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522 干拓
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翌朝から干拓が始まった。
工事に当たるのはキルシルセッカの手配した職人のみで、ラナファーベからは人員が出ていない。キルシルセッカは「余計な話し合いが少なくて助かるよ」と笑うが、少しだけ経緯を聞いていたルキアスにはラナファーベから押し付けられたように感じられた。
工事開始前にルキアスはちょっとした作業を頼まれた。職人達を各人の担当箇所に送り届ける役だ。通常なら船を使うところらしいが、危険なピーラの生息域でもあり、時間の節約の意味もあっての依頼である。
そうして全ての職人がルキアスの『傘』で送り届けられ、配置に着いたところで開始の合図が空に煌めいた。『光魔法』だ。
続けてダンジョンを中心とした円を描いて光の線が走る。ここが草地ならダンジョンから歩いて一五分くらいの距離だろう。三重の円となっていて、堤防が構築される場所を示している。
また空に合図が煌めく。
すると『水魔法』の使い手一二人が一斉に魔法を発動して三重の円の最も外の線まで水を押しやった。
「すっご……」
シャルウィが感嘆の声を上げる。同じ『水魔法』の使い手だから余計にその凄さが判るのかも知れない。
光の円の外へと水が押しやられると、すかさず次の合図が空に煌めく。
ドーズを始めとした『土魔法』の使い手が内側二つの光の円に合わせ、元の水面から上に人の背丈ほどの高さで堤防を構築する。続けて『硬化』で堤防を固める。
『硬化』まで終えると『水魔法』の使い手が魔法解除し、職人達はダンジョン前に引き上げた。
「俺達は一旦休憩だ」
ドーズは地面に座り込みながら言った。他の『土魔法』や『水魔法』の使い手も各々座り込んでいる。
「その間は儂らの出番だ。まあ、炎滅の魔女に比べりゃ大したもんじゃないがな」
ポルクスは肩を竦めながら言った。メイナーダが見ている前ではやり難いのだろう。それでも職務を全うするべく『火魔法』の使い手達に指示を出し、自らも持ち場に着いて堤防の内側を乾かして行く。
だが干拓地は思いの外深みが多かったようで、水が残っている場所も多く、乾かすのに難航している。
「予想はしてましたけど、随分深い場所がありますよね」
「ちーと誤算だな」
「?」
「ここまで見てたんだから判るだろ? 土砂は増えやしねぇ。堤防もまだまだ高さが足りねぇから、もっと土砂が必要だ。それでどうなるかっつーと、もっと干拓地の地面が抉れる」
「まさかその底に家を建てるなんてことは……」
いつ水に沈むか判らない場所に住むのは避けたいルキアスである。
「無い無い。この後堤防を三階建ての家くらいまで高くする。その後は地上二階くらいの高さで地面を造るんだ。言ってみりゃ、巨大な橋を堤防の内側に造るようなもんだな。家を建てるのはその地面の上だ」
「おお……」
ルキアスはそこまで大掛かりとは思っていなかったので感嘆した。
「でもその地面の下って空いたままになったりします?」
「当分はな。一〇〇年くらいかも知れねぇが」
追々埋めるらしい。しかし随分のんびりのようだ。
「それ、当分じゃありません!」
ルキアスが顰めっ面をすると、ドーズは愉快そうに笑った。
休憩を終えたドーズを始めとした『土魔法』の使い手達は工事を再開して堤防を高くした。
翌日には『水魔法』の使い手が堤防付近から水を退かせて『火魔法』の使い手が堤防に焼きを入れて強化する。
更に翌日からは「地上」の建築が始まった。
一方、ルキアス達は砲台をキルシルセッカに譲渡。管理も任せて一旦ダンジョンから完全に手を引いた。これに伴ってフヨヨンとタイラクは一時的にベクロテへと帰還する。
そうして一ヶ月後に「地上」も完成した。
この時点で唯一建てられている建物は役所を兼ねた探索者組合だった。
工事に当たるのはキルシルセッカの手配した職人のみで、ラナファーベからは人員が出ていない。キルシルセッカは「余計な話し合いが少なくて助かるよ」と笑うが、少しだけ経緯を聞いていたルキアスにはラナファーベから押し付けられたように感じられた。
工事開始前にルキアスはちょっとした作業を頼まれた。職人達を各人の担当箇所に送り届ける役だ。通常なら船を使うところらしいが、危険なピーラの生息域でもあり、時間の節約の意味もあっての依頼である。
そうして全ての職人がルキアスの『傘』で送り届けられ、配置に着いたところで開始の合図が空に煌めいた。『光魔法』だ。
続けてダンジョンを中心とした円を描いて光の線が走る。ここが草地ならダンジョンから歩いて一五分くらいの距離だろう。三重の円となっていて、堤防が構築される場所を示している。
また空に合図が煌めく。
すると『水魔法』の使い手一二人が一斉に魔法を発動して三重の円の最も外の線まで水を押しやった。
「すっご……」
シャルウィが感嘆の声を上げる。同じ『水魔法』の使い手だから余計にその凄さが判るのかも知れない。
光の円の外へと水が押しやられると、すかさず次の合図が空に煌めく。
ドーズを始めとした『土魔法』の使い手が内側二つの光の円に合わせ、元の水面から上に人の背丈ほどの高さで堤防を構築する。続けて『硬化』で堤防を固める。
『硬化』まで終えると『水魔法』の使い手が魔法解除し、職人達はダンジョン前に引き上げた。
「俺達は一旦休憩だ」
ドーズは地面に座り込みながら言った。他の『土魔法』や『水魔法』の使い手も各々座り込んでいる。
「その間は儂らの出番だ。まあ、炎滅の魔女に比べりゃ大したもんじゃないがな」
ポルクスは肩を竦めながら言った。メイナーダが見ている前ではやり難いのだろう。それでも職務を全うするべく『火魔法』の使い手達に指示を出し、自らも持ち場に着いて堤防の内側を乾かして行く。
だが干拓地は思いの外深みが多かったようで、水が残っている場所も多く、乾かすのに難航している。
「予想はしてましたけど、随分深い場所がありますよね」
「ちーと誤算だな」
「?」
「ここまで見てたんだから判るだろ? 土砂は増えやしねぇ。堤防もまだまだ高さが足りねぇから、もっと土砂が必要だ。それでどうなるかっつーと、もっと干拓地の地面が抉れる」
「まさかその底に家を建てるなんてことは……」
いつ水に沈むか判らない場所に住むのは避けたいルキアスである。
「無い無い。この後堤防を三階建ての家くらいまで高くする。その後は地上二階くらいの高さで地面を造るんだ。言ってみりゃ、巨大な橋を堤防の内側に造るようなもんだな。家を建てるのはその地面の上だ」
「おお……」
ルキアスはそこまで大掛かりとは思っていなかったので感嘆した。
「でもその地面の下って空いたままになったりします?」
「当分はな。一〇〇年くらいかも知れねぇが」
追々埋めるらしい。しかし随分のんびりのようだ。
「それ、当分じゃありません!」
ルキアスが顰めっ面をすると、ドーズは愉快そうに笑った。
休憩を終えたドーズを始めとした『土魔法』の使い手達は工事を再開して堤防を高くした。
翌日には『水魔法』の使い手が堤防付近から水を退かせて『火魔法』の使い手が堤防に焼きを入れて強化する。
更に翌日からは「地上」の建築が始まった。
一方、ルキアス達は砲台をキルシルセッカに譲渡。管理も任せて一旦ダンジョンから完全に手を引いた。これに伴ってフヨヨンとタイラクは一時的にベクロテへと帰還する。
そうして一ヶ月後に「地上」も完成した。
この時点で唯一建てられている建物は役所を兼ねた探索者組合だった。
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