生活魔法は万能です

浜柔

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609 第七一階層

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 第七一階層は水没まではしていなかった。膝くらいだろう深さの水がゆっくり流れているだけだ。

「穴に水が吸い込まれたことから予想されたことだよ」

 フヨヨンはそう言うが、事前に予想は語られていなかったので真偽は判らない。とは言え下の階層も水没していたら水は引かないのだから、予想は可能だっただろう。
 周囲に目を向ければ魔物が奇妙に少ない。水に流されたのだろうか。
 探索を進めると、時折触手の魔物が転がっていた。水が足りないのか半ば乾涸らびている。奇妙な程早い乾涸らび方だ。

「水中特化を極めた魔物だったようだね」
「魔石も図体のように大きいんでしょうか?」
「一応確かめてみる?」

 魔石の在処の目星が付かないのに加え、何となく触りたくないのもあってメイナーダが焼き払う。
 魔石は他の同階層の魔物のものと比べれば大きかったが、魔物の大きさからすれば小さかった。あったのは胴体部分にで、位置的には中心ではなく周辺部と思われる。

「もう二、三体焼いていましょう」

 魔石の位置は一定しなかった。

「メイナーダの魔力に余裕がある時でもなけりゃ、無視するのが無難だな」

 と言うことで先を急ぐ。第七二階層への階段は程なく見付かり、降りる。
 第七〇階層を埋めていた水は第七二階層も洗っていた。それだけでなく、二日掛けて第七五階層まで進出すると、そこも幾らか溜まった水が流れている。ここまで来ると最初から床のみが洗われただけのようだ。

「水は随分下まで流れたものだね」
「水の量が量だけに、もっと下まで行ってますよね」
「確かにここまでに溜まっていた水じゃ少な過ぎるね」

 水捌けが良くなくて各階層に流れ切らない水が残っているが、その深さを全部足しても天井には届きそうにない。

「取り敢えず、ここら辺で一度地上に戻って休みましょうか。少し疲れたわ」
「賛せーい」
「俺も」

 メイナーダの提案に真っ先に賛成したのはシャルウィだったが、直ぐにザネクも賛成し、残る三人も賛成した。




 地上に戻った翌日。フヨヨンは工房に籠もって武器を作り、夕食時に皆に配った。
 タイラクとザネクには水陸両用の槍。ルキアス、メイナーダとシャルウィには水中銃だ。水中銃は銃身四つそれぞれに吹き矢に似た弾丸を籠めて使う。

「水の中での攻撃手段があまりに不足していたからね。水中銃は気休めにしかならないかも知れないけどね」

 発射薬の威力は五〇弾相当でしかないので第七〇階層を超えた現状では威力不足だ。これを補うために弾丸は砲弾としているが、どこまで通用するかは未知数である。
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