生活魔法は万能です

浜柔

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627 次なる旅立ち

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 ルキアスはクリューに戻ると皆に別のダンジョンに行っても時々クリューに来ると伝え、認識の齟齬を取り繕った。
 だがタイラクは言う。

「しかしそれ含めたってあっさりし過ぎてると思うがな」
「そうですかね……」

 ルキアスは小首を傾げた。ルキアスと一緒に来た面々はかなり衝動的だったように思える。ソロ活動だったメイナーダ、ルキアスやザネクと会う前はソロ活動だったシャルウィにはしがらみも無かっただろうが、ザネク、タイラク、フヨヨンにはそれなりのしがらみがあった筈だ。そのしがらみたる人々からしてみればタイラク達も「あっさりし過ぎてる」と映ることだろう。
 ただルキアスと違って即決が必要な状況ではあった。

「……でも明日出発するつもりです」
「マジかよ」

 タイラクは呆れ切れたとばかりに頭を振った。
 だがルキアスは苦笑を返すばかりだ。ぐずぐずしていたら漫然と日々を過ごすことになって切りが無くなるのでスッパリ切る必要がある。切るならダンジョン攻略で区切りが出来た今のタイミング以外に無いだろう。
 荷物は日頃から『収納』に入れているので纏める必要がほぼ無い。心残りがあるとするなら折角買ったベッドだろうか。

 翌朝は皆で食事をして話をし、皆が部屋を出てからルキアスが出、そしてメイナーダとユアも部屋を出て鍵を閉めた。この部屋はこの先もメイナーダに貸し出されたままになる。
 ルキアスの部屋もまたルキアスに貸し出されたままだが、ルキアスは鍵をザネクに預けた。ザネクが必要な時に使えるようにだ。

「じゃあ、みんな元気で」
「見送りありがとう」
「おう。ルキアスも達者でな」
「メイナーダとユアも元気にやってくれたまえよ」
「ルキアス、いつでも帰って来ていいからな」
「うん」
「来た時には話を聞かせてね」
「勿論だよ」
「タイラクはみんなの面倒をしっかりみてちょうだいね」
「……努力はするぜ」
「心配要らないよ。ボクお工房を使うついでに顔を出すつもりだからね。タイラクがだらしなかったらケツを蹴飛ばしてやるさ」
「それは頼もしいわ」
「それじゃ、そろそろ行きます」

 名残惜しくてもいつまでもぐずぐずしていられないので出発だ。
 タイラク、ザネク、シャルウィ、そしてフヨヨンが『傘』から離れると、ルキアスはメイナーダ、ユアを伴って空へと飛んだ。目指すは南東だ。
 暫く飛んだところでルキアスはメイナーダに言った。

「行った先では最初にユアの通う学校を探しましょう」
「あらあら、真っ先にユアのことを考えてくれるなんて嬉しいわ」

 ルキアスは左右をメイナーダとユアに挟まれたまま、屈託のない感謝に照れて鼻の頭を掻いた。




 ルキアスが出立した翌日の夕方近く。クリューの探索者組合に男女三人組が訪ねた。

「さて、あいつらはどこに居るんだろうな」
「少し時間が早かったみたいですわね」
「そう……ね。先に探索者登録を済ませましょう……か」

 そうして三人が探索者登録を済ませて待合室の席を選んでいる時だった。

「は? ガノス兄ちゃん!? リュミア姉ちゃん!?」
「エリリース!?」
「おう。兄ちゃんだぜ。ザネクが来るのを待とうとしてたところだったんだ」
「ちょうど良かった……わ」
「あら? ルキアスはどちらかしら?」

 エリリースがキョロキョロと辺りを見回す。

「あー、ルキアスな……」

 ザネクが事情を説明すると、エリリースは「何てこと」と叫んだ。

「やっとまたみんなで探索できると思いましたのに!」

 エリリースは学校を一年スキップして早く卒業するのと平行して探索者としての知識と相応の実力を身に着けた。そして満を持してクリューまでやって来たと言う。
 そのエリリースがベクロテを発ったのがルキアスが最後にベクロテを訪ねた二日前であった。





※※※※※※※※※※※※※※※※※
ルキアスの旅はこれにてひとまず終わります。
ご愛読ありがとうございました。
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