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544 家具を見に
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「ボク達は一週間ここに籠もるから、一週間経ったら迎えに来てくれたまえよ」
ベクロテに着くと直ぐにフヨヨンとタイラクはダンジョンへと向かった。
「わたし達はベッドを買いに行きましょう」
メイナーダはルキアスの腕を取って家具店を目指す。
「あたし達も家具を見に行こ。部屋の中が殺風景だから何か欲しいわ」
シャルウィがザネクを誘う。二人は特定の何が欲しい訳でもなかったが、二人だけクリューに残ってても何もする事が無いからと一緒にやって来ていた。行き先は着いてから考えようと言う全くのノープランだったが、メイナーダとルキアスに乗じる訳だ。
ただこの言い訳の時、メイナーダが「あら、そう?」と小首を傾げたのに対して特にシャルウィがやたら焦る様子を見せたことからすれば、クリューに残っていてもする事が全く無かった訳ではなさそうだ。
家具店では男二人が暇を持て余した。家具に拘りなど無いので見た目の善し悪しが判らない。簡単に壊れそうなものでなければ、部屋に置いて邪魔にならなければ何でも善いのである。
「そう言や、ルキアスは実家に帰ったりしないのか?」
『傘』に乗ればひとっ飛び、帰ろうと思えばいつでも帰れるだろう。
しかしルキアスは頭を振る。
「ぼくは居なくなった筈の人間だからね……。父さんや母さんが善くても弟はきっとそうじゃないから」
弟のベルンは家業を継ぐために頑張っている筈だ。そこにルキアスがのこのこ現れては一時的な帰郷でも気が気でなくなるだろう。
「考え過ぎじゃないか?」
「どうだろう? あ、でも手紙を出すくらいはいいかも知れないね。機会があったら出してみるよ」
「そうだな」
息災であることを伝えるだけなら差し障りは無いに違いない。
話の切れ間、メイナーダ達の方を見やるとまだまだ時間が掛かりそうに思われる。
「あー、でもこんなに時間が掛かるのならラビット丼を食べに行けば良かったよ」
「何でだよ!」
ルキアスのぼやきにザネクは反射的にツッコミを入れた。
「ラビット丼を愛しすぎだろ」
「ぼくのソウルフードだからね。初めて食べた時の感動は今でも忘れられないよ」
「マジか……」
昼を大きく回ったところで漸くメイナーダとシャルウィの買い物が決まったようだ。
そこで意見を聞かれた時、男二人は善し悪しはよく判らないまま「とても善いと思う」と待ち時間がやっと終わった喜びを載せて答えた。この内心はどうであれ、表面的には正解だったようで、女二人は満足げに喜んだ。
ただこれで完全に終わった訳ではない。持ち帰るには『収納』しなければならない。出し入れは一人で持ち上げられる物でなければならない――もし他人の手を借りて入れられても出せなくなる――ため、『収納』可能な大きさと重さには限りがある。
案の定、シャルウィが選んだチェストはシャルウィ自身では『収納』できなかった。重さだけなら大丈夫でも大きさとの兼ね合いで無理だったのだ。
ただこれはザネクが代わりに収納することで事無きを得た。
「メイナーダさん?」
「ルキアスちゃん、どうかした?」
「あ、いえ、気のせいでした……」
「おかしなの」
シャルウィの様子を見ていたルキアスはメイナーダが買うベッドに不安を覚えたが、メイナーダはベッドをひょいと持ち上げて『収納』してしまっていた。
ベクロテに着くと直ぐにフヨヨンとタイラクはダンジョンへと向かった。
「わたし達はベッドを買いに行きましょう」
メイナーダはルキアスの腕を取って家具店を目指す。
「あたし達も家具を見に行こ。部屋の中が殺風景だから何か欲しいわ」
シャルウィがザネクを誘う。二人は特定の何が欲しい訳でもなかったが、二人だけクリューに残ってても何もする事が無いからと一緒にやって来ていた。行き先は着いてから考えようと言う全くのノープランだったが、メイナーダとルキアスに乗じる訳だ。
ただこの言い訳の時、メイナーダが「あら、そう?」と小首を傾げたのに対して特にシャルウィがやたら焦る様子を見せたことからすれば、クリューに残っていてもする事が全く無かった訳ではなさそうだ。
家具店では男二人が暇を持て余した。家具に拘りなど無いので見た目の善し悪しが判らない。簡単に壊れそうなものでなければ、部屋に置いて邪魔にならなければ何でも善いのである。
「そう言や、ルキアスは実家に帰ったりしないのか?」
『傘』に乗ればひとっ飛び、帰ろうと思えばいつでも帰れるだろう。
しかしルキアスは頭を振る。
「ぼくは居なくなった筈の人間だからね……。父さんや母さんが善くても弟はきっとそうじゃないから」
弟のベルンは家業を継ぐために頑張っている筈だ。そこにルキアスがのこのこ現れては一時的な帰郷でも気が気でなくなるだろう。
「考え過ぎじゃないか?」
「どうだろう? あ、でも手紙を出すくらいはいいかも知れないね。機会があったら出してみるよ」
「そうだな」
息災であることを伝えるだけなら差し障りは無いに違いない。
話の切れ間、メイナーダ達の方を見やるとまだまだ時間が掛かりそうに思われる。
「あー、でもこんなに時間が掛かるのならラビット丼を食べに行けば良かったよ」
「何でだよ!」
ルキアスのぼやきにザネクは反射的にツッコミを入れた。
「ラビット丼を愛しすぎだろ」
「ぼくのソウルフードだからね。初めて食べた時の感動は今でも忘れられないよ」
「マジか……」
昼を大きく回ったところで漸くメイナーダとシャルウィの買い物が決まったようだ。
そこで意見を聞かれた時、男二人は善し悪しはよく判らないまま「とても善いと思う」と待ち時間がやっと終わった喜びを載せて答えた。この内心はどうであれ、表面的には正解だったようで、女二人は満足げに喜んだ。
ただこれで完全に終わった訳ではない。持ち帰るには『収納』しなければならない。出し入れは一人で持ち上げられる物でなければならない――もし他人の手を借りて入れられても出せなくなる――ため、『収納』可能な大きさと重さには限りがある。
案の定、シャルウィが選んだチェストはシャルウィ自身では『収納』できなかった。重さだけなら大丈夫でも大きさとの兼ね合いで無理だったのだ。
ただこれはザネクが代わりに収納することで事無きを得た。
「メイナーダさん?」
「ルキアスちゃん、どうかした?」
「あ、いえ、気のせいでした……」
「おかしなの」
シャルウィの様子を見ていたルキアスはメイナーダが買うベッドに不安を覚えたが、メイナーダはベッドをひょいと持ち上げて『収納』してしまっていた。
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