生活魔法は万能です

浜柔

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497 運んで欲しい

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 三日後。ルキアスはまたベクロテに居た。
 フヨヨンの出迎えと、キルシルセッカとの面談が目的だ。キルシルセッカとは前回会った時に約束していた。

「ルキアス君には職人を運んで欲しいんだ。勿論これは仕事としてだよ」

 つまり報酬が支払われる。
 これをルキアスが断る理由は無いので快諾する。

「早速今日、二人運んで欲しい」
「どこまででしょう?」

 フヨヨンを送り届ける都合もあるので、今日このまま別の場所に行くのは厳しい。

「ダブラの村までだよ」
「それなら引き受けます」

 ダブラとはルキアス達が滞在している村だ。帰る場所であれば一人や二人同乗者が増えても何の問題も無い。

「良かった。直ぐに二人を紹介するからね」

 キルシルセッカが執事を呼び出して二人を案内するよう指示を出すと、二人はそう間を置かずにやって来た。
 一人はスーツをぴっちり着込んだ如何にもビジネスマンの男。もう一人は背が低めでずんぐりした体格をしていて、作業服らしきものを着ている。伝説のドワーフがこんな風采ではないかと思える男だ。

「ジェルロ・サーキスとドーズだよ。ジェルロは渉外担当で、ラナファーベとの折衝も彼が行うからね。ドーズは『土魔法』使いの大工で、先行して宿舎の建設を頼んでいる。手始めはルキアス君達の拠点になる宿舎だね」

 しかも宿舎は無料で提供してくれるらしい。

「え! あ! ありがとうございます。ルキアスです。よろしくお願いします」

 ルキアスは望外の厚意に若干動転しつつキルシルセッカに礼を言い、ジェルロとドーズに挨拶をした。

「ジェルロ・サーキスです。よろしくお願いします」

 ジェルロの挨拶は身形同様に格式張った態度で行われた。握手を求められたルキアスは一瞬躊躇った後に応じた。

「ドーズだ。よろしく頼まぁ」

 ドーズの挨拶も見た目通りだ。ルキアスはジェルロより慣れ親しんだ探索者に近い雰囲気のドーズの握手の方が気楽に応じられた。
 ただ顔合わせはしたものの、このまま飛び立つことはできない。フヨヨンとの待ち合わせがある。ルキアスは三人にこの旨の断りを入れ、ダンジョンタワーに急いだ。
 フヨヨンと落ち合い、事情を話してまたキルシルセッカ邸へ。今度はフヨヨンも一緒だ。

「げ……、連れて来るのはフヨヨンだったのかよ」

 ドーズが悩ましげな表情をした。

「ドーズ、久しいね。ルキアス知ってるかい? ドーズも深層組でね、魔力を増やすためだけに深層に挑戦していた変わり種さ」

 魔力が十分に増えたのが判った時点ですっぱり探索者を辞めて転職したらしい。
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