくても、あの人だけの物にもさせはしない。
「俺を捨てないで下さいね、静汰」
「捨てないよ」
何度目か分からない問答に、静汰はそれでも律儀に約束してくれる。
何度も言う。何度も何度も重ねて、静汰の罪悪感に擦り付けるのだ。絶対に俺を手放しちゃいけない、と。
「あ……? 俺がか?」
そう声を掛けたのは、彼が日に日に痩せてきているのは明白だったからだ。
性懲りもなく朝飯を作りに来て、それなのに静汰の顔を見る事すら叶わない。それでも文句も言わず来ては帰っていく。
恋敵なのに同情してしまうのは、その強過ぎる執着心に自分にも覚えがあるからだ。あの人タラシの被害者仲間だと思うと、親近感も湧いてしまう。俺が彼と同じ状況下に置かれたら、同じように死刑宣告されるその日まで、みっともなく縋りついてしまうだろう。
「二人分も三人分も、あんま変わんないでしょ。明日からここで食えばいいんじゃないっスか」
返事は無かった。
けれど、翌日彼は黙って俺と食卓についた。布団を目深に被って出てこない静汰を見て目を虚ろにしたまま、それでも完食して帰っていった。
彼が望んでいるのはおそらく、ただ静汰の顔を見る事だけだ。
それ以上をなんて望んでいないように思える。ここに来た当初より、静汰はだいぶ痩せた。それを心配して、静汰に嫌がられているのを分かっていても飯を作りに来ている。
ただ元気に生きている静汰の顔が見たいだけの彼を追い返せはしない。
それに。
「帰りましたよ」
俺が声を掛けると、もぞもぞと静汰が起き出して布団から這い出てきた。
ローテーブルの上に並ぶ少し冷めた朝食を見て、そこにあの人が居なくて寂しそうな表情をしているのを、きっとこの人は自覚していない。
静汰の心の健康の為に、あの人は必要なのだ。
『一生俺だけの物にはできない』と、神様は言った。それはつまり言い換えれば、共有する事は可能ということだ。独占出来なくていい。それは死んでからいくらでも出来るみたいだから、今生くらいは我慢してやる。
この人以外の静汰は全て、俺の物にする。
絶対に、俺以外を選ばせたりしない。
俺を裏切る静汰なんて、全て無かった事にしてやればいい。
俺の底に燻るこの暗い炎を、この人は知らないだろう。この人の望む都合のいい忠犬として、せいぜい可愛がられてやろう。
絶対に渡さない。俺だけの物に出来なくても、あの人だけの物にもさせはしない。
「俺を捨てないで下さいね、静汰」
「捨てないよ」
何度目か分からない問答に、静汰はそれでも律儀に約束してくれる。
何度も言う。何度も何度も重ねて、静汰の罪悪感に擦り付けるのだ。絶対に俺を手放しちゃいけない、と。
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