生活魔法は万能です

浜柔

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621 ぶよぶよ

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 竹竿はぶよぶよに突き刺さってその姿を隠す。
 数秒後にぶよぶよの中が仄かに光り、ぶよぶよが大広間の入口を越えて膨らみ始めた。

「やべぇ!」

 タイラクは全力で『大盾』の陰まで走った。飛び散るぶよぶよ。タイラクが間一髪で滑り込む。びちゃびちゃと『大盾』にもぶよぶよが貼り付いた。
 だがこれで終わりではなかった。飛び散ったぶよぶよがそれぞれに蠢き出したのだ。

「事態を悪化させただけじゃねぇか!」
「あっはっは! 試してみなきゃ判らないものもあるものだよ。それにそう深刻でもないさ」

 フヨヨンは魔道具を宙に浮かべ、『大盾』の右側へと斉射してぶよぶよを焼き払った。今回のは焦熱魔法だ。

「ここまで魔物が火に弱かったんだから、このぶよぶよだって火に弱いのは予想できたことだよ。だから千切れて飛んだ小さなものならボクの魔道具でだってこの通りさ」
「判ってるなら爆発させる必要なんて無かったろうが」
「少し楽ができるのを期待したんだよ。一気に行けるなら行きたいだろう? このままじゃ地道に焼くしかないんだからね」

 二人が話している間にも『大盾』左側と正面のぶよぶよをメイナーダが『火魔法』で焼き払い、周辺の飛び散ったぶよぶよが無くなったのでザネクも『大盾』を消した。
 すると先までは『大盾』の仄かな光や貼り付いたぶよぶよで見えなかった大広間の様子も見えて来る。

「あら、タイラク良かったじゃない。効果があったみたいよ?」

 メイナーダがしれっと言った通りに大広間の様子には変化がある。ぶよぶよが広範囲に渡って抉れたように消えた。

「……ルキアス君、ちょっと銃を貸してくれたまえよ」

 ぶよぶよの奥を睨み付けるようにしながらフヨヨンがそんなことを言う。

「え? はい……」

 ルキアスは首を傾げながらも素直に渡した。フヨヨンが銃を粗雑に扱う筈もない。
 フヨヨンは弾倉を入れ替え、ぶよぶよの奥に向けて銃を構えた。ルキアスの信頼通りの普通の扱いだ。

「確認だけど、ルキアス君。ダンジョンの攻略は台座の上の小さな玉を砕くんだったね?」
「はい。そうですけど……」

 フヨヨンはいつになく険しい表情で一つ頷くと、普通に引き金を引いた。
 ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ。
 発射音が幾つか続いた後、「キ――――ン」と耳をつんざくような甲高い音が響いた。
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