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578 弾く
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ルキアスはこの日、ずっと第四階層での銃の習熟に励んだ。
他のメンバーも最後までこれに付き合った。フヨヨンはルキアスの監督と銃に不具合が出た時に備えるのとを兼ねて、メイナーダはルキアスから離れて探索をする理由が無くて、ザネクとシャルウィはルキアスの様子を見飽きた時には深い階層に行くような時間ではなくなっていて、タイラクは独りで探索するのはつまらないからと言ってのことだ。
「タイラク、帰るよ。起きなよ。ほら、タイラク!」
フヨヨンは眠りこけたまま呼び掛けても起きないタイラクの足の裏を軽く蹴飛ばした。ルキアスが一つ所に陣取って狩りを続けたため、暇を持て余したタイラクが眠ってしまっても放置されていた。ザネクも欠伸を抑えられないところを見れば、銃声が子守歌の役割を果たしてしまっていたのだろう。
「お!? 何だ? 何が起きた?」
「無警戒に眠ってるんじゃないよ。もう帰るよ」
「そんな時間か。で、ルキアスの調子はどうなんだ?」
「ぼちぼちだね。探索は十分行けると思うよ」
「なら良かった」
タイラクはやおら立ち上がると、周囲を見回して爬虫類型魔物に目を留め、何を思ったか数体の魔物から歯を折り取った。
彼が何をしたかったのかは帰りの道中で判明した。魔物を発見したら歯を手に振りかぶって投げる。
それは見事に命中し、魔物の眉間に魔物の歯が食い込んだ。
「軽過ぎて投げ難いし、威力もいまいちだな」
タイラクはフヨヨンに言われた「そこら辺の石を投げ付けた方がよっぽど威力がある」を実践したらしい。ただフヨヨンが予想した威力には程遠かった。
「さすがに投げるのがその大きさじゃ威力は出ないよ。ぼくが言ったのはもっと大きな石をだね……」
弾丸も投石も威力は質量と速度に依存する。いくらタイラクでも弾丸の初速より速く腕を振るのは困難だから、弾丸程度の重さの物を投げては威力が出ない。
「じゃあ、こうしてみっか」
タイラクは魔物の歯を左右の手で握り込み、魔物に向けてそれぞれの親指で弾く。
右手で弾いた歯は魔物の胴を貫通した。だが左手で弾いた歯は掠りもしない。
「左手じゃ思ったより上手く行かないもんだな。だがこれでもうちょっと遊んでみるとするぜ」
タイラクの剣は基本的に両手で振るが、もしも片手で振るなら利き腕の右だ。だから剣を使う時に右手は空かず、自由にできるのは左手になる。その左手で魔物の歯でも何でも弾いて飛ばせば牽制くらいには使える。
これを試そうとタイラクは思い付いたのだった。
他のメンバーも最後までこれに付き合った。フヨヨンはルキアスの監督と銃に不具合が出た時に備えるのとを兼ねて、メイナーダはルキアスから離れて探索をする理由が無くて、ザネクとシャルウィはルキアスの様子を見飽きた時には深い階層に行くような時間ではなくなっていて、タイラクは独りで探索するのはつまらないからと言ってのことだ。
「タイラク、帰るよ。起きなよ。ほら、タイラク!」
フヨヨンは眠りこけたまま呼び掛けても起きないタイラクの足の裏を軽く蹴飛ばした。ルキアスが一つ所に陣取って狩りを続けたため、暇を持て余したタイラクが眠ってしまっても放置されていた。ザネクも欠伸を抑えられないところを見れば、銃声が子守歌の役割を果たしてしまっていたのだろう。
「お!? 何だ? 何が起きた?」
「無警戒に眠ってるんじゃないよ。もう帰るよ」
「そんな時間か。で、ルキアスの調子はどうなんだ?」
「ぼちぼちだね。探索は十分行けると思うよ」
「なら良かった」
タイラクはやおら立ち上がると、周囲を見回して爬虫類型魔物に目を留め、何を思ったか数体の魔物から歯を折り取った。
彼が何をしたかったのかは帰りの道中で判明した。魔物を発見したら歯を手に振りかぶって投げる。
それは見事に命中し、魔物の眉間に魔物の歯が食い込んだ。
「軽過ぎて投げ難いし、威力もいまいちだな」
タイラクはフヨヨンに言われた「そこら辺の石を投げ付けた方がよっぽど威力がある」を実践したらしい。ただフヨヨンが予想した威力には程遠かった。
「さすがに投げるのがその大きさじゃ威力は出ないよ。ぼくが言ったのはもっと大きな石をだね……」
弾丸も投石も威力は質量と速度に依存する。いくらタイラクでも弾丸の初速より速く腕を振るのは困難だから、弾丸程度の重さの物を投げては威力が出ない。
「じゃあ、こうしてみっか」
タイラクは魔物の歯を左右の手で握り込み、魔物に向けてそれぞれの親指で弾く。
右手で弾いた歯は魔物の胴を貫通した。だが左手で弾いた歯は掠りもしない。
「左手じゃ思ったより上手く行かないもんだな。だがこれでもうちょっと遊んでみるとするぜ」
タイラクの剣は基本的に両手で振るが、もしも片手で振るなら利き腕の右だ。だから剣を使う時に右手は空かず、自由にできるのは左手になる。その左手で魔物の歯でも何でも弾いて飛ばせば牽制くらいには使える。
これを試そうとタイラクは思い付いたのだった。
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