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513 小さな幸運
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「きゃっ!」
シャルウィが急上昇の加速に小さな悲鳴を上げて『傘』に倒れ込んだ。
だがこれは小さな幸運だったかも知れない。お陰で全てを丸呑みするかの如き巨大な口を目にしなくて済んだのだ。
ザネクは操作のために自身の『傘』を注視していて正面から迫る口を目撃した。
メイナーダは餌に食らい付く怪魚を仕留めるためにザネクの『傘』の方を見ていて正面から迫る口を目撃した。
タイラクとフヨヨンは周辺の警戒中、ザネクの『傘』とは反対側から迫る口を目撃した。
ルキアスは脱出路を見定めるためにも見ざるを得なかった。
「おい! クラーケンどころか、リザード先生まで一呑みにできるんじゃないか!?」
予想以上の怪魚の大きさに仰天したタイラクが叫ぶが、これはさすがに大袈裟だ。精々丸囓り程度である。あまり変わらないかも知れないが。
「それより今何匹居たかい!?」
「餌に食らい付こうとしたのが二匹よ! こっちに来たのが二匹だから四匹は確実ね!」
「何てこった! そんで、一匹ぐらい仕留められたのか!?」
「全然よ! いきなり目の前に割り込まれたようになったから撃てなかったわ!」
当初の計画は完全に破綻していた。
「そんじゃ、丸々四匹残ってんのか!」
「目視できたのは四匹だけど、『索敵』に引っ掛かるのはそれだけじゃないよ!」
「マジか!」
ルキアスの『傘』が上空に難を逃れるのを追い掛けたかのように激しい水音と巨大な水柱が上がる。
これによって巻き起こるのが津波だ。四つの津波が重なり合うと、ダンジョンの入口を覆い隠す程の高さになった。
「やべぇ。まだあの中に居たら酷ぇ目に遭ったところだぞ」
「今のままだとそうなる可能性は残ったままだよ」
「そんなもん、中に入らなけりゃ……、ところで餌はどうなった?」
タイラクは「入らなければいい」と言い掛けて入らなければならない理由を思い出した。
「食われた。『傘』が割られた感触があったから多分な」
ザネクはその瞬間を目撃したのではないらしい。
「かーっ! 完全に一からやり直しかよ」
「一からどころかマイナスからだね。あの勢いで水が流れ込んだら砲台なんて流されたんじゃないかな」
砲台が泥だらけなら洗い、壊れていたら作り直しが必要だ。、
「そこからか。いっそ外に出るのを食い止めるのを止めるか? 外に出られても魔物はあの怪魚に食われるだろ」
ダンジョンの外に出た魔物が少なく見えるのは怪魚が捕食したからに違いない。
「それは一つの考えだけど、怪魚がいよいよ手が付けられなくなりかねないね」
「地道にやり直すしかねぇか」
皆揃って肩を落とした。
シャルウィが急上昇の加速に小さな悲鳴を上げて『傘』に倒れ込んだ。
だがこれは小さな幸運だったかも知れない。お陰で全てを丸呑みするかの如き巨大な口を目にしなくて済んだのだ。
ザネクは操作のために自身の『傘』を注視していて正面から迫る口を目撃した。
メイナーダは餌に食らい付く怪魚を仕留めるためにザネクの『傘』の方を見ていて正面から迫る口を目撃した。
タイラクとフヨヨンは周辺の警戒中、ザネクの『傘』とは反対側から迫る口を目撃した。
ルキアスは脱出路を見定めるためにも見ざるを得なかった。
「おい! クラーケンどころか、リザード先生まで一呑みにできるんじゃないか!?」
予想以上の怪魚の大きさに仰天したタイラクが叫ぶが、これはさすがに大袈裟だ。精々丸囓り程度である。あまり変わらないかも知れないが。
「それより今何匹居たかい!?」
「餌に食らい付こうとしたのが二匹よ! こっちに来たのが二匹だから四匹は確実ね!」
「何てこった! そんで、一匹ぐらい仕留められたのか!?」
「全然よ! いきなり目の前に割り込まれたようになったから撃てなかったわ!」
当初の計画は完全に破綻していた。
「そんじゃ、丸々四匹残ってんのか!」
「目視できたのは四匹だけど、『索敵』に引っ掛かるのはそれだけじゃないよ!」
「マジか!」
ルキアスの『傘』が上空に難を逃れるのを追い掛けたかのように激しい水音と巨大な水柱が上がる。
これによって巻き起こるのが津波だ。四つの津波が重なり合うと、ダンジョンの入口を覆い隠す程の高さになった。
「やべぇ。まだあの中に居たら酷ぇ目に遭ったところだぞ」
「今のままだとそうなる可能性は残ったままだよ」
「そんなもん、中に入らなけりゃ……、ところで餌はどうなった?」
タイラクは「入らなければいい」と言い掛けて入らなければならない理由を思い出した。
「食われた。『傘』が割られた感触があったから多分な」
ザネクはその瞬間を目撃したのではないらしい。
「かーっ! 完全に一からやり直しかよ」
「一からどころかマイナスからだね。あの勢いで水が流れ込んだら砲台なんて流されたんじゃないかな」
砲台が泥だらけなら洗い、壊れていたら作り直しが必要だ。、
「そこからか。いっそ外に出るのを食い止めるのを止めるか? 外に出られても魔物はあの怪魚に食われるだろ」
ダンジョンの外に出た魔物が少なく見えるのは怪魚が捕食したからに違いない。
「それは一つの考えだけど、怪魚がいよいよ手が付けられなくなりかねないね」
「地道にやり直すしかねぇか」
皆揃って肩を落とした。
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