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486 話にならんな
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フヨヨンはメイナーダに小声で話し掛けた。
「拠点をこの町に構えるのは考え直した方が良さそうだね」
「同感だわ」
町人達は批判に回った。ダンジョンから魔物が出て来ると言う、彼らにとって未知の脅威を前にしてであれ、反発から始められれば良い関係は結べそうにない。
「あんたら! マールは! 息子は見付かったのか!?」
マールの父親もやって来て、タイラクに詰め寄った。
「いいや」
「だったらどうしてこんな所で突っ立ってる!? マールが魔物に襲われてもいいとでも言うのか!?」
彼は魔物の件を聞き付けてやって来たようだった。
「その事だが、悪いが諦めてくれ。この状況であんたの息子らが生きてる望みは無いからな」
「何だと!? 捜しもせずに何故判る!? もしやお前らが殺したのか!?」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!」
タイラクの怒号で縮み上がったマールの父親が尻餅を搗いた。
「んな一ダールにもならん事を誰がするか。あんたの息子らはダンジョンに入ったんだろうさ。そこで余計な事をしたから魔物が出て来やがったんだ。魔物がこっちまで来た以上、殺されてるに決まってんだろうが」
「か……、仮にそうだったとしても、あんたらがダンジョンなんて余計なもんを見付けたせいだろ! 息子が死んでたらあんたらの責任だ! 息子を返せ!」
マールの父親はタイラクの怒号での震えを未だ引き摺りながらも糾弾を止めなかった。
「話にならんな」
受け入れがたい事実を前に、誰かに怒りをぶつけたい気持ちが判らなくもないタイラクだが、そうされる謂れは無い。だからもうマールの父親に取り合わなかった。
ところが、周囲の町人がざわめきだした。「なんて冷たいヤツだ」はまだ良い方だ。マールの父親の暴言を真に受けたか「ほんとにあいつが殺してダンジョンのせいにしてるんじゃないか?」などの臆測まで語られる。そんな声は次第に大きくなり、いつしかマール達三人をタイラクが殺したことにされていた。
ザネクが反論しようとするが、それはフヨヨンが止めた。
誰かが投げた石がシャルウィに向かう。タイラクが剣でその石を弾き飛ばした。
するとまた町人達がざわめく。
「ぎゃーっ! 殺人鬼が暴れ出したーっ!」
「逃げろーっ!」
蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。あっと言う間に殺人鬼にまでされていたタイラクは苦虫を潰したような顔をした。
「あんな態度取られりゃ助ける気も失せるぜ」
「同感だけど、ただ見捨てても寝覚めが悪くなるからね」
「え? どう言うこと? 何かまだ危険があるの?」
シャルウィにはタイラクとフヨヨンの話の意味が見えないらしい。
「ダンジョンから魔物が溢れる時にたった三体だけで終わらないだけよ」
「それって?」
ラナファーベの町には城壁など無く、襲われれば為す術が無いと思われる。元を止めれば良いと判っていても、行き違いになって町に魔物が入れば大惨事だ。
「言ってる間に来なすった」
タイラクが顎で示した方向に水から這い上がって来る魔物が居た。
「げ……、魚に食われてやがる。この湿地の魚は魔物より強ぇのか?」
泳いで来たらしき魔物の身体はあちこちが抉れ、魚が何匹も食い付いていた。
「拠点をこの町に構えるのは考え直した方が良さそうだね」
「同感だわ」
町人達は批判に回った。ダンジョンから魔物が出て来ると言う、彼らにとって未知の脅威を前にしてであれ、反発から始められれば良い関係は結べそうにない。
「あんたら! マールは! 息子は見付かったのか!?」
マールの父親もやって来て、タイラクに詰め寄った。
「いいや」
「だったらどうしてこんな所で突っ立ってる!? マールが魔物に襲われてもいいとでも言うのか!?」
彼は魔物の件を聞き付けてやって来たようだった。
「その事だが、悪いが諦めてくれ。この状況であんたの息子らが生きてる望みは無いからな」
「何だと!? 捜しもせずに何故判る!? もしやお前らが殺したのか!?」
「馬鹿言ってんじゃねぇ!」
タイラクの怒号で縮み上がったマールの父親が尻餅を搗いた。
「んな一ダールにもならん事を誰がするか。あんたの息子らはダンジョンに入ったんだろうさ。そこで余計な事をしたから魔物が出て来やがったんだ。魔物がこっちまで来た以上、殺されてるに決まってんだろうが」
「か……、仮にそうだったとしても、あんたらがダンジョンなんて余計なもんを見付けたせいだろ! 息子が死んでたらあんたらの責任だ! 息子を返せ!」
マールの父親はタイラクの怒号での震えを未だ引き摺りながらも糾弾を止めなかった。
「話にならんな」
受け入れがたい事実を前に、誰かに怒りをぶつけたい気持ちが判らなくもないタイラクだが、そうされる謂れは無い。だからもうマールの父親に取り合わなかった。
ところが、周囲の町人がざわめきだした。「なんて冷たいヤツだ」はまだ良い方だ。マールの父親の暴言を真に受けたか「ほんとにあいつが殺してダンジョンのせいにしてるんじゃないか?」などの臆測まで語られる。そんな声は次第に大きくなり、いつしかマール達三人をタイラクが殺したことにされていた。
ザネクが反論しようとするが、それはフヨヨンが止めた。
誰かが投げた石がシャルウィに向かう。タイラクが剣でその石を弾き飛ばした。
するとまた町人達がざわめく。
「ぎゃーっ! 殺人鬼が暴れ出したーっ!」
「逃げろーっ!」
蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。あっと言う間に殺人鬼にまでされていたタイラクは苦虫を潰したような顔をした。
「あんな態度取られりゃ助ける気も失せるぜ」
「同感だけど、ただ見捨てても寝覚めが悪くなるからね」
「え? どう言うこと? 何かまだ危険があるの?」
シャルウィにはタイラクとフヨヨンの話の意味が見えないらしい。
「ダンジョンから魔物が溢れる時にたった三体だけで終わらないだけよ」
「それって?」
ラナファーベの町には城壁など無く、襲われれば為す術が無いと思われる。元を止めれば良いと判っていても、行き違いになって町に魔物が入れば大惨事だ。
「言ってる間に来なすった」
タイラクが顎で示した方向に水から這い上がって来る魔物が居た。
「げ……、魚に食われてやがる。この湿地の魚は魔物より強ぇのか?」
泳いで来たらしき魔物の身体はあちこちが抉れ、魚が何匹も食い付いていた。
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