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481 跳ねっ返り
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翌日からのダンジョンでの作業はルキアスとザネクが午前中に魔石をざっと回収して砲台に魔石を補充するだけとなった。
魔石の回収では一通りの作業を終えても半分近い魔石が残される。しかしそれ以上頑張っても労力に見合わない成果しか得られない。半分残したまま明日もざっと回収した時に残るのは今日と同じくらいなのだ。
動力として使う魔石は拾ったままでは使えないので、砲台に補充するのはフヨヨンが加工した魔石だ。これを砲塔が旋回していない隙に所定の場所に入れる。これで使い終わった魔石が自動で排出され、新しい魔石が回路に接続される仕組みになっている。
そうして三日が経った昼下がり。
「あんたら雨も降ってないのに何日も休んでるようだが、ダンジョンに行かなくていいのか?」
宿の主ツアゾが注文された飲み物を運びがてら、タイラクに尋ねた。
「今は行っても何もする事がねぇからな」
「そうなのか。しかしあんたらが行かない間に町の跳ねっ返りが行かなきゃいいんだがな」
「天変地異から逃げる仕度でそれどころじゃないんじゃなかったのか?」
「いつの話だ。そんなのはとっくの昔に収っている。この宿の従業員だって戻ってるだろう?」
「お、言われてみればオヤジだけじゃなくなってるな」
「……」
ツアゾは頭を振った。
「今はもう噂は専らあんたらだ。『余所もんが何やってんだ』ってな」
「余所もんねぇ、まあいいけどよ。で? ダンジョンも噂になってんのか?」
「そこまではまだだ。しかし時間の問題だろうさ」
「ふーん。行きたいヤツを止めるつもりはないが、探索者でもなけりゃ止めた方が賢明だぞ。探索者だったとしてもそれなりに経験積んでないとな」
「どう言うことだ?」
「そこのダンジョンの魔物は探索者に成り立てのヤツが敵うようなもんじゃねぇ。ベクロテのダンジョンなら中層にいきなり行くようなもんだ。自殺行為だな」
「何……だと……?」
ツアゾの懸念通りに跳ねっ返りは居た。ルキアスとザネクがダンジョンから引き上げて町に入るのを物陰から監視する男三人組。町の外で待ち受けないのはめぼしい隠れ場所が無いためだ。
「ヤツら戻ったな。行くぞ」
「「おう」」
三人組は湿地へ急いだ。
「ここから行けそうだ」
ルキアス達が切り拓いた徒歩でダンジョンに行く道を伝って三人組は行く。
「何か在ると思ったらこれは噂に聞くダンジョンじゃねぇか?」
「だな。入ってみようぜ」
「おう」
三人組はダンジョンに侵入した。
魔石の回収では一通りの作業を終えても半分近い魔石が残される。しかしそれ以上頑張っても労力に見合わない成果しか得られない。半分残したまま明日もざっと回収した時に残るのは今日と同じくらいなのだ。
動力として使う魔石は拾ったままでは使えないので、砲台に補充するのはフヨヨンが加工した魔石だ。これを砲塔が旋回していない隙に所定の場所に入れる。これで使い終わった魔石が自動で排出され、新しい魔石が回路に接続される仕組みになっている。
そうして三日が経った昼下がり。
「あんたら雨も降ってないのに何日も休んでるようだが、ダンジョンに行かなくていいのか?」
宿の主ツアゾが注文された飲み物を運びがてら、タイラクに尋ねた。
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「そうなのか。しかしあんたらが行かない間に町の跳ねっ返りが行かなきゃいいんだがな」
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「お、言われてみればオヤジだけじゃなくなってるな」
「……」
ツアゾは頭を振った。
「今はもう噂は専らあんたらだ。『余所もんが何やってんだ』ってな」
「余所もんねぇ、まあいいけどよ。で? ダンジョンも噂になってんのか?」
「そこまではまだだ。しかし時間の問題だろうさ」
「ふーん。行きたいヤツを止めるつもりはないが、探索者でもなけりゃ止めた方が賢明だぞ。探索者だったとしてもそれなりに経験積んでないとな」
「どう言うことだ?」
「そこのダンジョンの魔物は探索者に成り立てのヤツが敵うようなもんじゃねぇ。ベクロテのダンジョンなら中層にいきなり行くようなもんだ。自殺行為だな」
「何……だと……?」
ツアゾの懸念通りに跳ねっ返りは居た。ルキアスとザネクがダンジョンから引き上げて町に入るのを物陰から監視する男三人組。町の外で待ち受けないのはめぼしい隠れ場所が無いためだ。
「ヤツら戻ったな。行くぞ」
「「おう」」
三人組は湿地へ急いだ。
「ここから行けそうだ」
ルキアス達が切り拓いた徒歩でダンジョンに行く道を伝って三人組は行く。
「何か在ると思ったらこれは噂に聞くダンジョンじゃねぇか?」
「だな。入ってみようぜ」
「おう」
三人組はダンジョンに侵入した。
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