生活魔法は万能です

浜柔

文字の大きさ
上 下
479 / 627

479 砲台

しおりを挟む
 翌日。朝から砲台の試運転だ。砲台を設置して魔石を充填する。
 この間に襲って来る魔物にはタイラクが対応した。

「起動するよ。退いてくれたまえよ!」
「おう!」

 フヨヨンはタイラクが退くと同時に砲台を起動した。次の瞬間には砲塔となる上部が旋回し『火魔法』を次々と放つ。魔法が放たれる度に魔物が炎上した。

「凄……」

 ルキアスは感嘆の声を漏らした。魔物が次々に魔石だけを遺して燃え尽きて逝く。ただその魔石は半数近くが原形を保てず崩れてしまっている。

「予想したより火力が出ているようだね。ルキアスの『捏ね』がレベルアップしたのかな? まあ、それはいいか。見たところ魔石を消費するより残る方が多いからね。じゃあ一旦外に出るよ」

 魔石の収支さえ合えば問題ないと言うフヨヨンが皆を促して外に出る。

「どうして外に?」
「魔物には砲台に反応して貰わなけりゃ面倒だからね。その確認だよ」

 魔物が人にしか反応しないようでは囮として誰かが居なければならないが、砲台に反応してくれれば誰も居る必要が無い。

「そろそろいいかな」

 一〇分程経ってからまた第一階層へと降りて入口から様子を覗く。

「魔物が居なくなってるね」
「失敗ですか?」
「そうなるね。ってことで、ルキアスにはもう一つ指輪を『捏ね』て貰おう」

 ルキアスはフヨヨンの依頼でちょちょちょいとアダマントの指輪を『捏ね』た。

「それ……、アダマントだよな?」

 ザネクが念を押すように尋ねた。

「うん。これだけ硬いのはアダマントだよ」
「昨日より作るの早くなってないか?」
「昨日は久しぶりで少し手間取っちゃったから、その分がかな」

 ルキアスは話ながら指輪を「はい、これ」とフヨヨンに渡す。

「少しか……、なるほど少しなんだな」

 ザネクは腕を組んで判ったかのように頷いた。
 一方、フヨヨンはアダマントのリングに魔法を付与する。

「『挑発』はタイラク、頼むよ」

 『挑発』は人の存在感を周囲に発する補助魔法だ。魔物はその存在感を無視できない。フヨヨンはこれをタイラクと一緒に指輪に付与すると、砲台を回収して第一階層を出た場所で改造した。

「さあ、再挑戦だよ」

 また砲台を設置すると、またダンジョンの外へと出る。
 また一〇分程経って様子を見ると、今度は砲台が破壊されていた。魔法を放つのが間に合わなかったと思われる。

「こうなったら三台に増やすよ!」

 作成は翌日一杯まで掛かった。設置は更に次の日である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

学園の聖女様はわたしを悪役令嬢にしたいようです

はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にて掲載しています。 とある国のお話。 ※ 不定期更新。 本文は三人称文体です。 同作者の他作品との関連性はありません。 推敲せずに投稿しているので、おかしな箇所が多々あるかもしれません。 比較的短めに完結させる予定です。 ※

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

大賢者の弟子ステファニー

楠ノ木雫
ファンタジー
 この世界に存在する〝錬金術〟を使いこなすことの出来る〝錬金術師〟の少女ステファニー。 その技を極めた者に与えられる[大賢者]の名を持つ者の弟子であり、それに最も近しい存在である[賢者]である。……彼女は気が付いていないが。  そんな彼女が、今まであまり接してこなかった[人]と関わり、成長していく、そんな話である。  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

処理中です...