533 / 627
533 折れたのを
しおりを挟む
「ザネク、ちょっとこの剣を使ってみてくれる?」
「この剣は?」
「この前タイラクさんが折った剣を修理してみたんだ。ちょこっと短くなったけど、使えるかな? って」
「折れたのを修理ね……」
ザネクは矯めつ眇めつ剣を検分する。剣の肌には凸凹した部分が見える。
「確かにおかしなムラがあるな」
ザネクは一つ頷いて、剣を数度素振りする。
「いきなり実戦は危なっかしいからルキアスの『傘』で試させてくれ」
ルキアスは頷いて横に向けて『傘』を差した。
「いいよ」
「おう」
ザネクは十数回斬り付ける。そして然る後に刃先を検分する。
「大丈夫そうだ。本番行ってみるか」
そして魔物を一体倒す度に刃先を検分して幾度か目。
「全然大丈夫だな。なあ、ルキアス? もしかして剣を一から作れたりしないか?」
「?」
ルキアスが首を傾げると、ザネクは腰に提げたままの使い慣れた剣を叩いてみせる。
「この剣も悪くはないが出来合いの品だから使い勝手もそこそこなんだよ。今なら金もあることだし、そろそろオーダーメイドで作ろうと思う訳だ。でも使い勝手を良くするには試作を繰り返さなきゃならないだろ? それを鍛冶屋に頼んだんじゃ時間がどんだけ必要か判ったもんじゃなくてな」
「なるほど、そう言うことなら力になるよ」
「サンキュー」
「じゃあ、その折れてた剣を使って色々作ってみるよ」
「いや、もっと長いのも試してみたいから、これじゃ無理だろ?」
「二、三度保てばいいでしょ? それなら形を整えるだけだから無理ってことはないよ。その剣をちょっと貸して」
ルキアスはザネクから剣を受け取って継ぎ目付近を持つと、『捏ね』て引き千切った。
「気持ち悪っ!」
シャルウィは両腕を摩りながら足踏みをした。ルキアスがジトッとした目で見やれば掠れた口笛を吹いて素知らぬ振りをする。しかしチラッとルキアスを見やると小さく溜め息を吐いた。
「……人の手じゃ変形する筈のない鉄が変形するのを見たらぞわぞわするのよ」
「なら、シャルウィは見ないようにしてて」
「……怖いもの見たさってあるじゃない?」
「「……」」
ルキアスはひとまずシャルウィのことは置いといて、千切った剣を床に並べる。
「ザネク、どのくらい長くする」
「このくらいだな」
ザネクは指を広げたくらいの隙間を空けて剣を並べ直した。
ルキアスは在庫しているスクラップの剣を取り出し、先の隙間と長さを合わせて千切る。そして『捏ね』て繋げた。
「どうかな?」
ザネクはこのテスト用の剣を振ってみる。身体が若干泳ぎ気味だ。
「少し振り回される感覚があるな」
「もう少し短いかい方がいいのかな?」
「頼む」
剣の長さを伸ばす前と伸ばした後の中間くらいに調整すると、振り心地が普段使いの剣より良くなったようだ。
改めて剣の長さを比べてみると、普段使いの剣はテスト用の剣の伸ばす前より短かった。
「もうちょっと短くしてみようか?」
「……そうだな」
そうしてもう少し短くすると、もう少し振り心地が良くなった様子。
しかしこれで終わった訳ではなく、太さなど色々と調整する部分はある。
剣の幅を狭くした時には重量バランスが悪くなってまた長くしたりもし、結局ルキアスとザネクは日がな一日剣の調整を続けた。そしてシャルウィは腕を摩りながらもずっとその様子を見ていたのだった。
「この剣は?」
「この前タイラクさんが折った剣を修理してみたんだ。ちょこっと短くなったけど、使えるかな? って」
「折れたのを修理ね……」
ザネクは矯めつ眇めつ剣を検分する。剣の肌には凸凹した部分が見える。
「確かにおかしなムラがあるな」
ザネクは一つ頷いて、剣を数度素振りする。
「いきなり実戦は危なっかしいからルキアスの『傘』で試させてくれ」
ルキアスは頷いて横に向けて『傘』を差した。
「いいよ」
「おう」
ザネクは十数回斬り付ける。そして然る後に刃先を検分する。
「大丈夫そうだ。本番行ってみるか」
そして魔物を一体倒す度に刃先を検分して幾度か目。
「全然大丈夫だな。なあ、ルキアス? もしかして剣を一から作れたりしないか?」
「?」
ルキアスが首を傾げると、ザネクは腰に提げたままの使い慣れた剣を叩いてみせる。
「この剣も悪くはないが出来合いの品だから使い勝手もそこそこなんだよ。今なら金もあることだし、そろそろオーダーメイドで作ろうと思う訳だ。でも使い勝手を良くするには試作を繰り返さなきゃならないだろ? それを鍛冶屋に頼んだんじゃ時間がどんだけ必要か判ったもんじゃなくてな」
「なるほど、そう言うことなら力になるよ」
「サンキュー」
「じゃあ、その折れてた剣を使って色々作ってみるよ」
「いや、もっと長いのも試してみたいから、これじゃ無理だろ?」
「二、三度保てばいいでしょ? それなら形を整えるだけだから無理ってことはないよ。その剣をちょっと貸して」
ルキアスはザネクから剣を受け取って継ぎ目付近を持つと、『捏ね』て引き千切った。
「気持ち悪っ!」
シャルウィは両腕を摩りながら足踏みをした。ルキアスがジトッとした目で見やれば掠れた口笛を吹いて素知らぬ振りをする。しかしチラッとルキアスを見やると小さく溜め息を吐いた。
「……人の手じゃ変形する筈のない鉄が変形するのを見たらぞわぞわするのよ」
「なら、シャルウィは見ないようにしてて」
「……怖いもの見たさってあるじゃない?」
「「……」」
ルキアスはひとまずシャルウィのことは置いといて、千切った剣を床に並べる。
「ザネク、どのくらい長くする」
「このくらいだな」
ザネクは指を広げたくらいの隙間を空けて剣を並べ直した。
ルキアスは在庫しているスクラップの剣を取り出し、先の隙間と長さを合わせて千切る。そして『捏ね』て繋げた。
「どうかな?」
ザネクはこのテスト用の剣を振ってみる。身体が若干泳ぎ気味だ。
「少し振り回される感覚があるな」
「もう少し短いかい方がいいのかな?」
「頼む」
剣の長さを伸ばす前と伸ばした後の中間くらいに調整すると、振り心地が普段使いの剣より良くなったようだ。
改めて剣の長さを比べてみると、普段使いの剣はテスト用の剣の伸ばす前より短かった。
「もうちょっと短くしてみようか?」
「……そうだな」
そうしてもう少し短くすると、もう少し振り心地が良くなった様子。
しかしこれで終わった訳ではなく、太さなど色々と調整する部分はある。
剣の幅を狭くした時には重量バランスが悪くなってまた長くしたりもし、結局ルキアスとザネクは日がな一日剣の調整を続けた。そしてシャルウィは腕を摩りながらもずっとその様子を見ていたのだった。
2
お気に入りに追加
823
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる