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499 ここまで来たら
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「おいおい、俺は犯罪者の片棒を担ぐ気はねぇぞ」
「人聞きが悪いね、タイラクは」
ジェルロは目隠しをされていても浮遊感などが気になるのか暴れた。手足を縛ってなければ大惨事。縛っていても大惨事になりかねなかったので、フヨヨンとドーズが常に押さえ付けていた。そして降下中には特に酷く暴れた。
たまたま外に居たタイラクが出迎えたのはルキアスが地面すれすれで『傘』を止めたところだ。
ドーズがジェルロを抱えて飛び降りる。ところがジェルロは拘束を解かれても暫く叫び続けた。
「落ち着いたか?」
「……面目次第もございません」
ジェルロは「大丈夫」と断言しながら大丈夫じゃなかったことに消沈する。
「しかしこれじゃ役割の半分もこなせねぇんじゃねぇか?」
ドーズは呆れ声だ。
「別に飛ばなくても大丈夫なのでは?」
「社長にお伺い立てなきゃならねぇ事案があったら大丈夫じゃねぇな」
ルキアスの『傘』に乗って移動できるなら、折衝相手との交渉で中一日あれば直接キルシルセッカとの打ち合わせが可能だ。しかし『傘』に乗れなければそれも不可能となる。
「つっても、ここまで来たらなるようにしかならねぇな」
「あら、やけに賑やかだと思ったらドーズじゃない。お久しぶりね」
メイナーダを始め、小屋の中に居たメンバーが様子を見に出て来ていた。
メイナーダはひょいと飛び降りる。ザネクは一旦床の端にぶら下がってから飛び降りる。シャルウィは梯子を使った。
ドーズに驚く様子は無い。既に移動中にここに滞在するメンバーが誰かを聞いていたからだ。
「おう。久しいな。その子はメイナーダの娘か?」
「そうよ。ユアナセラ……、ユアって言うの」
ユアは無表情で無言のまま右手を上げた。
「ごめんなさいね。この子ったら人見知りだから」
「構わねぇさ。女の子なら人見知りくらいの方が変なヤツに付いて行ったりしねぇだろ」
「そうね……」
メイナーダはちらっとルキアスを見た。
「その通りよね!」
ドーズは小さく首を傾げたがそれ以上は話を続けなかった。
「さて、わしは先に今晩の宿を建てるとするか」
ドーズはルキアス達が泊まる小屋から少し離れる。
そして地面に手を着いて何やら呪文を唱えると、地面から壁がずずずっと四角く迫り上がり、人の背丈を超える辺りまで真っ直ぐ伸びた後、アーチを描くように曲がって屋根を形作った。
ドーズは続けて『硬化』を壁に下から順に掛けて行く。一通り終わるまでにそう時間は掛からなかった。
「今夜一晩ならこれで十分だろ」
ドーズが満足げに頷く。
ルキアスは作業の間中、ぽかんと見守るばかりであった。
「人聞きが悪いね、タイラクは」
ジェルロは目隠しをされていても浮遊感などが気になるのか暴れた。手足を縛ってなければ大惨事。縛っていても大惨事になりかねなかったので、フヨヨンとドーズが常に押さえ付けていた。そして降下中には特に酷く暴れた。
たまたま外に居たタイラクが出迎えたのはルキアスが地面すれすれで『傘』を止めたところだ。
ドーズがジェルロを抱えて飛び降りる。ところがジェルロは拘束を解かれても暫く叫び続けた。
「落ち着いたか?」
「……面目次第もございません」
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「しかしこれじゃ役割の半分もこなせねぇんじゃねぇか?」
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「別に飛ばなくても大丈夫なのでは?」
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「つっても、ここまで来たらなるようにしかならねぇな」
「あら、やけに賑やかだと思ったらドーズじゃない。お久しぶりね」
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「構わねぇさ。女の子なら人見知りくらいの方が変なヤツに付いて行ったりしねぇだろ」
「そうね……」
メイナーダはちらっとルキアスを見た。
「その通りよね!」
ドーズは小さく首を傾げたがそれ以上は話を続けなかった。
「さて、わしは先に今晩の宿を建てるとするか」
ドーズはルキアス達が泊まる小屋から少し離れる。
そして地面に手を着いて何やら呪文を唱えると、地面から壁がずずずっと四角く迫り上がり、人の背丈を超える辺りまで真っ直ぐ伸びた後、アーチを描くように曲がって屋根を形作った。
ドーズは続けて『硬化』を壁に下から順に掛けて行く。一通り終わるまでにそう時間は掛からなかった。
「今夜一晩ならこれで十分だろ」
ドーズが満足げに頷く。
ルキアスは作業の間中、ぽかんと見守るばかりであった。
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