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507 壊されてる
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タイラクとフヨヨンが『傘』から飛び降り、周囲に蠢く魔物を討ち倒して人だっただろう肉塊を露わにする。
メイナーダの魔法は火炎渦巻く領域とそれ以外とで明確な境界線があるらしく、人だった肉塊で灰になってしまったのは頭の上に伸ばされていた手だっただろう部分だけだ。
ではこの人が誰かだが、探索者ではなさそうだ。身に着けていた服や靴が探索者が使うようなものではない。ルキアスの余所行きのような品が重視された品だ。恐らくこの人は先日の跳ねっ返りとは別の跳ねっ返りだったのだろう。
「ザネク君、包むだけ頼まれてくれたまえよ」
「うえぇ」
フヨヨンが帆布を差し出すと、ザネクは顔を顰めながらもそれを受け取った。このメンバーで雑作業が必要になればザネクが担当になるのは必然だろう。
タイラク、メイナーダが先行して第一階層に入り、フヨヨンもそれに続く。入口付近は間もなく確保された。
すると状況が露わになる。
「砲台が壊されてるね。そこで死んでるヤツらの仕業のようだね」
砲台の内四基までが機構部が破損し、アダマントの筒やリングが抜き取られている。魔物の仕業であれば不自然だ。そしてここには人だっただろう肉塊が四つ横たわっている。状況的に彼らは魔物が居ない隙を見て砲台からアダマントの窃取を目論み、これに集中するあまり魔物の接近に気付かず襲われたのだろう。
「こっちは終わったぜ」
ザネクが作業を終えて第一階層に入って来た。
「追加で四つやってくれたまえよ」
「うええええぇ」
フヨヨンの差し出す帆布を受け取りながらザネクは呻き声を出した。
「にしても、フヨヨンの予想通りだった臭ぇな」
ダンジョンの中で誰かが死ぬことで魔物が外に溢れ出すとの予想だ。
「そうだね。ダンジョンの中で人が死んだら魔力が一気に高まってしまうんだ。ここは元々魔力が飽和状態だから即大発生に繋がってしまうのさ。多分だけどね」
「んー、まあ、そんな感じだよなぁ。でもよ? 大発生にしては溢れる魔物が少なくないか?」
「理由があるとするなら死んだのが無力な町人だからじゃないかな? その人が内包する魔力の大きさで大発生の規模が変化するんだと思うよ」
「もし深層組の誰かが死んだら手が付けられなくなるのかしら?」
「考えたくねぇ」
「そうだね。これを踏まえると当分の間は誰も死なないように調整が必要かも知れないね。だけど今はそれよりこの丸一日をどう乗り越えるかが問題だよ。前回は砲台を動かすだけで済んだけど、今回はその砲台が壊されてて使えない。アダマントのパーツが無いから修理も今直ぐにはできないんだ」
人が死んだ時に『収納』に入っている物は消失する。アダマントのパーツはここで骸を晒す彼らの『収納』の中だった筈だ。だから作り直しが必要になる。
「徹夜は勘弁して貰いてぇなぁ」
タイラクは憂鬱そうに言った。
メイナーダの魔法は火炎渦巻く領域とそれ以外とで明確な境界線があるらしく、人だった肉塊で灰になってしまったのは頭の上に伸ばされていた手だっただろう部分だけだ。
ではこの人が誰かだが、探索者ではなさそうだ。身に着けていた服や靴が探索者が使うようなものではない。ルキアスの余所行きのような品が重視された品だ。恐らくこの人は先日の跳ねっ返りとは別の跳ねっ返りだったのだろう。
「ザネク君、包むだけ頼まれてくれたまえよ」
「うえぇ」
フヨヨンが帆布を差し出すと、ザネクは顔を顰めながらもそれを受け取った。このメンバーで雑作業が必要になればザネクが担当になるのは必然だろう。
タイラク、メイナーダが先行して第一階層に入り、フヨヨンもそれに続く。入口付近は間もなく確保された。
すると状況が露わになる。
「砲台が壊されてるね。そこで死んでるヤツらの仕業のようだね」
砲台の内四基までが機構部が破損し、アダマントの筒やリングが抜き取られている。魔物の仕業であれば不自然だ。そしてここには人だっただろう肉塊が四つ横たわっている。状況的に彼らは魔物が居ない隙を見て砲台からアダマントの窃取を目論み、これに集中するあまり魔物の接近に気付かず襲われたのだろう。
「こっちは終わったぜ」
ザネクが作業を終えて第一階層に入って来た。
「追加で四つやってくれたまえよ」
「うええええぇ」
フヨヨンの差し出す帆布を受け取りながらザネクは呻き声を出した。
「にしても、フヨヨンの予想通りだった臭ぇな」
ダンジョンの中で誰かが死ぬことで魔物が外に溢れ出すとの予想だ。
「そうだね。ダンジョンの中で人が死んだら魔力が一気に高まってしまうんだ。ここは元々魔力が飽和状態だから即大発生に繋がってしまうのさ。多分だけどね」
「んー、まあ、そんな感じだよなぁ。でもよ? 大発生にしては溢れる魔物が少なくないか?」
「理由があるとするなら死んだのが無力な町人だからじゃないかな? その人が内包する魔力の大きさで大発生の規模が変化するんだと思うよ」
「もし深層組の誰かが死んだら手が付けられなくなるのかしら?」
「考えたくねぇ」
「そうだね。これを踏まえると当分の間は誰も死なないように調整が必要かも知れないね。だけど今はそれよりこの丸一日をどう乗り越えるかが問題だよ。前回は砲台を動かすだけで済んだけど、今回はその砲台が壊されてて使えない。アダマントのパーツが無いから修理も今直ぐにはできないんだ」
人が死んだ時に『収納』に入っている物は消失する。アダマントのパーツはここで骸を晒す彼らの『収納』の中だった筈だ。だから作り直しが必要になる。
「徹夜は勘弁して貰いてぇなぁ」
タイラクは憂鬱そうに言った。
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