生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
上 下
512 / 627

512 方法

しおりを挟む
 翌朝早くにルキアス達はダブラ村に帰還した。怪魚に凄まれないよう、いつもより高く飛んでのことだった。
 そして怪魚の対応について話し合うのだが……。

「そいつは請け負えねぇな」

 ドーズは怪魚退治のための水抜きを一言の下に断った。

「ここで命を賭けなくたって、他に仕事はある。危険は冒せねぇよ」

 通常のピーラの危険性なら事前に判っているので織り込み済みだ。ダンジョンから魔物が溢れる可能性も察して然るべきだろう。しかし怪魚となると全くの想定外であった。
 職人にとって怪魚退治は畑違いで、命を賭ける対象ではない。湿地から離れれば怪魚に怯える必要は無いとなれば尚のことだった。
 タイラクも駄目元で打診したのだから無理は言わない。

「しかし別の方法となるとな……」
「釣ってみてはどうかね」

 考え込むタイラクに、ナンソラが提案した。ナンソラも気になって見に来ていて、そのまま話し合いに顔を出していたのだ。

「釣り? あんなでかいのをどうやって?」
「別に陸に引き上げなくとも良かろうて。水の上にさえ出りゃどうとでもなるのではないかね?」
「あ!」

 ルキアスは怪魚が水上を跳ねる光景を思い出した。

「上手く行けば釣れるかも知れません!」

 そして方法を提案をした。




「そんじゃ、手順を整理するぞ」

 タイラクの宣言に一同頷いた。

「俺とフヨヨンで餌を狩る。それを他のみんなでザネクの『傘』に積む。積み終わったらみんなでルキアスの『傘』に乗って釣りだ」

 再び一同頷いた。皆一緒に動くのは最初だから想定外の事態にも対処しやすくするためだ。ルキアスの『傘』に乗って実行するのもその一環だ。安全第一である。
 早速端の方の砲台二基を止め、タイラクとフヨヨンで狩りを始める。メイナーダにやらせてはが損なわれてしまうので二人だけなのだ。
 ザネクが床ギリギリで『傘』を差し、手の空いている皆で狩られた魔物を積み上げる。山盛りになったら砲台を再度稼働させ、ルキアスの『傘』に全員が乗り込んで地上へ。
 地上に出たらダンジョンの上に待機して、ザネクの『傘』を水上に高く上げる。

「上手く掛かってくれりゃいい……」

 タイラクが首尾良く行くのを願う言葉を言い終えるより前に水音が響いた。
 ところがこの瞬間、ルキアスの背筋に悪寒が奔る。

「ルキアス君! 上に飛んで!」

 フヨヨンも何か感じたのだろう。その叫びに弾かれるように、ルキアスは『傘』を急上昇させた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...