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612 篩
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ルキアスは角形の『篩』を階段を完全に塞ぐ大きさで展開した。角形で大型の篩は主に土木関係で用いられ、ルキアスは過去に実家の畑の土を篩うのに使っていた。
とは言え使っていたのは両手を広げれば届く程度の大きさまでで、こんなに大きいのは初めてだ。できそうな感覚があっても確証が無かったため、ルキアスは成功してかなりホッとした。
「『篩』なんて小さくしか出さないから、こんなに大きくできるとは知らなかったよ」
「小麦粉を篩うのにこんなに大きなのは必要無いものね」
しかし難しいのはこれからだ。
壁や床に密着させるのは不可能。階段の段差は如何ともし難く、『篩』の端の隙間から濁った水が漏れ出るのを避けられない。
それでも可能な限り隙間を作らないように『篩』を前へと動かせば、九割以上の範囲で透き通った水に変わる。
「こりゃ大したもんだ」
「階段は脇道の無い一本道だから行けそうだね。ともかく入ってみようじゃないか」
一同はザネクの『傘』に乗り移り、ルキアスが『傘』を上から被せる。これで潜水の準備は完了だ。
移動はルキアスが『篩』を前に動かしてはザネクが『傘』を前に進ませる。尺取り虫のような動かし方だ。『篩』を動かす時に『傘』が動いていては微調整ができずに濁り水の漏れが酷くなる。
このためゆっくりとしか移動できず、階段を下り終えるのに三〇分近くを要した。
「次はボクの番かな。ボクが『篩』を張ったらルキアス君はここまでの漉した澱みを漏らさないように上に運んでくれたまえよ」
フヨヨンは初見でルキアス同様の『篩』をルキアスの『篩』の直ぐ手前に張った。大きさを変える程度であれば即応できるだけの経験と実績があるのだ。
これを受けてルキアスが中身が溢れないように『篩』を階層内で動かしつつ半分以下のサイズに縮める。十分に縮めたら『篩』の口を手前に向けて引き寄せる。フヨヨンが『篩』を閉じ、ルキアスの『篩』を引き連れながらザネクが『傘』を階段の上へと動かした。
第八七階層に戻ると、ルキアスは『篩』を宙に浮かべて水を切る。
「おや? これはもしや『篩』でも空を飛べないかい?」
『篩』も『傘』同様に宙に浮き、元より中に物を入れるように出来ている。
「……可能性はあるわね」
「追々試してみようじゃないか」
この場では保留だ。目前の問題がある。
「水を切った後のこの澱み、どうしましょう?」
「その辺りに放り出したのでは徒労だね。どこか乾いた場所にでも捨てるしかないよ」
第八七階層にも少なからず水が溜まっていて第八八階層にも繋がっている。だからここにばらまいたのでは澱みを移動させただけになる。
「その乾いた場所はどこにあるのかしら?」
「……確実なのは六九階以上だね。さすがにそこまで毎回往復は無理だよ」
「どっかの部屋に入口に土嚢を積んで区切りゃ、どうにかならないか?」
「土嚢は嵩張るから運び込むのが大変だね……。そうだ。袋だけ仕入れてあの泥を詰めてみようか」
フヨヨンはルキアスの『傘』に載ったままの澱みを指差した。
とは言え使っていたのは両手を広げれば届く程度の大きさまでで、こんなに大きいのは初めてだ。できそうな感覚があっても確証が無かったため、ルキアスは成功してかなりホッとした。
「『篩』なんて小さくしか出さないから、こんなに大きくできるとは知らなかったよ」
「小麦粉を篩うのにこんなに大きなのは必要無いものね」
しかし難しいのはこれからだ。
壁や床に密着させるのは不可能。階段の段差は如何ともし難く、『篩』の端の隙間から濁った水が漏れ出るのを避けられない。
それでも可能な限り隙間を作らないように『篩』を前へと動かせば、九割以上の範囲で透き通った水に変わる。
「こりゃ大したもんだ」
「階段は脇道の無い一本道だから行けそうだね。ともかく入ってみようじゃないか」
一同はザネクの『傘』に乗り移り、ルキアスが『傘』を上から被せる。これで潜水の準備は完了だ。
移動はルキアスが『篩』を前に動かしてはザネクが『傘』を前に進ませる。尺取り虫のような動かし方だ。『篩』を動かす時に『傘』が動いていては微調整ができずに濁り水の漏れが酷くなる。
このためゆっくりとしか移動できず、階段を下り終えるのに三〇分近くを要した。
「次はボクの番かな。ボクが『篩』を張ったらルキアス君はここまでの漉した澱みを漏らさないように上に運んでくれたまえよ」
フヨヨンは初見でルキアス同様の『篩』をルキアスの『篩』の直ぐ手前に張った。大きさを変える程度であれば即応できるだけの経験と実績があるのだ。
これを受けてルキアスが中身が溢れないように『篩』を階層内で動かしつつ半分以下のサイズに縮める。十分に縮めたら『篩』の口を手前に向けて引き寄せる。フヨヨンが『篩』を閉じ、ルキアスの『篩』を引き連れながらザネクが『傘』を階段の上へと動かした。
第八七階層に戻ると、ルキアスは『篩』を宙に浮かべて水を切る。
「おや? これはもしや『篩』でも空を飛べないかい?」
『篩』も『傘』同様に宙に浮き、元より中に物を入れるように出来ている。
「……可能性はあるわね」
「追々試してみようじゃないか」
この場では保留だ。目前の問題がある。
「水を切った後のこの澱み、どうしましょう?」
「その辺りに放り出したのでは徒労だね。どこか乾いた場所にでも捨てるしかないよ」
第八七階層にも少なからず水が溜まっていて第八八階層にも繋がっている。だからここにばらまいたのでは澱みを移動させただけになる。
「その乾いた場所はどこにあるのかしら?」
「……確実なのは六九階以上だね。さすがにそこまで毎回往復は無理だよ」
「どっかの部屋に入口に土嚢を積んで区切りゃ、どうにかならないか?」
「土嚢は嵩張るから運び込むのが大変だね……。そうだ。袋だけ仕入れてあの泥を詰めてみようか」
フヨヨンはルキアスの『傘』に載ったままの澱みを指差した。
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