生活魔法は万能です

浜柔

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546 棒を使って

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 『火魔法』は高温、極低温、爆発などを扱うため、指先で魔法を発動させれば指先が焼け焦げたり、凍ったりしかねない。だから練習には木などの熱を伝えにくい材質の棒がよく使われる。金属は熱が伝わって火傷や凍傷を起こすので使えないのだ。
 だが『水魔法』は『火魔法』と違い、余程の魔法でなければ余波で傷付くことは無い。精々びしょ濡れ止まりである。まあ、寒冷地でびしょ濡れになっては凍傷、最悪で凍死の危険があるが、そこはもう魔法の余波とは言えないだろう。だから練習で棒を用いることは稀で、もし使うとしても金属で何ら問題ない。
 シャルウィはメイナーダから棒を使って魔法を発動させる手解きを受けた。と言っても感覚を掴むために棒を握った指先から棒の先まで『ランプ』を動かす練習をする。箸の先で物を掴む感覚を魔力で再現するようなものである。
 手本を見せる時、メイナーダは「木の棒より魔力を通しやすいわ」と言った。これが予言にでもなったのか、シャルウィは二〇回余りの試行のみで指先から棒の先まで一瞬で『ランプ』を移動させるのに成功した。
 更に『水魔法』の空撃ちを数回行ってから探索を再開する。

「やったっ!」

 シャルウィはその魔物が倒れた時、飛び跳ねて喜んだ。ここ第三階層、ベクロテのダンジョンなら概ね第三三階層相当の魔物を一撃で倒せたのだ。

「あらあら、試してみるものね」

 メイナーダも喜ばしげにする。

「わたしもルキアスちゃんに棒を作って貰うべきかしら」
「それじゃ、これをどうぞ」

 ルキアスはフヨヨンから以前に貰った鋼材を『捏ね』て棒にし、メイナーダに渡した。本気かどうか判らなくても、これくらいなら負担にもならない。

「あらあら、まあ! プレゼントしてくれるの!? 大事にするわね!」

 ルキアスからの初めてのプレゼントだから使えるかどうかは二の次なのだ。
 だが次の戦闘で一応使ってみる。

「えいっ!」
「きゃあああっ!」

 どーんと激しい爆音が轟き、爆風がルキアス達までもを襲ってシャルウィが悲鳴を上げた。

「やり過ぎよ!」
「あらあら、ごめんなさいね。折角のプレゼントだけど、この調子だと当分の間封印だわ」

 威力に予測が付かないらしい。日頃からオーバーキルになってしまう魔物では練習にも使えなかった。
 その後も探索を続けたが、調子に乗って魔法を連発していたシャルウィがいつもより早く疲労を訴えたので引き上げる。
 第一階層の出口となる小部屋の隅では朝見たパーティーがまだ頑張っていた。
 ルキアスと相手の目が合うと、今度は相手から手を上げるだけの挨拶をして来た。
 ルキアスは手を上げてそれに応えた。
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