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603 水中行
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ルキアスの案の通り、ザネクが差した『傘』に皆で乗り込み、ルキアスがそれを大きく覆うように『傘』を差す。ルキアスの『傘』の裾はザネクの『傘』より下まで伸びているので水に濡れる心配が無い。
ただ二つの『傘』は術者を基点に差しているのでルキアスとザネクはほぼ身動きが取れない。不用意に動けば『傘』同士がぶつかり、恐らくザネクの『傘』が崩壊してしまう。だから『傘』と『傘』の間はかなりの隙間を空けている。
「行くぜ」
ザネクは慎重に『傘』を飛ばす。階段を降り、その途中に在る水面へと突入する。『傘』の向こうでどんどん上がる水面。『傘』の方が沈んで行っていても『傘』の中から見れば水面が上がるように見えるのだ。
「うひゃああ」
シャルウィが慄くのも無理はない。『傘』は透き通っているので見た目は単なる水の壁だ。水の壁は今にも倒れて押し寄せて来そうに見える。圧迫感が酷い。
水の透明度は意外に高く、視界は良好だ。水没していてもやはりダンジョン。壁が仄かに光って明るいのは変わらないため、かなり遠くまで見通せる。
「水が濁ってなくて良かったよ。近くしか見えなかったら手探りになるからね」
第七〇階層に入ると魔物も現れた。ところがその魔物はここまでの階層と同様の姿形で不器用にジタバタ泳いでいる。ダンジョンの魔物でなければ溺死していることだろう。
「ザネク、魔物を避ける時はできるだけ左右に避けて」
「おう」
上に避ければ下から襲われかねない。ザネクの『傘』の強度はこの階層の魔物からの攻撃を防ぐのに些か不安があり、『傘』と『傘』の間の隙間から攻撃される危険もある。
だからと言って床付近まで潜るのも危険を伴う。泥がかなり堆積しているようで、その泥から何が飛び出して来るか判らない。メイナーダやフヨヨンの『索敵』も完全ではない。
「何だか少し息苦しくない?」
潜って三〇分程経った頃、シャルウィが言った。
「言われてみればそうだな」
「引き返しましょう。空気が薄くなってるんだわ」
正確には酸素が薄くなっている。
今回の水中行が試しだったこともあって異論は出ず、ザネクは来た道を戻る進路を取る。
ところそれから間もなくだった。
「「! 下!」」
メイナーダとフヨヨン二人が発した警告と同時に床の泥の中から幾本もの触手が飛び出し、『傘』に巻き付いた。
ただ二つの『傘』は術者を基点に差しているのでルキアスとザネクはほぼ身動きが取れない。不用意に動けば『傘』同士がぶつかり、恐らくザネクの『傘』が崩壊してしまう。だから『傘』と『傘』の間はかなりの隙間を空けている。
「行くぜ」
ザネクは慎重に『傘』を飛ばす。階段を降り、その途中に在る水面へと突入する。『傘』の向こうでどんどん上がる水面。『傘』の方が沈んで行っていても『傘』の中から見れば水面が上がるように見えるのだ。
「うひゃああ」
シャルウィが慄くのも無理はない。『傘』は透き通っているので見た目は単なる水の壁だ。水の壁は今にも倒れて押し寄せて来そうに見える。圧迫感が酷い。
水の透明度は意外に高く、視界は良好だ。水没していてもやはりダンジョン。壁が仄かに光って明るいのは変わらないため、かなり遠くまで見通せる。
「水が濁ってなくて良かったよ。近くしか見えなかったら手探りになるからね」
第七〇階層に入ると魔物も現れた。ところがその魔物はここまでの階層と同様の姿形で不器用にジタバタ泳いでいる。ダンジョンの魔物でなければ溺死していることだろう。
「ザネク、魔物を避ける時はできるだけ左右に避けて」
「おう」
上に避ければ下から襲われかねない。ザネクの『傘』の強度はこの階層の魔物からの攻撃を防ぐのに些か不安があり、『傘』と『傘』の間の隙間から攻撃される危険もある。
だからと言って床付近まで潜るのも危険を伴う。泥がかなり堆積しているようで、その泥から何が飛び出して来るか判らない。メイナーダやフヨヨンの『索敵』も完全ではない。
「何だか少し息苦しくない?」
潜って三〇分程経った頃、シャルウィが言った。
「言われてみればそうだな」
「引き返しましょう。空気が薄くなってるんだわ」
正確には酸素が薄くなっている。
今回の水中行が試しだったこともあって異論は出ず、ザネクは来た道を戻る進路を取る。
ところそれから間もなくだった。
「「! 下!」」
メイナーダとフヨヨン二人が発した警告と同時に床の泥の中から幾本もの触手が飛び出し、『傘』に巻き付いた。
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