514 / 627
514 砲台が止まってる
しおりを挟む
ルキアスはまたダンジョンに入るべく『傘』を素速く降下させる。長時間低空に留まるのは危険だ。
ところが入口前に達すると、入口の中から泥の塊が襲い掛かって来た。
「うわおえ!」
ルキアスは奇声を上げながらも『傘』を上昇させ、『傘』の底部に衝撃を受けながらも間一髪難を逃れた。
「ごめんよ。怪魚に気を取られすぎてしまってね」
フヨヨンがタイラクと共に飛び降りて魔物が外に出るのを防ぐ。今ダンジョンから出て来るレベル帯の魔物の対処だけなら片手間で済んでしまう様子。
「しかしこれで砲台が止まってるのがはっきりしたね」
水で流されたか故障したか、見てみないことには判らない。しかしいずれにしても砲台を再起動させるには手間が掛かる。
入口前が落ち着いたところでルキアスが『傘』を地上すれすれまで下ろす。
「でも、修理しても波が来る度に壊れるんじゃ、やってられませんよね?」
怪魚を仕留めるには水上に釣り出す以外に無い。しかし怪魚が跳び上がればその度に津波が起きるのだ。
「問題はそこだね。何としても波がダンジョンに浸入するのを阻まなければならないね」
「大発生から丸一日経つのを待てばいいんじゃないか? それで魔物が出るのが収りゃ、外で待機すりゃいいだろ」
「その可能性は無くはないけど、それってベクロテでの常識だからね。ここでもそうかは判らないさ。何ならもうとっくに丸一日過ぎてる可能性だってあるよ」
ダブラ村に魔物が到達してからならまだ丸一日経っていないが、到達したのが最初の魔物であるとは限らないのだ。何時間も経ってから初めて到達した可能性だってある。もしそうなら既に丸一日経っていることになる。
「そっか。ついついベクロテの常識で考えてたな」
「確実に進めるには波を防ぐ必要がありそうね」
「ダンジョンの魔物を抑えるのにも邪魔になるからなぁ」
魔物と対峙している最中に後背から水に襲われては堪らない。
「水が直接当たらない場所に砲台を置いたらどうでしょう?」
「確実に水が当たらない場所って入口脇の壁際くらいだね。入口から真っ直ぐアクセスできないのは誤射が怖いよ」
照準は魔物にしか向けられないが、魔物との間に入ってしまうなどしたら砲撃に巻き込まれてしまう。
砲台が水に巻き込まれず、砲撃範囲に入らずとも人が砲台まで行ける場所は恐らく在るが、それがどこかは検証が必要になる。今の状況で不確実な事をしている場合ではない。
「だったらこの入口の前に壁を作るしかないわね」
「壁を作っても隙間から水が入るだろ」
シャルウィのどや顔での提案にザネクが突っ込みを入れた。
「隙間を作らなきゃいいじゃない」
「出入りできなくなるぞ?」
「ルキアスとザネクの『傘』なら上さえ開いてればいいでしょ」
タイラクが一つ頷く。
「それも一理だな。ドーズに来て貰うか?」
「どうだろう? 工事予定にある壁ならただでもやってくれると思うけどね」
「ただ……?」
困惑げにしたタイラクは次の瞬間目を見開いた。
「うぉっ! 考えてみりゃ、俺らただ働きじゃねぇか!」
「タイラク、嫌なところに気付いちゃったね。考えてみればボクらが怪魚にただで対処しなきゃならない義理は無かったね」
「あー、でも、早いか遅いかだけでぼくらがすることになるのは変わりないんじゃ?」
「誰かが報酬をくれるのを期待するしかないわね」
ルキアスがどの道やらなくてはならなくなると指摘すれば、メイナーダは白々しく言った。
ところが入口前に達すると、入口の中から泥の塊が襲い掛かって来た。
「うわおえ!」
ルキアスは奇声を上げながらも『傘』を上昇させ、『傘』の底部に衝撃を受けながらも間一髪難を逃れた。
「ごめんよ。怪魚に気を取られすぎてしまってね」
フヨヨンがタイラクと共に飛び降りて魔物が外に出るのを防ぐ。今ダンジョンから出て来るレベル帯の魔物の対処だけなら片手間で済んでしまう様子。
「しかしこれで砲台が止まってるのがはっきりしたね」
水で流されたか故障したか、見てみないことには判らない。しかしいずれにしても砲台を再起動させるには手間が掛かる。
入口前が落ち着いたところでルキアスが『傘』を地上すれすれまで下ろす。
「でも、修理しても波が来る度に壊れるんじゃ、やってられませんよね?」
怪魚を仕留めるには水上に釣り出す以外に無い。しかし怪魚が跳び上がればその度に津波が起きるのだ。
「問題はそこだね。何としても波がダンジョンに浸入するのを阻まなければならないね」
「大発生から丸一日経つのを待てばいいんじゃないか? それで魔物が出るのが収りゃ、外で待機すりゃいいだろ」
「その可能性は無くはないけど、それってベクロテでの常識だからね。ここでもそうかは判らないさ。何ならもうとっくに丸一日過ぎてる可能性だってあるよ」
ダブラ村に魔物が到達してからならまだ丸一日経っていないが、到達したのが最初の魔物であるとは限らないのだ。何時間も経ってから初めて到達した可能性だってある。もしそうなら既に丸一日経っていることになる。
「そっか。ついついベクロテの常識で考えてたな」
「確実に進めるには波を防ぐ必要がありそうね」
「ダンジョンの魔物を抑えるのにも邪魔になるからなぁ」
魔物と対峙している最中に後背から水に襲われては堪らない。
「水が直接当たらない場所に砲台を置いたらどうでしょう?」
「確実に水が当たらない場所って入口脇の壁際くらいだね。入口から真っ直ぐアクセスできないのは誤射が怖いよ」
照準は魔物にしか向けられないが、魔物との間に入ってしまうなどしたら砲撃に巻き込まれてしまう。
砲台が水に巻き込まれず、砲撃範囲に入らずとも人が砲台まで行ける場所は恐らく在るが、それがどこかは検証が必要になる。今の状況で不確実な事をしている場合ではない。
「だったらこの入口の前に壁を作るしかないわね」
「壁を作っても隙間から水が入るだろ」
シャルウィのどや顔での提案にザネクが突っ込みを入れた。
「隙間を作らなきゃいいじゃない」
「出入りできなくなるぞ?」
「ルキアスとザネクの『傘』なら上さえ開いてればいいでしょ」
タイラクが一つ頷く。
「それも一理だな。ドーズに来て貰うか?」
「どうだろう? 工事予定にある壁ならただでもやってくれると思うけどね」
「ただ……?」
困惑げにしたタイラクは次の瞬間目を見開いた。
「うぉっ! 考えてみりゃ、俺らただ働きじゃねぇか!」
「タイラク、嫌なところに気付いちゃったね。考えてみればボクらが怪魚にただで対処しなきゃならない義理は無かったね」
「あー、でも、早いか遅いかだけでぼくらがすることになるのは変わりないんじゃ?」
「誰かが報酬をくれるのを期待するしかないわね」
ルキアスがどの道やらなくてはならなくなると指摘すれば、メイナーダは白々しく言った。
3
お気に入りに追加
980
あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる