生活魔法は万能です

浜柔

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 ルキアス達は怪魚を四匹狩ったところで日も傾いたため、ダブラ村に帰って一夜を過ごす。
 翌、釣り二日目にははっきり見えたことがあった。

「怪魚、大きくなってるわよね?」
「ソウデスネ……」

 怪魚は餌にした魔物やメイナーダの魔法で焼き魚になった同族を食らうことで更に進化したらしい。ルキアスはそんな怪魚を前に現実逃避したくなった。
 しかし今は一匹ずつ屠り続けるしかない。

「いつまで餌を狩り続けりゃいいんだ?」
「あたし昨日からもう腕がパンパンなんだけど!」

 第一階層に降りてまた餌となる魔物のお代わりを求めるルキアスにタイラクとシャルウィはぼやいた。

「後何回か分は必要かと……」

 メイナーダが『索敵』によって複数の怪魚の反応を確認していて、ルキアスはそれを聞いている。

「マジか」
「もう腕が太くなっちゃう!」

 シャルウィはマッチョになるのを避けたいらしいが、もしも深層を目指すならこの程度で音を上げて居られなくなるに違いない。

「しかし少しやり方を考えた方がよさそうだね」

 フヨヨンは狩った魔物を人の手で『傘』に積み込む非効率を問題にした。

「でもどうやったら?」
「そうだね……。ルキアス君、『傘』を可能な限り薄く広く差してみてくれたまえよ」

 餌箱としての『傘』は薄めに差してはいるが、積み込んだ後も考慮して積み込み時はシャルウィの膝上くらいに縁がある。これを更に薄くしようと言うのだ。
 ルキアスは要望に応え、足首の上くらいにまで薄く差した。広さはダンジョンの入口を通れるギリギリを攻めた。

「なかなかいいね。じゃあ、魔物が一箇所しか通れないように砲台を調整するよ。ルキアス君はその先に『傘』を移動させてくれたまえよ。タイラクはその『傘』の上で魔物を倒してくれたまえよ」

 フヨヨンは魔物を通すルートを指し示し、砲台の向きを調整しつつルキアスに『傘』の移動先を示す。
 『傘』が所定の位置に着くと、タイラクが跳び乗った。
 準備を終えて『傘』へのルートを空けると、魔物は狙い通りに『傘』へと向かい、ルキアス達を目指して『傘』を乗り越えて進もうとする。
 これをタイラクが『傘』の上で迎え撃つ。
 『傘』の上だから骸となった魔物は『傘』の上に積み重なる。積み込み作業が格段に減った瞬間だ。『傘』から転がり落ちたもの、事前に狩ったものの積み込みはどうしても残されている。

「考えて見りゃ、俺だけ全く楽になってなくないか?」
「気のせいさ!」

 タイラクが納得行かない顔で問うと、フヨヨンは良い笑顔で答えた。誤魔化す気満々だと誰にも察せられた。
 そうして餌が集まったところでまた釣りだ。ルキアスが慎重に『傘』を地上に移動させる。途中で餌が幾つかぽろりと落ちてもこの段階ではもう無視する。さすがに拾っていられない。地上に出たらダンジョン入口正面の水域上空へと『傘』を移動させる。この水域にばかり餌を配置したからか、どうやらこの付近に怪魚が集まっている様子なのだ。
 そしてまた怪魚が一匹葬り去られた。
 しかしまだ怪魚は尽きていない。
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