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548 今回だけ
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ベクロテまで送り届けるのに料金を請求するのは別に意地悪からではない。親しい訳でもない相手をただで運んだのが他人に知られたなら「何であいつらだけ」のようになりかねないからだ。
ルキアスは続けて言う。
「但し一人五万ダールは今回だけで、もし次があったらそうだな……、五〇万ダールかな? だから本当にベクロテに戻っても大丈夫か考えてみて」
「はあ? 五万で済むものが何で突然五〇万になるんだ?」
「付加価値ならそれくらいよね」
メイナーダがぼそりと言った。バスでも二週間近く掛かる道程を半日で到達するのだ。その速達性の付加価値は高い。今のところ同じ事ができると思われるのはザネクだけで、そのザネクも未挑戦なので確定ではない。今確実なのはルキアスだけだ。
「元手が掛からないから値段は有って無いようなものだけど、もし商売にするなら付加価値込みで五〇万ダールくらいかなって」
別に熟考しての金額ではなく単なる思い付きだが、もしその料金で商売にした時に需要が無いなら下げるだけである。
「ますます判らねぇ……。それってベクロテまで何日掛かるんだ?」
「半日だよ」
「はあっ!?」
相手は目を剥いた。しかし暫くして目を瞬かせると、彼は「ちょっと待ってくれ」と仲間に振り返った。
「どうする?」
「……五万程度なら今出せなくはない」
「本当に半日でベクロテに着くなら、差し引きの日数で狩りをすれば取り戻せる」
「今のままじゃどうせじり貧だから賭けてみるのもいいんじゃないか?」
そして彼はルキアスに向き直った。
「本当に半日で着くなら連れて行ってくれ」
ルキアスは後日を意味して「考えて」と言ったのだが、彼らが即断してしまって些かの困惑を覚える。しかし彼らから漏れ聞こえた「じり貧」が本当なら即断が必要だと思い直した。
「……そしたらいつにする? いっそ今直ぐがいいのかな?」
「いや、一時間くらい待ってくれ。宿を引き払わなけりゃいけないからな」
「じゃあ、一時間後にこの辺りで」
彼らが西側の階段を上って行くのを見送り、ルキアスはメイナーダに言った。
「ぼくはここであの人達を待ちますね」
「わたし達も一緒に待ちましょうか」
メイナーダはザネクとシャルウィに向けて言った。すると二人もこれに同意した。
ぼんやりとダンジョンに入って行く探索者を眺めていると、意外と数が多いことに気付かされる。
一時間を待たず先のパーティーは戻って来た。
「待たせた」
「早いくらいだから大丈夫。じゃあ、こっちに来て」
ルキアスは彼らを連れて東側の階段を上る。メイナーダ達も一緒だ。
広場を抜けて人目の届かない路地に入る。彼らが若干警戒を強めた。場所的に警戒されてもしよう。
だからルキアスは言葉で彼らの警戒を解こうとはせずに形を示す。
「『傘』」
この方が確実だ。差した『傘』に自らが乗り込んだら彼らを手招きする。
「さ、これに乗って」
「「は?」」
声に出したのは二人。残る二人は絶句だ。だがルキアスが乗っている以上、底が抜けることはないと、へっぴり腰になりながらも乗り込んだ。
「行くよ!」
ルキアスは飛んだ。
ルキアスは続けて言う。
「但し一人五万ダールは今回だけで、もし次があったらそうだな……、五〇万ダールかな? だから本当にベクロテに戻っても大丈夫か考えてみて」
「はあ? 五万で済むものが何で突然五〇万になるんだ?」
「付加価値ならそれくらいよね」
メイナーダがぼそりと言った。バスでも二週間近く掛かる道程を半日で到達するのだ。その速達性の付加価値は高い。今のところ同じ事ができると思われるのはザネクだけで、そのザネクも未挑戦なので確定ではない。今確実なのはルキアスだけだ。
「元手が掛からないから値段は有って無いようなものだけど、もし商売にするなら付加価値込みで五〇万ダールくらいかなって」
別に熟考しての金額ではなく単なる思い付きだが、もしその料金で商売にした時に需要が無いなら下げるだけである。
「ますます判らねぇ……。それってベクロテまで何日掛かるんだ?」
「半日だよ」
「はあっ!?」
相手は目を剥いた。しかし暫くして目を瞬かせると、彼は「ちょっと待ってくれ」と仲間に振り返った。
「どうする?」
「……五万程度なら今出せなくはない」
「本当に半日でベクロテに着くなら、差し引きの日数で狩りをすれば取り戻せる」
「今のままじゃどうせじり貧だから賭けてみるのもいいんじゃないか?」
そして彼はルキアスに向き直った。
「本当に半日で着くなら連れて行ってくれ」
ルキアスは後日を意味して「考えて」と言ったのだが、彼らが即断してしまって些かの困惑を覚える。しかし彼らから漏れ聞こえた「じり貧」が本当なら即断が必要だと思い直した。
「……そしたらいつにする? いっそ今直ぐがいいのかな?」
「いや、一時間くらい待ってくれ。宿を引き払わなけりゃいけないからな」
「じゃあ、一時間後にこの辺りで」
彼らが西側の階段を上って行くのを見送り、ルキアスはメイナーダに言った。
「ぼくはここであの人達を待ちますね」
「わたし達も一緒に待ちましょうか」
メイナーダはザネクとシャルウィに向けて言った。すると二人もこれに同意した。
ぼんやりとダンジョンに入って行く探索者を眺めていると、意外と数が多いことに気付かされる。
一時間を待たず先のパーティーは戻って来た。
「待たせた」
「早いくらいだから大丈夫。じゃあ、こっちに来て」
ルキアスは彼らを連れて東側の階段を上る。メイナーダ達も一緒だ。
広場を抜けて人目の届かない路地に入る。彼らが若干警戒を強めた。場所的に警戒されてもしよう。
だからルキアスは言葉で彼らの警戒を解こうとはせずに形を示す。
「『傘』」
この方が確実だ。差した『傘』に自らが乗り込んだら彼らを手招きする。
「さ、これに乗って」
「「は?」」
声に出したのは二人。残る二人は絶句だ。だがルキアスが乗っている以上、底が抜けることはないと、へっぴり腰になりながらも乗り込んだ。
「行くよ!」
ルキアスは飛んだ。
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