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620 遠隔射撃
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フヨヨンが「仕方ないね」とルキアスの要望を聞き入れ、銃の台座を作ることになった。
フヨヨンが調達していた鋼鉄を使って鉄板を作り、鉄板の片端を折り曲げて銃の台座を形作る。ルキアスが細かい金具を『捏ね』、フヨヨンが大雑把な金具を『捏ね』た後に接合する手順だ。
台座が出来上がったら銃をビクともしないように固定し、鉄板に重石として鋼鉄の塊を積み重ねる。これで銃が台座ごと後ろに飛ばされることも無い筈だ。
引き金には紐を引っ掛け、真っ直ぐ引けるよう台座から伸ばしたガイドの金具を通して離れた『傘』の陰から引く。
「行きます」
ほぼ全身を覆う『傘』の中でルキアスは宣言し、紐を引いた。
ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ。
銃声が響く。ぶよぶよした何かに突き刺さった弾丸は闇に飲まれたかのように手応えを感じさせない。
射線も僅かずつずれる。台座が反動で微妙にずれるのか。弾倉を空にする前に大広間の入口から外れそうだ。
「止めま……わっ!」
「〃「!」〃」
ルキアスが射線のずれが看過できくなって射撃を止めるべく紐を緩めようとした瞬間、爆音と閃光が弾けた。皆叫ぶように顔を歪め、耳を塞いで目を瞑る。
暫くして瞬かせながら目を開けた。
「時限炸裂弾は却下で」
「それは早計だと思わないかい? 試作品だから多少の不良品も混じるものだよ」
「今回はたまたま発射直後だったから無事だっただけで、銃の中で爆発してたら死んじゃいますよ」
爆発力はルキアスの予想を超えていた。アダマントの銃身と言えど破壊されかねない威力だ。
「とにかく却下です」
「ちぇーっ!」
フヨヨンは後ろ手に手を組んで小石を蹴る仕草をした。
「いい歳してそう言うの止めろ。きめぇ」
「な! 何てデリカシーの無いことを言ってくれるのかね! タイラクがそう言う態度ならこっちにも考えがあるよ! ルキアス君、竹竿を少し分けてくれたまえよ」
「「え?」」
ルキアスとタイラクは声を揃えて困惑し、顔を見合わせ「どうすんの?」「一応様子見てみっか?」と言った感じで目配せし合う。
ルキアスは竹竿を渡した。
フヨヨンはその竹竿の先端に爆薬を詰め、金属製で円錐状のキャップを取り付ける。
そしてタイラクにその竹槍を差し出した。
「さあ、これなら時限魔法陣を手動で起動するから暴発は無いからね。これをタイラクに投げて貰おうじゃないか」
時限魔法陣を起動したら一〇秒後に爆発するらしい。その一〇秒の間に投げるのだ。
これにはタイラクも戸惑いを隠せない。一歩間違えれば爆死なのだから。
「さっきのタイラクの失言はあんまりだったから一回は投げるべきじゃないかしら」
ここに来てメイナーダがフヨヨンに味方した。フヨヨンとメイナーダの二人に迫られればタイラクは弱かった。
「一回だけだぞ」
タイラクは竹竿を受け取り、魔法陣の起動方法を聞いて位置に着く。
他の一同は階層の入口近くに下がってザネクの『大盾』の後ろに隠れた。
タイラクが皆を嫌そうに見る。
「マジかよ……」
タイラクは嫌そうにぼやいてから竹竿を構え、一旦構えを解いて魔法陣を起動してからまた構え、投げた。
フヨヨンが調達していた鋼鉄を使って鉄板を作り、鉄板の片端を折り曲げて銃の台座を形作る。ルキアスが細かい金具を『捏ね』、フヨヨンが大雑把な金具を『捏ね』た後に接合する手順だ。
台座が出来上がったら銃をビクともしないように固定し、鉄板に重石として鋼鉄の塊を積み重ねる。これで銃が台座ごと後ろに飛ばされることも無い筈だ。
引き金には紐を引っ掛け、真っ直ぐ引けるよう台座から伸ばしたガイドの金具を通して離れた『傘』の陰から引く。
「行きます」
ほぼ全身を覆う『傘』の中でルキアスは宣言し、紐を引いた。
ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ、ボッ。
銃声が響く。ぶよぶよした何かに突き刺さった弾丸は闇に飲まれたかのように手応えを感じさせない。
射線も僅かずつずれる。台座が反動で微妙にずれるのか。弾倉を空にする前に大広間の入口から外れそうだ。
「止めま……わっ!」
「〃「!」〃」
ルキアスが射線のずれが看過できくなって射撃を止めるべく紐を緩めようとした瞬間、爆音と閃光が弾けた。皆叫ぶように顔を歪め、耳を塞いで目を瞑る。
暫くして瞬かせながら目を開けた。
「時限炸裂弾は却下で」
「それは早計だと思わないかい? 試作品だから多少の不良品も混じるものだよ」
「今回はたまたま発射直後だったから無事だっただけで、銃の中で爆発してたら死んじゃいますよ」
爆発力はルキアスの予想を超えていた。アダマントの銃身と言えど破壊されかねない威力だ。
「とにかく却下です」
「ちぇーっ!」
フヨヨンは後ろ手に手を組んで小石を蹴る仕草をした。
「いい歳してそう言うの止めろ。きめぇ」
「な! 何てデリカシーの無いことを言ってくれるのかね! タイラクがそう言う態度ならこっちにも考えがあるよ! ルキアス君、竹竿を少し分けてくれたまえよ」
「「え?」」
ルキアスとタイラクは声を揃えて困惑し、顔を見合わせ「どうすんの?」「一応様子見てみっか?」と言った感じで目配せし合う。
ルキアスは竹竿を渡した。
フヨヨンはその竹竿の先端に爆薬を詰め、金属製で円錐状のキャップを取り付ける。
そしてタイラクにその竹槍を差し出した。
「さあ、これなら時限魔法陣を手動で起動するから暴発は無いからね。これをタイラクに投げて貰おうじゃないか」
時限魔法陣を起動したら一〇秒後に爆発するらしい。その一〇秒の間に投げるのだ。
これにはタイラクも戸惑いを隠せない。一歩間違えれば爆死なのだから。
「さっきのタイラクの失言はあんまりだったから一回は投げるべきじゃないかしら」
ここに来てメイナーダがフヨヨンに味方した。フヨヨンとメイナーダの二人に迫られればタイラクは弱かった。
「一回だけだぞ」
タイラクは竹竿を受け取り、魔法陣の起動方法を聞いて位置に着く。
他の一同は階層の入口近くに下がってザネクの『大盾』の後ろに隠れた。
タイラクが皆を嫌そうに見る。
「マジかよ……」
タイラクは嫌そうにぼやいてから竹竿を構え、一旦構えを解いて魔法陣を起動してからまた構え、投げた。
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