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502 棟上げ
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ジェルロは朝の宣言通りに午前中に宿舎の建設許可を貰って来た。ヌワジと言う人物が建てた小屋がここに在るのが示す通り、水辺までダブラ村の範囲だったのだ。
午後からはドーズの順番だ。まずは仮の宿としてドーズが建てた小屋の更に向こうの空き地に大まかな線を引く。一つの建物が一〇に分割されたレイアウト。集合住宅である。
同じ建物をもう三棟建てて職人達の宿舎にすると言う。干拓は一日で一気に済ませるが、その他施設の整備などで魔法を駆使しても一ヶ月は掛かる。この間に職人が寝泊まりする場所が必要なのだ。
大体の形に線を引き終えたら正確な長さを計り、水平・平行・直角を出しながら糸を張る。この作業にはルキアス、ザネク、それにフヨヨンも手を貸した。フヨヨンは畑違いのものでも物作りには興味を持つようで、意外にハイテンションであった。
午後の時間だけで出来たのはここまでだ。
翌日はいよいよ棟上げ。ドーズは右手を地面に、左手を糸に添えて『土魔法』を発動させる。張った糸に沿って地面が垂直に隆起する。だが隆起部分は地面の凸凹そのままで水平が出ていない。
(あれ?)
ルキアスは首を傾げたが、それは取り越し苦労だった。隆起は糸の高さで水平を出しながら一旦止まった。そして全箇所が糸の高さで揃ったところで一気に二階建ての高さへと隆起、更にアーチを描いて屋根を形作る。
「ふいー……」
ドーズが額を拭いながら息を吐いた。
「もう完成ですか?」
「まだだ。見てみろ」
ルキアスがとことこ歩いて建物の裏と表を見てみれば、絶対的に足りないものがあった。
「入口が無い?」
開口部が全く無く、入ろうにも入れない。
「そうだ。入口なんかは今から作る」
ドーズはまた糸を張る。湿地から見れば裏側の面にタイラクの背より少し高い位置で横に一本だ。
また、木材を四角く組んで重りの付いた糸を二本垂らす。それを横糸を張った壁に上部が水平になるよう立て掛け、横糸と垂らした二本の縦糸とで囲まれた部分を上部がアーチを描くようにくり抜く。
ただこの一階部分は居住エリアではなかった。
「この階は大雨で水没する可能性があるからな。倉庫代わりにするのが精々だ」
ドーズの解説が入った。そしてこれを一〇に分けられた区画全てに繰り返す。
続けて、ドーズは中に入って正面に二歩の辺りで床をくり抜いて下り階段を造り、降りて行く。
見学していたルキアスは違和感に気付いた。
「空洞?」
階段の下は奇妙にも空洞だった。
「壁や屋根に使う分はどっかから持って来なきゃならんからな。それがこの地下だ」
建物の真下の土を壁や屋根に使い、これで出来た空洞を利用して地下室を作るのだ。
ただ、ここは湿地の畔だから利用するのは危険だ。いつ水没するか判らない。だからと言って密閉して放置するような手抜きはできない。むしろいつもより念入りに手当てしなければ建物が崩壊しかねない。
ドーズは『硬化』で地下部分を固める。この場合の『硬化』は言うなれば壁をレンガに見立てた低温焼成である。
これを一〇部屋繰り返した。
午後からはドーズの順番だ。まずは仮の宿としてドーズが建てた小屋の更に向こうの空き地に大まかな線を引く。一つの建物が一〇に分割されたレイアウト。集合住宅である。
同じ建物をもう三棟建てて職人達の宿舎にすると言う。干拓は一日で一気に済ませるが、その他施設の整備などで魔法を駆使しても一ヶ月は掛かる。この間に職人が寝泊まりする場所が必要なのだ。
大体の形に線を引き終えたら正確な長さを計り、水平・平行・直角を出しながら糸を張る。この作業にはルキアス、ザネク、それにフヨヨンも手を貸した。フヨヨンは畑違いのものでも物作りには興味を持つようで、意外にハイテンションであった。
午後の時間だけで出来たのはここまでだ。
翌日はいよいよ棟上げ。ドーズは右手を地面に、左手を糸に添えて『土魔法』を発動させる。張った糸に沿って地面が垂直に隆起する。だが隆起部分は地面の凸凹そのままで水平が出ていない。
(あれ?)
ルキアスは首を傾げたが、それは取り越し苦労だった。隆起は糸の高さで水平を出しながら一旦止まった。そして全箇所が糸の高さで揃ったところで一気に二階建ての高さへと隆起、更にアーチを描いて屋根を形作る。
「ふいー……」
ドーズが額を拭いながら息を吐いた。
「もう完成ですか?」
「まだだ。見てみろ」
ルキアスがとことこ歩いて建物の裏と表を見てみれば、絶対的に足りないものがあった。
「入口が無い?」
開口部が全く無く、入ろうにも入れない。
「そうだ。入口なんかは今から作る」
ドーズはまた糸を張る。湿地から見れば裏側の面にタイラクの背より少し高い位置で横に一本だ。
また、木材を四角く組んで重りの付いた糸を二本垂らす。それを横糸を張った壁に上部が水平になるよう立て掛け、横糸と垂らした二本の縦糸とで囲まれた部分を上部がアーチを描くようにくり抜く。
ただこの一階部分は居住エリアではなかった。
「この階は大雨で水没する可能性があるからな。倉庫代わりにするのが精々だ」
ドーズの解説が入った。そしてこれを一〇に分けられた区画全てに繰り返す。
続けて、ドーズは中に入って正面に二歩の辺りで床をくり抜いて下り階段を造り、降りて行く。
見学していたルキアスは違和感に気付いた。
「空洞?」
階段の下は奇妙にも空洞だった。
「壁や屋根に使う分はどっかから持って来なきゃならんからな。それがこの地下だ」
建物の真下の土を壁や屋根に使い、これで出来た空洞を利用して地下室を作るのだ。
ただ、ここは湿地の畔だから利用するのは危険だ。いつ水没するか判らない。だからと言って密閉して放置するような手抜きはできない。むしろいつもより念入りに手当てしなければ建物が崩壊しかねない。
ドーズは『硬化』で地下部分を固める。この場合の『硬化』は言うなれば壁をレンガに見立てた低温焼成である。
これを一〇部屋繰り返した。
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