生活魔法は万能です

浜柔

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622 フヨヨン

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 ルキアスは後で知ったことだが、音はダンジョン中に響いていた。
 音が静まると同時にぶよぶよが崩れるように消えて行く。

「フヨヨン、何をした!? いや、ダンジョンを攻略したってことなのか?」
「そう……、ん?」

 返事しかけたところでフヨヨンの身体が光り始めた。皆がフヨヨンに瞠目する。

「……こうなる訳だね」

 フヨヨンは一人で納得したように頷いた。

「フヨヨンさん、もしかして……?」
「そうだよ。たった今からボクがこのダンジョンの主さ」
「でもどうして?」

 ルキアスが思い返せばフヨヨンの行動は予め決意した人のそれだった。地上に戻っても町が騒がしくて落ち着かないこの機会に泊まり掛けで攻略を進めるべくここまでやって来たが、積極的に攻略を望んだのはフヨヨンだった。最初からフヨヨンはこうしようと考えていたに違いない。
 ただ何が彼女にそうさせたかがルキアスには想像できなかった。

「不老不死で素材も生成できるなら存分に研究開発ができるからね。開発者として言うこと無しさ。……まあ、死にすぎたのもあるけどね」

 最後の一言はあまりに小さな声だったので他の人には聞こえていなかったが、最も近くに居たルキアスの耳にだけは届いた。
 ルキアスは思い返す。フヨヨンが攻略に積極的になったのは隠し部屋から強い魔物が出た後のことだ。隠し部屋の魔物に誘発されたように起きた魔物の大発生で少なくない数の探索者が命を落とした。「死にすぎた」のはタイミング的にこの時だ。フヨヨンはここに責任を感じているのだろうか。感じているとするならどこにだろうか。
 隠し部屋を曝いてしまったことか? 曝かなければ魔物の大発生は起きなかっただろう。
 隠し部屋の魔物を倒すのに時間を掛け過ぎたことか? 安全を犠牲にすればフヨヨンとメイナーダなら倒せたと思われ、早々に倒していれば犠牲者を減らせた可能性がある。
 だがいずれも魔物の大発生を知る術など持ち合わせていなかったのだから結果論に過ぎない。フヨヨンが責任を感じるようなものではない筈だ。

「フヨヨン。フヨヨンはこれからどうするつもりだ?」

 ルキアスが思考に耽る間にタイラクが酷く漠然とした問いをした。何か聞きたくても言葉が出ないらしい。
 だがこれはタイラクだけではない。誰しもの心構えのできる前に事が起きてしまったために思考が定まらない様子だ。シャルウィに至っては口を開こうとしては閉じを繰り返している。

「まずはダンジョンを攻略されないように防御を固めなければだね。……と言う訳で、先に帰ってくれたまえよ」

 フヨヨンがパチンと指を弾く。
 すると次の瞬間にはフヨヨンを除くルキアス達六人は第一階層出口前に居た。
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