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543 ちょっと貸して
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ルキアス達浅層組三人はタイラク達深層組に合流しての探索だ。
入口を入って直ぐ、先日の探索者パーティーが先日と同じ場所で狩りをしているのを目にしたが、相手もチラッと目を向けて来ただけで特には何も無かった。揉め事に発展することが無さそうで、ホッと一安心のルキアスだ。
魔物を狩る時にはルキアスやシャルウィが初撃を放ち、ザネクも前に出て魔物と対峙する。
すると目に付くのがザネクの振るう剣。
「マジか。ザネク、その剣、ちょっと貸してみてくれないか?」
タイラクは驚きを顔一杯で表現していた。
「止したまえよ。タイラクの馬鹿力で振ったら、いつ折れるか判ったものじゃないからね」
「それなら……」
ザネクは『収納』から別の剣を取り出した。
「この試作品みたいな剣なら折れても大丈夫だから使ってくれ」
タイラクの腕力で下手な場所に叩き付けられればいくら新しい特注品の剣でも折れかねないとはフヨヨンでなくても思うところだ。だがルキアスが『捏ね』て成形しただけの剣なら折れてもまたルキアスが直せる。試しに使うには最適だろう。
「試作品?」
「ああ。結果的にだけどな」
「ほんとは形だけの筈だったんだよね」
「ほう」
タイラクは剣を受け取った剣先を見る。下手な鍛冶屋が半端仕事をしたなまくらにしか見えない剣だ。
そして幾度か単独で魔物と戦った。
「何でこれで切れるんだ? 意味判らん」
「ちょっとボクにも貸してくれたまえよ」
タイラクから剣を受け取ると、今度はフヨヨンが幾度か単独で戦った。
「少し魔力が吸われる感覚があるね。恐らくこれは一種の付与なんだよ。『捏ね』るとアダマントだけでなく鋼鉄にも魔力が付与されるんだろうね。そしてそれは特性を強化するように働くんだ。例えば……、あ、ちょうど魔物が来たね。あれで試そう」
フヨヨンへ向かって来る二体の魔物に剣を振るう。
「こうやればこう切れるし、こうやれば切れずに弾き飛ばすのさ」
フヨヨンは一体目を真っ二つにすると、二体目は壁へと弾き飛ばした。一撃で仕留めたのは変わらない。
「こうこう言うだけじゃ判らねぇよ!」
フヨヨンの説明のアバウトさにタイラクもちょいおこである。
「つまりだね。切る気で振れば切れるし、弾き飛ばす気で振れば弾き飛ばすんだよ」
「気持ちでどうにかなるものなのか?」
「気持ちが無意識に魔力を動かすのさ。切ろうとしたら魔力が刃になって、弾き飛ばすなら棍棒みたいになる感じだね。欠点があるとするなら魔法が効かない相手には切れ味が悪くなる可能性があることかな」
ここでフヨヨンは肩を竦めた。
「しかしうっかりしてたね。もっと早く気付くだけのヒントはあった筈なのにね。『捏ね』たアダマントで武器を作っていたらベクロテでも階層を更新できたと思わないかい?」
「確かにそうだな。何なら挑戦してみるか?」
「いや、止めておこう。ルキアス君の話からすると階層を更新しない方が良さそうだからね。こう考えるとうっかりしてたのはむしろ良かったのかも知れないね。ダンジョンの主に本気を出されても困ったことになっただろうからね」
「まあ、無理に更新することもないか。だがベクロテには行くぞ。アダマントの調達をしなきゃな」
「確かにそうだね」
ルキアスが口を挟む暇も無いままベクロテに行くこととなった。
入口を入って直ぐ、先日の探索者パーティーが先日と同じ場所で狩りをしているのを目にしたが、相手もチラッと目を向けて来ただけで特には何も無かった。揉め事に発展することが無さそうで、ホッと一安心のルキアスだ。
魔物を狩る時にはルキアスやシャルウィが初撃を放ち、ザネクも前に出て魔物と対峙する。
すると目に付くのがザネクの振るう剣。
「マジか。ザネク、その剣、ちょっと貸してみてくれないか?」
タイラクは驚きを顔一杯で表現していた。
「止したまえよ。タイラクの馬鹿力で振ったら、いつ折れるか判ったものじゃないからね」
「それなら……」
ザネクは『収納』から別の剣を取り出した。
「この試作品みたいな剣なら折れても大丈夫だから使ってくれ」
タイラクの腕力で下手な場所に叩き付けられればいくら新しい特注品の剣でも折れかねないとはフヨヨンでなくても思うところだ。だがルキアスが『捏ね』て成形しただけの剣なら折れてもまたルキアスが直せる。試しに使うには最適だろう。
「試作品?」
「ああ。結果的にだけどな」
「ほんとは形だけの筈だったんだよね」
「ほう」
タイラクは剣を受け取った剣先を見る。下手な鍛冶屋が半端仕事をしたなまくらにしか見えない剣だ。
そして幾度か単独で魔物と戦った。
「何でこれで切れるんだ? 意味判らん」
「ちょっとボクにも貸してくれたまえよ」
タイラクから剣を受け取ると、今度はフヨヨンが幾度か単独で戦った。
「少し魔力が吸われる感覚があるね。恐らくこれは一種の付与なんだよ。『捏ね』るとアダマントだけでなく鋼鉄にも魔力が付与されるんだろうね。そしてそれは特性を強化するように働くんだ。例えば……、あ、ちょうど魔物が来たね。あれで試そう」
フヨヨンへ向かって来る二体の魔物に剣を振るう。
「こうやればこう切れるし、こうやれば切れずに弾き飛ばすのさ」
フヨヨンは一体目を真っ二つにすると、二体目は壁へと弾き飛ばした。一撃で仕留めたのは変わらない。
「こうこう言うだけじゃ判らねぇよ!」
フヨヨンの説明のアバウトさにタイラクもちょいおこである。
「つまりだね。切る気で振れば切れるし、弾き飛ばす気で振れば弾き飛ばすんだよ」
「気持ちでどうにかなるものなのか?」
「気持ちが無意識に魔力を動かすのさ。切ろうとしたら魔力が刃になって、弾き飛ばすなら棍棒みたいになる感じだね。欠点があるとするなら魔法が効かない相手には切れ味が悪くなる可能性があることかな」
ここでフヨヨンは肩を竦めた。
「しかしうっかりしてたね。もっと早く気付くだけのヒントはあった筈なのにね。『捏ね』たアダマントで武器を作っていたらベクロテでも階層を更新できたと思わないかい?」
「確かにそうだな。何なら挑戦してみるか?」
「いや、止めておこう。ルキアス君の話からすると階層を更新しない方が良さそうだからね。こう考えるとうっかりしてたのはむしろ良かったのかも知れないね。ダンジョンの主に本気を出されても困ったことになっただろうからね」
「まあ、無理に更新することもないか。だがベクロテには行くぞ。アダマントの調達をしなきゃな」
「確かにそうだね」
ルキアスが口を挟む暇も無いままベクロテに行くこととなった。
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