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551 ただいま
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「ただいま」
「ルキアスちゃん、お帰りなさい」
「ん!」
この部屋に引っ越してからだとまだ四日だが、ルキアスがメイナーダとユアと一緒に住むようになってからなら既に二ヶ月半経っている。「ただいま」の言葉にも照れやためらいの気配は無い。
「よう」
「あら、ロマじゃない。飛んでも平気だったのかしら?」
人の口には戸を立てられない。以前のロマの醜態はメイナーダも知るところだ。
「屁でもねぇさ」
地上に降りた後だからか、気も大きくなって胸を張るロマである。
そんなロマの滞在は数日間のみの予定だから、ルキアスは元々自らの割り当てである一階の部屋を宿として提供し、今日の夕食にも招待している。
ただそうすると悩ましくなるのがメイナーダだ。用意していた料理は五人分。ロマが増えた分、料理を何か足さなければ足りない。
何をどの程度足すか、誰がどれだけ食べるか思案する。しかし途中で思い出すこともある。
「そう言えばルキアスちゃん、ザネクちゃんとシャルウィちゃんには会ったかしら?」
「会ってないけど……?」
「ルキアスちゃんが飛んだ後、二人でルキアスちゃんを追った筈なんだけど、どこに行ったのかしらねぇ」
メイナーダは頬に手を当てて小首を傾げた。こんな仕草は意外に可愛らしい。
だがその思案を遮るように呼び鈴が鳴った。ルキアスが応対に出ると、ザネクとシャルウィだった。
「ただいまー」
「ただいま。はあ……、疲れたぜ」
「あらあらお帰りなさい。二人ともどこに行ってたのかしら?」
「よう」
「あ、どうも」
「うっす。ベクロテの場所が判らないのを思い出して引き返したらここの場所も判らなかったもんだから……」
ザネクは先にロマに挨拶を返してから、行き先を説明した。帰り着くまでに町を三つほど経由したらしい。
「あらあら、それは大冒険だったわね」
「あ、これ途中で寄った町のお土産です」
シャルウィがお土産のから揚げとメンチカツを取り出してメイナーダに渡す。
「あらあら、まあまあ、ちょうど良かったわ。一人増えた分をどうしようかと思っていたところだったのよ」
ただ生憎と五人で分けるべくそれぞれ一〇個ずつだったため、昼に食べたザネクとシャルウィで三個ずつ、食べる量の少ないユアとその母メイナーダとで三個ずつと言う分け方をした。
お陰で若干肩身を狭く感じてしまったロマである。
そしてユアはから揚げをいたく気に入ったらしかった。
「ルキアスちゃん、お帰りなさい」
「ん!」
この部屋に引っ越してからだとまだ四日だが、ルキアスがメイナーダとユアと一緒に住むようになってからなら既に二ヶ月半経っている。「ただいま」の言葉にも照れやためらいの気配は無い。
「よう」
「あら、ロマじゃない。飛んでも平気だったのかしら?」
人の口には戸を立てられない。以前のロマの醜態はメイナーダも知るところだ。
「屁でもねぇさ」
地上に降りた後だからか、気も大きくなって胸を張るロマである。
そんなロマの滞在は数日間のみの予定だから、ルキアスは元々自らの割り当てである一階の部屋を宿として提供し、今日の夕食にも招待している。
ただそうすると悩ましくなるのがメイナーダだ。用意していた料理は五人分。ロマが増えた分、料理を何か足さなければ足りない。
何をどの程度足すか、誰がどれだけ食べるか思案する。しかし途中で思い出すこともある。
「そう言えばルキアスちゃん、ザネクちゃんとシャルウィちゃんには会ったかしら?」
「会ってないけど……?」
「ルキアスちゃんが飛んだ後、二人でルキアスちゃんを追った筈なんだけど、どこに行ったのかしらねぇ」
メイナーダは頬に手を当てて小首を傾げた。こんな仕草は意外に可愛らしい。
だがその思案を遮るように呼び鈴が鳴った。ルキアスが応対に出ると、ザネクとシャルウィだった。
「ただいまー」
「ただいま。はあ……、疲れたぜ」
「あらあらお帰りなさい。二人ともどこに行ってたのかしら?」
「よう」
「あ、どうも」
「うっす。ベクロテの場所が判らないのを思い出して引き返したらここの場所も判らなかったもんだから……」
ザネクは先にロマに挨拶を返してから、行き先を説明した。帰り着くまでに町を三つほど経由したらしい。
「あらあら、それは大冒険だったわね」
「あ、これ途中で寄った町のお土産です」
シャルウィがお土産のから揚げとメンチカツを取り出してメイナーダに渡す。
「あらあら、まあまあ、ちょうど良かったわ。一人増えた分をどうしようかと思っていたところだったのよ」
ただ生憎と五人で分けるべくそれぞれ一〇個ずつだったため、昼に食べたザネクとシャルウィで三個ずつ、食べる量の少ないユアとその母メイナーダとで三個ずつと言う分け方をした。
お陰で若干肩身を狭く感じてしまったロマである。
そしてユアはから揚げをいたく気に入ったらしかった。
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