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569 ナイフ
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ルキアスは銃作りでが担当するべき部分を終えた翌日からダンジョン探索に加わった。
「銃の方はもういいのか?」
「ぼくがする事は一応終わったみたい。後は出来上がるのを待つばかりだね」
「そりゃ、楽しみだな」
「だね」
タイラクを先頭に、ザネクとシャルウィ、ルキアスとメイナーダの順でダンジョンを進む。マッピングは主にメイナーダが行っていて、進む方向はメイナーダが指示を出している。ユアを抱えながら器用なものだ。
途中の階層は最短距離を階段まで歩く。最短距離でも幾らかは魔物と遭遇する。そんな時はタイラクが剣を魔物に添えるように差し出して斬る。ルキアスが聞いていた撫で斬りよりもっと軽い。
「タイラクさんの、一昨日聞いたより凄くなってません?」
「この辺りの魔物は元々タイラクの相手にならないから剣で遊んでるのよ」
「人聞きが悪いぞ! 性能を試していると言え!」
タイラクも割と地獄耳だった。メイナーダが小さく肩を竦めてクスッと笑った。
タイラクが倒した魔物はシャルウィがさっと切り裂いて魔石を抜き取り、『湧水』で洗って『収納』する。熟練の技のように、惚れ惚れする程の流れる動きだ。ただ、鋼鉄の棒で切っているためか、切る時に若干力が入って見える。
「ザネク、この間の『捏ね』た鋼鉄の残り、まだ持ってる? あったらちょっと貸して欲しいだけど」
「おう?」
ザネクは特に問い質すことも無く、鋼鉄を『収納』から出してルキアスに渡した。
「どうせだから、ナイフっぽい形の方がいいでしょ?」
ルキアスは受け取った鋼鉄を半分に分け、それぞれを断面が楕円の棒に成形すると、真ん中辺りから先をナイフの刃の形に成形し、根元の部分には小さなツバを付ける。
「はい。ザネクとシャルウィの分だよ」
「お、サンキュー! シャルウィ、新しいナイフだ!」
「やった! これで勝てる!」
何に勝てるか判らないが、シャルウィも嬉しそうだ。
シャルウィは次の獲物で早速ナイフを試す。するとするっと獲物が切り裂かれた。
「やっぱりナイフの形をしてたら違うわね! 全然力が要らなかったわ!」
「それなら良かったよ」
ルキアスは自分の手持ちの鋼鉄でもう二本ナイフを作る。そして一本をメイナーダに差し出した。包丁は既に渡しているが、包丁を持って探索する訳には行かないだろう。
「これはメイナーダさんに」
「あらあらまあ! 大切にするわね!」
残る一本は無論ルキアス自身の分である。
「俺の分は!?」
前の方からタイラクが叫んだ。やはり地獄耳だ。
「え!? タイラクさんも使うんですか!?」
「え!? どうして使わないと思った!?」
「てっきり剣で全部するのかと!」
「おいおい、幾ら俺でもそりゃねぇぜ」
そんな訳で、ルキアスはもう一本ナイフを『捏ね』る。事前に『捏ね』た鋼鉄が無くなったので道中に別のを『捏ね』ながらだ。
そのナイフも第二三階層に着く頃には完成した。
「銃の方はもういいのか?」
「ぼくがする事は一応終わったみたい。後は出来上がるのを待つばかりだね」
「そりゃ、楽しみだな」
「だね」
タイラクを先頭に、ザネクとシャルウィ、ルキアスとメイナーダの順でダンジョンを進む。マッピングは主にメイナーダが行っていて、進む方向はメイナーダが指示を出している。ユアを抱えながら器用なものだ。
途中の階層は最短距離を階段まで歩く。最短距離でも幾らかは魔物と遭遇する。そんな時はタイラクが剣を魔物に添えるように差し出して斬る。ルキアスが聞いていた撫で斬りよりもっと軽い。
「タイラクさんの、一昨日聞いたより凄くなってません?」
「この辺りの魔物は元々タイラクの相手にならないから剣で遊んでるのよ」
「人聞きが悪いぞ! 性能を試していると言え!」
タイラクも割と地獄耳だった。メイナーダが小さく肩を竦めてクスッと笑った。
タイラクが倒した魔物はシャルウィがさっと切り裂いて魔石を抜き取り、『湧水』で洗って『収納』する。熟練の技のように、惚れ惚れする程の流れる動きだ。ただ、鋼鉄の棒で切っているためか、切る時に若干力が入って見える。
「ザネク、この間の『捏ね』た鋼鉄の残り、まだ持ってる? あったらちょっと貸して欲しいだけど」
「おう?」
ザネクは特に問い質すことも無く、鋼鉄を『収納』から出してルキアスに渡した。
「どうせだから、ナイフっぽい形の方がいいでしょ?」
ルキアスは受け取った鋼鉄を半分に分け、それぞれを断面が楕円の棒に成形すると、真ん中辺りから先をナイフの刃の形に成形し、根元の部分には小さなツバを付ける。
「はい。ザネクとシャルウィの分だよ」
「お、サンキュー! シャルウィ、新しいナイフだ!」
「やった! これで勝てる!」
何に勝てるか判らないが、シャルウィも嬉しそうだ。
シャルウィは次の獲物で早速ナイフを試す。するとするっと獲物が切り裂かれた。
「やっぱりナイフの形をしてたら違うわね! 全然力が要らなかったわ!」
「それなら良かったよ」
ルキアスは自分の手持ちの鋼鉄でもう二本ナイフを作る。そして一本をメイナーダに差し出した。包丁は既に渡しているが、包丁を持って探索する訳には行かないだろう。
「これはメイナーダさんに」
「あらあらまあ! 大切にするわね!」
残る一本は無論ルキアス自身の分である。
「俺の分は!?」
前の方からタイラクが叫んだ。やはり地獄耳だ。
「え!? タイラクさんも使うんですか!?」
「え!? どうして使わないと思った!?」
「てっきり剣で全部するのかと!」
「おいおい、幾ら俺でもそりゃねぇぜ」
そんな訳で、ルキアスはもう一本ナイフを『捏ね』る。事前に『捏ね』た鋼鉄が無くなったので道中に別のを『捏ね』ながらだ。
そのナイフも第二三階層に着く頃には完成した。
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