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595 気になる事
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「粗方片付いたな」
「だね。まだ少し残ってるかも知れないけど、それはこっちの人達に任せよう」
もう日も暮れたこともあり、タイラクとフヨヨンは『ランプ』の灯を手にクリューの町の西側から東側へ帰るべくダンジョンへと向かう。壁を飛び越えず、町からも出ずに東西を行き来するにはこのルート以外の道は無い。
「しっかしこっちの町は何か安っぽい感じがしたな」
「見たまんまで安っぽいんだろうね。木造の家も多いし壁も薄そうだよ。でもそれより気になる事があるんだ」
「気になる事?」
「おっと、ここだよ」
二人は既にダンジョン西側の階段を下り始めていた。その途中でフヨヨンが止まる。
「ダンジョン前が東西で対照的に造られているならここにも砲台が在る筈だけど、それっぽい穴が在るだけだね」
「場所が違うんじゃないのか?」
「それは無いよ。階段を見てごらんよ。どこにも魔石が転がってない。砲台が動いていたら確実にある筈だよ」
砲台の魔法は浅い階層の魔物なら骨も残さず焼き尽くすので骸が残っていないのは不思議でないが、魔石は残るので転がっていなければおかしい。
タイラクも改めて階段を見下ろした。フヨヨンの言う通りに魔石は見当たらない。
「ってことは砲台が消えて無くなってるってことか?」
「何者かの手によってね」
「貴様ら! まだ魔物が町中に居るかも知れぬのに、何をサボっておるか!」
突然の怒声に二人が振り向けば、階段の上からカイゼル髭の男が何やら喚いている。
「誰だ? あれ」
「知る訳がないさ」
もしルキアスがここに居たならラナファーベ町長だと二人に伝えたことだろう。
「ボク達が階段を降りるのを見て、どこからか走って来たんだろうね。ご苦労なことだよ」
フヨヨンの推測を裏付けるように、町長の息はかなり上がっている。
「貴様ら、聞いているのか!? ぐずぐずせずに魔物の掃討に向かえ!」
「あいつ何言ってんだ?」
「さあね。ボク達には関係の無いことだよ」
タイラクとフヨヨンは町長を無視して階段を降りる。町長は地団駄を踏みながらも追っては来なかった。
東側へと戻った二人はザネク、シャルウィと合流するべく探索者組合へと向かう。ザネクが要救助者を送り届けたのがそこだ。
ところが組合内が予想外に騒がしい。何が起きたかと辺りを見回すと群衆の中にシャルウィの姿を見付けた。
「シャルウィ君、何か起きたのかい?」
「あ! フヨヨンさん! それが……」
ザネクが救助した中の一人が懺悔するように口走ったらしい。
『俺が町長の言いなりにあんなものを盗まなければ!』
西側が魔物に破壊される様子を見て罪悪感に苛まれたのだろう。組合職員が問い詰めると、その男が口を割った。
男がラナファーベ町長の指示を受けて砲台を盗み出し、アダマントの部品と魔石を町長に献上した後で砲台をスクラップとして売り飛ばしたと言う。
町長の悪行はそれだけでなく、以前の魔物の大発生の原因になった砲台からアダマントを盗もうとした者達も町長の指示で動いていたらしい。
「呆れて言葉も無いね……」
フヨヨンは頭を振った。
「だね。まだ少し残ってるかも知れないけど、それはこっちの人達に任せよう」
もう日も暮れたこともあり、タイラクとフヨヨンは『ランプ』の灯を手にクリューの町の西側から東側へ帰るべくダンジョンへと向かう。壁を飛び越えず、町からも出ずに東西を行き来するにはこのルート以外の道は無い。
「しっかしこっちの町は何か安っぽい感じがしたな」
「見たまんまで安っぽいんだろうね。木造の家も多いし壁も薄そうだよ。でもそれより気になる事があるんだ」
「気になる事?」
「おっと、ここだよ」
二人は既にダンジョン西側の階段を下り始めていた。その途中でフヨヨンが止まる。
「ダンジョン前が東西で対照的に造られているならここにも砲台が在る筈だけど、それっぽい穴が在るだけだね」
「場所が違うんじゃないのか?」
「それは無いよ。階段を見てごらんよ。どこにも魔石が転がってない。砲台が動いていたら確実にある筈だよ」
砲台の魔法は浅い階層の魔物なら骨も残さず焼き尽くすので骸が残っていないのは不思議でないが、魔石は残るので転がっていなければおかしい。
タイラクも改めて階段を見下ろした。フヨヨンの言う通りに魔石は見当たらない。
「ってことは砲台が消えて無くなってるってことか?」
「何者かの手によってね」
「貴様ら! まだ魔物が町中に居るかも知れぬのに、何をサボっておるか!」
突然の怒声に二人が振り向けば、階段の上からカイゼル髭の男が何やら喚いている。
「誰だ? あれ」
「知る訳がないさ」
もしルキアスがここに居たならラナファーベ町長だと二人に伝えたことだろう。
「ボク達が階段を降りるのを見て、どこからか走って来たんだろうね。ご苦労なことだよ」
フヨヨンの推測を裏付けるように、町長の息はかなり上がっている。
「貴様ら、聞いているのか!? ぐずぐずせずに魔物の掃討に向かえ!」
「あいつ何言ってんだ?」
「さあね。ボク達には関係の無いことだよ」
タイラクとフヨヨンは町長を無視して階段を降りる。町長は地団駄を踏みながらも追っては来なかった。
東側へと戻った二人はザネク、シャルウィと合流するべく探索者組合へと向かう。ザネクが要救助者を送り届けたのがそこだ。
ところが組合内が予想外に騒がしい。何が起きたかと辺りを見回すと群衆の中にシャルウィの姿を見付けた。
「シャルウィ君、何か起きたのかい?」
「あ! フヨヨンさん! それが……」
ザネクが救助した中の一人が懺悔するように口走ったらしい。
『俺が町長の言いなりにあんなものを盗まなければ!』
西側が魔物に破壊される様子を見て罪悪感に苛まれたのだろう。組合職員が問い詰めると、その男が口を割った。
男がラナファーベ町長の指示を受けて砲台を盗み出し、アダマントの部品と魔石を町長に献上した後で砲台をスクラップとして売り飛ばしたと言う。
町長の悪行はそれだけでなく、以前の魔物の大発生の原因になった砲台からアダマントを盗もうとした者達も町長の指示で動いていたらしい。
「呆れて言葉も無いね……」
フヨヨンは頭を振った。
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