生活魔法は万能です

浜柔

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 ルキアスはベクロテへと飛んだ。
 最初はキルシルセッカを訪ね、クリューを離れることを告げた。するとキルシルセッカからはクリューを遠く離れてしまうと支援できないが、クリューやベクロテに立ち寄った時には変わらぬ便宜を図ってくれるとの話を貰った。
 次にはエリリース宅へ行こうと考えていたが、キルシルセッカからエリリースがバカンスに出掛けていると聞いたので手紙をしたためてキルシルセッカに託した。自らエリリース宅へと運ぶより確実にエリリースの手許に届きそうだったからだ。
 そしてダンジョンタワーに行ってラビット丼に舌鼓を打つ。ベクロテ在住時には会えば話をする探索者はそれなりに増えてはいたが、クリューから離れることまで報告しておくべき人物はロマくらいのもの。そのロマは昼の時間にラビット丼を食べているとどこからともなく現れがちなのだ。

「よう、兄弟。何か探しものか?」
「あ、ロマさん。良かった。今見付かったから大丈夫」
「は?」

 ロマは自分を指差して呆けたような声を出した。

「ロマさんにもぼくが別のダンジョンに行くのを知らせておきたかったから」
「別のダンジョン? どこの?」
「順番からすると南かな」

 ベクロテが西、クリューが南西なので順番に行くなら南だ。ルキアスにとってはベクロテとクリュー以外のダンジョンは等しく未知だからどこに行っても大差無く、大差無いなら近い方が良い程度の意味である。

「しかしまた何で?」
「それは……」

 ルキアスはメイナーダ達にも話した理由を説明した。簡単に纏めればクリューのダンジョンでの役目が終わったと言うことだ。
 ロマは難しい顔で頭を掻いた。

「んー、ここで兄弟を薄情と言っちまうのは簡単だが、だったら人に縛られて生きるのかってことでもあるからな……」

 ルキアスが仲間に何の相談も無く仲間を残して旅立とうとするのはとても薄情に見える。しかし仲間とのしがらみに囚われて不本意な人生を歩むのも何かが違う。

「あ、ごめん。そんなに深刻だとは思わなかった」
「は?」
「だって、隣のダンジョンくらいなら半日で移動できるから、会おうと思えばいつでも会えるから」
「ああ……」

 ロマは苦笑した。

「……兄弟にとっちゃ大した距離じゃないんだったな」

 尤も仲間達には大した距離である。
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